第11 回 シリカ(二酸化ケイ素)

誌面掲載:2018年6月号 情報更新:2023年5月

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1.名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表1, 2)

1.1 化学物質名/ 別名

シリカ(Silica)は化学物質としては二酸化ケイ素(Silicon dioxide: SiO2)でケイ(珪、硅)素(シリコン:Silicon、元素記号はSi)の酸化物である。ケイ酸[Silicic acid: Si OH4]の無水物ということで「無水ケイ酸(Silicic anhydride)」とも呼ばれる。ケイ素は地球の表面付近(地殻)にある元素の中で酸素(O)に次いで多い。シリカに陽イオンが結合したケイ酸塩は岩石の主成分で地殻の大部分を占めている。ケイ素自体は半金属で半導体であるが、自然界では単体(Si)で存在することはない。単体は工業的には集積回路(IC/LSI)のシリコンウェハーや太陽電池などに使われている。二酸化ケイ素はSiO2 という分子で存在するのではなく、ケイ素(Si)と酸素(O)が3 次元的につながった構造をしていて、Si/O 比が1/2 であることを示している。天然に存在するだけでなく人工のものもある。石英(Quartz)などの結晶質のものとシリカゲルのような非晶質のものとがある。結晶質シリカとしては石英のほかクリストバライトなどいくつかの結晶系が異なるものが知られている。石英の中で特に結晶形態が明確なものは水晶と呼ばれる。非晶質シリカは製法によりいくつかの種類がある。シリカゲルはケイ酸塩水溶液から析出させたもの、石英ガラスは石英などを高温で溶融して急冷して得られるものでフュームドシリカはケイ素化合物を高温で分解してシリカを析出させるもの、シリカフュームは高純度シリコン製造時の副生成物で超微粒子である。珪藻土は藻類の一種の珪藻が大量に死滅、堆積してその殻が化石化したものである。乾燥だけで使用される場合と高純度化のために高熱処理(焼成:calcination)して使用される場合がある。「ガラス」という名称は「非晶質の固体」といったものを指すが、一般的なガラスの主原料はシリカ(珪砂: 石英の微粒子Quartz sand)である。これにソーダ灰(炭酸ナトリウム:Na2CO3)や石灰石(炭酸カルシウム:CaCO3)、硼砂(B2O3)などを加えて高温で溶融して冷却したものである。陶磁器やホーローなどの原料も二酸化ケイ素やケイ酸塩が主である。

ケイ素樹脂をシリコン樹脂(Silicone resin)ともいい、元素名のシリコンと紛らわしいがこれは有機合成高分子である。区別するために「シリコーン(樹脂)」とも呼ばれる。ケイ素(Si酸素(O)が交互に結合した-Si-O-Si-というポリシロキサン構造を持っている。シリカと異なりケイ素と酸素のほかに炭素が結合している。

 

1.2 CAS No.、化審法(安衛法)官報公示整理番号、その他の番号(図表1, 2)

一般にはシリカのCAS No. 7631-86-9 であるが、結晶構造や製造方法の違いなどで多くのCAS No. がある(図表2)。天然の岩石や鉱物は化審法の対象ではないが、合成品もあるので1-548 という化審法官報公示整理番号がある。化審法の1-…は第1 類「無機化合物」であることを示している。化審法は結晶/ 非晶や製造方法などの違いでは区別していないので、シリカゲルも石英ガラスも同じである。安衛法も天然物自体は対象ではないが作業者が製造するものは対象で、既存物質として化審法番号で公表されている。EUEC番号もCAS No. 同様結晶や由来により多くの番号がある。REACH 登録番号としては01-2119379499-16-xxxxxxxx は登録者番号)がある。

 

1.3 国連番号(UN No.)

国連危険物輸送勧告の危険物(dangerous goods)ではないので国連番号(UN No.)はない。

図表1 シリカの特定(1

名称 シリカ

Silica

IUPAC 二酸化ケイ()

Silicon dioxide

別名 無水ケイ酸(Silicic anhydride, Silicic acid anhydride)

酸化シリコン(Silicon oxide)

化学式 SiO2
CAS No. 7631-86-9
化審法(安衛法) 1-548
EC No. 231-545-4
REACH 01-2119379499-16-xxxx

*: xxxxは登録者番号

図表2 シリカの特定(2)

名称 Name CAS No. EC No.
結晶質シリカ

(Crystalline silica)

石英 Quartz 14808-60-7 238-878-4
クリストバライト Cristobalite 14464-46-1 238-455-4
トリポリ Tripoli 1317-95-9 603-514-9
鱗珪石

トリディマイト

Tridymite 15468-32-3 239-487-1
非晶質シリカ

(Amorphous silica)

シリカゲル

沈降シリカ

Silica gel,

Precipitated silica

112926-00-8 231-545-4
石英ガラス

溶融シリカ

Vitreous silica quartz glass,

Fused silica

60676-86-0 262-373-8
珪藻土 (非焼成) Diatomite,

Diatomaceous earth

Uncalcined 61790-53-2 612-383-7
     (焼成) Flux-calcined 68855-54-9 272-489-0
ヒュームドシリカ(アエロジル) Pyrogenic (fumed) amorphous silica 112945-52-5 601-216-3
シリカヒューム Silica fume 69012-64-2 273-761-1

 


2.特徴的な物理化学的性質/ 人や環境への影響(有害性)

2.1 物理化学的性質(図表3)

純粋なものは無色透明の固体である。自然界に存在するシリカには不純物の影響で着色しているものもある。Si-O-Siという結合で3 次元的に強く結合しており、融点、沸点共に高い。融点(非晶質の場合は軟化点)は1,600 ℃で、沸点は2,200 ℃を超える。密度は約2.1 2.6g/cm3)で結晶形や製造方法により多少異なる。水にはほとんど溶けない。ほとんどの薬品に溶解することはないがフッ化水素酸(HF)には溶解する。水酸化ナトリウムと加熱するとケイ酸ナトリウムとなって水に溶けるようになる。温度や圧力により結晶構造が変化したり、非晶質のものが結晶化したりする。国際珪藻土製造者協会(IDPA: International Diatomite Producers Association)によると、珪藻土未焼成物の主成分は非晶であるが、数%の結晶を含んでいる。焼成品にはクリストバライトなどの結晶成分を最高40 %含むことがあり、炭酸ナトリウムなどの融剤を添加して焼成した場合は結晶成分が70 % に上ることもある。

図表3 シリカの主な物理化学的性質(職場のあんぜんサイト モデルSDS及びICSCによる)

物理化学的性質 シリカ 結晶質シリカ 非晶質シリカ
(CAS No.) 7631-86-9 14808-60-7 14464-46-1 15468-32-3 60676-86-0 61790-53-2
融点() 1710 1610 1713 1703 1610 1710
沸点() 2230 2200
密度(g/cm3) 2.1 2.6 2.3 2.3 2.2 2.3
水への溶解度(mg/L) 15-68(20℃, pH5.5~6.6)*1 不溶

*1: 合成非晶質シリカ(SAS)

 

2.2 有害性(図表4)

岩石や砂の主成分で、燃えないし危険な反応を起こすということもない。身の回りに普通に存在する物質で、「化学物質」として生物に特に毒性が高いということはない。水に溶けず、微粒子を少量摂取しても消化吸収されることなく排泄される。ラットを用いた疎水性シリカの粉塵4 時間吸入試験でLC50 が< 2 mg/L というデータもあるが、これは毒性によるものではなく高濃度投与での窒息によるものとされている。眼に対して刺激性がある(区分2)としているものも、化学的な影響というより物理的な影響(微粒子が眼に入って、角膜が傷ついたり、涙腺に詰まったりするなど)の可能性もある。微粒子(粉塵)を多量に吸い込むと肺の細胞に蓄積(沈着)して肺疾患(塵肺)を起こす。咳や痰、息切れ、呼吸困難、動悸などの症状がある。塵肺でシリカが原因の場合「珪肺」と呼ばれる職業性肺疾患がある。急性珪肺では息切れ、咳、衰弱で死亡することもある。慢性的に進行して呼吸困難、咳、疲労などの症状のほか、結核に感染しやすくなったりする。また関節リウマチ、強皮症など自己免疫疾患も知られている。結晶質シリカをIARC(国際がん研究機関)はグループ1、日本産業衛生学会も第1 群(ヒトに対して発がん性がある物質)に分類している。IARC は非晶質のシリカに対してはグループ3(ヒトに対する発がん性について分類できない)に分類している。発がん性については結晶性シリカの微粒子の吸入により肺に沈着して塵肺の一種である珪肺を罹患する状況で、肺がんのリスクが高まる。非晶性といわれた珪藻土も特に焼成品は結晶を含むため粉塵の吸入は肺がんリスクが高まる。経口や皮膚接触等では見られていない。

図表4 シリカのGHS分類(NITEによる)

GHS分類 シリカ(結晶/非晶を含む) 珪藻土(未焼成: 結晶質シリカ

0.1%以上含有)

結晶質シリカ 非晶質シリカ
石英 クリストバライト トリディマイト シリカゲル

 

シリカフューム
7631-86-9 61790-53-2 14808-60-7 14464-46-1 15468-32-3 112926-00-8 69012-64-2
物理化学的危険性
可燃性固体 区分外 区分外 区分外 区分外 区分外 区分外 区分外
自然発火性固体 区分外 区分外 区分外 区分外 区分外 区分外 区分外
金属腐食性
健康有害性
急性毒性(経口) 区分外 区分外 区分外
急性毒性(経皮) 区分外 区分外 区分外
急性毒性(吸入:粉塵)
皮膚腐食/刺激性 区分外 区分外 区分外
眼損傷/刺激性 2 2B
皮膚感作性
生殖細胞変異原性 2 2
発がん性 1A 1A*1 1A 1A 1A
生殖毒性
特定標的臓器(単回) 3(気道刺激性) 3(気道刺激性) 3(気道刺激性)
特定標的臓器(反復) 1(呼吸器、免疫系、腎臓) 1 (呼吸器) *1 1(呼吸器、免疫系、腎臓) 1(呼吸器) 1(呼吸器) 1(呼吸器)
誤えん有害性
環境有害性
水生環境有害性(短期・急性) 区分外 区分外 区分外
水生環境有害性(長期・慢性)

:分類できない
*1:
結晶質シリカ含有量0.1%未満の場合は発がん性:「分類できない」、特定標的臓器(反復):区分2(呼吸器)

 


3.主な用途

シリカはガラスの主成分で、陶磁器の原料である。シリカ微粒子は樹脂の充填・補強材、研磨剤、増粘剤など広い範囲で使用されている。結晶質シリカの水晶(Quartz)は宝飾品に用いられる。瑪瑙や玉髄なども石英の細かい結晶からなっている。水晶は水晶発振器として精確に時刻を刻む時計などに使われている。それでクォーツ時計と呼ばれる。石英から作る石英ガラスは耐熱性が高く(最高使用温度1,000 ℃)、不純物が少ないので透明度が高く、割れにくいので光ファイバーや化学実験用のガラス器具に使われる。多孔性のシリカゲルは乾燥剤として使われている。珪藻土も多孔質で断熱材や建材に使われるほか、濾過助剤としても使われている。シリカは食品中にも微量に含まれているが、ビールや酒などの食品の濾過助剤にも使われる。不溶性なので食品中には入らない。シリカゲルは食品の乾燥剤にも使われている。微粒子二酸化ケイ素は化粧品や歯磨き、医薬品の錠剤の製造、軟膏・乳液の安定化剤として使用されることもある。

 


4. 事故などの例

1930 年代にアメリカでホークス・ネストトンネル災害(Hawks Nest Tunnel Disaster)が発生した。これは米国史上最悪の労働災害ともいわれている。トンネル工事中にシリカ鉱石層を掘り当て、その鉱石の採掘も行った。作業員には防塵マスクが与えられてなく、シリカ粉塵に曝露した。多くの作業員が珪肺を罹患し、これが原因で死亡した。死者数は476 人とされたが、実際には作業者の多くは黒人で、罹患後職を離れた者が多く正確にはよくわからないという。NIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health:米国労働安全衛生研究所)1000人近くが死亡したと推定している。
https://www.wvencyclopedia.org/articles/338
・ 塗料製造タンクに引火性のアセトンを仕込んだ後、シリカ微粉末を投入する作業中、溶剤の蒸気に引火して作業者が火傷を負った。シリカ微粉末及びその袋が帯電し放電したためと考えられる。タンク内は予め二酸化炭素置換を行っていたが、投入口など開口部があり空気が入って溶剤蒸気が爆発範囲内になっていたと推定されている。作業者に帯電の危険性についての知識や対策が不十分だった(厚生労働省の職場のあんぜんサイト: http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=100700)。

 


5.主な法規制及び作業環境許容濃度(図表5)

化学物質としての危険・有害性は小さいので化審法や化学物質管理促進法などの規制はない。労働安全衛生法では結晶質シリカは表示及び文書交付(通知)対象物で、0.1 % 以上含有する場合、ラベル表示やSDS の提供が義務付けられている。以前は全てのシリカが対象だったが、非晶質シリカは2017年に対象物質から除外されている。シリカに限らず鉱物、岩石、セメント、灰、アルミニウム、酸化チタン、ガラス、陶磁器、炭素などの粉砕、研削などで粉塵を発生させたり、微粒子を取扱ったりするときは粉じん障害防止規則(粉じん則)に従う必要がある。粉塵の発生源を湿潤な状態に保つ、密閉化、局所排気、プッシュプル型換気などの曝露防止対策を行い、曝露防止策が不十分な場合、労働者は有効な呼吸用保護具を使用しなければならない。屋内の場合、作業環境測定基準に従って作業環境を測定(1 /6 ヶ月)し、労働基準監督署長に提出して許可をもらう必要がある。鉱物などの粉塵に対して作業環境管理濃度は以下の式で算出される。

E = 3.0/ 1.19Q + 1

E: 管理濃度(mg/m3)、Q: 当該粉塵の遊離ケイ酸含有率(%

 

遊離ケイ酸とは結晶質シリカで石英、クリストバライト、トリジマイトなどを指す。非晶質でQ = 0 なら3.0 mg/m3 であるのに対し、もし結晶質シリカでQ =100 % なら0.025 mg/m3 である。日本産業衛生学会の作業環境許容濃度は吸入性結晶質シリカ: 0.03 mg/m3、珪藻土(その他タルク、ろう石、カオリナイトなど: 1 種粉塵)は吸入性粉塵で0.5 mg/m3、 総粉塵2 mg/m3、結晶質シリカ< 3 % の鉱物性粉塵(第2 種粉塵)の吸入性粉塵1 mg/m3、総粉塵4 mg/m3 である。ACGIH(米国産業衛生専門家会議)の許容濃度(TLV TWA)でも結晶質シリカの吸入性粒子(Respirable particle)で0.025 mg/m3 としている。また、塵肺法に基づいて作業者の塵肺健康診断を行い、必要な場合は曝露低減を行う(作業環境測定・評価や健康診断の結果は7 年間保存しなければならない)。

食品衛生法で食品添加物として二酸化ケイ素および微粒二酸化ケイ素が製造用剤として認められている。二酸化ケイ素は食品の濾過助剤としてのみ、最終食品に残らないことが条件である。また、微粒二酸化ケイ素は使用最大限度2.0%で認められているが、母乳代替品、離乳食には使用不可である。

図表5 シリカに関係する法規制及び作業環境許容濃度

法律名 法区分 条件など 対象
労働安全衛生法 名称等表示/通知物 0.1% 結晶質シリカ
粉じん障害防止規則 粉じん (土石、岩石、鉱物、金属、炭素)
じん肺法 粉じん作業  

結晶質シリカ(石英)

作業環境評価基準

 

管理濃度=3.0/(1.19Q+1)

Q=当該粉塵の遊離けい酸含有率%)

日本産業衛生学会(粉塵) 吸入性:0.03mg/m3
作業環境許容濃度 ACGIH TLV TWA 1種粉塵:

吸入性粉塵: 0.5mg/m3

総粉塵    2mg/m3

珪藻土、タルク、ろう石、カオリナイト等
2種粉塵:

吸入性粉塵: 1mg/m3

総粉塵:    4mg/m3

(結晶質シリカ<3%の鉱物性粉塵等)
0.025mg/m3 結晶質シリカ(石英、クリストバライト等)
食品添加物(製造用剤) ・食品濾過助剤以外不可、
・最終製品には残らない
二酸化ケイ素
食品衛生法  

食品容器・包装ポジティブリスト(添加剤・塗布剤等)

・母乳代替食品、離乳食への使用不可、

・食品中2%以下

微粒二酸化ケイ素
・各樹脂に対し50%

・≦600mg/m2で塗布可

酸化ケイ素(シリカ、シリカゲルを含む)
  ・各樹脂に対し50% 珪藻土(diatomite)
・各樹脂に対し30%(50*1) 焼成珪藻土
   

法区分の( )内の数値は政令番号

*1: 樹脂区分1(エンジニアリングプラスチック等で塩化ビニル・塩化ビニリデンを含まない樹脂、消費係数0.1未満、ガラス転移温度(Tg)150)の場合は50%まで使用可。その他の樹脂は30%

 


6.曝露などの可能性と対策

6.1 曝露可能性

固体で、水にもほとんど溶けないので、飲み込んでも消化吸収されることなく排泄され、直接皮膚から吸収されることもない。微粉末で、粉塵となった場合は吸入のおそれがある。眼に見える大きな粒子は吸い込まないよう注意できるし、たとえ舞い上がってもすぐ地面に落下する。しかし、吸入して健康に影響するおそれのある微粒子の粉塵は普通眼には見えず、長時間空気中に漂う。粉塵は粒径が5 μm程度より大きいと、鼻の粘膜などに沈着してそれ以上の侵入を防ぐことができるが、小さいと気管支から肺の奥の肺胞まで達し、沈着して塵肺を起こしやすくなる。日本産業衛生学会では粉塵を粒径によって「総粉塵」と「吸入性粉塵」の2 種類に分けて許容濃度を勧告している。

 

6.2 曝露防止

粉末上のシリカを取扱う場合は、粉塵の発生を抑え、吸入するリスクを下げる。性能上問題がなければ、微粉末より顆粒、フレーク、ペレットなど粒径の大きなものや、取扱いや輸送中の粒子の研削、磨滅などによる粉塵の発生が少ないものを選ぶ。乱暴な取扱いや落下、漏洩などによって粉塵をむやみに発生させないだけでなく、可能であれば水や油などで分散液、スラリーや湿った状態にして取扱う。こぼれた粉末は吸引するか水で湿らせて処理する。乾いたままでの掃除は避ける。またプラスチック等に添加する場合、直接所定量を添加するのではなく、予め高濃度で練り込んだマスターペレットを作成し、必要に応じて無添加品で希釈して製品化する。粉塵が発生するような場合は設備を密閉化するか、局所排気/ プッシュプル型換気装置を設置する。ただ排気するだけでなく、適切な集塵機/ 空気清浄器を介して清浄化した空気を場外へ廃棄する。粉末の輸送には閉鎖系である空気輸送システムも大気中への飛散を抑制できる。個人用保護具として防塵マスクを着用して作業する。防塵マスクにはJIS 規格がある。固体粒子の場合、粒径0.06 0.1 μmの固体粒子捕集効率がRS1: 80 %, RS2: 95 %,RS3: 99.9 % である。結晶シリカのように管理濃度0.1 mg/m3 以下の場合はRS2, RS3 を使用する。非晶性シリカのように0.1 mg/m3 を超える場合はRS1 のものも使用できる。国家検定合格品を使用。顔面とマスクとの密着性を確認して使用する。取扱い作業終了時には作業服等に付着した粉塵が再飛散しないよう取扱い、洗濯する。うがいをして、シャワーなどで体を洗う。

 

6.3 廃棄処理

都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄処理業者に産業廃棄物として処理する。微粒子の場合、廃棄物から粉塵が飛散しないように処理する。高温で融解・固化して顆粒~塊状にする。セメントに混ぜたり煉瓦などの材料として再利用されたりすることもある。建材や断熱材として使用されていた場合、廃棄物中に石綿が混入している場合は特定産業廃棄物、廃石綿等として処理する。

 

免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。