第18回 クレゾール
誌面掲載:2019年1月号 情報更新:2023年9月
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1.名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表1)
1.1 化学物質名/ 別名
クレゾール(Cresol)はIUPAC で認められた名称であるが、系統的な名称ではメチルフェノール(Methylphenol)である。フェノール(C6H5OH)はベンゼン(C6H6)の1 個の水素がヒドロキシ基(-OH)に置き換わったもので、ベンゼンの残った水素の1 個がメチル基(-CH3)に置き換わったものがクレゾールである。ベンゼンにメチル基が結合している物質はトルエンなのでヒドロキシトルエンと呼ぶこともできるが、メチル基よりヒドロキシ基(フェノール)の方が優先される。ヒドロキシ基とメチル基の相対的な位置の違いで3 種類の異性体がある。キシレンと同様隣接している場合、オルソ(ortho、オルトということもある)、一つ離れてメタ(meta)、2 つ離れてパラ(para)という接頭語が付く。頭文字でo-, m-, p-で表すこともある。化学式はC7H8O で化学構造がわかるように書くとCH3C6H4OH である。クレゾールはコールタール(石炭からコークスを製造するときの副産物で、黒い粘稠な液体)を蒸留・精製して得られる。石油や木材を蒸し焼きにして得られる木タールからも得られる。蒸留精製物はクレゾールが主成分であるがフェノールやキシレノール(Xylenol)* などの類似物質を含む。フェノールが石炭酸と呼ばれることがあるようにクレゾール酸(Cresylic acid)と呼ばれることもある。現在はトルエンから合成されることが多い。異性体等を含む混合物のままで使用される場合と個別物質に生成されて使われる場合がある。
*: フェノールにメチル基が2 個結合した物質でジメチルフェノールともいう。メチル基2 個とヒドロキシ基の相対的な位置関係で6 種類の異性体がある。化学式は(CH3)2 C6H43OH
図表1 クレゾールの特定
名称 | クレゾール
Cresol |
o-クレゾール
o-Cresol |
m-クレゾール
m-Cresol |
p-クレゾール
p-Cresol |
IUPAC名 | メチルフェノール
Methylphenol |
2-メチルフェノール
2-Methylphenol |
3-メチルフェノール
3-Methylphenol |
4-メチルフェノール
4-Methylphenol |
別名 | ヒドロキシトルエン
Hydroxytoluene クレゾール酸 Cresylic acid |
オルソクレゾール
ortho-Cresol 2-ヒドロキシトルエン 2-Hydroxytoluene o-メチルフェノール o-Methylphenol |
メタクレゾール
meta-Cresol 3-ヒドロキシトルエン 3-Hydroxytoluene m-メチルフェノール m-Methylphenol |
パラクレゾール
para-Cresol 4- ヒドロキシトルエン 4- Hydroxytoluene p- メチルフェノール p- Methylphenol |
化学式 | C7H8O又はCH3C6H4OH | |||
CAS No. | 1319-77-3 | 95-48-7 | 108-39-4 | 106-44-5 |
化審法(安衛法) | 3-499, 4-57 | |||
EC No. | 215-293-2 | 202-423-8 | 203-577-9 | 203-398-6 |
REACH | 01-2119565142-45-xxxx | 01-2119449552-37-xxxx | 01-2119448335-38-xxxx | 01-2119448336-36-xxxx |
*: xxxx は登録者番号
1.2 CAS No.、化審法(安衛法)官報公示整理番号、そのほかの番号
CAS No. やEC No. は異性体混合物での番号とo-, m-,p- のそれぞれにも番号がある。化審法官報公示整理番号3-499 は「クレゾール」という名称で登録されており、異性体の区別はない。また4-57 で「ポリ(1~3)アルキル(C=1~3)ポリ(1~ 3)ヒドロキシポリ(1~5)フェニル」という名称で、より広い物質を含みクレゾールも含まれる。3-499 は化審法の分類で第3 類(炭素による環が1 個の低分子化合物)に属し、4-57 は第4 類(炭素による環が複数ある低分子化合物)に属する物質と異なっている。クレゾールはベンゼン環が1 個で第3 類に属するが、「ポリ(1~5)フェニル」は環が1 個のものも含むが5 個までの物質も含むことを示しており、第4 類に分類されている。
2.特徴的な物理化学的性質/ 人や環境への影響(有害性)
2.1 物理化学的性質(図表2、3)
クレゾール混合物とm- クレゾールは常温では無色透明な液体で、o- クレゾール、p- クレゾールは無色又は白色の固体である。空気や光により黄色から褐色に着色してくる。病院などで消毒液としてよく使われたことから、消毒臭として知られた特有の強い臭いがある。フェノールと似ていてフェノール臭とも呼ばれる。室温でm- クレゾールは液体、o-, p- クレゾールは固体(結晶)であるが、融点が室温に近く、気温の変化で固体になったり液体になったりする。クレゾールは可燃性で、引火点が81 ~ 86 ℃である。GHS の分類区分で、クレゾール(混合物)とm- クレゾールは引火性液体の区分4 である。o- クレゾールとp- クレゾールは室温で固体であるが引火点付近では液体で、引火点がある。GHS の定義では液体か固体かの判断は20℃での状態で判断するため、o- クレゾールやp- クレゾールは「引火性液体」ではない。固体の場合は可燃性固体という分類があるが、その分類の判定方法は液体とは違う。NITE の分類ではデータがなく分類できないとしている。水に少しだけ溶ける。水溶液は弱い酸性を示す。アルカリ性の水には溶解する。有機溶剤には溶ける。GHS ではデータが不十分で分類できていないが金属を腐食する。n- オクタノール/ 水分配係数(log Pow)は2 以下で生物濃縮性はほとんどない。(化審法では≧3.5、GHS では≧4 で生物濃縮性有の可能性があると判定される。)
図表2 クレゾールの主な物理化学的性質(ICSC による)
物理化学的性質 | o-クレゾール | m-クレゾール | p-クレゾール |
融点(℃) | 31 | 11-12 | 35 |
沸点(℃) | 191 | 202 | 202 |
引火点(℃) | 81(c.c.) | 86(c.c.) | 86(c.c.) |
発火点(℃) | 555 | 575 | 555 |
爆発限界(vol %) | 1.3-? | 1.0-? | 1.0-? |
蒸気密度(空気=1) | 3.7 | 3.7 | 3.7 |
密度(g/cm3)/ 比重(水=1) | 1.05 | 1.03 | 1.02 |
水への溶解度(g/100 ml) | 2.5 | 2.4 | 1.9 |
n- オクタノール/ 水分配係数(log Pow) | 1.95 | 1.96 | 1.94 |
図表3 クレゾールのGHS分類(NITE による)
GHS分類 | クレゾール | o-クレゾール | m-クレゾール | p-クレゾール |
物理化学的危険性 | ||||
引火性液体 | 4 | 対象外 | 4 | 対象外 |
可燃性固体 | 対象外 | – | 対象外 | – |
自然発火性液体 | 区分外 | 対象外 | 区分外 | 対象外 |
自然発火性固体 | 対象外 | 区分外 | 対象外 | 区分外 |
金属腐食性 | – | – | – | – |
健康有害性 | ||||
急性毒性(経口) | 4 | 3 | 3 | 3 |
急性毒性(経皮) | 3 | 3 | 3 | 3 |
急性毒性(吸入: 粉塵) | – | – | – | – |
皮膚腐食/ 刺激性 | 1 | 1 | 1 | 1 |
眼損傷/ 刺激性 | 1 | 1 | 1 | 1 |
皮膚感作性 | – | – | – | – |
生殖細胞変異原性 | – | – | – | – |
発がん性 | 2 | 2 | 2 | 2 |
生殖毒性 | – | – | – | – |
特定標的臓器(単回) | 1(中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓)、3(麻酔作用) | 1(中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓)、3(麻酔作用) | 1(中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓) | 1(中枢神経系、呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓) |
特定標的臓器(反復) | 1(中枢神経系、心血管系、血液系、呼吸器、肝臓、腎臓) | 1(中枢神経系、心血管系、血液系、呼吸器、肝臓、腎臓) | 1(中枢神経系、心血管系、腎臓)
2(呼吸器、血液系、肝臓) |
1(中枢神経系、心血管系、腎臓)
2(呼吸器、血液系、肝臓) |
誤えん有害性 | – | – | – | – |
環境有害性 | ||||
水生環境有害性(短期/急性) | 2 | 2 | 2 | 2 |
水生環境有害性(長期/慢性) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 3 |
2.2 有害性(図表3)
クレゾールはフェノールと同様、蛋白質を侵し、酵素を不活性化する。皮膚浸透性の物質である。防腐剤、消毒剤、殺虫剤としても使われる。有害性はフェノール部分に因るので、どの異性体も同じような有害性を示す。致死量で見る急性毒性であれば、吸入によるデータは不十分で区分できていないが、経口、経皮では3 異性体とも区分3 である。事故等の情報から、飲み込んだ場合は中枢神経系、血液、心臓、肝臓、腎臓等に影響を及ぼす。皮膚に付着すると強度の刺激性及び腐食(不可逆的な組織破壊)性を示す。眼に入った場合も同様、影響が大きく回復しない影響を及ぼすこともある。呼吸器のアレルギー性はデータがない。皮膚アレルギー性は見られないという動物試験データがあるが、試験の詳細が不明で「ない」とは言い切れない。遺伝子に対する影響は陰性のデータが多いが陽性のデータもあり、人の遺伝子に影響するかどうかは判断できていない。発がん性についてはIARC や日本産業衛生学会では評価していない。EPA(Environmental Protection Agency: 米国環境保護庁)はo-, m-, p- のそれぞれのクレゾールについてグループC(ヒト発がん性の可能性有)に分類していることから、NITE はGHS区分2(ヒトに発がん性の疑いあり)に分類している。生殖毒性に関してNITEは2006 年の分類では動物試験データなどから区分2としていたが、その情報には曖昧な点があることから、2014 年に「分類できない」に改訂されている。細胞膜やタンパクに影響するため、水生生物に対して急性毒性がある(GHS区分2)。しかし、種々の植物中にも存在し、木材等の燃焼時にも生成するなど、昔から自然界に存在し、生分解性がある。生物濃縮性も小さく、長期的に影響を及ぼすことはないと考えられる(GHS区分外)。
3.主な用途
エポキシ樹脂、フェノール樹脂の原料、農薬や酸化防止剤、可塑剤などの原料として使われる。o- 及びp-クレゾールは潤滑油、ポリマーの原料、m- クレゾールは爆薬の原料に用いられる。クレゾールは混合物のままで防腐剤や消毒剤として使われる。水には溶けにくいので石鹸で可溶化して「クレゾール石鹸液」として手洗い用の消毒液として以前はよく使われていた。しかし、臭いが強いことと原液の皮膚や眼への刺激性が強すぎて、一般にはあまり使われなくなった。ただ、消毒力の持続性があり、泥などの汚れが残っている場合でも殺菌効果が弱くなりにくいので、自然災害後の感染症の予防に屋外の消毒や、家畜舎の消毒等には使われる。一般の手洗い用には塩化ベンザルコニウム(逆性石鹸:4 級アンモニウム塩)液やエタノールが用いられていることが多い。溶解力が強く溶剤として使われることもある。
4.事故などの例
・ クレゾールが消毒薬として身近に使われていたので一般の人の事故例がある。自殺目的で飲み込んだ例もある。NITE の有害性評価書/ 初期リスク評価書No.94(2007)、環境省の環境リスク初期評価第5 巻(2006)などに、クレゾールを含む消毒薬を飲み込んで死亡したり、皮膚への曝露で化学火傷のほか中枢神経系や血液系、肝臓、腎臓などに影響したりした例が紹介されている。
(https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/pdf/CI_02_001/hazard/hyokasyo/No-94.pdf)
(http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/index.html)
・ 工場内の休止設備撤去作業中、設備内に残存していたクレゾールを含む化学物質が噴出した。作業者3 名が負傷(火傷、腎障害)し、緊急入院した。
(https://www.niph.go.jp/h-crisis/archives/26603/)
5.主な法規制(図表4)
クレゾールの有害性は3 種類の異性体の違いが少なく、混合物のままで取扱われることもあってほとんどの法規制は異性体の区別をしていない。化学物質審査規制(化審)法で優先評価化学物質に指定されているので、年間1 t 以上製造/ 輸入した場合翌年度経済産業大臣にその数量などの届出が必要である。化学物質管理促進法の第1 種指定化学物質なので、年間1 t 以上の取扱いがあればPRTR の報告(環境中への放出量など)しなければならない。また、クレゾールを1 % 以上含む製品を他者に提供する際はSDS を提供する必要である。労働安全衛生法でもクレゾール及びこれを0.1 %以上含む混合物を提供する場合にSDS の提供が要請されている。また1 % 以上では容器包装には名称や有害性、取扱上の注意、GHSの絵表示などを表示しなければならない。皮膚や眼、気道に対する腐食性があるので労働基準法で「疾病化学物質」に指定されている。クレゾールを取扱っていて皮膚や眼、気道に障害を生じた場合、療養、休業などに対する補償を行わなければならない。労働安全衛生法でも「腐食性液体」とされている。有機溶剤中毒予防規則(有機則)では第2 種有機溶剤に指定されている。取扱う場合は作業主任者をおき、蒸気の発散源を密封したり、局所排気又はプッシュプル型の換気装置を設置したりして曝露防止を図り、作業環境の測定、健康診断を実施しなければならない。混合物で5 % を超えるとこの規制の対象となる。日本産業衛生学会は作業環境許容濃度を5 ppm(重さに換算すると1 m3 あたり22 mg)に設定しており、労働安全衛生法の作業環境評価基準の管理濃度を5 ppm としている。作業環境測定を行って管理濃度を超えるようだと設備の改善などが必要になる。毒物劇物取締法の劇物である。クレゾールそのものだけでなく5 % を超えて含む混合物も劇物である。製造(輸入)、販売(授与)、販売目的での貯蔵や陳列には都道府県等の登録が必要である。取扱う場合でも漏出防止、盗難や紛失を防止のための措置、保管場所や容器には「医薬用外劇物」の表示が必要である。5 % 以下に希釈して使う場合は、劇物には該当しない。医薬品(クレゾール石鹸液は第2 類医薬品の殺菌消毒剤)や医薬部外品として使われる場合は薬機法(医薬品医療機器等法; 旧薬事法)に従う。化粧品への配合は制限つきで認められている。殺虫剤などの農薬として登録されていたこともあったが、現在は失効しており、農薬としては使用できない。
消防法では液体のクレゾールの場合は、引火点が70 ℃~ 200 ℃の範囲内なので危険物第4 類引火性液体の第三石油類の非水溶性液体である。消防法でも液体か固体の区別は20 ℃での状態で判断する。固体の場合は危険物には該当しない。GHSでは「分類できない」だったが、消防法では引火点が40 ℃以上100 ℃未満に該当し、指定可燃物の可燃性固体類である。
輸送に関して国連危険物輸送勧告で国連分類クラス6 の区分6.1(毒物)で副次危険性としてクラス8(腐食性物質)に分類されている。国連番号は2022(品名はクレゾール酸)、2076(品名: クレゾール、液体)、3455(品名: クレゾール、固体)の3 種類ある。2076の「クレゾール、液体」にはクレゾール混合物やm- クレゾールが該当し、3455 の「クレゾール、固体」にはo- クレゾール、p- クレゾールが該当する。容器等級はいずれもⅡである。具体的な取扱いは船舶安全法、港則法、航空法等に従う。国連危険物輸送勧告では「海洋汚染物質」には該当しない。海洋汚染防止法では有害液体物質のY類物質である。室温で固体であっても溶液など液体状でばら積み(船倉に直接積み込む)輸送される場合は該当する。成分係数は10 なのでほかに有害液体物質を含まない混合物の場合でも2.5 % 以上でY類と同等の物質ということになる。また環境省から「キシレノール、クレゾール及びフェノールの混合物」もY類同等の物質として挙げられている。こちらも成分係数は10 である。
水質に関する環境基準はクレゾールとしては定められていないが、水生生物への影響のおそれから要調査項目に挙げられている。要監視項目にフェノールが挙げられており、指針値が定められている。水質汚濁防止法の生活環境汚染項目に「フェノール類」として排水基準5 mg/L がある。このフェノール類はJIS K0102の28.1(4- アミノアンチピリン吸光法)によって測定されるものということで、この方法でクレゾールも検出されるのでクレゾールも対象になる。ただ、検出感度はフェノールより低く、異性体によって違う。下水道法の排出基準も同じである。川や湖、海などに多量に排出する事故が起きた際に人や生活環境に被害を及ぼすおそれがあるとして「フェノール類及びその塩」が指定物質に挙げられており、応急措置、事故状況の届け出が義務付けられている。このフェノール類にもクレゾールは含まれている。水道法の水質基準に「フェノール類」という項目があり、フェノール換算で0.005 mg/L である。しかし、水道法での「フェノール類」は、「フェノール及び塩素化したフェノールの総称」と定義され、測定法もGC-MS法で個別物質別に測定される。これは水道水の製造時の塩素処理時の副生物ということでWHO(世界保健機構)の飲料水ガイドライン値がある。クレゾールはこれには該当しない。大気中に排出される場合は大気汚染防止法の揮発性有機化合物(VOC)の規制対象である。クレゾールを原料成分としたフェノール樹脂やエポキシ樹脂等は食品の包装・容器に使われることがあるので、食品衛生法の容器包装ポジティブリストで使用可能な範囲が示されている。
図表4 クレゾールに関係する法規制
法律名 | 法区分 | 条件など | ||
化学物質審査規制法 | 優先評価化学物質(156) | – | ||
化学物質管理促進法 | 第1種指定化学物質(86)*1 | ≧ 1 % | ||
労働安全衛生法 | 第2種有機溶剤等(12) | > 5 % | ||
腐食性液体 | ||||
名称等表示/通知物質(141)
|
表示≧ 1 %
通知≧ 0.1 % |
|||
作業環境評価基準(管理濃度) | 5 ppm | |||
労働基準法 | 疾病化学物質 | 皮膚障害、前眼部障害又は気道障害 | ||
作業環境許容濃度 | 日本産業衛生学会 | 5ppm(22 mg/m3) | ||
ACGIH TLV | 20 mg/m3 | |||
毒物劇物取締法 | 劇物(15) | 原体 | ||
劇物(25) | 含製剤(> 5%) | |||
消防法 | 第4類引火性液体、
第三石油類非水溶性液体 |
クレゾール混合物、m-クレゾール | ||
指定可燃物、可燃性固体類 | o-クレゾール、p-クレゾール | |||
国連危険物輸送勧告 | ||||
国連分類 | 6.1, 8 | |||
国連番号、品名 | 2022 | クレゾール酸 | ||
2076 | クレゾール、液体 | クレゾール混合物、m-クレゾール | ||
3455 | クレゾール、固体 | o-クレゾール、p-クレゾール | ||
容器等級 | Ⅱ | |||
大気汚染防止法 | 揮発性有機化合物(VOC) | (排気) | ||
海洋汚染防止法 | 有害液体物質(Y類)成分係数:10 | クレゾール(137) | ||
有害液体物質(Y類同等)成分係数:10 | (キシレノール、クレゾール及びフェノールの混合物)(129) | |||
環境基本法
水質環境基準 |
要調査項目 (水生生物への影響) |
クレゾール類(47) |
||
水質汚濁防止法
生活環境汚染項目 |
指定物質 | フェノール類及びその塩類
(クレゾールも含まれる) |
||
排水基準:5 mg/L | フェノール類
(フェノール/ クレゾール) JIS K0102 の28.1(4- アミノアンチピリン吸光法)による |
|||
下水道法 | (28)水質基準: ≦ 5 mg/L | 同上 | ||
水道法 | (45)有害物質、
水質基準: ≦ 0.005 mg/L |
フェノール類
(フェノール/ 塩素化フェノール) GC-MS法による個別検出 |
||
食品衛生法
容器包装ポジティブリスト |
基ポリマー(プラスチック)
(コーティング)
(微量モノマー) 添加剤 |
17(エポキシポリマーの架橋体)の共重合成分(o-クレゾール)、架橋剤(クレゾール) 3(エポキシポリマー)及び5(フェノール・ホルムアルデヒド共重合体)の共重合成分 6(フェノール類):o-, m-, p-クレゾール 228(イソブテン…p-クレゾール共重合体)*2 |
( )内の数値は政令番号
*1: 2023年度からは86は管理番号(政令番号は110)
*2: イソブテン・ジシクロペンタジエン・4―メチルフェノールを主な構成成分とする重合体
使用制限:消費係数<0.1、塩化ビニル、塩化ビニリデン<50%の合成樹脂で
ガラス転移温度≧150℃(エンジニアリングプラスチック)(合成樹脂区分1): 0.6%
吸水率≦0.1%(ポリオレフィン等)(合成樹脂区分2): 1%、
吸水率>0.1%(ポリエステル、ポリアミド等)(合成樹脂区分3): 1%、
合成樹脂区分1,3では、84mg/m2以下で塗布可
6.曝露などの可能性と対策
6.1 曝露可能性
引火点はあるが、かなり高いので引火によるリスクはそれほど高くはない。クレゾール石鹸液などで使用する場合は、一般にも曝露することがある。主な曝露経路は蒸気やミストなどの吸入、経口(誤飲など)、皮膚からの吸収である。皮膚から吸収されやすい物質であるが、特に皮膚が損傷していると吸収されやすい。微量には食品やタバコの煙にも含まれる。大気や飲料水などからも極微量検出されるが現状ではこれらによって人の健康に影響することは小さいと考えられる。
6.2 曝露防止
蒸気やミスト、飛沫の発生を抑え、漏洩しないよう取扱う。できるだけ設備を密閉化し、できない場合は局所排気やプッシュプル型換気を行い、作業環境許容濃度を下回るよう管理する。それでも作業者が曝露するおそれのある作業では防毒マスクや保護眼鏡、保護手袋等の保護具を使用する。防毒マスクの吸収缶は有機ガス用を使用する。皮膚腐食性があり皮膚から吸収されやすいので、保護手袋、保護衣を着用する。保護具は不浸透性を確認して使用する。眼に入った場合の影響も大きいので、保護眼鏡は飛沫などが入らないようゴーグル型か保護面を使用する。
6.3 廃棄処理
毒物劇物取締法で廃棄方法が定められている。廃棄は燃焼法と活性汚泥法がある。燃焼法は[1]木粉(おが屑)等に吸収して焼却炉で焼却するか、[2]可燃性溶剤に溶解して焼却炉の火室に噴霧して焼却する。完全燃焼すると二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になる。生分解性もあるので、100 ppm(100 mg/L)以下くらいの希薄水溶液は活性汚泥による分解も可能である。公共用下水への排出する場合はフェノール類として5 mg/L以下でなければならない。環境中に排出してはいけない。焼却炉や排水処理設備がなければ、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託処理する。その際、内容物について十分知らせる必要がある。
免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。