第69回_EUに消費者向電子製品を輸出→REACH規則の制限やRoHS指令の除外規定が改正され適用日が規定→工場出荷後/現地法人/卸店/小売店を経て顧客に届くが、物流在庫はどこまで管理が必要?
REACH規則1)やRoHS指令2)などのEU法令は製品を上市する時点で適用されます。
REACH規則の制限は、物質とその用途および日付を指定し、その日付以降その用途での使用は禁止されます。この詳細は同規則附属書ⅩⅦに収載されていますので、自社製品がその規制に該当するのかを確認する必要があります。したがって日本の輸出者はその日以降上市した製品中には制限物質が含まれていないことを確実にする様、管理することが必要になります。
また、RoHS指令の適用除外は、特定有害物質の含有を特定の種類の電気電子機器については期限日までは認められています。この詳細は同指令附属書Ⅲ(全カテゴリーの電気電子機器を対象)およびⅣ(カテゴリー8および9の電気電子機器が対象)に収載されていますので、自社製品に対して該当するか否かを確認する必要があります。したがって日本の輸出者は、その期限日を超えて上市した製品にはその物質が含まれないことを確実にする様、管理することが必要になります。
ここで上市とは具体的にどういうことを意味するのか、特にご質問のEU域外からの輸入品についてはどういった状態となることが上市なのかが重要です。
両法令において上市とは以下の様に定義されています。
REACH規則第3条12項では、「上市」とは、有償であるか無償であるかに拘わらず、第三者に対して供給又は利用可能にすることされ、また、輸入は上市とみされます。
一方、RoHS指令第3条12項では、「上市」とは、欧州連合市場において電気電子機器を最初に利用できるようにすることを意味し、第3条11項では「市場で利用可能にすること」とは、有償か無償かを問わず、商業活動の一環として欧州連合市場で流通、消費または使用するために電気電子機器を供給することを意味します。REACH規則では輸入は上市と見做すとあり、それ以上は述べていません。
一方、RoHS指令はEUの「新たな法的枠組み」(New Legislative Framework:NLF)に含まれる1つの指令ですが、NLFのガイドである「ブルーガイド2022」3) では、EU域内の消費者に届く前にまずEUの税関を通り、通関した時点でEU域内において利用可能となり、上市の要件を満たすことになると説明されています。
また「市場で利用可能とする」とは、製品が個別に製造されるにせよ、あるいは連続製造されるにせよ、その製品の型式ではなく、個々の製品についていうものであるとしています。
以上のことからEU域外からの輸入品がEU域内へ上市された時点とは、EUの通関手続きが終了してEU域内で利用が可能になった日であると考えられます。
また、オンラインまたはその他の遠隔販売手段を通じてEU域内へ販売される製品の場合では、EU域内のその製品の使用者が市場で入手可能となる時点、すなわちネット上に販売品として掲載された時点を上市と考えることができます。
最後に、REACH規則の制限対象やRoHS指令の適用除外については状況に応じて検討されており、随時新たな規定が公表されますので、これらの動向に注意する必要があります。
最近の例では、本年5月に、REACH規則の制限のentry70として収載されていた環状シクロヘキサン化合物の対象物質の追加や制限用途が見直され 4)、またRoHS指令ではカドミウムの適用除外用途やその期間について附属書Ⅲの改正 5) が行われました。
1)REACH規則
https://echa.europa.eu/substances-restricted-under-REACH
2)RoHS指令
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32011L0065
3) EU製品規則の実施に関する「ブルーガイド2022」
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=OJ:C:2022:247:FULL
4) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:L_202401328
5) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A32024L1416
免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。