第21回 メチルエチルケトン(MEK)
誌面掲載:2019年5月号 情報更新:2023年10月
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1.名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表1)
1.1 化学物質名/別名
メチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone)はケトン(>C=O)にメチル基とエチル基が結合した物質である。部分名の接頭語の頭文字をアルファベット順にしてエチルメチルケトン(Ethyl methyl ketone)という名称も使われる。IUPAC命名法では基本構造を最長炭素鎖の炭化水素ブタン(Butane)の2番目の炭素がケトン(ketone)になっているので、接尾語-オン(-one)を付けてブタン-2-オン(Butan-2-one)であるが、2-ブタノン(2-Butanone)と呼ばれることの方が多い。しかし一般には英語名(Methyl Ethyl Ketone)の頭文字を取ってMEKと呼ばれている。
炭素数3個の2-プロパノン(2-Propanone)は一般にはアセトン(Acetone)として知られている。CH3C(=O)-を接頭語でアセト-(Aceto-)と呼ぶことからの名称と考えられる。またエチル基の代わりにイソブチル基(Isobutyl)にしたメチルイソブチルケトン(Methyl isobutyl ketone)がある。略称としてMIBKと呼ばれている。IUPAC命名法では、最長炭素鎖の炭素数5個のペンタン(Pentane)の4番目の炭素にメチル基が結合しているケトンということで、4-メチルペンタン-2-オン(4-Methylpentan-2-one)である。ほかに、環状のシクロヘキサン(Cyclohexane)のケトンであるシクロヘキサノン(Cyclohexanone)もよく使われている。アノン(Anone)とも呼ばれる。
1.2 CAS No.、化学物質審査規制法(化審法)の官報公示整理番号、その他の番号
MEKのCAS No.は 78-93-3である。化審法官報公示整理番号の2-542は「アルキル(C = 1~16)メチルケトン」という名称なので、MEKのほかアセトン(C = 3), MIBK(C = 6)もこれに含まれる。労働安全衛生法では既存物質として化審法番号で公表されている。シクロヘキサノンの炭素数は6個だがこれには該当せず、環状の物質なので分類番号3の3-2376という固有の番号がある。EUのEC No.はCAS No.同様それぞれに番号がある。いずれも200番台なのでREACH以前から既存化学物質として登録されていた物質である。
図表1 MEK及びその類縁物質の特定
名称 | メチルエチルケトン
(Methyl ethyl ketone) |
アセトン
(Acetone) |
メチルイソブチルケトン
(Methyl isobutyl ketone) |
シクロヘキサノン
(Cyclohexanone) |
IUPAC | ブタン-2-オン
(Butan-2-one) |
プロパン-2-オン
(Propan-2-one) |
4-メチルペンタン-2-オン
(4-Methylpentan-2-one) |
同上 |
その他の名称 | 2-ブタノン
(2-Butanone) エチルメチルケトン (Ethyl methyl ketone) |
2-プロパノン
(2-Propanpne) ジメチルケトン (Dimethyl ketone) |
4-メチル-2-ペンタノン
(4-Methyl-2-pentanone) イソブチルメチルケトン(Isobutyl methyl ketone) |
シクロヘキシルケトン
(Cyclohexyl ketone) ケトヘキサメチレン (Ketohexamethylene) アノン (Anone) ピメリンケトン (Pimelin ketone) |
略称 | MEK | – | MIBK | |
化学式 | C4H8O
CH3COC2H5 |
C3H6O CH3COCH3 | C6H12O CH3COCH2CH(CH3)2 | C6H10O
(CH2)5CO |
CAS No. | 78-93-3 | 67-64-1 | 108-10-1 | 108-94-1 |
化学物質審査規制法(化審法) | 2-542 | 2-542 | 2-542 | 3-2376 |
EC No. | 201-159-0 | 200-662-2 | 203-550-1 | 203-631-1 |
REACH | 01-2119457290-43- xxxx | 01-2119471330-49-xxxx
01-2119498062-37-xxxx |
01-2119473980-30-xxxx | 01-2119453616-35-xxxx |
2-542: アルキル(C = 1~16)メチルケトン
2.特徴的な物理化学的性質/人や環境への影響(有害性)
2.1 物理化学的性質(図表2, 3)
MEKは無色透明、揮発性で引火性が高く(引火点-9℃と低い)、特有の臭いのある液体である。多くの有機溶剤と混和する。水にもかなり溶解するが溶解度に限界がある。水と共沸する。常温では安定であるが空気中の酸素などで酸化されて爆発性の過酸化物を生成しやすい。n-オクタノール/水分配係数logPowは小さく、生物濃縮性はないと考えられる。アセトン-MEK-MIBKとケトンのアルキル基の大きさが大きくなると沸点、引火点が高くなり、水との親和性は低くなる。最も小さいアセトンは水と混和するがMEK-MIBKと水への溶解度が下がる。オクタノール/水分配係数(logPow)もこの順で大きくなるが、最も大きいMIBKでも1.38と小さく生物濃縮性は低いと考えられる。シクロヘキサノンの炭素数はMIBKと同じだが、MIBKより融点、沸点、引火点及び液体の密度および水への溶解度は少し高く、logPowは小さい。
2.2有害性
GHS分類例は図表3に示す。MEKの、致死量でみる急性毒性はあまり高くない。皮膚や眼、気道を刺激し、中枢神経を抑制する。眼に入ると発赤、痛み、吸入すると咳、眩暈、嗜眠、頭痛、吐き気、嘔吐を生じ、飲み込むと意識を喪失することもある。飲み込んだとき、吸い込んで肺を損傷する(誤嚥性肺炎)おそれがある。度々曝露していると皮膚の脱脂を起こし、乾燥やひび割れを生じることがある。遺伝子への影響を調べる多くの変異原性試験では陰性である。発がん性を示す明らかな証拠はない。米国のEPA (Environmental Protection Agency: 環境保護庁)はI(Inadequate:発がん性評価には情報が不十分)に分類している。IARCなどの機関では評価していない。生殖・発生毒性については、親動物に影響がある量でわずかな影響が見られている。
アセトンは比較的有害性の低い物質であるが、眼や気道を刺激し、高濃度では意識低下を起こすことがある。皮膚の脱脂を起こし、乾燥やひび割れを起こすことがある。MIBKはMEKと類似しているが少し有害性が高い。発がん性に関し、IARCは動物試験からヒトに対し発がん性のおそれがあるというグループ2Bに分類している。日本産業衛生学会も動物試験からの証拠は十分とは言えないがおそらくヒトに発がん性がある判断できるという第2群Bに分類している。厚生労働省によるがん原性物質に関する健康障害防止指針の対象物質に挙げられており、NITEのGHS分類では、2021年度の見直しで動物試験から発がん性の証拠が十分であると区分1Bとしている。シクロヘキサノンはこれらのケトン類より有害性が少し高いようである。
2.3環境有害性
MEKは水生生物に対する有害性は低い方で、生分解性があり、生物濃縮性もなく環境への有害性は小さいと考えられる。アセトン、MIBK、シクロヘキサノンも同様である。
図表2 MEK及びその類縁物質の主な物理化学的性質(ICSCによる)
MEK | アセトン | MIBK | アノン | |
融点(℃) | -86 | -95 | -84.7 | -32.1 |
沸点(℃) | 80 | 56 | 117-118 | 156 |
引火点(℃) (c.c.) | -9 | -18 | 14 | 44 |
発火点(℃) | 505 | 465 | 460 | 420 |
爆発限界(vol %) | 1.8~11.5 | 2.2~13 | 1.4~7.5 | 1.1-9.4 |
比重(水=1.0) | 0.8 | 0.8 | 0.80 | 0.95 |
水への溶解度 | 29g/100ml | 混和する | 1.91g/100ml | 8.7g/100ml |
log Pow | 0.29 | -0.24 | 1.38 | 0.81 |
図表3 MEK及びその類縁物質のGHS分類(NITEによる)
GHS分類 | MEK | アセトン | MIBK | アノン |
物理化学的危険性 | ||||
引火性液体 | 2 | 2 | 2 | 3 |
自然発火性液体 | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
金属腐食性 | – | 区分外 | – | – |
健康有害性 | ||||
急性毒性(経口) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 4 |
急性毒性(経皮) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 3 |
急性毒性(吸入:蒸気) | 4 | 区分外 | 3 | 3 |
皮膚腐食/刺激性 | 2 | 区分外 | 区分外 | 2 |
眼損傷/刺激性 | 2A | 2B | 2B | 2A |
皮膚感作性 | – | 区分外 | – | 1 |
生殖細胞変異原性 | – | – | – | 2 |
発がん性 | – | – | 1B | 区分外 |
生殖毒性 | – | 2 | – | 2 |
特定標的臓器(単回) | 2(腎臓)
3(気道刺激性、麻酔作用) |
3(気道刺激性、麻酔作用) | 3(気道刺激性、麻酔作用) | 1(呼吸器系)
2(中枢神経系) 3(麻酔作用) |
特定標的臓器(反復) | 1(神経系) | 1(中枢神経系、呼吸器、消化管) | 1(中枢神経系) | 1(中枢神経系、骨) |
誤えん有害性 | (2) | (2) | (2) | (2) |
環境有害性 | ||||
水生環境有害性(短期/急性) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
水生環境有害性(長期/慢性) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
3.主な用途
MEKは多くの有機溶剤や樹脂をよく溶かすので、各種合成樹脂、塗料、接着剤、インキなどの溶剤として用いられている。多くは混合有機溶剤の成分として使われている。化学品製造の原料、溶剤としても使用される。アセトン、MIBK、シクロヘキサノンも主に有機溶剤として用いられている。アセトンはほとんどの有機溶剤とも水とも混和するので、水と混ざらない溶剤を混ぜる際に使われたり、沸点が低く乾きやすいので有機化学研究用の器具の洗浄剤や車のメンテナンスでオイル汚れ落としとして使われたりする。また、マニキュアの除光液や染み抜きなど一般的に使用される製品にも使われている。
4.これまでに起きた事件/事故等の例
汎用の溶剤として使用されているため、火災・爆発、中毒などの事故例がある。
・LSI工場分析室のドラフトチャンバーで作業終了時残ったMEKを廃棄した。この時、本来の廃液容器ではなく廃酸容器に流し込んだ。廃酸容器に入っていた硝酸と激しい反応が起こり、急激な圧力上昇によって容器が破裂し、硝酸などが分析室内に飛散した。4人が薬傷を負い、1名が急性気管支炎の被害を受けた。(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=001068)
・ワニス製造工程で、溶解用タンク内にMEKを入れた後、エポキシ樹脂を投入していたところ、MEKが引火・爆発し、作業者が火傷を負った。何らかの静電気によると考えられる。タンクや作業者に帯電防止措置が施されていなかった。
(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=001025)
・製造ラインのポンプ修理作業時に、分解した部品の洗浄にMEKを使用していた。周辺に臭気が立ち込めたので、排気のため局所排気装置の方に扇風機を向けていたところ、扇風機の風下側で作業していた人が気分悪化、有機溶剤中毒と診断された。
(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=000894)
・樹脂成形材料製造工場で、設備の付着樹脂の拭き取りにMEKを用いていた。ゴム手袋、有機ガス用防毒マスクを着用していたが、局所排気装置や全体換気装置は使用されてなかった。途中で臭いを感じたが作業を続け、眩暈がして有機溶剤中毒と診断された。防毒マスクの吸収缶の破過時間を超えていた。破過時間内であっても臭いを感じたら新しい吸収缶と交換すべきである。(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=000828)
このほかアセトン、MIBK、シクロヘキサノンや、その他の溶剤と併用していて起きた事故例もある。
5.主な法規制(図表4)
化審法では、人や環境中の生物への長期的影響が確認されていないとして優先評価化学物質に指定されていたが、MEK、アセトンは2022年に取り消された。MIBK、シクロヘキサノンは引き続き優先評価化学物質で、1t/年以上製造又は輸入するとその量を届出なければならない。MEK、アセトン、シクロヘキサノンは有機溶剤としてかなり大量に使用されているが、化学物質管理促進法によるPRTRの対象にはなっていない。いずれも生分解性があり生物濃縮性はないので、現在の使用量では環境リスクはそれほど高くないと推定されているためと思われる。MIBKは2021年の改正で第1種指定化学物質に指定され、2023年度から環境中への排出状況を把握し、SDSを提供しなければならない。2024年度からPRTRの届出が必要になる。労働安全衛生法では名称等の通知および表示対象物である。1%以上で容器等にラベル表示しなければならない。MEKが1%以上含まれている製品を他者に提供する際SDSを提供しなければならない。アセトン、シクロヘキサノンは生殖毒性、MIBKは発がん性で区分されているので、0.1 %以上でSDS提供の義務がある。いずれも有機溶剤中毒予防規則の第2種有機溶剤である。5 %を超えて含有するものを製造したり取扱ったりする際は有機溶剤作業主任者を置き、局所排気又はプッシュプル型換気を行わなければならない。作業環境の測定、健康診断を行い、結果に対して適切な措置を講じなければならない。作業環境評価基準も設定されている。管理濃度は物質によって異なる。MEKは200ppm、アセトンは500ppm、MIBK, シクロヘキサノンは20ppmに設定されている。日本産業衛生学会の許容濃度勧告値、ACGIH のTLVもこれと同じか近い値に設定している。ACGIHではTWA(Time-Weighted Average: 1日 8時間、週40 時間の時間荷重平均濃度)の他にSTEL(Short-Term Exposure Limit: 15分間平均で越えてはならない濃度)も設定している。生物学的許容値が設定されている。これは尿や血液中の当該物質(や代謝物)の濃度による許容値で、取扱者が実際に曝露して量を反映すると考えられる指標である。MEK、アセトン、MIBKは作業終了時等の尿中の濃度で設定されている。シクロヘキサノンは部分代謝物の濃度で設定されている。MIBKは発がん性があるとされ、特定化学物質の第2類物質で特定有機溶剤、特別管理物質に指定されている。1%を超えたものを取扱うには特定化学物質作業主任者の選任し、作業環境測定結果や健康診断の結果を30年間保存しなければならない。特別管理物質でもあるので、作業記録を作成し、30年間保存しなければならない。MEKは原体(工業的純品)のみ毒物劇物取締法の劇物に指定されている。動物試験による急性毒性や刺激性の強さ(図表3)では劇物に該当するほどではないが、人での事故例などから判定されたと思われる。アセトンとシクロヘキサノンは労働基準法で疾病化学物質に指定されている。職業曝露でそれぞれの物質に起因する症状や障害が生じた場合、使用者(雇用者)は療養などの費用の負担、障害補償の義務がある。
MEKとアセトンは麻薬及び向精神薬取締法の「麻薬向精神薬原料」とされている。50%を超えていれば他の用途の製品でも該当する。事業として取扱うには厚生労働大臣または都道府県知事に届出なければならない。輸出の際には輸出貿易管理令によって経済産業大臣の承認が必要である。盗難、紛失などがあった場合も届出が必要になる。
MEK、アセトン、MIBKは引火点が21℃以下なので、消防法の危険物第4類引火性液体第一石油類である。シクロヘキサノンは引火点が44℃で第二石油類である。アセトンだけ水と混和するため「水溶性液体」であるが、MEK、 MIBK、シクロヘキサノンは水に少し溶解するものの溶解度が足りず「非水溶性液体」である。引火点が65℃未満のものは労働安全衛生法の「危険物、引火性の物」なので該当する。海洋汚染防止法でもMEK、アセトンは物質名で「危険物」に指定されている。MIBK、シクロヘキサノンは物質名では挙げられていないが、No.23に物質名で挙がっていないものに対し、「引火点が60℃以下のもの」があるのでこれに該当する。国連危険物輸送勧告ではそれぞれの化学物質名で国連番号1193, 1090, 1245, 1915がある。国連分類のクラス3(引火性液体)で、容器等級はGHSの区分と合わせてⅡ(シクロヘキサノンはⅢ)である。国連分類に該当する場合は、船舶や航空による輸送では船舶安全法、港則法、航空法などで容器、包装の制限、標識の表示などの義務がある。
大気汚染防止法では揮発性有機化合物(VOC)として大気中への排出削減が求められている。MIBKは不快なにおいのため、生活環境を損なうおそれがあるとして悪臭防止法の特定悪臭物質に指定されている。地域により、取扱事業所の敷地境界濃度や排出口の高さにも基準がある。
海洋汚染防止法ではいずれも有害液体物質のZ類物質に挙げられている。
図表4 2-アルコキシエタノール及びその類縁物質に関係する法規制
法律名 | 法区分 | MEK | アセトン | MIBK | アノン | ||
化学物質審査規制法(化審法) | 優先評価化学物質 | – | – | ○ | ○ | ||
化学物質管理促進法 | 指定化学物質 | – | – | 第1種 | – | ||
労働安全衛生法 | 危険物・引火性 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
名称等表示対象物 | ≧1% | ≧1% | ≧1% | ≧1% | |||
名称等通知対象物 | ≧1% | ≧0.1% | ≧0.1% | ≧0.1% | |||
特化則
特定化学物質 |
第2類物質
特別有機溶剤 特別管理物質 |
– | – | >1% | – | ||
有機則 | 第2種有機溶剤等 | >5% | >5% | >5% | >5% | ||
作業環境評価基準 | 管理濃度 | 200ppm | 500ppm | 20ppm | 20ppm | ||
労働基準法 | 疾病化学物質 | – | ○*1 | – | ○*2 | ||
作業環境許容濃度 | 日本産業衛生学会 | 200ppm
590mg/m3 |
200ppm
475mg/m3 |
50ppm
205mg/m3 |
25ppm
100mg/m3 |
||
ACGIH
(TLV) |
TWA | 200ppm | 250ppm | 20ppm | 20ppm | ||
STEL | 300ppm | 500ppm | 75ppm | 50ppm | |||
生物学的許容値 | 日本産業衛生学会 | *3 | *5 | *7 | – | ||
ACGIH BEI | *4 | *6 | *8 | *9 | |||
毒物劇物取締法 | 劇物 | 原体 | – | – | – | ||
消防法 | 危険物第4類
引火性液体 |
第一石油類
非水溶性液体 |
第一石油類
水溶性液体 |
第一石油類
非水溶性液体 |
第二石油類
非水溶性液体 |
||
麻薬及び向精神薬取締法 | 麻薬向精神薬原料 | >50% | >50% | – | – | ||
国連危険物輸送勧告 | 国連分類 | 3 | 3 | 3 | 3 | ||
国連番号 | 1193 | 1090 | 1245 | 1915 | |||
容器等級 | Ⅱ | Ⅱ | Ⅱ | Ⅲ | |||
大気汚染防止法 | 揮発性有機化合物(VOC) | 排気 | 排気 | 排気 | 排気 | ||
悪臭防止法 | 特定悪臭物質 | – | – | ○(15) | – | ||
海洋汚染防止法 | 有害液体物質 | Z類(133) | Z類(6) | Z類(132) | Z類(61) | ||
危険物 | ○(22) | ○(2) | ○(23)*10 | ○(23)*10 | |||
食品衛生法
容器包装ポジティブリスト |
基ポリマー
添加剤*11 |
樹脂に対し0~0.01% |
樹脂に対し5% |
樹脂に対し 0~1% |
樹脂に対し0~5%*12 |
国連番号 1193の品名は「エチルメチルケトン」(ETHYL METHYL KETONE)
1090の品名は「アセトン」(ACETONE)
1245の品名は「イソブチルメチルケトン」(METHYL ISOBUTYL KETONE)
1915の品名は「シクロヘキサノン」(CYCLOHEXANONE)
*1: 頭痛、眩暈、嘔吐などの自覚症状又は中枢神経抑制
*2: 前眼部障害または気道障害
*3: 尿中、MEK(作業終了時または高濃度曝露後数時間以内) 5mg/L
*4: 尿中、MEK(作業終了時) 2mg/L(非特異的:他物質による場合有)
*5: 尿中、アセトン(作業終了前2時間以内) 40mg/L
*6: 尿中、アセトン(作業終了時) 25mg/L
*7: 尿中、MIBK(作業終了時) 1.7mg/L
*8: 尿中、MIBK(作業終了時) 1mg/L
*9: 尿中、1,2-シクロヘキサンジオール(1,2-Cyclohexanediol)(週末の作業終了時) 80mg/L
尿中、シクロヘキサノール(Cyclohexanol)(作業終了時) 8mg/L
*10: 23のイ(20℃、1気圧において液体又は固体で、引火点≦60℃)に該当
*11: 食品に接触する器具・容器包装用のプラスチック(樹脂)への添加剤。ポジティブリストにある樹脂の種類により添加量の制限がある。
*12: ポリエチレン(合成樹脂区分5:エチレン≧50%)に対しては27%
6.曝露などの可能性と対策
6.1 事故や曝露の可能性
引火性がある。蒸気は空気より重いので、床に沿って移動して、遠距離で発火の可能性がある。保管中に空気との接触で爆発性の過酸化物を生成することがある。酸化剤や無機酸と激しく反応する。
蒸気やミストの吸入によるリスクが高い。室温でも蒸気濃度は有害濃度に達する。許容濃度を超えても、臭気として十分に感じないことがある。誤って液体が皮膚に付着したり飲み込んだりすることもある。皮膚からの吸収もある。飲み込んだとき気道に入って(誤嚥)化学肺炎等を起こすことがある。
6.2 事故や曝露防止
取扱い場所近くで炎や火花の発生するような作業はしない。禁煙。火花の発生しない工具を用い、容器や設備の接地などの静電気対策を行う。設備は防爆型を使用する。容器や設備を密閉化、遠隔操作などによる発散抑制、局所排気/プッシュプル型換気などを行う。換気が不十分な場合、有機ガス用の吸収缶を用いた防毒マスクなどを使用する。吸収缶を用いる簡易防毒マスクは使用可能時間(破過時間)があるので注意が必要である。長時間にわたる場合や、大量に漏洩した場合など大量に吸収するおそれがある場合は空気呼吸器などを使用する。皮膚からの吸収もあるので皮膚を露出しない。シリコーン製やポリウレタン製などの耐溶剤性の保護手袋を用いるが、不浸透性を確認してから用いる。貯蔵場所や取扱い場所近くに洗身シャワー、手洗い、洗眼設備を設置する。取扱った後は手や顔などをよく洗う。
6.3廃棄処理
珪藻土等に吸収させて開放型の焼却炉で焼却するか、少量ずつ火室に噴霧して焼却する。生分解性があり、希薄な水溶液の場合は活性汚泥による処理も可能である。これらの処理ができない場合は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託する。
免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。