第20回  2-アルコキシエタノール

誌面掲載:2019年3月号 情報更新:2023年10月

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1.名称(その物質を特定するための名称や番号)(図表1)

1.1 化学物質名/ 別名

2- アルコキシエタノール(2-Alcoxyethanol)とはエチレングリコール(エタン-1,2- ジオール:Ethane-1,2-diol:HOCH2CH2OH)の片方のヒドロキシ基(-OH)がアルキルエーテル(R-O-R)に置き換わった物質である。化学式は一般にCnH2n+1OC2H4OH(n は1 ~ 4等)と表すことができる。代表的な物質はアルキル基がエチル基の2- エトキシエタノール(2-Ethoxyethanol:C2H5OC2H4OH)である。エチレングリコールモノエチルエーテル(Ethyleneglycol monoethyl ether:EGEE)ということもできる。グリコールエーテル(Glycol ether)と呼ばれることもある。かなり古くから知られた物質でセロソルブ(Cellosolve)という固有の名称もある。元は商品名だったものが一般名化したものである。エチルエーテルの代わりにメチルエーテルである物質が2- メトキシエタノール(CH3OCH2CH2OH:EGME)、ブチルエーテルである物質が2- ブトキシエタノール(C4H9OCH2 CH2OH:EGBE)である。それぞれメチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどとも呼ばれる。

類似物質にアルコキシ基ではなく芳香族部分を含むフェノキシエタノール(C6H5OC2H4OH)やベンジルオキシエタノール(C6 H5CH2OC2H4OH)がある。さらに、生成時にエチレングリコールの代わりにプロピレングリコール(Propyleneglycol:HOCH2CH(CH3)OH)やエチレングリコールの2 量体(ジエチレングリコールDiethyleneglycol:ROC2H4OC2H4OH)を用いたものもある。後者はカルビトール(Carbitol)という名称もある。

また、2- アルコキシエタノールのヒドロキシ基を酢酸エステルにした物質も使われる。2- エトキシエチル= アセテート(Ethylene glycol monoethyl ether acetate:C2H5OC2H4OCOCH3, EGEEA)はセロソルブアセテートと呼ばれることもある。

そのほかグリコールの両側のヒドロキシ基がエーテルになった一連の物質(グリコールジエーテル)がある。代表的な物質がジエチレングリコールのジメチルエーテル(1- メトキシ-2- (2- メトキシエトキシ) エタン:1-Methoxy-2- (2-methoxyethoxy)ethane:CH3OC2H4OC2H4OCH3)でジグライム又はジグリム(Diglyme)とも呼ばれる。エチルエーテルの場合はエチルジグライム(Ethyl diglyme)である。

いずれも炭素(C)、水素(H)、酸素(O)のみからできている。多くは親水性で似通っているが沸点や溶解性などの違いで使い分けられる。

 

図表1 2- アルコキシエタノール及びその類縁物質の特定

名称(IUPAC) 2-エトキシエタノール

(2-Ethoxyethanol)

2-メトキシエタノール(2-Methoxyethanol) 2-ブトキシエタノール

(2-Butoxyethanol)

2-エトキシエチル=アセテート

(2-Ethoxyethyl acetate)

別名 (エチル)セロソルブ

(Cellosolve)

メチルセロソルブ

(Methyl cellosolve)

ブチルセロソルブ

(Butyl cellosolve)

セロソルブアセテート (Cellosolve acetate)
その他の名称 エチレングリコールモノエチルエーテル

(Ethylene glycol monoethyl ether)

エチレングリコールモノメチルエーテル

(Ethylene glycol monomethyl ether)

エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル

(Ethylene glycol mono-n-butyl ether)

ヒドロキシエチルブチルエーテル

(Hydroxyethyl butyl ether)

エチルグリコールアセテート

(Ethyl glycol acetate)

エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート

(Ethylene glycol monoethyl ether acetate)

酢酸2-エトキシエチル

(Acetic acid, 2-ethoxyethyl ester)

略称 EGEE EGME EGBE EGEEA
化学式 C4H10O2

C2H5OC2H4OH

C3H8O2 CH3OC2H4OH C6H14O2 CH3(CH2)3OC2H4OH C6H12O3, CH3COOC2H4OC2H5
CAS No. 110-80-5 109-86-4 111-76-2 111-15-9
化学物質審査規制法(化審法) 2-411, 2-2424, 7-97 2-405, 7-97 2-407, 2-2424, 7-97 2-740
EC No. 203-804-1 203-713-7 203-905-0 203-839-2
REACH 01-2119560582-38 xxxx 01-2119494721-33 xxxx 01-2119475108-36-xxxx

2-2424: アルキレン(C = 2~8)グリコールモノアルキル(C = 2~8)エーテル

7-97: ポリオキシアルキレン(C = 2~4, 8)モノアルキル(又はアルケニル)(C1~24)エーテル(n = 1~150)

 

1.2 CAS No.、化学物質審査規制(化審法)の官報公示整理番号、そのほかの番号

2- エトキシエタノールのCAS No. は110-80-5 である。化審法官報公示整理番号2-411 は「エチレングリコールモノエチルエーテル」という名称で登録されている。労働安全衛生(安衛)法も既存物質として化審法番号で公表されている。このほか化審法官報公示整理番号に2-2424 と7-97 がある。それぞれ「アルキレン(C=2 ~ 8)グリコールモノアルキル(C=2 ~ 8)エーテル」、「ポリオキシアルキレン(C=2 ~ 4,8)モノアルキル(又はアルケニル)(C=1 ~ 24)エーテル(n=1 ~ 150)」と、炭素数の違う一連の物質の総称名になっている。このため2- エトキシエタノールは2-2424 の「アルキレン」の炭素数2 個(C=2)及び7-97 の「ポリオキシアルキレン」の「アルキレン」の炭素数2 個(C=2)、その重合度n=1、モノアルキルの炭素数2 個(C=2)に相当する。2- メトキシエタノールはアルコキシ基の炭素数は1 個(C=1)で2-2424には該当しないが、7-97 には含まれる。2- ブトキシエタノールはアルキレンの炭素数4 個(C=4)で2-2424,7-97 に含まれる。化審法官報公示整理番号2-407 は「ヒドロキシエチルブチルエーテル」という名称である。2-ブトキシエタノールは4 種(n- ブチル, イソブチル, sec-ブチル, tert- ブチル)の異性体がある。このうち2-sec-ブトキシエタノールは立体異性体(鏡像体: エナンチオマー)を含む。7-97 という番号は「有機縮合系高分子化合物」という分類である。高分子として届け出られた物質の「ポリオキシアルキレン: -OCnH2 n-」には重合度(n)の異なる成分が含まれており、n=1 の物質も含まれていたからと考えられる。EUのEC No. やREACH登録番号はCAS No. 同様それぞれの固有の番号になっている。

 


2.特徴的な物理化学的性質/ 人や環境への影響(有害性)

2.1 物理化学的性質(図表2, 3)

2- アルコキシエタノールは無色透明で揮発性(VOC)の液体である。1 分子内にエーテル結合(R-O-R)とヒドロキシ基を持っているので水や多くの有機溶剤、樹脂の溶解性が大きい。エチレングリコールに比べ、片方のヒドロキシ基がアルキルエーテルになっていることで融点、沸点、引火点が低い。メチル<エチル<ブチルとアルキル基が大きいほど沸点、引火点が高い。アルキルエーテルは、酸素などで酸化されて爆発性の過酸化物を生成しやすい。発火点は比較的低い。親水性で水とどんな割合でも均一な溶液になる(混和する)。n- オクタノール/ 水分配係数logPow は小さく、生物濃縮性はないと考えられる。ヒドロキシ基を含まない2-エトキシエタノールアセテートもよく似ているが水に対する溶解性には限界がある。

 

図表2 2- アルコキシエタノール及びその類縁物質の主な物理化学的性質(ICSC による)

  EGEE EGME EGBE EGEEA
融点(℃) -70 -85 -75 -62
沸点(℃) 135 125 171 156
引火点(℃) (c.c.) 44 39 60 51.1
発火点(℃) 235 285 238 379
爆発限界(vol %) 1.7~15.6 2.3~24.5 1.1~12.7 1.3-14
比重(水=1.0) 0.93 0.96 0.90 0.97
水への溶解度 混和する 混和する 混和する 23g/100mL
log Pow -0.540 -0.503 0.830 0.24

 

図表3 2- アルコキシエタノール及びその類縁物質のGHS分類(NITE による)

GHS分類 EGEE EGME EGBE EGEEA
物理化学的危険性        
引火性液体 3 3 4 3
自然発火性液体 区分外 区分外 区分外 区分外
金属腐食性
健康有害性        
急性毒性(経口) 区分外 区分外 4 区分外
急性毒性(経皮) 区分外 4 3 区分外
急性毒性(吸入:蒸気) 4 4 2 4
皮膚腐食/刺激性 区分外 区分外 2 区分外
眼損傷/刺激性 2B 区分外 2A 2B
皮膚感作性 区分外 区分外
生殖細胞変異原性
発がん性
生殖毒性 1B 1B 2 1B
特定標的臓器(単回) 1(中枢神経系、血液系、腎臓、肝臓) 1(中枢神経系、血液系、腎臓)、

3(気道刺激性、麻酔作用)

1(血液系、呼吸器、肝臓、腎臓)、

3(麻酔作用)

1(血液系)

3(麻酔作用)

特定標的臓器(反復) 1(血液系、精巣) 1(血液系、精巣) 1(血液系) 1(血液系、精巣)
誤えん有害性
環境有害性        
水生環境有害性(短期/急性) 区分外 区分外 区分外 3
水生環境有害性(長期/慢性) 区分外 区分外 区分外 区分外

 

2.2 有害性

GHS 分類例は図表3 に示した。2- エトキシエタノールは吸入による急性毒性は区分4、眼刺激性は区分2 Bになっているがそのほかの急性毒性、皮膚刺激性は区分外と比較的有害性の低い物質と考えられる。皮膚感作性も認められていない。酢酸エステルや2- メトキシエタノールもほぼ同様である。2- ブトキシエタノールはこれらより少し毒性が高い。遺伝子への影響(変異原性)は多くの試験で概ね陰性であり、発がん性はデータがあまりないが「ある」という情報もない。いずれも「ない」といえるだけの情報がないため「分類できない」としている。これに対し、生殖毒性については、2- ブトキシエタノール以外は共通してNITE は主に動物試験から区分1 B としている。2- ブトキシエタノールも発生影響が見られている。標的臓器毒性の単回曝露でも中枢神経系、血液系、腎臓への影響が共通してみられる。反復曝露では血液系への影響が共通している。精巣への影響は生殖毒性と関係があると思われる。2- エトキシエタノールの酢酸エステルは体内に入ると容易に2- エトキシエタノールに分解され、特に長期的な影響はあまり変わらないと考えられる。

2.3 環境有害性

これらの2- アルコキシエタノールは生分解性があり、生物濃縮性もなく環境への有害性は小さいと考えられる。

 


3.主な用途

2- アルコキシエタノールは1 分子内にアルキルエーテルと親水性のヒドロキシ基を持っているので、水のほか多くの有機溶剤や樹脂をよく溶かす。樹脂、塗料、インキ、難燃剤、医薬などの溶剤として用いられている。エポキシ樹脂をよく溶かすので金属や機械部品のエポキシ樹脂塗装によく使われる。トルエンなどのほかの溶剤と混合して使用されることが多い。浸透性がいいので革製品の染色、クリーニングでのしみ抜き剤、汚れの可溶化剤、積層板や自動車エンジンの洗浄剤としても使われている。

 


4.これまでに起きた事件/ 事故等の例

世界保健機関/ 国際化学物質安全性計画(International Programme on Chemical Safety:IPCS)の国際化学物質簡潔評価文書(Concise International Chemical Assessment Document:CICAD)(http://www.nihs.go.jp/hse/cicad/cicad.html) No.67 2- アルコキシエタノール類(Selected 2-Alkoxyethanols)の中に、ヒトへの影響を示すいくつかの例が記載されている。2- エトキシエタノールではほかの化学物質にも曝露していたが、労働者の精子産生量低下が観測されている。2- メトキシエタノールでは血液系や神経系、及び生殖能への影響が示唆され、曝露量と血液への影響に相関があると報告されている。酢酸2-エトキシエチルエステルに曝露された造船所の塗装工においても血液への影響が観察されている。

 


5.主な法規制(図表4)

2- メトキシエタノールや2- ブトキシエタノールは化審法の優先評価化学物質に指定されているのに2- エトキシエタノールは指定されていない。化学物質管理促進法ではいずれも指定化学物質に指定されているので、1 t/ 年以上取扱った場合は、年度末に環境中への排出量の報告が必要で、1 % 以上含む製品を他社などに提供するときはSDS が必要である。労働安全衛生法では名称等の通知及び表示対象物である。生殖毒性で区分されているので、0.1 % 以上でSDS への記載(通知対象物)義務がある。ラベルへの表示(表示対象物)は、GHS 生殖毒性区分1 B のため0.3 % 以上(2- ブトキシエタノールは1 % 以上)で必要である。いずれも有機溶剤中毒予防規則の第2 種有機溶剤である。5 % を超えて含有するものを製造したり取扱ったりする際は有機溶剤作業主任者を置き、局所排気又はプッシュプル型換気を行わなければならない。作業環境の測定、健康診断を行い、結果に対して適切な措置を講じなければならない。作業環境評価基準も設定されている。管理濃度は物質によって異なる。2-エトキシエタノールと2- エトキシエチルアセテートは5 ppm、2- メトキシエタノールは0.1 ppm、2- ブトキシエタノールは25 ppm と沸点が低いほど厳しく設定されている。日本産業衛生学会の許容濃度勧告値、ACGIH TLV(TWA)もほぼ同じ値に設定している。2- メトキシエタノールは労働基準法で疾病化学物質に指定されている。職業曝露で頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、造血器障害、振せん、協調運動障害、肝障害又は腎障害などが生じた場合、使用者(雇用者)は療養などの費用の負担、障害補償の義務がある。2-エトキシエタノール、2-エトキシエチルアセテート、2-メトキシエタノールは女性労働基準規則の対象物質で、作業環境評価基準の管理濃度を超える作業場(第3管理区分)等での業務が禁止されている。

毒物劇物取締法では毒物や劇物には指定されていない。毒物劇物取締法の毒物及び劇物の判定基準は基本的には毒物はGHSの急性毒性区分1 又は2、劇物は区分3と同じである。図表3 の2- ブトキシエタノールのNITEによるGHS 分類で急性毒性(吸入)区分2、(経皮)区分3とあり毒物又は劇物に相当する。しかし、法区分はこれだけで決まるものではなく、平成26 年度の毒物劇物指定のための検討の結果、毒物や劇物には該当しないと判定されている(http://www.nihs.go.jp/law/dokugeki/hyouka/2014/111-76-2.pdf)。

いずれも引火点が21 ℃以上70 ℃未満なので、消防法の危険物第4 類引火性液体第二石油類である。消防法での「水溶性液体」は同量の水と混ぜたときに均一な液体になるかどうかで判断するので、2-エトキシエタノール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノールは「水溶性液体」である。2- エトキシエタノールアセテートは水への溶解度が23 g/100 ml なので「非水溶性液体」である。製造・貯蔵・取扱に市町村長の許可が必要で、取扱いには危険物取扱者の資格が必要である。指定数量は2000 L(非水溶性液体は1000 L)である。消火のために泡消火剤を使用する際は「耐アルコール泡消火剤」が必要である。引火点が65 ℃未満なので労働安全衛生法でも「危険物・引火性の物」である。国連危険物輸送勧告では2- エトキシエタノール、2- メトキシエタノール、2- エトキシエタノールアセテートはそれぞれの化学物質名で国連番号1171, 1188, 1172 がある。国連分類のクラス3(引火性液体)で、容器等級はⅢである。2- ブトキシエタノールは化学物質名での国連番号はない。引火点がICSC には60 ℃(図表2)とあるが、NITE はGHS 分類で引火点が60 ℃を超えているとして区分4(図表3)と判定しており、クラス3(引火性液体)には該当しない。一方、GHS分類の急性毒性(吸入:蒸気)は区分2 として「どくろ」の絵表示の表示が必要である。国連分類の6.1(毒物)も急性毒性による。容器等級とGHS の急性毒性区分の基準は経口、経皮の場合は全く同じである。吸入の場合は少し異なるが、飽和蒸気濃度とLC50 の値から国連分類でも6.1(毒物)の容器等級Ⅱに該当する(ICSC では容器等級Ⅲとしている)。 物質名での国連番号がない場合、「そのほかの毒物、液体、有機物、ほかに品名が明示されていないもの」(TOXIC LIQUID, ORGANIC, N.O.S.)として国連番号2810 がある。ただしこれに関して、上記の毒物劇物の判定と同様GHS 分類で区分2, 3 には該当しないとすれば国連分類には該当しないことになる。国連分類に該当する場合は、船舶や航空による輸送では船舶安全法、港則法、航空法などで容器、包装の制限、標識の表示などの義務がある。海外では陸上や河川、運河による国際輸送もあるのでそれぞれ規制がある。

大気汚染防止法では揮発性有機化合物として大気中への排出削減が求められている。

海洋汚染防止法ではY類物質の99 番目にエチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられておりアルコキシエタノールはいずれもこれに該当する。2- エトキシエタノールアセテートはY類のNo.161 に「酢酸2- エトキシエチル」という名称で挙げられている。

EUの基本的な化学物質管理規制REACH(Registration,Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals:化学物質の登録、評価、認可及び制限)は、全ての化学物質を対象として安全性の調査を行い、リスクの高さにより制限を設けたり(制限物質)、特に認可を受けた用途以外は禁止(認可対象物質)したりする法規制である。EU の法律であるが、化学品(Chemical substance,mixture)をEU内に持ち込む場合はEU外にも影響する。成形品(Article)でも含有成分によっては義務が生じる。2- エトキシエタノール、2- メトキシエタノール、2- エトキシエチルアセテートが、その生殖毒性によって高懸念物質(SVHC:Substances of Very High Concern)に挙げられている。SVHC は認可物質の候補(Candidate for Authorisation)物質である。EU に持ち込む製品(複数部品からなる製品では部品)中に0.1 % 以上含有する場合は、含有情報を提供しなければならない。

 

図表4 2- アルコキシエタノール及びその類縁物質に関係する法規制

法律名 法区分 EGEE EGME EGBE EGEEA
化学物質審査規制法(化審法) 優先評価化学物質
化学物質管理促進法 第1種指定化学物質 ≧1% ≧1% >1%(2021年追加) ≧1%
労働安全衛生法 危険物・引火性
名称等表示/通知対象物 表示≧0.3% 表示≧0.3% 表示≧1% 表示≧0.3%
通知≧0.1% 通知≧0.1% 通知≧0.1% 通知≧0.1%
  有機則 第2種有機溶剤等 >5% >5% >5% >5%
作業環境評価基準 管理濃度 5ppm 0.1ppm 25ppm 5ppm
労働基準法 疾病化学物質 ○*
 女性労働基準規則 就業制限対象物質
作業環境許容濃度 日本産業衛生学会 5ppm

18mg/m3

0.1ppm

0.31mg/m3

20ppm

97mg/m3

5ppm

27mg/m3

ACGIH(TLV) TWA 5ppm 0.1ppm 20ppm 5ppm
生物学的許容値 ACGIH BEI *2 *3 *4 *5
毒物劇物取締法 毒物/劇物
消防法 危険物第4類

引火性液体

第二石油類

水溶性液体

第二石油類

水溶性液体

第二石油類

水溶性液体

第二石油類

非水溶性液体

国連危険物輸送勧告 国連分類 3 3 6.1 3
国連番号 1171 1188 2810 1172
容器等級
大気汚染防止法 揮発性有機化合物(VOC)
海洋汚染防止法 有害液体物質 Y類(99)*7 Y類(99)*7 Y類(99)*7 Y類(161)
食品衛生法

容器包装ポジティブリスト

 

基ポリマー(コーティング)

 

 

 

7(ポリウレタン)の原料成分

 

 

7(ポリウレタン)、8(ポリエステル)の原料成分

 
  添加剤     *8  

*1: 頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、造血器障害、振せん、協調運動障害、肝障害又は腎障害

*2: 尿中、2-エトキシ酢酸(2-Ethoxyacetic acid)(週末作業終了時) 100mg/g クレアチニン補正

*3: 尿中、2-メトキシ酢酸(2-Methoxyacetic acid)(週末作業終了時) 1mg/g クレアチニン補正

*4: 尿中、ブトキシ酢酸(Butoxyacetic acid)(作業終了時) 200mg/g クレアチニン補正

*5: 尿中、2-エトキシ酢酸(2-Ethoxyacetic acid)(週末作業終了時) 100mg/g クレアチニン補正

*6 国連番号 2810の品名は「その他の毒物、液体、有機物、他に品名が明示されていないもの」

(TOXIC LIQUID, ORGANIC, N.O.S.)

*7: 海洋汚染防止法 有害液体物質Y類 No. 99はエチレングリコールモノアルキルエーテル

*8: 使用制限量は樹脂の種類により異なる。(5%, 0.15%, 0.001%)

 


6.曝露などの可能性と対策

6.1 事故や曝露の可能性

引火性があり、蒸気と空気の爆発性混合気体を生じることがある。空気(酸素)との接触で爆発性の過酸化物を生成することがある。

2- アルコキシエタノールは揮発性の液体で、体内には蒸気やミストの吸入によるリスクが高い。皮膚からの吸収もある。室温でも蒸気濃度は有害濃度に達する。沸点の低いものほど有害濃度に達する時間が速い。有害濃度に達しても臭気として感じないことがある。誤って液体が皮膚に付着したり飲み込んだりすることもある。

6.2 事故や曝露防止

取扱い場所近くで炎や火花の発生するような作業はしない。禁煙。容器や設備を密閉化、遠隔操作などによる発散抑制、局所排気/ プッシュプル型換気などを行う。取扱いや保管の容器内を窒素ガスで置換するなど空気との接触を避ける。引火点を超える場合は防爆型電気設備を使用する。加熱する場合は予め過酸化物の有無を確認し、検出された場合は還元剤などを用いて除去する。換気が不十分な場合、有機ガス用の吸収缶を用いた防毒マスクなどを使用する。吸収缶を用いる簡易防毒マスクは使用可能時間(破過時間)があるので注意が必要である。長時間にわたる場合や、大量に漏洩した場合など大量に吸収するおそれがある場合は空気呼吸器などを使用する。

6.3 廃棄処理

珪藻土等に吸収させて開放型の焼却炉で焼却するか、焼却炉の火室に少量ずつ噴霧し焼却する。生分解性があり、希釈して活性汚泥による処理も可能である。これらの処理ができない場合は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託する。

免責事項:掲載の内容は著者の見解、執筆・更新時期の認識に基づいたものであり、読者の責任においてご利用ください。