第2回 工業用キシレン
誌面掲載:2017年9月号 情報更新:2022年11月
1.名称(その物質を特定するための名称や番号)
1.1 化学物質名/別名(図表1)
・慣用名:キシレン(Xylene)
・IUPAC名:ジメチルベンゼン(Dimethyl benzene)
ベンゼン(C6H6)の水素2 個がメチル基(CH3–)に置換された「芳香族炭化水素」で、化学式:C8H10 [又はC6H4 (CH3)2 ]である。
「キシレン」は混合物で2個のメチル基の相対位置の違いで3種類の異性体[オルソキシレン(ortho-Xylene)(1,2- ジメチルベンゼン)、メタキシレン(meta-Xylene)(1,3- ジメチルベンゼン)、パラキシレン(para-Xylene)(1,4- ジメチルベンゼン)]が存在する。工業用キシレンにはこの他に同じ分子式C8H10だがベンゼンにエチル基が結合したエチルベンゼン[Ethyl benzene: C6H5(C2H5)]が含まれている。石油精製でC8留分として得られる。これらは沸点が近いため個別に分離することなく「キシレン」の名で有機溶剤として使われる。o-キシレン、p-キシレンはそれぞれ他の物質の原料として使われるが、m-キシレンは需要が少ないのでo-やp-へ変換される。エチルベンゼンはそれほどの需要がなく、もともとはキシレンの不純物扱いだったが次第にその含有量が増加した。現在「キシレン」中のエチルベンゼンの割合は40%を超え、個別成分では最も多くなって、「キシレン」と区別するため「工業用キシレン」と呼ばれる。
1.2 CAS No.、化審法(安衛法)官報公示整理番号
キシレンはC6H4(CH3)2でCAS No.1330-20-7があるがo-,m-,p-の3種の異性体にもそれぞれCAS No.がある。エチルベンゼンは100-41-4である。化審法は「キシレン」として3-3があるが異性体の区別はしていない。エチルベンゼンは3-28(安衛法は既存物質として化審法番号で公表されている)。化審法番号3-60は官報公示名「モノ(又はジ)メチル(エチル、ブロモアリル、ブロモプロピルオキシカルボニル、又はクロロプロピルオキシカルボニル)ベンゼン」でキシレンやエチルベンゼンも含まれる名称になっている。
1.3 その他の番号
EUでは独自のEC番号215-535-7 がある。o-キシレン:202-422-2,m-キシレン:203-576-3, p-キシレン:203-396-5、エチルベンゼンは202-849-4で、いずれも200台でREACH以前は既存化学物質のEINECS番号だった。
EUではこの他REACH登録番号も存在する。01-2119488216-32-xxxx(xxxxは登録者番号)(3種の異性体、エチルベンゼンにもそれぞれ別の番号がある)である。
1.4 国連番号
キシレン混合物(Xylenes)でUN No.1307、エチルベンゼンは1175である。国連分類はクラス3(引火性液体)で容器等級は引火点<23℃でⅡ、23℃≦ , ≦60℃でⅢ(GHSの引火性液体区分2, 3に対応)である。
図表1 工業用キシレンの成分
名称 | キシレン | ||||
o-キシレン | m-キシレン | p-キシレン | エチルベンゼン | ||
化学式 | C8H10 | C6H4(CH3)2 | C6H4(CH3)2 | C6H4(CH3)2 | C6H5(CH2CH3) |
割合(例) | 10-25 (%) | 20-40 (%) | 10-25 (%) | 40-60 (%) | |
CAS No. | 1330-20-7 | 95-47-6 | 108-38-3 | 106-42-3 | 100-41-4 |
化審法 | 3-3, 3-60 | 3-3, 3-60 | 3-3, 3-60 | 3-3, 3-60 | 3-28, 3-60 |
EC No. | 215-535-7 | 202-422-2 | 203-576-3 | 203-396-5 | 202-849-4 |
REACH* | 01-2119488216-32- | 01-2119485822-30- | 01-2119484621-37- | 01-2119484661-33- | 01-2119489370-35- |
KECL** | KE-35427 | KE-35429 | KE-35428 | KE-35430 | KE-13532 |
*: 登録者番号は省略
**: 韓国化学物質の登録及び評価等に関する法律による既存化学物質番号
2.特徴的な物理化学的性質/人や環境への影響(有害性)
2.1 物理化学的性質
無色透明の揮発性液体(VOC)である。混合物なので、含有する成分の物理化学的性質はそれぞれ異なる(図表2)。各異性体の沸点はエチルベンゼンも含めあまり差がないが、融点は大きく異なる。キシレン混合物を–60℃~–80℃に冷却することでp-キシレンを分離することができる。引火点はo-,m-,p-とも>23℃でGHSの引火性液体区分3に該当するが、エチルベンゼンは少し引火点が低く図表2のデータでは区分2で、工業用キシレンの場合エチルベンゼンの割合によっては区分2となる可能性がある[日本芳香族工業会のモデルSDSではエチルベンゼンの引火点も>23 ℃で、工業用キシレンは「区分3」としている(図表3)]。炭化水素で油に溶けやすく水には溶けにくい。n-オクタノール/水分配係数logPowは3.1~3.2で、脂肪分に水の1,000倍くらい高濃度に分配されることになるが、魚による生物濃縮係(BCF)はいずれも約14倍から25倍であることから、生物濃縮係数は低いとされる[化審法でlogPowが3.5(GHSでは4)以上、BCF5000(GHSでは500)以上で生物濃縮性(生体蓄積性)としている]。
図表2 キシレン、エチルベンゼンの物理化学的性質(ICSCによる)
o-キシレン | m-キシレン | p-キシレン | エチルベンゼン | |
融点(℃) | -25 | -48 | 13 | -95 |
沸点(℃) | 144 | 139 | 138 | 136 |
引火点(℃) (c.c.) | 32 | 27 | 27 | 18 |
発火点(℃) | 463 | 527 | 528 | 432 |
爆発限界(vol %) | 0.9~6.7 | 1.1~7.0 | 1.1~7.0 | 1.0~6.7 |
比重(水=1.0) | 0.88 | 0.86 | 0.86 | 0.9 |
水への溶解度 | 不溶 | 不溶 | 不溶 | 15mg/100mL(20℃) |
n-オクタノール/水分配係数
(log Pow) |
3.12 | 3.20 | 3.15 | 3.1 |
2.2 有害性
GHS分類例を図表3に示す。懸念される反応性の特性基を持っておらず、経口による急性毒性はGHS区分外で、経皮、吸入では区分4である。作業環境の許容濃度(OEL)は日本産業衛生学会では50ppmに設定している。またキシレンの代謝物であるメチル馬尿酸の尿中の濃度で生物学的許容値も設定されていて、週後半の作業終了時で800mg/Lである。皮膚や眼に対する影響はGHS区分2で不可逆的な影響ではない。発がん性について(図表4)はo-,m-,p-キシレンではIARC(International Agency for Research on Cancer;国際がん研究機関)はグループ3、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists;米国産業衛生専門家会議)はA4と「発がん性有とは分類できない」としているが、エチルベンゼンはIARC 2B、日本産業衛生学会も2B、ACGIHはA3に分類しており、いずれもヒトに発がん性があることを示唆している。このため「工業用キシレン」はGHSで発がん性区分2と判定される。エチルベンゼンの生殖毒性で区分1Bは動物試験で妊娠時の曝露で胎仔に奇形を生じる催奇形性があるという情報による。特定標的臓器毒性はヒトの事故例や職業上の曝露などのデータがあり、単回/反復曝露とも神経系や呼吸器への影響で区分1となっている。誤えん有害性は、飲み込んだとき、誤って気道に吸い込んで化学性肺炎等を起こすものである。揮発性の炭化水素などにこの有害性があることが知られている。水生生物に対する試験等により環境有害性は、短期長期とも区分1,2とされている。しかし、キシレンは水への溶解度が低く、揮発性もあるため水生環境への有害性リスクはそれほど高くないと考えられる。
図表3 キシレンのGHS分類(NITEによる)
GHS分類 | o-キシレン | m-キシレン | p-キシレン | エチルベンゼン | キシレン |
物理化学的危険性 | |||||
引火性液体 | 3 | 3 | 3 | 2* | 3 |
自然発火性液体 | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
金属腐食性 | 区分外 | – | – | – | 区分外 |
健康有害性 | |||||
急性毒性(経口) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
急性毒性(経皮) | 区分外 | 区分外 | – | 区分外 | 4* |
急性毒性(吸入:蒸気) | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
皮膚腐食/刺激性 | – | 2 | 2 | – | 2 |
眼損傷/刺激性 | – | 2 | – | 2B | 2* |
皮膚感作性 | – | – | – | 区分外 | – |
生殖細胞変異原性 | – | – | – | 区分外 | – |
発がん性 | – | – | – | 2 | -* |
生殖毒性 | – | – | 2 | 1B | 1B |
特定標的臓器(単回) | 1(中枢神経系)
3(気道、麻酔) |
1(呼吸器)
3(麻酔) |
1(中枢神経系)
3(気道、麻酔) |
3(気道、麻酔) | 1*(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)
3*(麻酔) |
特定標的臓器(反復) | – | 1(神経系、呼吸器) | – | 1*(聴覚器、神経系) | 1(神経系、呼吸器) |
誤えん有害性 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
環境有害性 | |||||
水生環境有害性(短期・急性) | 1 | 2 | 2 | 1 | 2* |
水生環境有害性(長期・慢性) | 2 | 3 | 2 | 2 | 2 |
*日本芳香族工業会モデルSDSでNITEの分類と異なっている点
エチルベンゼン:引火性液体は区分3、特定標的臓器(反復)は区分2(聴覚器)
キシレン(CAS No.1330-20-7):急性毒性(経皮)は区分されていない。眼損傷/刺激性は区分2A、発がん性 区分2、特定標的臓器(単回) 区分1(中枢神経系、呼吸器)、区分3(気道/麻酔)、特定標的臓器(反復)は区分1(神経系、呼吸器)の他に区分2(聴覚器)とし、水生環境有害性(短期・急性)区分1としている。(NITEはo-, m-, p-の3異性体の混合物、日本芳香族工業会ではこれにエチルベンゼンを含有している。)「区分外」と「分類できない」は判断されていない。m-キシレンのモデルSDSは公開されていない。なお、特定標的臓器(単回)の区分3で気道刺激性が記載されているが、区分1で呼吸器が記載されているので区分3の気道刺激性はなくてもいいと思われる。(政府向けGHS分類ガイダンス(p189) E)留意事項: 「区分 1(呼吸器)や区分 2(呼吸器)に分類される場合は、区分 3(気道刺激性)として分類しない。」)水生環境有害性(短期・急性)で区分1としている。
図表4 キシレン・エチルベンゼンの発がん性評価
キシレン | エチルベンゼン | |
IARC | 3 | 2B |
日本産業衛生学会 | 3 | 2B |
ACGIH | A4 | A3 |
NTP | – | – |
EU(CLP) | – | – |
EPA | I | D |
IARC:
Group 2B: Possibly carcinogenic to humans(ヒトに対して発がん性を示す可能性がある)
Group 3: Not classifiable as to its carcinogenicity to humans(ヒトに対する発がん性について分類できない)
日本産業衛生学会:
2B: 証拠十分とは言えないが、ヒトに対しておそらく発がん性があると判断できる
3: ヒトに対する発がん性について分類できない
ACGIH:
A3: Confirmed animal carcinogen with unknown relevance to humans(ヒトとの関連が不明な動物発がん性が確認されている)
A4: Not classifiable as a human carcinogen(ヒト発がん性物質として分類できない)
EPA:
I: Data are inadequate for an assessment of human carcinogenic potential(ヒト発がん性評価には情報が不十分な物質)
D: Not classified as human carcinogenicity(ヒト発がん性物質に分類できない)
3.主な用途
工業用のキシレンとして混合物のままで、塗料、接着剤、インキ、農薬などの溶剤やうすめ液(シンナー)として使われる。混合物キシレンはそれぞれの成分に分離されて他の化学物質の原料となる。上記のようにo-キシレンはフタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)を経て塩ビ(ポリ塩化ビニル)樹脂等の可塑剤(フタル酸エステル)として使われている。ポリ塩化ビニル自体は硬い樹脂だがこの可塑剤と混ぜると柔らかくなる。割合を変えることで硬さを調節できるので広く使われている。p-キシレンはテレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)を経てポリエステル(PETなど)として使われている。PETは繊維製品やフィルム、ペットボトルとして使われている。m-キシレンもイソフタル酸(ベンゼン-1,3-ジカルボン酸)としてポリエステルの原料にもなるが需要が少ないので、o-キシレンやp-キシレンに変換される。エチルベンゼンは主にスチレンに変換されてポリスチレン(発泡スチロールや様々なプラスチック製品)や合成ゴムの原料として使われる。
4.これまでに起きた事件/事故などの例
塗料の溶剤として使われることが多く、塗装中の吸入による中毒事故のほか爆発事故例もある。職場のあんぜんサイトの労働災害事例に次のような例が紹介されている。(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/saigaijirei.htm)
・ 船倉内吹付塗装中爆発。塗料にキシレンなどの溶剤が含まれていた。作業者2人死亡、1 人火傷で入院、救助者1人が一酸化炭素中毒になった。空気ホースによる送気は行っていたが船倉内の換気不足。近くで金属部材の溶断作業が行われていて、ガス溶断の火花が落ちて船底に溜まった有機溶剤蒸気に引火、爆発した。
・ マンション1階床下で錆止め塗装中の3人中毒。キシレンを含む溶剤を用いて刷毛で塗っていた。換気口から遠い位置で、換気不十分。保護具着用せず(タオルで口を覆って作業)3人とも意識を失って倒れた。
・ 室内でタンクから床に漏れたキシレンを紙タオルで拭き取る作業をしていて頭痛・吐き気。局所排気装置運転中で保護具なしで作業していた。
5.主な法規制
法規制では混合物/個別成分を区別する規制はない。法規制上のキシレン混合物にはエチルベンゼンは含まれていないが、ほぼ同じ法規制がかかっている。主な法規制を図表5に示す。引火性の物質で消防法の危険物(エチルベンゼンを含め混合物としての引火点から第4類引火性液体第二石油類非水溶性液体に該当。引火点が21℃未満では第一石油類で指定数量が違う)としての管理が必要である。国連危険物輸送勧告の国連分類のクラス3(引火性)で船舶や航空機での輸送では表示や容器の規制がある。溶剤としての使用が多いことから労働安全衛生法で有機溶剤中毒予防規則(有機則)の対象(第2種有機溶剤)で、作業環境評価基準で管理濃度[キシレン(混合物):50ppm、エチルベンゼン:20ppm]が定められている。エチルベンゼンは発がん性のおそれがあるため、健康障害防止指針の対象物質で、特定化学物質障害予防規則(特化則)で特定化学物質第2類の特別有機溶剤及び特別管理物質に指定されている。キシレンという名称でもエチルベンゼンを1%超含有すればこれに該当する。特定化学物質作業主任者の設置および作業記録の作成、健診結果等の記録の長期保存(30年)、有害性等の掲示が必要である。そしてその管理を推進するため、0.1%以上含有する製品を他社に提供する際、SDSの提供(文書交付義務)及び0.3%(エチルベンゼンは0.1%)以上含有すれば容器等へのラベル表示義務がある。また、妊娠や出産・授乳機能への懸念から、作業環境評価基準の管理濃度を超えるような作業場(第3管理区分)等での女性労働者の業務は禁止されている。日本産業衛生学会は作業環境許容濃度を50ppm(エチルベンゼンは20ppm)に設定している。また、代謝物の尿中濃度で生物学的許容値(ほとんどの労働者に健康上の悪影響がみられないと判断される濃度)として800mg/Lに設定している。エチルベンゼンに対しても尿中のエチルベンゼンや代謝物の許容値が設定されている。キシレンの工業用純品は毒劇物取締法の劇物に指定されている。また、製造/ 使用量が多いので環境影響も懸念され、化学物質管理促進法(第1種指定化学物質)でPRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)の対象となっている。環境中への排出量は2020年度でキシレン約2万1千t/年、エチルベンゼン約1万4千t/年と国内で最も多いトルエンに次ぐ。化学物質審査規制法(化審法)でも優先評価物質に指定して、環境リスク状況を監視している。悪臭防止法で特定悪臭物質に指定されており、塗装や印刷などの事業場では敷地境界濃度が設定されている。室内空気汚染等によるシックハウス症候群と呼ばれる健康影響が問題になったときに、キシレンもその原因物質の一つとされ、厚生労働省から室内濃度指針値が示された。その後建築基準法等でホルムアルデヒド等が規制されたが、キシレンにはない。大気汚染防止法では環境基準は定められていないが、キシレンは環境中でも検出されることから有害大気汚染物質の可能性がある物質に選ばれている。揮発性有機化合物(VOC)に該当し、事業者の自主的な排出削減が求められている。公共用水域や地下水の水質環境基準は定められていないが、キシレンは要監視項目に挙げられ調査が続けられている。水質汚濁防止法で指定物質とされ、事故時の届出等が必要である。海洋汚染防止法ではキシレン、エチルベンゼンともY類物質に挙げられている。
図表5 キシレンに関係する法規制
法律名 | 法区分 | 条件等 | キシレン | エチルベンゼン | |
化学物質審査規制法 | 優先評価化学物質 | (125) | (50) | ||
化学物質管理促進法 | 第1種指定化学物質 | ≧1% | (80) | (53) | |
労働安全衛生法 | 危険物引火性の物 | 該当 | 該当 | ||
名称等表示/通知物質 | (136)表示≧0.3%、通知≧0.1% | (70) 表示/通知≧0.1% | |||
健康障害防止指針 | >1% | – | 該当 | ||
特定化学物質障害予防規則(特化則) | 特定化学物質第2類 | >1% | – | 特別有機溶剤 特別管理物質 |
|
有機溶剤中毒予防規則(有機則) | 第2種有機溶剤 | >5% | 該当 | (特別有機溶剤) | |
作業環境評価基準 | 管理濃度 | 50ppm | 20ppm | ||
労働基準法 | 疾病化学物質 | 該当* | – | ||
女性労働基準規則 | 就業制限対象物質
管理濃度 |
(22)
50ppm |
(3)
20ppm |
||
作業環境許容濃度 | 日本産業衛生学会 | 50ppm
(217mg/m3) |
20ppm
(87mg/m3)(皮膚) |
||
ACGIH TLV | TWA 20ppm | TWA 20ppm | |||
OSHA PEL | TWA 100ppm | TWA 100ppm | |||
生物学的許容値 | 日本産業衛生学会 | 尿中総メチル馬尿酸(o-,m-,p-3異性体の総和)*2:800mg/L
(週後半の作業終了時) |
尿中「マンデル酸+フェニルグリオキシル酸」*2:200mg/L・Cr*3 (週後半の作業終了時)
尿中「エチルベンゼン」15µg/L(作業終了時) |
||
ACGIH(BEI) | 尿中メチル馬尿酸: 1.5g/g-Cr*3, 2g/L(作業終了時)
尿中総メチル馬尿酸*2: 800mg/L (週後半の作業終了時) 血中キシレン: 1.5mg/L (作業終了時) |
尿中「マンデル酸+フェニルグリオキシル酸」: 0.15g/g-Cr*3, *5
(週末の作業終了時) |
|||
毒物劇物取締法 | 劇物 | (工業用原体)(22の4) | – | ||
消防法 | 危険物 | 第4類引火性液体、第二石油類(非水溶性液体)
指定数量1000L |
第4類引火性液体、第一石油類*4(非水溶性液体)
指定数量200L*4 |
||
国連危険物輸送勧告 | 国連分類 | 3 | 3 | ||
国連番号 | 1307 | 1175 | |||
品名 | キシレン
Xylenes |
エチルベンゼン
Ethylbenzene |
|||
容器等級 | Ⅲ | Ⅱ | |||
海洋汚染物質 | 該当 | 該当 | |||
海洋汚染防止法 | 有害液体物質
係数 |
Y類(130)
10 |
Y類(92)
25 |
||
引火性物質 | (7) | (5) | |||
大気汚染防止法 | 揮発性有機化合物(VOC) | 排気 | 該当 | 該当 | |
有害大気汚染物質(248物質) | 排気 | (43) | (24) | ||
悪臭防止法 | 特定悪臭物質 | (18) | – | ||
(シックハウス)
厚生労働省 |
室内濃度指針値 | 200μg/m³
(0.05ppm) |
3800μg/m³
(0.88ppm)- |
||
環境基本法 水質 | 要監視項目(人健康) 公共用水域、
地下水 |
≦0.4mg/L ≦0.4mg/L |
– – |
||
水質汚濁防止法 | 指定物質 | (28) | – |
*:症状/障害:頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状又は中枢神経系抑制
*2: マンデル酸:Mandelic acid: C6H5CH(OH)COOH)、CAS No. 90-64-2
フェニルグリオキシル酸: Phenylglycoxylic acid: C6H5COCOOH)、CAS No. 611-73-4
*3: 尿中のクレアチニン濃度に対する比で「クレアチニン補正」という。水分摂取量や発汗などにより尿量は変動し、これに伴い尿中の濃度も変動する。クレアチニン(Creatinine, Cr, C4H7N3O)は筋肉内でエネルギー貯蔵の役割をするアミノ酸の1種のクレアチン(Creatine, C4H9N3O2)の代謝物である。一日ほぼ一定量(約1g/日:筋肉量に関係し、性差、個人差等はある)産生し、全量尿中に排泄される。尿中の濃度をクレアチニン濃度との比で求めることで尿量による誤差を補正できる。
*4: 日本芳香族工業会モデルSDSでは引火点23℃とし、第2石油類(非水溶性液体)としている。(この場合指定数量は1000L、危険等級はⅢ)
*5: Nonspecific(非特異的で他の化学物質によっても観察される)
6.曝露などの可能性と対策
沸点が136℃~144℃で、常温では液体だが飽和蒸気圧濃度は7,000~9,000ppmになる。蒸気は空気の3.7倍くらい重いので漏出したときも蒸気は地表近くを拡散していく。このため漏出に気づきにくく、離れたところでも引火するおそれがある。室内や閉鎖された場所では滞留し引火する他、作業者が吸入するおそれがある。皮膚からの吸収もある。流動/撹拌で静電気が発生することがある。
曝露防止
局所排気/換気:蒸気は空気より重いので、空気の流れを考慮して設置する必要がある。漏出した場合や、換気が悪い場合はガスマスクを使う。有機ガス用の吸収缶を用いた簡易マスクの場合は吸収できる量に限界(破瓜時間)があるので注意が必要で、局所排気などをしたうえでの補助的な物と考えたほうがよい。
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