第29回 スチレン

誌面掲載:2020年1月号 情報更新:2024年3月

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1. 名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表 1)

1.1 化学物質名/ 別名

スチレン(Styrene)はIUPAC で認められた慣用名である。スチレンは炭素と水素からできた物質(化学式はC8H8)で石油から製造されているが、天然にも存在する物質である。ドイツで、Styrax (スティラクス;和名「蘇合香」)という天然の樹脂の成分として精製された物質にスチロール(Styrol)(その英語名がスチレン)と名付けたことに由来する。IUPAC の体系的な名称としては、ベンゼン(Benzene:C6H6)の1 個の水素がエテン(Ethene:CH2=CH2)に置き換わったものという意味でエテニルベンゼン(Ethenylbenzene:C6H5CH=CH2)となる。CH2=CH-にはビニル(Vinyl)という接頭辞もあり、ビニルベンゼン(Vinylbenzene)ともいう。ベンゼンの接頭辞はフェニル(Phenyl:C6H5-)といい、エテンは一般にはエチレン(Ethylene)と呼ばれるので、フェニルエチレン(Phenylethylene)と呼ぶこともできる。スチレンはプラスチックのポリスチレン(Polystyrene)の原料(モノマー:Monomer)なので、ポリマー(Polymer)であるポリスチレンと区別するため「スチレンモノマー」(Styrene monomer)と呼ばれることもある。ポリスチレンに気泡を含ませたものを「発泡スチロール」(Foamed styrol)と呼ぶのは、これがドイツで最初に作られたことによる。Cinnamene(シンナメン)という名称は、スチレンが香辛料のシナモン(桂皮:Cinnamon)から得られるcinnamic acid(桂皮酸:C6H5CH=CHCOOH)から得られたことによる名称である。

 

1.2 CAS No.、化学物質審査規制法(化審法)、労働安全衛生法(安衛法)官報公示整理番号、その他の番号

CAS No. は 100-42-5 である。化審法官報公示整理番号は3-4 で安衛法は既存物質として化審法番号で公表されている。分類番号3 は有機炭素環低分子化合物であることを示している。

EU のEC 番号は202-851-5 である。REACH 登録番号は01-2119457861-32-xxxx(xxxx は登録者番号)である。

 

図表1 スチレンの特定

名称 スチレン(Styrene)
IUPAC体系的名称 エテニルベンゼン(Ethenylbenzene)
その他の名称 ビニルベンゼン(Vinylbenzene)

フェニルエチレン(Phenylethylene)

スチレンモノマー(Styrene monomer) スチロール(Styrol)

シンナメン(Cinnamene)

化学式 C8H8

C6H5CH=CH2

CAS No. 100-42-5
化学物質審査規制法(化審法) 3-4
EC No. 202-851-5
REACH 01-2119457861-32-xxxx
国連番号 2055

 

 


2. 特徴的な物理化学的性質/ 人や環境への影響(有害性)

2.1 物理化学的性質(図表2及び3)

無色~淡黄色で特有の強い臭いがある揮発性液体である。引火性があり、31 ℃以上では蒸気/ 空気混合気体は爆発のおそれがある。燃焼性は灯油に近いが灯油より引火点が低い。蒸気は空気より重い。熱や光、酸化剤、酸素、過酸化物の影響により重合する。このため、通常は4-tert-ブチルカテコール(4-tert-Butylcatechol:CAS No.98-29-3)等の重合禁止剤が添加されている。強酸や強酸化剤とは激しく反応する。

静電気放電による着火や、銅や銅合金と反応するおそれがある。高温では重合して発熱し、その発熱で爆発的に重合することがある。疎水性で水にはほとんど溶けないが、多くの有機溶剤に可溶である。
GHS分類(図表3)の物理化学的性質、自己反応性化学品で、自己反応性に関連する原子団を含んでいるが熱的に安定で爆発性が観測されないということでタイプGに分類されている。スチレンは自己反応性の不飽和結合を含むが、通常安定剤が添加されており、爆発性は観測されないものとして分類されている。国連分類(図表5)も安定剤入りのものはクラス3(引火性液体)という分類だけである。

 

図表2 スチレンの主な物理化学的性質(ICSC による)

融点(℃) -30.6
沸点(℃) 145
引火点(℃) (c.c.) 31
発火点(℃) 490
爆発限界(vol %) 0.9~6.8
比重(水=1.0) 0.91
水への溶解度(g/100ml) 0.03(20℃)
オクタノール/水分配係数(log Pow) 3.0

 

2.2 有害性(図表3)

スチレンは吸入や経口で体内に入った場合、呼吸器や消化管から吸収される。皮膚からの吸収もある。一時的に脂肪組織などに分布するが、様々な代謝物となって尿中に排泄される。ヒトの場合主な尿中代謝物はマンデル酸{Mandelic acid:C6H5CH(OH)COOH, CAS No.90-64-2}とフェニルグリオキシル酸{Phenylglycoxylic acid:C6H5COCOOH)、CAS No. 611-73-4}である。動物により代謝経路は異なる。代謝の初期に生成するスチレンオキシド(Styrene oxide:C6H5C2H3O, CAS No.96-09-3)が、スチレンの毒性に寄与すると考えられている。致死量で見る急性毒性はあまり高くない。皮膚や眼、気道に対し刺激性がある。飲み込んだとき肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがある。曝露により中枢神経系に影響する。吸入した場合は眩暈、嗜眠、頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感、意識喪失を生じ、飲み込んだ場合は吐き気、嘔吐を生じる。長期的には色覚異常や高周波難聴、短期記憶障害などの神経系に影響する。肺障害や慢性気管支炎などの呼吸器のほか血液系や肝臓にも影響する。遺伝子への影響に関する試験(変異原性試験)では陽性の場合と陰性の場合がある。発がん性についても判断にばらつきがある。国際がん研究機関(IARC)は、以前Group 2Bとしていたが2019年2Aにした。日本産業衛生学会は第2 群A、米国国家毒性計画(NTP:National Toxicology Program)はR(Reasonably Anticipated to be Human Carcinogens: ヒトに発がん性があると考えられる)ACGIH もA4(Not Classifiable as a Human Carcinogen: ヒトに対する発がん性物質には分類されない)から2023年にA3 (Confirmed Animal Carcinogen with Unknown Relevance to Humans: 動物実験で発がん性が認められた物質、ヒトとの関連は不明)にしている。EU のCLP(Classification Labelling &Packaging)では発がん性物質に分類していない。NITEの2015年度のGHS分類ではIARC(当時はGroup 2B)や日本産業衛生学会の判断に基づいて区分2 としていたが、2020年度の見直しでIARCの分類がGroup2Aとなったことを受けて区分1Bとした。生殖毒性に関し、ヒトでの情報は曖昧であるが動物試験では仔の発生(死亡~成長異常など)に影響が見られている。以前新築住宅などで眼や鼻、喉の刺激のほか頭痛、眩暈、湿疹など様々な症状が問題となったことがある。これは医学的には単一の疾患ではなく、シックハウス症候群と呼ばれた。建材や家具などから揮散するホルムアルデヒド等の化学物質、燃焼排ガス成分やダニやカビ等による室内の空気汚染が原因とされている。アレルギー反応と考えられているが詳しいことはわかっていない。ホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(これもVOC:Volatile Organic Compounds という)に対しては建築基準法等の規制のほか、厚生労働省から室内濃度指針値が示されている。この原因物質の一つにスチレンも挙げられた。

 

2.3 環境有害性

水生生物に対する急性毒性は非常に強い。水への溶解性は低く、低濃度であれば生分解性がある(14 日間のBOD による分解率で100 %)。オクタノール/ 水分配係数(log Pow)は約3.0 でやや高いが、生物濃縮係数(BCF)は約41 と推定され、蓄積性は低いと考えられる。水生生物に対する慢性毒性は高い。

 

図表3 スチレンのGHS分類(NITE による)

GHS分類
物理化学的危険性
引火性液体 3
自己反応性化学品 タイプG
自然発火性液体 区分外
金属腐食性
健康有害性
急性毒性(経口) 区分外
急性毒性(経皮)
急性毒性(吸入:蒸気) 4
皮膚腐食性/刺激性 2
眼損傷性/眼刺激性 2A
皮膚感作性
生殖細胞変異原性 2
発がん性 1B
生殖毒性 1B
特定標的臓器毒性(単回曝露) 1(中枢神経系)

3(気道刺激性、麻酔作用)

特定標的臓器毒性(反復曝露) 1(中枢神経系、末梢神経系、聴覚器、視覚器、呼吸器、肝臓)
誤えん有害性 1
環境有害性
水生環境有害性 短期(急性) 1
水生環境有害性 長期(慢性) 2

 

図表4 スチレンの発がん性評価

分類機関 評価
IARC Group 2A
日本産業衛生学会 第2群A
ACGIH A3
NTP RAHC
EU(CLP: GHS)
EPA

IARC: Group 2A: Probably carcinogenic to humans (ヒトに対しておそらく発がん性を示す)

日本産業衛生学会: 第2群: ヒトに対して発がん性があると判断できる物質(Aは動物実験からの証拠が十分)

ACGIH: A3: Confirmed Animal Carcinogen with Unknown Relevance to Humans
(動物実験で発がん性が認められた物質、ヒトとの関連は不明)

NTP: RAHC: Reasonably Anticipated to be Human Carcinogens
(ヒト発がん性があると合理的に予測される物質)

 


3. 主な用途

スチレンはポリスチレン樹脂のほかABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂、不飽和ポリエステル、イオン交換樹脂、合成樹脂塗料などの合成樹脂や合成ゴム(SBR: スチレン・ブタジエンゴム)等の原料として使用される。ポリスチレン樹脂は食品容器や家電製品の筐体に使われるほか発泡スチロールとして断熱材や梱包緩衝材、断熱性食品容器などとして使われている。ABS樹脂は汎用性の高いプラスチック素材で家電製品やOA機器、自動車部品、建材(内装用)などに広く使われている。AS 樹脂は電化製品、食品保存容器等に使われている。不飽和ポリエステルは熱硬化性樹脂であるが、スチレン等と共重合させて硬化させる。ガラス繊維強化プラスチック(FRP)の原料として浴室ユニット、風力発電ブレード、レジャーボート、自動車部材等に使われている。合成ゴムのSBRは自動車用タイヤや防振ゴムなどに使われている。

 


4. これまでに起きた事件/ 事故等の例

・ 発泡ポリスチレン製造装置で停電のため重合反応器の冷却水と攪拌機が停止した。重合禁止剤の投入ができず、重合反応が暴走を始め、反応機内圧力が上昇した。圧力を開放したところスチレン重合物が噴出し、着火して火災となった。着火源は静電気と推定される。

(http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200088.html)

・ 未反応スチレンを回収する蒸留塔で、回収スチレンが重合を起こして目詰まりし塔内の圧力、温度が上昇した。高温の留出液が廃液タンクに入り、そこでも重合反応が起こってタンクの温度、圧力が上昇して廃液が噴出して着火し、火災となった。静電気火花による引火と推定される。

(http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200008.html)

・ 人工大理石浴槽製造材料の不飽和ポリエステル材料及びスチレンの計量タンク内で保温・循環中にスイッチの電気火花で引火爆発し、工場1 棟が全焼した。

(https://www.nies.go.jp/kisplus/dtl/chem/YOT00208 の「事故」のページ)

・ 塗装に使用するスチレンモノマーをバケツに入れて、保管場所から塗装箇所までの運搬中、階段で躓いて飛散させた。スチレンが作業者の背中に付着し、接触性皮膚炎を起こした。

(https://www.mhlw.go.jp/bunya/ roudoukijun/anzeneisei10/37.html)

 


5.  主な法規制

化審法優先評価化学物質に指定されている。これは環境を通じてのヒトや生物に対する影響が懸念されているため、政府が毎年現状を把握し、そのリスクを優先的に評価しようとしている物質である。年間1 t 以上製造(輸入)した場合、経産省にその量を届け出なければならない。化学物質管理促進法の第1 種指定化学物質である。取扱量が年間1 t 以上の場合、環境中への排出量や処理委託量(移動量)等の届出(PRTR)義務がある。1 % 以上含む製品を販売又は提供する場合は、その量にかかわらずSDS を提供しなければならない。SDS の提供は労働安全衛生法からも要請されている。名称等表示及び通知すべき有害物に指定されており、0.1 % 以上含有する製品を販売(提供)する際、SDS の提供及び0.3 % 以上含有する場合は容器包装へのラベル表示が必要である。不浸透性の適切な保護具の着用が義務付けられた皮膚障害化学物質に挙げられている(2024年4月より)。また発がん性の懸念から、特定化学物質障害予防規則の特定化学物質第2 類物質、特別有機溶剤等及び特別管理物質に指定されている。1 % 以上含有している場合が対象で、設備の密閉化、局所排気、プッシュプル換気などによる曝露防止、作業主任者の選任、6 か月ごとの作業環境測定、健康診断の実施、労働状況や健康診断の記録の30 年間保存などの義務がある。作業環境評価基準の管理濃度は20 ppm である。日本産業衛生学会の作業環境許容濃度は10 ppm に設定している。ACGIH のTLV-TWAも10 ppm である。STEL も設定していて20 ppm である。なお日本産業衛生学会、ACGIH とも生物学的許容値を設定している。これは労働者の血液や尿中に含まれる当該物質やその代謝物の濃度でその許容値を示したものである。これは労働者個人が摂取した量を反映していると考えられる。日本産業衛生学会では、週後半の作業終了時の採取で、尿中のスチレン代謝物(マンデル酸 + フェニルグリオキシル酸)の濃度で160 mg/g-クレアチニン、尿中のスチレンの濃度で20µg/L としている。ACGIH はBEI(Biological Exposure Indices: 生物学的曝露指標)と呼んでいる。作業終了時の採取で、尿中のマンデル酸 + フェニルグリオキシル酸濃度を400 mg/g-クレアチニンとし、尿中のスチレンで40 μg/L としている。上記のシックハウス対策の一つとして厚生労働省の室内濃度指針値 200 μg/m3(0.05 ppm)が定められている。この濃度は作業環境許容濃度に比べはるかに低い。作業環境許容濃度は成年の工場労働者の1 日8 時間の作業での曝露を想定しており、曝露を避けることも可能である。室内濃度指針値は、ヒトが一生涯にわたって摂取しても有害な影響が出ないと考えられる濃度に設定されている。住宅だけでなくオフィスビル、病院、福祉施設、保育園、学校、車両等比較的長時間人がいる可能性のある全ての施設及び、小児、妊婦、病人、高齢者等も含めた全ての人が対象で、一日中曝露を避けることができない場合もあるということを想定して定められたものである。

消防法の危険物第4 類引火性液体第二石油類非水溶性液体である。指定数量は1,000 L である。労働安全衛生法でも「危険物・引火性物質」に該当する。国連危険物輸送勧告の国連番号は2055 で、国連分類はクラス3(引火性液体)である。輸送品名は「スチレン、安定剤入りのもの」(Styrene monomer, stabilized)で容器等級はⅢである。航空法、船舶安全法や港則法などで規制がある。海洋汚染防止法の有害液体物質Y類物質に挙げられており、船舶から海域に排出してはいけない。大気汚染防止法では、大気中に排出されるとオキシダントの原因になるという揮発性有機化合物(VOC)であり、有害大気汚染物質の可能性がある物質としても挙げられ、大気中への排出削減が求められている。さらに臭いも強いため、悪臭防止法で特定悪臭物質に指定されており、敷地境界濃度で0.4 ~ 2 ppm(周辺環境により異なる。都道府県知事、市及び特別区の長が当該区域の実情に合わせて定めている)としている。水質に関する環境基準等は定められていない。水質汚濁防止法では指定物質に挙げられていて、排出規制はないが、事故により水系に排出された場合の届出義務がある。水道法では水質基準の要検討項目に挙げられ、WHOの飲料水のガイドライン値が0.02 mg/L であることから目標値を0.02 mg/L としている。

スチレンから製造されるポリスチレンは食品の容器としても使われている。食品衛生法の食品容器包装のポジティブリストで、ポリスチレンは基ポリマーの一つである。その他基ポリマーやプラスチックへの添加剤のリストにイオン交換樹脂等スチレンを共重合モノマーや架橋剤として使われたポリマーがある。添加剤のリストにはスチレンも載っている。それぞれに使用条件が定められている。

 

図表5 スチレンに関係する法規制

法律名 法区分
化学物質審査規制法(化審法) 優先評価化学物質 (47)
化学物質管理促進法 第1種指定化学物質 ≧1%(240)*1
労働安全衛生法 危険物・引火性 (4の4)
名称等表示/通知対象物  (323)
表示 ≧0.3%
通知 ≧0.1%
皮膚等障害化学物質 ≧1%(特化則等)
特定化学物質障害予防規則 特定化学物質第2類物質、

特別有機溶剤等

特別管理物質

>1%
作業環境評価基準 管理濃度 20ppm
労働基準法 疾病化学物質 *2
作業環境許容濃度 日本産業衛生学会 10ppm (42.6mg/L) (皮膚)
ACGIH(TLV) TWA: 10ppm

STEL: 20ppm

生物学的許容値 日本産業衛生学会 尿中「マンデル酸+フェニルグリオキシル酸」*3:160mg/g-Cr*4

尿中スチレン: 20µg/L

(週後半の作業終了時)

ACGIH(BEI) 尿中「マンデル酸+フェニルグリオキシル酸」: 400mg/g-Cr*4

尿中スチレン: 40μg/L

(作業終了時)

(シックハウス)室内濃度指針値 厚生労働省 220μg/m3 (0.05ppm)
消防法 危険物第4類 引火性液体 第二石油類 非水溶性液体
国連危険物輸送勧告 国連番号 2055
国連分類 3 (引火性液体)
品名 スチレン、安定剤入りのもの

(Styrene monomer, stabilized)

容器等級
大気汚染防止法 揮発性有機化合物(VOC)
有害大気汚染物質 (111)
悪臭防止法 特定悪臭物質 敷地境界濃度:0.4~2ppm
水質汚濁防止法 指定物質 (27)
水道法 水質基準要検討項目 目標値 0.02mg/L
海洋汚染防止法 危険物 (13)
有害液体物質 Y類(260)
食品衛生法

容器・包装ポジティブリスト*5

 

 

 

 

基ポリマー(プラスチック)

 

 

 

(コーティング)

 

 

 

(微量モノマー)

添加剤

 

54(ポリスチレン)

20(架橋ポリエステル)、21(合成吸着剤・イオン交換ポリマー)、28(熱硬化性ポリウレタン)

1(アクリルポリマー)、8(ポリエステル)、11(ホルムアルデヒド重合体)、15(芳香族化合物重合体)、18(架橋剤)

4(炭化水素化合物)

(892)スチレン

( )内の数値は政令番号

*1: 管理番号(政令番号は1-275)

*2: 頭痛、めまい、嘔吐、皮膚障害、前眼部障害、視覚障害、気道障害、末梢神経障害

*3: マンデル酸:Mandelic acid: C6H5CH(OH)COOH)、CAS No. 90-64-2
フェニルグリオキシル酸: Phenylglycoxylic acid: C6H5COCOOH)、CAS No. 611-73-4
*4: 尿中のクレアチニン濃度に対する比で「クレアチニン補正」という。水分摂取量や発汗などにより尿量は変動し、これに伴い尿中の濃度も変動する。クレアチニン(Creatinine, Cr, C4H7N3O)は筋肉内でエネルギー貯蔵の役割をするアミノ酸の1種のクレアチン(Creatine, C4H9N3O2)の代謝物である。一日ほぼ一定量(約1g/日:筋肉量に関係し、性差、個人差等はある)産生し、全量尿中に排泄される。尿中の濃度をクレアチニン濃度との比で求めることで尿量による誤差を補正できる。クレアチニン補正値(mg/g-Cr) = 実測値(mg/dL)/クレアチニン濃度(mg/dL)

*5: 基ポリマーに「54(ポリスチレン)」がある。リストには材料として「スチレン」を含む樹脂やコーティング樹脂があり、使用可能な食品の種類、使用温度などの条件が定められている。また添加剤のリストにはスチレンの他スチレンを材料に含む樹脂が挙げられ、適用可能な樹脂の種類と使用量の制限が定められている。

 


6. 曝露などの可能性と対策

6.1 事故や曝露の可能性

引火性があり、31 ℃以上では蒸気/ 空気の爆発性混合気体を生じることがある。保管中に酸化されて爆発性の過酸化物を生じていることがある。揮発性で、蒸気には重合禁止剤は含まれていないので貯蔵タンクの排気孔などで重合して排気孔を塞ぐことがある。蒸留するときは原液側では過酸化物が濃縮され、留出液には重合禁止剤が含まれていないと考えられる。

曝露は主に蒸気の吸入によると考えられる。皮膚からの吸収もある。閉鎖系で取扱われるので作業者への曝露は限られている。計量、投入、サンプリングなどの際に蒸気に曝露するおそれがある。スチレンを原料としたプラスチックやゴム等に残留する未反応スチレンは除去され出荷時の濃度管理がされているので、これらの製品の取扱いで曝露するおそれは小さいと考えられる。一般消費者向けの製品ではシックハウスに関する室内濃度管理指針値に基づいて管理されているので日常環境で曝露のリスクは低い。

6.2 事故や曝露の防止

密閉された設備、機器を使用する。密閉できない場合は局所排気/ 換気下で取扱う。火気厳禁。防爆型の電気設備を使用し、容器や機器・設備には静電気対策を行う。蒸留精製の前や出荷前に安定剤が必要量入っていることを確認する。換気が不十分な場合、有機ガス用の吸収缶を用いた防毒マスクなどを使用する。大量に漏洩した場合など大量に吸入するおそれがある場合は空気呼吸器などを使用する。プラスチックやゴムを侵すことがあるので、保護具は不浸透性を確認して使用する。輸送時には運転手に「緊急措置カード(イエローカード)」を携行させる。貯蔵や取扱い場所の近くに、洗身シャワー、洗眼設備を設ける。

6.3 廃棄処理

許可を受けた産業廃棄物処理業者に危険性、有害性を充分告知の上処理を委託する。焼却する場合はアフターバーナー及びスクラバー付き焼却炉を用いて焼却する。水への溶解度が低いので高濃度で水に含まれるということはないが、低濃度で水に含まれている場合は活性汚泥処理が可能である。


免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。