第16回 ホウ酸 / ホウ砂
誌面掲載:2018年11月号 情報更新:2023年8月
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1.名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表1)
1.1 化学物質名/ 別名
ホウ酸はほう酸、硼酸と平仮名や漢字で書かれることもある。英語ではBoric acid という。化学式はH3BO3 ともB(OH)3 とも書かれる。ホウ酸を加熱すると水が脱離してB-O-B という結合を生じてつながりメタホウ酸(HBO2)を経てホウ素の酸化物(酸化ホウ素B2O3)になる。ほかにもホウ素酸化物に水が付加した酸(オキソ酸)があり、それらの総称として「ホウ酸」ということがあるので、H3BO3 で表されるホウ酸をオルトホウ酸(オルトは正という意味)ということもある。酸化ホウ素は正確には三酸化二ホウ素(Diborontrioxide)であるが、三酸化ホウ素(Boron trioxide) ともいう。また無水ホウ酸(Boric acid anhydride 又はBoric anhydride)ともいえる。ボロンセスキオキサイド(Boron sesquioxide)のセスキ(sesqui)は3/2 を表す接頭辞である。化学式の中の“B” は、元素の中では5 番目に小さいホウ(硼)素(Boron 原子番号は5)を指す。ホウ素自体は固体で金属と非金属の性質を持つ(半金属)物質であるが天然にはホウ素の形ではなく、ホウ酸のナトリウム塩であるホウ砂(Borax)などとして存在する。元素記号のB はホウ砂の名称に由来する。ホウ砂は結晶鉱石であるが、結晶の中に結晶水を含んだ形(水和物)になっており、化学式はNa2B4O7・10H2OとかNa2B4O5 (OH)4・8H2O などと書かれる。加熱すると結晶水が失われ無水物となる。
1.2 CAS No.、化学物質審査規制法(化審法)及び労働安全衛生法(安衛法)官報公示整理番号、そのほかの番号
ホウ酸のCAS No. は10043-35-3 のほかに11113-50-1 がある。後者は天然物(Boric acid, crude, natural)でH3BO3が85 % 以下の物(containing not more than 85 per cent of H3BO3 calculated on the dry weight)である。EU のEC No. もREACH の登録番号もそれぞれに対応した番号がある。ホウ酸2 分子から1 分子の水が脱離してできた2 量体(H4B2O5)がCAS No.26851-55-8 で、上記メタホウ酸(HBO2)はCAS No.13460-50-9 EC No. 236-659-8 である。メタホウ酸の中でホウ酸が3 個で環状の物(H3B3O6)には別のCAS No.13460-51-0 がある。化審法にはこれらの区別はなく、1-63である。ホウ酸と酸化ホウ素は別物質でCAS No. や、化審法(安衛法)の官報公示整理番号(化審法番号、安衛法番号)は違う。酸化ホウ素の化審法番号は無機物としての1-71 のほかに第9 類(医薬品等)の番号9-2403もある。化審法が施行されたときに既存化学物質として別々に届け出られたためと思われる。ホウ砂と無水ホウ砂はCAS No. は異なるが、結晶水の有無の違いだけなので、化審法では区別しない。EC No. も同じである。
1.3 国連番号(UN No.)
国連危険物輸送勧告の危険物(Dangerous goods)ではないので国連番号(UN No.)はない。
図表1 ホウ酸/ ホウ砂の特定
名称 | ホウ(硼)酸
Boric acid |
酸化ホウ素
Boron oxide |
ホウ砂
Borax |
無水ホウ砂
Anhydrous borax |
IUPAC名 | 三酸化二ホウ素
Diboron trioxide |
四ホウ酸ナトリウム・十水和物
Sodium tetraborate decahydrate |
四ホウ酸ナトリウム
Sodium tetraborate |
|
別名 | オルトホウ酸
Orthoboric acid |
無水ホウ酸
Boric anhydride 三酸化ホウ素 Boron trioxide ボロンセスキオサイド Boron sesquioxide |
ボラックス
Borax 四ホウ酸二ナトリウム・ 十水和物 Disodium tetraborate decahydrate |
四ホウ酸二ナトリウム
Disodium tetraborate 七酸化二ナトリウム四ホウ素 Tetraboron disodium heptaoxide |
化学式 | H3BO3, B(OH)3 | B2O3 | Na2B4O7・10H2O
Na2B4O5(OH)4・8H2O |
Na2B4O7 |
CAS No. | 10043-35-3
11113-50-1 |
1303-86-2 | 1303-96-4 | 1330-43-4 |
化審法(安衛法) | 1-63 | 1-71, 9-2403 | 1-69 | 1-69 |
EC No. | 233-139-2
234-343-4 |
215-125-8 | 215-540-4 | 215-540-4 |
REACH | 01-2119486683-25-xxxx
01-2120769927-32-xxxx |
01-2119486655-24-xxxx | 01-2119490790-32-xxxx | 01-2119490790-32-xxxx |
*: xxxx は登録者番号
2.特徴的な物理化学的性質/ 人や環境への影響(有害性)
2.1 物理化学的性質(図表2)
ホウ酸やホウ砂は無色透明の結晶である。無色透明でも結晶や粒径が小さいと白く見える。ホウ酸は温度を上げると水を失って、酸化ホウ素に変化する。酸化ホウ素も無色の固体であるが、通常はガラス状の固体で融点は明確ではない。結晶化した場合は融点450℃である。さらに高温では沸点(~1860℃)もある。ホウ砂も温度を上げると水を失い無水ホウ砂となって、742℃で溶融する。さらに高温(1575℃)では分解する。ホウ酸、ホウ砂とも水に少し溶解する。ホウ酸は水に溶解するとき吸熱して温度が下がる。水に溶けてもあまりイオンに解離しない。一部は解離するが、H+とBO3– というイオンに解離するのではなく水(H2O)からOH– を受け取ってH+ とB(OH)4– に解離する。これらのことからホウ酸をB(OH)3 と書くこともある。酸化ホウ素も水に溶けたときはホウ酸と同じである。ホウ酸水溶液は弱酸性を示し、飽和水溶液でpH3.7 程度である。ホウ砂は空気中で結晶水の一部を失って(風解という)、五水和物(チンカルコナイト・Tincalconite,Na2B4O7・5 H2O 又はNa2B4O5 (OH)4・3 H2O)になる。無水ホウ砂は吸湿性である。ホウ砂も無水ホウ砂も水溶液は同じで弱塩基性(飽和水溶液でpH は9.2 程度)である。安全性試験を行う際、緩衝液に溶解してpH をあわせるとホウ酸もホウ砂もあまり変わらなくなる。ホウ酸とホウ酸ナトリウムの混合溶液は緩衝作用がある。ホウ砂はホウ酸ナトリウム塩であるが水溶液中ではイオンに解離しないホウ酸の形のものも存在する。
図表2 ホウ酸/ ホウ砂の主な物理化学的性質(ICSC による)
物理化学的性質 | ホウ酸 | 酸化ホウ素 | ホウ砂 | 無水ホウ砂 |
外観/物理的状態 | 無色/白色の結晶/粉末 | 白色ガラス状固体 | 白色結晶/粉末 | 無色/白色の結晶/粉末 |
融点 | 171℃で分解 | 450℃ | 75℃で結晶水を失う
融点742℃で無水型 |
|
沸点 | – | ~1860℃ | 1575℃で分解 | |
比重(水=1) | 1.5 | 1.8(非晶),
2.46(結晶) |
1.7 | 2.4 |
水への溶解度 | 5.6 g/100 ml (20 ℃) | 3.6 g/100 ml (25 ℃) | 5.1 g/100 ml (20 ℃) | 2.56 g/100 ml (20 ℃) |
オクタノール/ 水分配係数
(logPow) |
–1.09 | – | – | – |
2.2 有害性(図表3)
ホウ酸/ ホウ砂の有害性はよく似ている。これは体内に入ったときは低濃度であれば体液で中和され、いずれも同じ形になるためと考えられる。半数致死量(LD50)は3 ~ 5 g/kg ほどで、GHS では区分5(JIS Z 7252 では区分5 は採用していないので「区分外」)に相当する。これは食塩とあまり変わらない程度である。急性毒性は低いが、摂取すると嘔吐、下痢などの消化管への影響や痙攣、昏睡など中枢神経系に影響がみられる。皮膚や眼、粉塵の吸入による気道に対して少し刺激性がある。遺伝子に関する影響(生殖細胞変異原性)や発がん性があるというデータは見当たらないようであるが、だからといってこれらの有害性がないとは言い切れないのでGHSでは「分類できない」という判定になっている。生殖毒性に関しては動物試験で生殖能力の低下や胎児の死亡や奇形の増加などが認められている。無水ホウ砂の標的臓器毒性(反復曝露)で区分2(生殖器(男性))とあるが、これはホウ砂(Na2B4O7・10H2O)での動物試験で精巣の精細管萎縮が見られたことによる。十水和物ではこの影響が見られた投与量が区分2 と判定する量より多かったために区分されなかったが、無水ホウ砂(Na2B4O7)に換算すれば区分2 と判定される量の範囲内となったためとしている。
水生環境有害性もホウ酸/ ホウ砂による違いはあまりないと考えられるが、図表3 のNITE による分類では判断に違いがある。ホウ酸と酸化ホウ素、ホウ砂と無水ホウ砂はそれぞれホウ酸、ホウ砂によるデータからの判断である。ホウ酸を用いた試験ではLC50, EC50が100 mg/L を少し超えているので区分外としている。ホウ砂(Na2B4O7・10H2O)を用いた試験で125 mg/Lというデータがあり、区分外となるが、ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)で計算すると66 mg/L となって区分3 という判断になる。長期的な影響については長期的なデータで区分されるデータはないが、分解することはなく濃縮性が不明ということで急性毒性データから判定されている。
図表3 ホウ酸/ ホウ砂のGHS分類(NITE による)
GHS分類 | ホウ酸 | 酸化ホウ素 | ホウ砂 | 無水ホウ砂 |
物理化学的危険性 | ||||
可燃性固体 | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
自然発火性固体 | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
金属腐食性 | – | – | – | – |
健康有害性 | ||||
急性毒性(経口) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 区分外 |
急性毒性(経皮) | 区分外 | – | 区分外 | – |
急性毒性(吸入:粉塵) | – | – | – | – |
皮膚腐食/ 刺激性 | 2 | 区分外 | 2 | – |
眼損傷/ 刺激性 | 2 | 2A | 2 | 2B |
皮膚感作性 | – | – | – | – |
生殖細胞変異原性 | – | – | – | – |
発がん性 | – | – | – | – |
生殖毒性 | 1B | 1B | 1B | 1B |
特定標的臓器(単回) | 1(消化管、中枢神経系)3(気道刺激性) | 3(気道刺激性) | 1(中枢神経系、消化管)3(気道刺激性) | 1(中枢神経系、消化管)3(気道刺激性) |
特定標的臓器(反復) | – | – | 1(呼吸器, 神経系) | 1(呼吸器)2(生殖器(男性)) |
誤えん有害性 | – | – | – | – |
環境有害性 | ||||
水生環境有害性(短期/急性) | 区分外 | 区分外 | 区分外 | 3 |
水生環境有害性(長期/慢性) | 区分外 | 区分外 | 4 | 3 |
–:分類できない
3.主な用途
ホウ酸化合物の用途で最も多いのはガラス繊維の原料である。ガラス繊維はFRP(繊維強化プラスチック)や断熱材/ 吸音材に使われるグラスウールに使われる。また耐熱ガラスで知られるホウケイ酸ガラスに使われる。これは熱衝撃にも強く理化学機器や台所用品などに用いられる。陶磁器の釉薬にも使われる。ホウ素は中性子を吸収する性質があり、原子力発電所で核分裂を抑える制御棒に使用されている。昔から防腐剤や消毒薬として使われてきたが、傷ついた皮膚や粘膜から吸収されたときの毒性が指摘されて、現在ではこれらの用途は限定されている。木材や紙の難燃剤としても使われる。ホウ酸はほとんどのホウ素化合物の出発原料として使われる。ガラスや琺瑯の材料、ニッケルメッキ添加剤、目薬(洗浄、消毒、保存料)、防虫剤、防腐剤、ゴキブリ駆除用のホウ酸団子に使われる。ホウ砂(ホウ酸ナトリウム)としてはガラス、琺瑯、陶磁器などに使われる。子供の理科教材/ 玩具の「スライム」の材料の一つである。スライムはポリビニルアルコール(洗濯糊など)とホウ砂と水をよく混ぜて作られる、液体(流れる)と固体(弾力性がある)の両方の性質を持った物質である。
4.事故などの例
ゴキブリ駆除剤のホウ酸団子は家庭で使われ、自家製でも簡単にできるため、乳幼児が口に入れたり、お菓子と間違えて食べたりする事故が多い。ペットが食べることもある。乳幼児ではホウ酸の量にして数gで死亡ということもある。日本小児科学会の障害速報:No.97 ホウ酸団子の誤食による急性薬物中毒(日本小児科学会雑誌第125巻第1号 102) (chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0097.pdf)
日本中毒情報センターで誤飲事故の多いものとして挙げている。(https://www.j-poison-ic.jp/general-public/eizou/video-teaching/)
またホウ砂やこれを用いた玩具(スライム)の誤飲事故に対する注意が喚起されている。(https://www.j-poison-ic.jp/report/slime202207/)
5.主な法規制及び許容濃度(図表4)
ホウ酸及びホウ酸ナトリウムの有害性はホウ酸又はホウ酸イオンによるものなので、法規制も多くはこの区別がない。化学物質排出把握管理法(化管法)で第1種指定化学物質 No.405 は「ホウ素化合物」で今回のホウ酸/ ホウ砂だけでなくそのほかのホウ素化合物全てを含み、「ホウ素」(B)として計算して1 % 以上含む製品が対象になる。「ホウ素」として1 t/ 年以上取扱った場合に報告の義務がある。ホウ酸(H3BO3)では約5.7 t、ホウ砂(Na2B4O7・10H2O)では約8.8 t でホウ素1 t に相当する。労働安全衛生法(安衛法)で名称等表示及び通知物質では「ホウ酸及びそのナトリウム塩」(政令番号544)及び「三酸化二ホウ素」(政令番号196)という名称で挙げられている。ホウ酸とホウ酸ナトリウムは同じ政令番号544で0.1%以上の含有でSDSによる情報提供が必要であるが、ラベル表示はホウ酸が0.1%、ホウ酸ナトリウムは1%以上と異なっている。三酸化二ホウ素は1 % 以上の含有でラベル等の表示、SDS による情報提供が求められている。作業環境基準は設定されていない。作業環境許容濃度についてはACGIH が「Borate compounds, inorganic」(ホウ酸及び無機ホウ酸)でTLV TWA(Time Weight Average:8 時間の労働時間での平均濃度)2 mg/m3 及びSTEL(Short Time Exposure Limit: 15 分間)6 mg/m3に設定している。また、酸化ホウ素に対してTWA 10 mg/m3 に設定している。日本産業衛生学会はホウ酸(塩)に対しては設定していない。大気汚染防止法で、「ホウ素化合物」として有害大気汚染物質の可能性がある物質として環境省が挙げた248 物質に含まれている。水質に関しては環境基準がある。ホウ素化合物のラットによる生殖毒性試験で無毒性量(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)が1 日当たりホウ素(B)の量に換算して9.6 mg/kg- 体重というデータから耐容1 日摂取量(Tolerable Daily Intake:TDI)が0.096 mg/kg- 体重と考えて、飲料水の基準値(環境基準、水道水水質基準、地下水基準)がホウ素(B)の濃度にして1 mg/L 以下に設定されている。そして工場等からの排水基準及び下水道の水質基準はこの10 倍の10 mg/L 以下(海域以外)に設定されている。これらは人の健康の保護の観点からの水質基準であるが、水生生物保全のための水質基準について優先的に検討すべき物質に挙げられている。海洋汚染防止法は船舶からの排出による海洋汚染を防止するためのもので、国際的規制のマルポール(MARPOL)条約に基づいている。有害液体物質はX 類、Y 類、 Z 類に分類されており、X類は排出禁止、Y, Z 類には制限がある。「ホウ酸」はその混合物が海洋汚染防止法の有害液体物質Y類同等物質に挙げられている。混合物の場合、次の計算式によって判定される。
Sp =Σ(各成分の重量 %)×(各成分の係数)
Sp ≧ 25,000 : X 類物質、25 ≦ Sp < 25,000 : Y 類物質、Sp < 25 : Z 類物質
成分係数(Component Factor)が25 というのは、混合物でほかに有害物質が含まれていない場合、ホウ酸が1 % 以上でY類と同等ということになる。
図表4 ホウ酸/ ホウ砂に関係する法規制
法律名 | 法区分 | 条件など | 対象 |
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR) | 第1 種指定化学物質 | ≧ 1 % (B) | (405)*1ホウ素化合物 |
労働安全衛生法 | 名称等表示/通知対象物
|
表示≧0.3%,通知≧0.1% | (544)ホウ酸 |
表示≧1%,通知≧0.1% | (544)ホウ酸のナトリウム塩 | ||
表示/通知≧1% | (196)三酸化二ホウ素 | ||
作業環境許容濃度 | ACGIH TLV TWA | 2 mg/m3 | Borate compounds, inorganic ホウ酸 |
STEL | 6 mg/m3 | ||
TWA | 10 mg/m3 | Boron oxide 酸化ホウ素 | |
大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質可能性 | 排気 | (221)ホウ素化合物 |
環境基本法 | 水質環境基準
土壌環境基準 |
≦ 1 mg/L
≦ 1 mg/L- 検液 |
ホウ素 |
水質汚濁防止法 | 有害物質: 排水基準 | 海域以外: ≦10 mg/L (B),
海域: ≦ 230 mg/L (B) |
(24)ホウ素及びその化合物 |
下水道法 | 水質基準 | 海域以外: ≦10 mg/L (B),
海域: ≦ 230 mg/L (B) |
(25)ホウ素及びその化合物 |
水道法 | 有害物質: 水質基準 | ≦ 1.0 mg/L(B) | (13)ホウ素及びその化合物 |
土壌汚染対策法 | 特定有害物質(第二種)
地下水基準 第二溶出量基準 土壌溶出量基準 土壌含有量基準 |
≦ 1.0 mg/L (B) ≦ 30 mg/L (B) ≦ 1.0 mg/L (B) ≦ 4000 mg/L (B) |
(24)ホウ素及びその化合物 |
海洋汚染防止法 | 有害液体物質Y類同等 | 混合物: 成分係数25 | (32)ホウ酸 |
食品衛生法 | 容器包装ポジティブリスト | *2 | ホウ酸(ナトリウム、アルミニウム塩を含む) |
“ 条件など” の(B)は、濃度はホウ素としての濃度基準
“ 対象” の( )内の数値は政令番号
*1: 2023年度からは405は管理番号(政令番号は458)
*2: 合成樹脂区分により0.01~30%。0.3mg/m2以下で塗布可
6.曝露などの可能性と対策
6.1 曝露可能性
ホウ酸やホウ砂は薬局で容易に入手でき、家庭でホウ酸団子やスライムを作ることができる。ホウ酸団子をペットや乳幼児が誤って口にする事故がある。乳幼児でなくても食品と間違えて食べてしまうおそれがある。スライムも同様である。ガラスや陶磁器、琺瑯製
品は食器にも使われているが、その容器に接触したり、その容器に入った食品を摂取したりしても、ホウ酸成分が溶け出して人の健康に影響することはない。これらの製品やその原料の製造時には直接曝露のおそれがある。ホウ酸やホウ砂は粉末やペースト状、溶液などで取扱われる。皮膚からの吸収は少ないと考えられているが、粘膜や傷ついた皮膚からは吸収される。微粒子で取扱う場合、粉塵の吸入のおそれがある。
6.2 曝露防止
家庭で粉末を取扱う場合は丁寧に取扱い、粉塵の発生を抑える。ゴム手袋などの保護手袋を着用するほうがよい。こぼれた場合は湿らせてから回収し、ふた付きの容器に回収する。残った分は多量の水で洗い流す。取扱った後は手や容器などをよく洗う。原料や作ったものをペットや乳幼児が誤って口に入れないよう保管場所などに注意する。市販のホウ酸団子はペットや乳幼児が口に入れにくいような容器に入っているものがある。工場で使用する場合は粉塵が発生する場合は設備を密閉化するか、局所排気/ プッシュプル型換気装置を設置し、作業場所の粉塵の許容濃度以下で取扱う。保護手袋(ポリ塩化ビニル製、ニトリルゴム製など)、保護眼鏡、防塵マスクを着用する。近くに洗眼器、シャワーを設置する。取扱後は手をよく洗う。
6.3 廃棄処理
ホウ酸塩はもともと天然に存在する物質なので、大量の水で薄めて下水に流すことができるが、下水道の排水基準はホウ素の濃度にして10 mg/L なのでかなり希釈する必要がある。ホウ素は主に植物の必須元素でもあり、極微量(< 1 ppm)であれば肥料になる。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄処理業者に産業廃棄物として処理する。
免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。