第60回_POPs条約のCOP11で「デクロランプラス」が附属書Aに追加決定→化審法の第一種特定化学物質として規制が始まるのはいつ頃か?
デクロランプラスを含むストックホルム条約による廃絶物質(附属書A)収載決定は2024年2月26日に通知されました(*1)。この通知により、1年後の2025年2月26日以降は、ストックホルム条約の第22条3項(b)に従い通告していないすべての締約国で規制が発効することになります。また、第22条3項(b)に従い通告した加盟国については、修正に関する受諾、承認などの文書を寄託者に寄託した日から90日目に当該締約国に対して発効することになります。
日本国内においては化審法の改定を専門家会議(中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会等)で検討していきます(*2)。
令和5年11月17日に開催の第239回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会等合同会合資料「第一種特定化学物質に指定することが適当とされたメトキシクロル、デクロランプラス及びUV-328が使用されている製品で輸入を禁止するものの指定等について(案)」では、条約とは異なる規制をする見込みです(*3)(参考情報参照)。
当初、2023年秋にはCOP11での採択結果を受けた国連事務総長からの通知が届くと思われていましたが、前述の通り通知が2024年2月26日と遅れました。このため、化審法は見直しがされると思われますが、改定日は確認できておりません。
また、締約国は、国連事務総長通知を受けて受託条件等を通知し、国内法による規制案を策定し、WTO TBT通知を行います。したがって、規制日の確認は、関係省庁からの公表以外にPOPs条約事務局やWTO TBT通知でも確認ができます(*4) (*5)。
(参考情報)化審法におけるデクロランプラスの規制措置
デクロランプラスは第一種特定化学物質に指定した際に講じるべき化審法上で必要な措置として「中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会等」にて、検討され現状の結論として以下のようになっています。
化審法施行令における措置内容(案)
1.第一種特定化学物質への指定
2.輸入を禁止する製品の指定
・樹脂に防炎性能を与えるための調整添加剤
・シリコーンゴム
・潤滑油 ・接着剤及びテープ
・電気・電子製品の部品 等
※製品についての区分や表現の仕方等については、管理体制などの確認ができた場合等、必要に応じて変更の可能性あり。
デクロランプラスは、デカブロモジフェニルエーテル (decaBDE) の代替品などとして、電気・電子機器、光学製品、食品包装、建築・建設材料、塗料などに使用されています。こうした用途のうちストックホルム条約の締約国会議の合意では、適用除外用途について、航空宇宙、 防衛産業、医療画像及び放射線治療に用いる機器及び整備などが認められています。
しかしながら、日本国内では条約で適用除外とされた用途を含めて、2024年末頃までにデクロランプラスから他の物質・技術への代替が完了する見込みであり、適用除外用途を設ける必要はないと判断しています。したがって、化審法における措置としては、製造・輸入およびその他の使用を禁止するという内容になります。
製造・輸入およびその他の使用を禁止する措置については、過去10年間のデータで製造が確認できないことから、輸入製品への措置が中心となっています。これまでのデクロランプラスの使用状況及び当該化学物質が使用されている主な製品輸入の状況、および海外における使用の状況を調査した結果、先に挙げた樹脂に防炎性能を与えるための調整添加剤など4品目についてデクロランプラスが使用されている場合、輸入禁止製品として指定される見込みです。
(*1) ストックホルム条約による廃絶物質(附属書A)収載決定通知
https://www.pops.int/TheConvention/Communications/tabid/3391/Default.aspx
(*2) 中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会
https://www.env.go.jp/press/press_02366.html
(*3) 第一種特定化学物質に指定することが適当とされたメトキシクロル、デクロランプラス及びUV-328が使用されている製品で輸入を禁止するものの指定等について(案)
https://www.env.go.jp/content/000172708.pdf
(*4) ストックホルム条約附属書の改正
https://chm.pops.int/Countries/StatusofRatifications/Amendmentstoannexes/tabid/3486/Default.aspx
(*5) 製品要件に関する情報の検索と管理
https://eping.wto.org/en/
免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。