第12 回 メタノール及び類似アルコール類

誌面掲載:2018年7月号 情報更新:2023年6月

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1.名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表1)

1.1 化学物質名/ 別名

メタノール(Methanol)はIUPACによる名称である。メタン(Methane: CH4)の1 個の水素(H)がヒドロキシ(hydroxyl: -OH)基に置き換わったもので、OHを示す接尾語(オール: -ol)を付けたものである。脂肪族の炭化水素にOHが結合している物質が「アルコール」で、メタンの置換基(CH3)としての接頭語メチル(Methyl)をつけてメチルアルコール(Methyl alcohol)ともいう。アルコール類の中で最も小さい物質である。木を乾留(蒸し焼き)して得られることから木精(Wood spirit)という名称もある。単にアルコールというときは化学物質としてはエタノール(Ethanol)を指している。炭素数2 個の炭化水素エタン(Ethane: C2H6)にヒドロキシ基が結合したアルコールでエチルアルコール(Ethylalcohol)ともいう。酒類はエタノールを含む水溶液で、酒精とも呼ばれる。英語名のSpirit (スピリッツ)は酒の精ということで蒸留酒を指す。炭素数3 個ではプロパノール(Propanol)である。プロピルアルコール(Propyl alcohol)ともいう。ヒドロキシ基の結合位置により2 種類ある。3 個の炭素の端の炭素に結合しているものが1- プロパノール(又は、n- プロパノール)で、中央の炭素に結合しているものを2- プロパノールという。製造の容易さから2- プロパノールの方がよく使われ、慣用的にイソプロパノール(Isopropanol)と呼ばれることが多い。アルコールは水(H2O)の一つの水素(H)がアルキル基(CnHm-)に置き換わったものともいえる。n=1, m=3 の場合がメタノール、n=2, m=5 でエタノールということになる。アルキル基が小さいと水に近くなり、大きいと油に近づく。

 

1.2 CAS No.、化審法(安衛法)官報公示整理番号、その他の番号

メタノールのCAS No. 67-56-1 である。化審法官報公示整理番号は2-201 で安衛法は既存物質として化審法番号で公表されている。プロパノールは1- 2- CAS No. は違うが、化審法ではどちらも2-207 で区別されていない。安衛法ではこれらのアルコールは施行時に既存化学物質として化審法の番号で公表されているが、2- プロパノールには2-8-319 という番号がある。法施行時1- プロパノールと区別するための届出られたのかもしれない。EU EC No. REACH 登録番号はCAS No. 同様2 種のプロパノールを区別している。

図表1 メタノール及び類似アルコール類の特定

名称(IUPAC) メタノール

(Methanol)

エタノール

(Ethanol)

プロパン-2-オール(Propan-2-ol) プロパン-1-オール(Propan-1-ol)
別名 メチルアルコール

(Methyl alcohol)

エチルアルコール

(Ethyl alcohol)

2-プロピルアルコール(2-Propyl alcohol) 1-プロピルアルコール(1-Propyl alcohol)
その他の名称 木精(Wood spirit)

カルビノール(Carbinol)

酒精(Spirit)

 

2-プロパノール(2-Propanol)

イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol)

イソプロパノール(Isopropanol)

1-プロパノール(1-Propanol)

n-プロピルアルコール(n-propyl alcohol)

n-プロパノール(n-propanol)

略称 MeOH EtOH IPA, iPrOH nPrOH
化学式 CH4O

CH3OH

C2H6O, C2H5OH

CH3CH2OH

C3H8O, C3H7OH, CH3CH(OH)CH3 C3H8O, C3H7OH, CH3CH2CH2OH
CAS No. 67-56-1 64-17-5 67-63-0 71-23-8
化審法 2-201 2-202 2-207 2-207
安衛法 (同上) (同上) 2-(8)-319 (同上)
EC No. 200-659-6 200-578-6 200-661-7 200-746-9
REACH 01-2119433307-44-xxxx 01-2119457610-43-xxxx 01-2119457558-25-xxxx 01-2119486761-29-xxxx

 

 


2.特徴的な物理化学的性質/ 人や環境への影響(有害性)

2.1 物理化学的性質(図表2)

これらのアルコール類は無色透明の揮発性液体(VOC)である。沸点は水より少し低い程度であるが、OH基の代わりに-CH3 基が結合した炭化水素は常温では気体であるのに比べるとかなり高い。炭素数3 個までのアルコール類は親水性で水とどんな割合でも均一な溶液になる(混和する)。炭素数4 個以上になると水とは溶解度に限界があり、割合によっては相分離する。アルコール類はほとんどの有機溶剤と混和するが、メタノールはヘキサンなどの炭化水素とは混和しない。n- オクタノール/ 水分配係数logPow n- オクタノールは炭素数8 個の親油性アルコールで、生物の脂肪分の代用として使用されている。水より脂肪に溶けやすいものは、排泄されにくく生体内に蓄積されやすい。これらの親水性アルコールのlogPow は小さく、生物濃縮性はないと考えられる。エタノールやプロパノールは水と共沸するが、メタノールはしない。メタノールの引火点は約 9 ℃で、室温でも引火する。蒸気密度は空気に近く、爆発範囲も広い。エタノールやプロパノールも引火点はメタノールとあまり変わらないが、炭素数が多い分蒸気は重く、プロパノールで空気の2 倍程度である。

図表2 メタノール及び類似アルコール類の主な物理化学的性質(ICSC による)

  メタノール エタノール 2-プロパノール 1-プロパノール
融点() -98  -114 -90 -127
沸点() 65  78 83 97
引火点() (c.c.)  9  12 11.7 15
発火点() 440 400 456 371
爆発限界(vol %) 650 3.127.7 2-12 2.1-13.5
比重(=1.0) 0.79 0.79 0.79 0.8
水への溶解度 混和する 混和する 混和する 混和する
log Pow -0.74 -0.32 0.05 0.25

 

2.2 有害性

GHS分類例は図表3に示す。ここに示すアルコール類は曝露経路に依らず、体内に吸収される。多くはそのまま、又は代謝されて排出される。代謝の途中でアルデヒドや酸が生成して有害性を示す。いずれは二酸化炭素に代謝されるので毒性はそれほど高くはない。致死量(LD50 / LC50)で見る急性毒性は、ほとんどはGHSの区分外である。メタノールの急性毒性(経口)は一般に行われるラットによる試験では区分外レベルであるが、ヒトでの死亡例があり、区分4 になっている。ラットなどのげっ歯類よりヒトなどの霊長類の方が代謝能力に劣るため毒性が強く出ると考えられている。これらのアルコール類が皮膚に付着した場合脱脂作用があるが、刺激性は強くはない。眼に入った場合は水に溶けて浸透し強い刺激性がある。メタノールは酒(エタノール)に不純物として含まれて摂取して視覚障害などを起こした事故が多数ある。低濃度であっても長期的な影響で視覚器に影響が出る。職業曝露による失明も記録されている。生殖毒性はヒトでのデータはないが動物試験から妊娠中の曝露で胎児への有害性が認められている。発がん性があるという十分なデータはない。これに対しエタノールはお酒など飲料や食品として認められており有害性は低い。細菌に対しては有害でもヒトに対しては経皮有害性が低いため、消毒剤としても使われる。毒性が比較的低いとはいえ、ヒトでのデータが多数あり、量が多いと有害である。摂取により血中濃度が増加し、それに伴い軽度(酔い、気分の変化など)から中程度(運動や言語の障害、記憶力の低下など)、さらに重度(意識喪失、嗜眠など)の症状があらわれ、呼吸や循環不全などの急性アルコール中毒で死亡することもある。長期的には肝臓と中枢神経系への影響が大きい。脂肪肝から肝硬変になったり、アルコール依存症(慢性アルコール中毒)になったりする。発がん性に関してIARC はヒトでの発がん性の証拠が十分あるとしてGroup 1 に分類している。これはIARC の発がん性の分類は、その発がん性の強さではなく、ヒトに対する発がん性の有無の証拠の確からしさで決められているからである。NITE GHS区分を2006 年度ではエタノールのヒトでのデータはアルコール飲料の長期/ 大量摂取の結果であって、他の化学物質のような労働者の作業環境ではありそうにないということで「区分外」としていたが、その後「分類できない」(2009 年)から2013 年には「区分1A」に改訂している。エタノールの主代謝中間体のアセトアルデヒドに発がん性が認められていることも判断根拠になっている。またアルコール自体の有害性の他に、他の発がん物質などの有害物質が体内に吸収するのを助長するという情報もある。たとえば飲酒時にたばこを吸うと単にたばこを吸うだけの場合より発がんリスクが高くなるといわれている。生殖毒性の区分1A もヒトでのデータによる。プロパノールも有害性は比較的低いとはいえ、摂取すると中枢神経系に影響し、長期的には肝臓などに影響する。

図表3 メタノール及び類似アルコール類のGHS分類(NITEによる)

GHS分類 メタノール エタノール 2-プロパノール 1-プロパノール
物理化学的危険性
引火性液体 2 2 2 2
自然発火性液体 区分外 区分外 区分外 区分外
金属腐食性
健康有害性
急性毒性(経口) 4 区分外 区分外 区分外
急性毒性(経皮) 区分外 区分外 区分外 区分外
急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 区分外 区分外
皮膚腐食/刺激性 区分外 区分外 区分外
眼損傷/刺激性 2 2B 2 1
皮膚感作性 区分外
生殖細胞変異原性 区分外
発がん性 1A 区分外
生殖毒性 1B 1A 2 2
特定標的臓器(単回) 1(中枢神経系、視覚器、全身毒性)

3(麻酔作用)

3(気道刺激性、麻酔作用) 1(中枢神経系、全身毒性)

3(気道刺激性)

3(気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器(反復) 1(中枢神経系、視覚器) 1(肝臓)、

2(中枢神経系)

1(血液系)

2(呼吸器、肝臓、脾臓)

誤えん有害性
環境有害性
水生環境有害性(短期・急性) 区分外 区分外 区分外 区分外
水生環境有害性(長期・慢性) 区分外 区分外 区分外 区分外

 

2.3 環境有害性

これらのアルコール類は生分解性があり、生物濃縮性もなく環境への有害性は小さいと考えられる。

 


 

3. 主な用途

メタノールは、ホルムアルデヒドの原料で、ホルムアルデヒドはフェノール樹脂やメラミン樹脂の原料である。消毒や生物組織標本を作るのに使うホルマリンはホルムアルデヒド35 38 % の水溶液である。ホルマリンには溶液の安定化のためにメタノールが10 %程度添加されている。酢酸やメチルエステル化合物などの化学物質の合成原料のほか塗料などの溶剤として使われている。アルコール類は可燃性で、燃えたときに煤が出にくいので、燃料としての用途がある。メタノールを用いたアルコールランプはかつては学校の理科の授業で加熱用によく使われたが、現在もレストランなどで使われることがある。燃料用アルコールは石油代替の燃料としても考えられている。バイオマスから生産されるバイオエタノールがガソリン代替として注目されている。メタノールもバイオマスから生産できるようになれば今後有力になるかもしれない。エタノールは飲用の他、食品添加物、医療用や工業用に利用されている。飲用や食品用(調味料や防腐用)のエタノールは醸造によって製造されるが、工業用には化学合成品が使われる。消毒用アルコールは純粋なエタノール(無水エタノールとも呼ばれる)ではなく、70 80 % の水溶液が使われる。少し水があると細胞膜への浸透性が高くなり細胞膜を破壊しやすいため殺菌力が増す。メタノールやプロパノールでも殺菌効果はあるがメタノールは有害性があるので殺菌用には使われない。イソプロパノールも消毒薬として使われるが、エタノールより毒性が少し強い。消毒用エタノールの飲用への転用を避けるためイソプロパノールが添加されていることがある。メタノールやエタノールは燃料電池の水素の供給源としての用途も考えられている。イソプロパノールは有害性や環境負荷が小さいということで、塗料やインクの溶剤としてトルエンやキシレンに代わって使われる。

 


 4.これまでに起きた事件/事故などの例

・ 戦前から戦後にかけてメタノールが少し入った粗悪な酒(焼酎)による失明や中毒死する事故がしばしば起きた。酒税を回避するためにメタノールが加えられていた非飲料用の変性アルコールを用いたことなどによる。味やにおいでは区別できないという。失明することがあるので「眼散るアルコール」とも呼ばれた。

国立環境研究所の化学物質データベース(WebKis-Plus)のメタノールのデータに次のような例が紹介されている。(https://www.nies.go.jp/kisplus/dtl/chem/TKT00006)

・ メタノール精留塔が爆発した。この事故で2 名死亡。精留前の回収メタノールに別工程の過酸化水素が混入し、精留塔内で有機過酸化物が生成、濃縮されて爆発したと推定されている。

・ メタノールタンクからポリ容器にポンプで抜出中、ポリ容器内で燃える。メタノールとホースとの摩擦による静電気放電による引火と考えられる。

職場のあんぜんサイトの化学物質による災害事例に以下の例が紹介されている。

(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/saigaijirei.htm)

・ メタノールを含む酸性溶剤によるタンク内面酸性処理作業で中毒事故が起きた。タンク内に酸性溶剤を仕込んでタンクを回転させて処理を行った後、作業者がタンク内に入って作業を行った。タンク内に立ち入る前の換気が不十分あった。溶剤の中にメタノールが含まれているという情報が提供されておらず、作業者は保護具を着用していたが、酸性ガス用防毒マスクを装着していた。

・ 焼酎製造工場で原酒(エタノール約40 %)の貯蔵タンク上部蓋付近で溶接作業中、エタノールが発火・爆発して作業者は死亡した。タンク上部空間部にエタノール蒸気が滞留し、爆発範囲内に達し、溶接による熱で発火温度を超えたためと考えられる。

・ 牧場の分娩豚舎内で消毒用アルコール(2- プロパノール50 %)の移し替え作業中、中毒した。作業者は2- プロパノールの有害性に関する知識が不足しており、曝露防止措置を行っていなかった。

 


5. 主な法規制(図表4)

2- プロパノールは化審法の優先評価化学物質に指定されている。製造・輸入者は毎年製造・輸入量を国に届け出て、国は環境を通じて人や生物に対するリスク評価を行うことになっている。図表4 に示すアルコール類は環境有害性が低く、生分解性があり、化学物質管理促進法では指定化学物質に指定されていない。労働安全衛生法ではいずれも名称等の通知及び表示対象物である。生殖毒性で区分されているので、0.1 % 以上でSDS への記載(通知対象物)義務がある。ラベルへの表示(表示対象物)は、メタノールはGHS 生殖毒性区分1B のため0.3 %以上、エタノールは発がん性区分1A なので0.1 % 以上、そしてプロパノールは1 % 以上で必要である。メタノールと2- プロパノールは有機溶剤中毒予防規則の第2 種有機溶剤である。5 % を超えて含有するものを製造したり取扱ったりする際は有機溶剤作業主任者を置き、局所排気又はプッシュプル型換気を行わなければならない。作業環境の測定、健康診断を行い、結果に対して適切な措置を講じなければならない。作業環境評価基準200 ppmに設定されている。メタノールは女性労働基準規則(女性則)で、女性は作業環境管理濃度を超えている作業場(3管理区分)やタンクなど呼吸用具が必要な作業場での業務を行うことは禁じられている。日本産業衛生学会の許容濃度勧告値もメタノールは200 ppm2- プロパノールは常時400 ppm以下)に設定している。メタノールは労働基準法で疾病化学物質に指定されている。職業曝露でメタノールによる疾病(頭痛、眩暈から視神経障害等)にかかった場合、使用者は療養などの費用の負担、障害補償の義務がある。

メタノールは毒物劇物取締法で原体(工業的純品)は劇物に指定されている。販売等の目的で製造、輸入、販売するには登録が必要で、取扱所には取扱責任者を置き、盗難・紛失・漏洩防止措置を講じなければならない。容器・包装には「医薬用外劇物」の表示が必要である。販売、授与するときはSDS を提供しなければならない。廃棄にも基準があり、漏洩・紛失・盗難などの際は警察や保健所などに届け出る必要がある。有害家庭用品規制法でも家庭用エアゾル製品への添加は5wt%以下とされている。メタノールは燃料用アルコールや燃料電池用の燃料として使用されるが2- プロパノールなどが添加されて、劇物の適用外となっている。メタノールの引火点は 9℃で、消防法の危険物第4類引火性液体第一石油類の範囲内(引火点<21)であるが、炭素数1 3 の飽和一価アルコールということで、メタノール、エタノール、2- プロパノール、1- プロパノールは「アルコール類」という別の区分になっている。「飽和」というのは、分子中の全ての炭素に4 個の元素(炭素、水素、酸素など)が結合しているもので、「一価」というのは1 分子中にアルコール基(-OH)が1 個だけのものを指す(アリルアルコール: CH2=CHCH2OHやエチレングリコール: HOCH2CH2OH等は該当しない)。 アルコール濃度が60 % 未満の水溶液及びアルコール類で可燃性液体量が60 % 未満で引火点及び燃焼点がエタノール60 % 水溶液の引火点及び燃焼点より高いものは除外されている。エタノール60 % 水溶液の引火点は22 23 ℃で、燃焼点はこれより数度高い。指定数量は400 L である。消火のために泡消火剤を使用する際は「耐アルコール泡消火剤」が必要である。労働安全衛生法でも引火点が30 ℃未満なので「危険物・引火性の物」ということになる。国連危険物輸送勧告でも国連分類のクラス3(引火性液体)である。メタノールには国連番号1230 がある。輸送品名はメタノールである。副次危険性6.1(毒物)が付いている。引火点が23℃より低く沸点が35 ℃より高いので容器等級はⅡである。エタノールやプロパノールもそれぞれ個別の品名で国連番号(エタノール: 11702-プロパノール:12191- プロパノール: 1274)がある。エタノールやプロパノールには副次危険性6.1 は付いていない。他に「アルコール類」でUN No.1986, 1987、「アルコール飲料」で3065 という国連番号がある。船舶や航空による輸送では船舶安全法、港則法、航空法などで容器、包装の制限、標識の表示などの義務がある。海外では陸上や河川、運河による国際輸送もあるのでそれぞれ規制がある。

大気汚染防止法では揮発性有機化合物として大気中への排出削減が求められている。メタノールは「特定物質」に挙げられ、多量に排出するような事故の際の速やかな対策が特に求められている。
メタノール、エタノール、プロパノールは食品衛生法のプラスチック製容器包装ポジティブリスト(PL)に記載がある。PLに記載のある樹脂のうちポリエステル等の製造原料として認められている。また、PLに記載のある樹脂への添加が制限濃度範囲内で認められている。

エタノールは、飲用(酒)の場合は酒税法が適用される。飲用以外のエタノール(工業用アルコール)は 飲料への転用を防ぐため、酒税法並みの加算額を追加する(特定アルコール)か、90 % 以上の場合は製造・輸入・使用・販売に対して許可制(一般アルコール)となっている。薬機法で医薬用のアルコール(日本薬局方アルコール)は酒税相当額が課税されている。日本薬局方の消毒用アルコールはエタノール76.9 % 81.4 % という規格があるが、2- プロパノールなどが添加されて酒税法の対象外となり安価で供給されているものもある。

図表4  メタノール及び類似アルコール類に関係する法規制

法律名 法区分 メタノール エタノール 2-プロパノール 1-プロパノール
化学物質審査規制法(化審法) 優先評価化学物質
化学物質管理促進法 1種指定化学物質
労働安全衛生法 危険物・引火性
名称等表示/通知対象物 表示≧0.3%

通知≧0.1%

0.1%

0.1%

1%

0.1%

1%

0.1%

  有機則 2種有機溶剤等 5% 5%
作業環境評価基準 管理濃度 200ppm 200ppm
労働基準法 女性則(管理濃度) (200ppm)
疾病化学物質 頭痛、眩暈、嘔吐等、中枢神経系抑制、視神経障害、前眼部障害、気道・肺障害
作業環境許容濃度 日本産業衛生学会 200ppm 400ppm*1
ACGIH(TLV)

TWA

STEL

 

200ppm

250ppm

 

1000ppm

 

200ppm

400ppm

 

100ppm

生物学的許容値*2 日本産業衛生学会 *3
ACGIH BEI*2 *4 *5
毒物劇物取締法 劇物 原体
消防法 危険物第4

引火性液体

アルコール類*6

(炭素数13の飽和一価アルコール)

国連危険物輸送勧告 国連分類 3(6.1) 3 3 3
国連番号 1230 1170 1219 1274
容器等級 () ,
海洋汚染防止法 有害液体物質 Y Z Z Y
環境基本法(水質) 要調査項目 ○(人の健康)
大気汚染防止法 特定物質
揮発性有機化合物(VOC)
有害家庭用品規制法 家庭用エアゾル製品 5wt%以下
食品衛生法
容器包装ポジティブリスト

基ポリマー
添加剤
 

(製造原料)

各樹脂に対し≦3

 

(製造原料)

3%*7

又は≦50%

 

(製造原料)

各樹脂に対し≦3*8

 

(製造原料)

各樹脂に対し≦0.001*9

*1: 最大許容濃度 常時この濃度以下

*2: 生物学的許容値: 労働者の尿や血液中の当該物質又はその代謝物の濃度で、労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度。ACGIHではBEI: Biological Exposure Indices(生物学的曝露指標)という。

*3: 尿中メタノール(作業終了時) 20mg/L

*4: 尿中メタノール(作業終了時) 15mg/L (非特異的、バックグラウンド有)

*5: 尿中アセトン(週末の作業終了時)40mg/L(非特異的、バックグラウンド有)

(非特異的:対象物質以外の曝露でも観測されることがある。バックグラウンド:非曝露者でも検出される場合があることを考慮した許容値。)

*6: 以下を除く

 1.アルコール類濃度<60%の水溶液、

2.可燃性液体濃度<60%、引火点が60%エタノール水溶液の引火点や燃焼点より高い

*7: 基ポリマーとして認められた樹脂のうち、樹脂中塩化ビニル又は塩化ビニリデン由来成分が50%以上のものに対しては≦3%、その他は≦50%

*8: 600mg/m2以下で塗布可

*9: 合成樹脂区分2 (消費係数0.1未満で、塩化ビニル又は塩化ビニリデン由来成分<50%、ガラス転移温度(Tg)150℃、吸水率≦0.1%:ポリオレフィン等)の樹脂には添加不可

 


6. 曝露などの可能性と対策

6.1 曝露可能性

メタノールなどのアルコール類は揮発性の液体で、蒸気と空気の混合気体は爆発のおそれがある。体内に入る経路として、蒸気やミストの吸入や経口摂取が考えられる。皮膚からも吸収される。室温でも蒸気濃度は有害濃度に達するので室内や閉鎖された場所では危険である。メタノールは揮発性が高く、有害濃度に達するまでの時間が短い。

6.2 曝露防止

他の揮発性有機溶剤等と同様、容器や設備の密閉化、遠隔操作などによる発散抑制、局所排気/ プッシュプル型換気などを行う。換気が不十分な場合、有機ガス用の吸収缶を用いた防毒マスクなどを使用する。メタノールに対してはメタノール用の吸収缶がある。吸収缶を用いる簡易防毒マスクは使用可能時間(破過時間)があるので注意が必要である。長時間にわたる場合や、大量に漏洩した場合など大量に吸収するおそれがある場合は空気呼吸器などを使用する。

6.3 廃棄処理

珪藻土等に吸収させて開放型の焼却炉で焼却するか、焼却炉の火室に噴霧し焼却する。生分解性があり、活性汚泥による処理も可能である。これらの処理ができない場合は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託する。

 

免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。