第24回_サプライヤから高融点はんだに含まれる鉛が成形品中に3wt%含有しているとの連絡がありました。RoHS指令の場合は適用除外ですが、REACH規則のCLSに該当するので情報伝達の義務が生じるのでしょうか?
高融点はんだに含まれる鉛が成形品中に3wt%含有している場合、REACH規則(*1)において鉛がCLS(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation)に収載されているため、情報伝達義務が発生します。REACH規則は、新規化学物質および既存化学物質を対象とする総合的な化学物質管理の法規制であり、RoHS(Ⅱ)指令で適用除外とされている場合であっても要求事項に対応する必要があります。
◆CLSを0.1wt%以上含む成形品への対応
貴社が取り扱うCLSを0.1wt%以上含む成形品の場合、REACH規則に基づく情報伝達をはじめとしていくつかの義務が発生することになります。以下にその内容について記載していきます。
(i)情報伝達
REACH規則第33条に規定があり、安全性データシート(SDS)などを通じて川下企業または消費者へ成形品の情報を伝達する必要があります。第33条では情報伝達の義務が必要となる成形品を以下のように規定しています。
「CLSが0.1重量%を超える濃度で特定された物質を含む成形品の供給者は、成形品の受取人に十分な情報を提供する」
(ii)届出
REACH規則第7条の規定により、貴社が取り扱う高融点はんだが以下の条件を満たす場合、欧州化学品庁(ECHA)へ届出を行う必要があります。
(1)CLSが成形品中に、重量比0.1%を超える濃度で存在する。
(2)CLSが成形品中に、年間に1製造者または輸入者あたり1tを超える量で存在する。
(3)その用途が登録されていない。
届出内容
(1)製造者名(又は輸入者名)
(2)連絡先
(3)利用可能であれば登録番号
(4)物質の情報(識別、分類)
(5)物質のトン数範囲(例:1~10トン、10~100トンなど)
(6)成形品中の物質の用途など
(iii)SCIPデータベースへの登録
先述したREACH規則第33条に該当する成形品の供給者は、廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive)に基づきSCIPデータベースへの登録が必要です。ECHAより公開された「SCIPデータベースの詳細情報要件」(*2)(*3)においては、以下の内容などの情報を必須の登録内容としています。
(1)複雑な成形品の構成部品
(2)含有するCLSの濃度範囲
(3)製造原材料の識別情報
(4)成形品の加工段階で使用される混合物(接着剤、コーティング材など)
CLSが成形品のどの部位にどれ位含まれているかを特定できるようにすることを目的としているため、情報要件を満たすために従来のREACH規則第33条に基づく内容以上の情報収集が必要となることが想定されます。
貴社はCLSを0.1wt%以上含む成形品の供給者としてこれらの対応をする必要があると考えられます。
◆高融点はんだに含まれる鉛の適用除外に関する動向について
高融点はんだに含まれる鉛の適用除外用途については、適用除外用途の見直し調査がパック22(*4)として実施されています。このパック22は現段階で最終報告書が公表されており(*5)、高融点はんだに含まれる鉛に関する適用除外7(a)について、使用用途による分割が提案されています(パック24で検討されている適用除外24の内容は除く)。この分割提案では原則としてこのカテゴリーの期限を2024年7月21日とし、特定したⅠ~Ⅶの用途については、2026年7月21日に設定しています。ただし、この提案については利害関係者からの反対意見もでており、最終的な判断を欧州委員会が行っている状態です。
以上のように貴社は取り扱う高融点はんだについてREACH規則に基づく情報伝達義務などに適切に対応していくとともに、RoHS(Ⅱ)指令における適用除外用途の動向も注視しておく必要があります。
(*1) REACH規則((EC) No 1907/2006)改正反映版
http://data.europa.eu/eli/reg/2006/1907/2021-01-01
(*2) SCIPデータベースの詳細情報要件
https://echa.europa.eu/documents/10162/28213971/scip_information_requirements_en.pdf/9715c4b1-d5fb-b2de-bfb0-c216ee6a785d
(*3) SCIPデータベースの詳細情報要件(環境省仮和訳)
http://chemical-net.env.go.jp/pdf/scip_information_requirements_jpn.pdf
(*4) RoHS指令附属書IIIの適用除外用途の見直し調査(パック22)の最終報告書の概要
https://www.tkk-lab.jp/post/rohs20220218
(*5) パック22報告書
https://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_Pack_22/RoHS_Pack-22_final_report_amended_February_2022.pdf
免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。