第15回 ジクロロメタン
誌面掲載:2018年10月号 情報更新:2023年8月
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1.名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表1)
1.1 化学物質名/ 別名
IUPAC名はジクロロメタン(Dichloromethane)で化学式はCH2Cl2 である。炭化水素のメタン(Methane, CASNo. 74-82-8、 化学式はCH4)の水素(H)2 個が塩素(Cl)2 個に置き換わったものであることを示している。ジクロルメタンともいう。ほかに「塩化メチレン」(Methylene chloride)という名称もよく使われる。メチレン(Methylene; -CH2–)という分子は安定には存在しないが炭素数2 個のエチレン(Ethylene; C2H4)、3 個のプロピレン(Propylene; C3H6)等のオレフィン(Olefin)又はアルケン(Alkene)と呼ばれる一連の物質(化学式はCnH2n)の最小単位として炭素1 個の場合の名称である。これに塩素が2 個付加した形になっている。二塩化メチレンともいうが、塩素2 個以外の「塩化メチレン」という物質は存在しないので「二」をいれなくても物質が特定できる。有機塩素化物、脂肪族ハロゲン化炭化水素の一つである。炭素1 個に塩素が3 個の場合はトリクロロメタン(Trichloromethane、化学式はCHCl3)、4 個とも塩素に置き換わった場合はテトラクロロメタン(Tetrachloromethane、化学式はCCl4)があるが、一般にはそれぞれクロロホルム(Chloroform)、四塩化炭素(Carbon tetrachloride)と呼ばれている。水道水に含まれる有害物質として知られるトリハロメタン(Trihalomethane)はメタンの3個の水素が塩素や臭素(Br)などのハロゲン(Halogen)に置き換わったもので、クロロホルムはその一種である。
1.2 CAS No.、化学物質審査規制法(化審法)、労働安全衛生法(安衛法)官報公示整理番号、その他の番号
ジクロロメタンのCAS No. は75-09-2 である。化審法官報公示整理番号は2-36 で安衛法は既存物質とし化審法番号で公表されている。EU のEC 番号200-838-9 である。REACH以前は既存化学物質のEINECS番号だった。REACH 登録番号は01-2119480404-41-xxxx 及び01-2119480427-33-xxxx (xxxx は登録者番号)である。四塩化炭素は安衛法で届け出られた官報公示整理番号2-(13)-47がある。
図表1 ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素の特定
名称(IUPAC) | ジクロロメタン
Dichloromethane |
クロロホルム
Chloroform |
四塩化炭素
Carbon tetrachloride |
別名 | 塩化メチレン
Methylene chloride |
トリクロロメタン
Trichloromethane |
テトラクロロメタン
Tetrachloromethane |
化学式 | H2Cl2 | CHCl3 | CCl4 |
CAS No. | 75-09-2 | 67-66-3 | 56-23-5 |
化学物質審査規制法(化審法) | 2-36 | 2-37 | 2-38 |
労働安全衛生法(安衛法) | (化審法番号で公表) | (化審法番号で公表) | 2-(13)-47 |
EC No. | 200-838-9 | 200-663-8 | 200-262-8 |
REACH | 01-2119480404-41-xxxx
01-2119480427-33-xxxx |
01-2119486657-41-xxxx | 01-2119486131-41-xxxx |
2.特徴的な物理化学的性質/ 人や環境への影響(有害性)
2.1 物理化学的性質(図表2)
ジクロロメタンは無色透明の揮発性液体(VOC)である。沸点は約40 ℃で、汎用の有機溶剤の中では低い。水への溶解度は低い(約1.3 %)。メタンの水素を塩素(Cl)に置き換えたとき塩素の数が多くなるに従い融点、沸点、密度が高くなる。炭化水素のメタンや塩素1 個のクロロメタン(Chloromethane, CAS No. 74-87-3 化学式はCH3Cl)は常温では気体である。低温で液体になるが水より軽い(密度<1 g/cm3)。塩素2 個(ジクロロメタン)以上で水より重くなって、四塩化炭素は1.59 g/cm3 と有機溶剤としては非常に重い物質である。ジクロロメタンやクロロホルムは、ほとんどの有機溶媒とはどんな割合でも均一溶液になる(混和する)。塩素の含有量が高くなると燃えにくくなる。メタンは燃料(天然ガスの主成分)でクロロメタンも引火性ガスであるが、ジクロロメタンやクロロホルムは単独では燃えにくく、四塩化炭素は不燃性で消火剤としても使われる。有機塩素化合物は燃えにくいが、高温で分解して塩素(Cl2)、塩化水素(HCl: 水溶液は塩酸)、ホスゲン(Phosgene: 毒劇法の毒物で、化学兵器の毒ガスとして知られる。化学式はCOCl2)等を含む有毒で腐食性の物質を生成する。メタンは空気より軽いが重い塩素が結合すると重くなる。ジクロロメタンで空気の約2.9倍である。四塩化炭素では空気の5 倍を超える。親油性ではあるが、n- オクタノール/ 水分配係数logPow はジクロロメタンでは約1.25、四塩化炭素では2.64 と生物濃縮性は高くはないと推定される。ジクロロメタンやクロロホルムは水分があると徐々に加水分解して塩化水素(HCl)が生成する。これを防ぐために少量のアルコール又は2-メチル-2-ブテン(2-Methyl-2-butene,CAS No. 513-35-9 化学式はC5H10)が添加されている。
図表2 ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素の主な物理化学的性質(ICSC による)
物理化学的性質 | ジクロロメタン | クロロホルム | 四塩化炭素 |
融点(℃) | -97 | -64 | -23 |
沸点(℃) | 40 | 62 | 76.5 |
引火点(℃) | – | – | – |
発火点(℃) | 605 | – | – |
爆発限界(vol %) | 13~22 | – | – |
蒸気密度(空気=1) | 2.9 | 4.12 | 5.3 |
比重(水=1.0) | 1.3 | 1.48* | 1.59 |
水への溶解度(20 ℃) | 1.3 g / 100 ml | 0.8 g / 100 ml | 0.1 g / 100 ml |
n- オクタノール/ 水分配係数(log Pow) | 1.25 | 1.97 | 2.64 |
*: 化学物質の初期リスク評価書No.16
2.2 有害性
GHS分類例は図表3に示す。ジクロロメタンの急性毒性は経口摂取では区分外(国連分類基準では区分5)に分類されている。吸入では区分4、経皮はデータがない。皮膚、眼、気道に刺激性がある。感作性(アレルギー反応)については明確なデータがない。体内に入ると中枢神経系に影響して見当識障害(時間や場所が分からなくなる認知症の症状の一つ)や警戒性の喪失、記憶喪失を起こしたり、気管支や肺に影響したりする。飲み込んだ場合、嘔吐して、誤嚥性肺炎を起こすことがある。長期的にも中枢神経系や肝臓に影響を及ぼす。発がん性について国際がん研究機関(IARC)は2014年にグループ2Bから2A(ヒトにおそらく発がん性がある物質)に改定している。日本産業衛生学会は2015年に2Bから2Aに改定している。これらはGHSの区分1Bに該当するが、胆管がんが労災の補償の対象とされたことからNITEは2017年に区分1Aとしている。生殖毒性についてもNITEはGHS分類できないとしていたが2017年度版では区分2としている。クロロホルムも似ているが、急性毒性(吸入)、眼損傷性、生殖細胞変異原性、生殖毒性、肝臓や腎臓への影響などジクロロメタンより有害性が高い傾向がある。
図表3 ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素のGHS分類(NITE による)
GHS分類 | ジクロロメタン | クロロホルム | 四塩化炭素 |
物理化学的危険性 | |||
引火性液体 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
金属腐食性 | – | – | – |
健康有害性 | |||
急性毒性(経口) | 区分外(5) | 4 | 区分外(5) |
急性毒性(経皮) | – | 区分外 | 区分外 |
急性毒性(吸入:蒸気) | 4 | 3 | 4 |
皮膚腐食/刺激性 | 2 | 2 | – |
眼損傷/刺激性 | 2A | 1 | – |
皮膚感作性 | – | – | 1B |
生殖細胞変異原性 | – | 2 | 区分外 |
発がん性 | 1A | 2 | 1B |
生殖毒性 | 2 | 2 | 1B |
特定標的臓器(単回) | 1(中枢神経系、呼吸器)
3(麻酔作用) |
1(呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓)
3(麻酔作用) |
1(中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓) |
特定標的臓器(反復) | 1(中枢神経系、肝臓、生殖器(男性)) | 1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓) | 1(中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓) |
誤えん有害性 | – | – | – |
環境有害性 | |||
水生環境有害性(短期/急性) | 3 | 3 | 1 |
水生環境有害性(長期/慢性) | 3 | 1 | 2 |
オゾン層への有害性 | – | – | 1 |
図表4 ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素の発がん性評価
分類機関 | ジクロロメタン | クロロホルム | 四塩化炭素 |
IARC | Group 2A | Group 2B | Group 2B |
日本産業衛生学会 | 第2群A | 第2群B | 第2群B |
ACGIH | A3 | A3 | A2 |
NTP | RAHC | RAHC | RAHC |
EU(CLP: GHS) | 2 | 2 | 2 |
EPA | L | L/NL | L |
IARC: Group 2A: Probably carcinogenic to humans (ヒトに対しておそらく発がん性を示す)
Group 2B: Possibly carcinogenic to humans (ヒトに対して発がん性を示す可能性がある)
日本産業衛生学会: 第2群: ヒトに対して発がん性があると判断できる物質(Aは動物実験からの証拠が十分でBは十分ではない)
ACGIH A2: Suspected Human Carcinogen(ヒト発がん性が疑われる物質)
A3: Confirmed Animal Carcinogen with Unknown Relevance to Humans
(動物実験で発がん性が認められた物質、ヒトとの関連は不明)
NTP RAHC: Reasonably Anticipated to be Human Carcinogens
(ヒト発がん性があると合理的に予測される物質)
EPA L: Likely to be carcinogenic to humans(ヒト発がん性の可能性が高い物質)
NL: Not likely to be carcinogenic to humans(ヒト発がん性の可能性が低い物質)
2.3 環境有害性
ジクロロメタンは水生生物に対して有害で、生分解されにくい。オクタノール/ 水分配係数logPow=1.25、生物濃縮係数BCF ~ 29 というデータより、生物濃縮性は低い。揮発性が高いので速やかに大気中に揮散して、大気中で徐々に分解すると考えられる。クロロホルムも同様であるが、長期的な有害性試験で有害性が認められている。四塩化炭素はオゾン層破壊物質として規制されているが、ジクロロメタンやクロロホルムはオゾン層に達する前に分解するといわれている。
3.主な用途
ジクロロメタンは有機塩素化合物で他の物質との親和性が高いことから溶剤や洗浄剤として使われている。低沸点の有機溶剤で、フロンに代わる洗浄剤としてプリント基板や金属部品の加工段階で用いた油の除去などに使われる。そのほか医薬品や農薬製造時の溶剤、塗料剥離剤、エアゾール噴射剤、ポリカーボネートの反応溶媒、ウレタンフォームの発泡剤など。クロロホルムも有機溶剤として使われるが、特に研究室等で広く使われている。以前は麻酔薬として使われたが、毒性の強さから現在では使われていない。ジクロロメタンやクロロホルムは安定剤としてアルコール等が添加されているので用途によっては注意が必要である。四塩化炭素は溶剤の他消火剤としても使われていたが、そのオゾン層破壊能から製造禁止になっている。
4.事故などの例
・ 2012 年ころ印刷工場で胆管がん発症事件が発生した。当時法規制の無かった1,2- ジクロロプロパンに長期間・高濃度曝露したことが原因と考えられた。作業者はジクロロメタンも取扱っており、度合いは不明とはいえ胆管がん発症に影響した可能性がある。(http://www.mhlw. go. j p / s t f / houdou/2 r 9 852000 00 2 x6 a t -att/2 r9852000002 x6 zy.pdf)
・ 部品洗浄装置の洗浄液交換作業中、有機溶剤中毒で倒れた。救助しようとした人も含め2 人死亡、1 人2 か月休業となった。
(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=000803)
同様の事故がほかにもある。
(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=001071)
厚生労働省の職場のあんぜんサイトでは、これらを含め、換気不十分な室(槽、タンク)内でジクロロメタンを用いて中毒を起こした例が紹介されている。
( http: / / anzeninfo.mhlw. go. jp/ user/ anzen/ kag/saigaijirei.htm)
・ 回収ジクロロメタンの入ったドラム缶が運搬トラックの荷台で破裂して1 人薬傷を負った。ジクロロメタンをアルミニウムの切削に繰り返し使用して、塩化水素が発生していた。その塩化水素がアルミニウムの切子と反応して発熱・水素が発生し、ドラム缶が破裂した。近くにいた人が塩化水素を含むジクロロメタンに接触して薬傷を負った。長年の使用で、添加していた安定剤だけでは塩化水素の発生を抑えられなくなっていた。(http://www.shippai.org/fkd/cf/CC0000080.html)
・ クロロホルムでは研究開発で溶剤として使用していて、健康診断で肝機能の異常が認められた。取扱い場所での換気が不十分であったと考えられる。
(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101324)
5.主な法規制(図表5)
ジクロロメタンは化学物質審査規制法(化審法)で、優先評価化学物質として2016 年度に有害性と曝露状況からリスクが評価された。その結果、現状では環境の汚染により人の健康に被害を生ずる恐れは認められないとし、優先評価化学物質の指定が2017 年3 月に取り消されている。それでも一般化学物質としての製造輸入数量の届出は必要である。クロロホルムは優先評価化学物質であり、四塩化炭素は既に第2 種特定化学物質に指定されている。化学物質管理促進法では3物質とも第1 種指定化学物質で環境中への排出量等の把握と報告(PRTR)が必要である。
労働安全衛生法でも3 物質とも発がん性等から特定化学物質第2 類物質で、特別有機溶剤、特別管理物質に指定されている。発散抑制(設備の密閉化、局所排気、プッシュプル換気など)、作業主任者の選任。6か月ごとの作業環境測定、健康診断の実施、労働状況や健康診断の記録の30 年間保存などが義務付けられている。作業環境評価基準の管理濃度はジクロロメタンが50 ppm であるのに対し、クロロホルムは3 ppm,四塩化炭素は5 ppm と厳しい値が設定されている。日本産業衛生学会やACGIH の設定している作業環境許容濃度も同様で、この3 物質の中ではジクロロメタンが最も緩い。3 物質とも有害性等について容器等へのラベル表示及びSDS による情報提供が必要である。毒劇物取締法でジクロロメタンは毒物や劇物に指定されていないが、クロロホルムは原体のみ劇物、四塩化炭素は製剤(混合物)でも劇物である。
3 物質とも国連危険物輸送勧告のクラス6.1(毒物)である。船舶や航空機での輸送では表示や容器の規制がある。大気汚染防止法ではジクロロメタンは揮発性有機化合物(VOC)として大気中への排出削減の優先取組物質に指定され、大気中の環境基準が年平均で0.15 mg/m3 以下に定められている。クロロホルムも優先取組物質である。四塩化炭素はオゾン層破壊物質としてモントリオール議定書の附属書B グループⅡに挙げられ、オゾン層保護法で原則としては製造・消費が禁止されている。試験研究や分析用などの特別な用途、又は他の化学物質の原料として使用するための製造は認められている。水質に関してジクロロメタンは環境基準0.02mg/L以下、水質汚濁防止法の排水基準はその10倍の0.2mg/Lに定められている。四塩化炭素はそれぞれ0.002mg/L以下、0.02mg/L以下である。クロロホルムは水質の環境基準は定められていないが、要監視項目の指針値として0.06mg/L以下とされている。水質汚濁防止法で排水基準は定められていないが、河川等公共用水域に多量に排出されるような事故時等に応急措置や届出の義務がある。水道法の水質基準も0.06mg/L以下とされているが、総トリハロメタンとして基準値0.1mg/L以下がある。(トリハロメタンとしては、他にブロモジクロロメタン(CHBrCl2)、ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl)、ブロモホルム(CHBr3)にそれぞれ基準値0.06mg/L以下、0.1mg/L以下、0.09mg/L以下がある。)
図表5 ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素に関係する法規制
法律名 | 法区分 | 条件 | ジクロロメタン | クロロホルム | 四塩化炭素 | |
化学物質審査規制法 | 第2種特定化学物質 | – | – | (3) | ||
優先評価化学物質 | – | (8) | – | |||
化学物質管理促進法 | 第1種指定化学物質 | ≧1% | (186)*1 | (127) *1 | (149) *1 | |
労働安全衛生法 | 健康障害防指針 | >1% | ○ | ○ | ○ | |
名称等表示/通知物質表示
通知 |
≧1% ≧0.1% |
(257) | (160) | (226) | ||
変異原性物質 | >1% | (38) | – | |||
特定化学物質
第2類物質 |
特別有機溶剤
特別管理物質 |
>1% | (19の3) | (11の2) | (18の2) | |
作業環境評価基準 | 管理濃度 | 50ppm | 3ppm | 5ppm | ||
労働基準法 | がん原性物質 | 胆管がん | – | – | ||
疾病化学物質 | *2 | *3 | *3 | |||
作業環境許容濃度 | 日本産業衛生学会 | 50ppm
(173mg/m3) 最大:100ppm (347mg/m3)(皮) |
3ppm
(14.7mg/m3)(皮) |
5ppm
(31mg/m3) (皮) |
||
ACGIH TLV | TWA 50ppm
(174mg/m3) |
TWA 10ppm
(49mg/m3) |
TWA 5ppm
(31mg/m3) STEL 10ppm (63mg/m3) (Skin) |
|||
生物学的許容値 | 日本産業衛生学会 | *4 | – | – | ||
ACGIH BEI | *5 | – | – | |||
毒物劇物取締法 | 劇物 | 原体 | – | (20) | (26) | |
製剤 | – | – | (38) | |||
消防法 | 貯蔵などの届出 | – | (6) | (8) | ||
国連危険物輸送勧告 | 国連分類 | 6.1 | 6.1 | 6.1 | ||
国連番号 | 1593 | 1888 | 1846 | |||
品名 | ジクロロメタン | クロロホルム | 四塩化炭素 | |||
容器等級 | Ⅲ | Ⅲ | Ⅱ | |||
海洋汚染物質 | – | – | P | |||
環境基本法 | – | |||||
大気 | 環境基準 | 1年平均 | ≦0.15mg/m3 | – | ||
水質、地下水 | 環境基準 | ≦0.02mg/L | – | ≦0.002mg/L | ||
要監視項目 | – | ≦0.06mg/L | – | |||
土壌 | 環境基準 | (溶出) | ≦0.02mg/L | – | ≦0.002mg/L | |
大気汚染防止法 | 揮発性有機化合物(VOC) | 排気 | ○ | ○ | ○ | |
優先取組物質 | 排気 | (10) | (7) | – | ||
環境基準 | ≦0.15mg/m3 | – | ||||
オゾン層保護法 | モントリオール議定書 | – | – | B(Ⅱ) | ||
水質汚濁防止法 | 有害物質・排水基準 | ≦0.2mg/L | – | ≦0.02mg/L | ||
指定物質 | – | ○ | – | |||
下水道法 | 水質基準 | ≦0.2mg/L | – | ≦0.02mg/L | ||
水道法 | 水質基準 | ≦0.02mg/L | ≦0.06mg/L | ≦0.002mg/L | ||
土壌汚染対策法 | 第一種特定有害物質
第二溶出基準 地下水基準 |
≦0.02mg/L ≦0.02 mg/L |
– – |
≦0.002mg/L ≦0.002mg/L |
||
海洋汚染防止法 | 有害液体物質 | Y類 | Y類 | Y類(P) | ||
廃棄物処理法 | 特別管理産業廃棄物 | (5) | – | (5) |
*1: 2023年度からは186, 127, 149は管理番号(政令番号はそれぞれ213, 151, 171)
*2: 頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、中枢神経系抑制、前眼部障害または気道・肺障害
*3: 頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、中枢神経系抑制または肝障害
*4: 尿中、ジクロロメタン(作業終了時) 0.2mg/L
*5: 尿中、ジクロロメタン(作業終了時) 0.3mg/L、半定量的
6.曝露などの可能性と対策
6.1 曝露可能性等
ジクロロメタンなどの有機塩素化合物は燃えにくいので、それ自体は火災や爆発などのリスクは小さいが、高温では分解して有害ガスが発生し、爆発、火災の危険性もある。炎や溶接など高温になるところの近くで使用してはならない。人体内へは主に蒸気の吸入によって入ると考えられる。ジクロロメタンは特に揮発性が高く、急速に有害濃度に達することがある。そして許容濃度を超えても臭気として感じにくい。蒸気は重く、低いところに滞留のおそれがある。特にタンク内や地下室などでの使用で事故が起きている。印刷工場での胆管がんも蒸気の吸入による影響と考えられている。クロロホルムも同様である。水道水から検出されて問題となった「トリハロメタン」は主にクロロホルムである。水道水製造時に殺菌工程で用いた塩素(Cl2)が有機物と反応して生じたものと考えられている。水道水中の濃度は直接飲んでも有害な影響が出ないよう、水道法で厳しく規制されている。
6.2 曝露防止等
できるだけ設備の密閉化、遠隔操作を進める。そのうえでプッシュプル型の換気、蒸気発生源付近では局所排気を行う。蒸気は空気より重いことを考慮して換気・排気装置を設置する必要がある。換気が不十分な場合、有機ガス用の吸収缶を用いた防毒マスクなどを使用する。吸収缶は吸収量に限界があるので、少量曝露、短時間の使用に限られる。日常の保管管理も重要である。大量に漏洩した場合など大量に吸収するおそれがある場合は送気マスクや空気呼吸器などを使用する。有機物に対する浸透性が高いのでゴムやビニル製の手袋では浸透するおそれがあるので、保護衣、保護手袋は不浸透性を確認して使用する。保護衣や保護手袋にはJIS T8115 やJIS T8116 の規格がある。作業位置や姿勢でも曝露量は異なる。曝露のおそれがある時間を短くする。
6.3 廃棄処理
廃棄物処理法の特別管理産業廃棄物に該当するので処理基準に基づいて廃棄する。含有廃液や洗浄排水を直接河川等に排出したり、環境中に廃棄したりしてはいけない。都道府県知事などの許可を得た産業廃棄物処理業者にマニュフェストを付けて処理を委託する。水に溶解せず生分解性もないので活性汚泥処理では分解できない。焼却する場合、燃えにくいので、可燃性溶剤とともに噴霧するか珪藻土やおがくず等に吸収させて、アフターバーナー及びスクラバーを備えた焼却炉で、ダイオキシン等の生成を抑えるため、できるだけ高温(850 ℃以上)で焼却する。分子中に塩素を含むので、燃焼ガスには塩化水素などが含まれる。燃焼ガスから塩化水素等の回収・中和処理が必要である。
免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。