第80回_デクロランプラスを使った部品を製品に組み込んで国内及びEUに輸出→いつから販売禁止になる?

残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約1)、通称POPs条約とは、 環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル等の残留性有機汚染物質の、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している条約です。
日本やEUなど条約を締結している加盟国は、対象となっている物質について、各国がそれぞれ条約を担保できるように国内の諸法令で規制することになっています。POPs条約の規制は、日本では、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)2)であり、EUでは規則(EU) 2019/1021(POPs規則)3)になります。

2023年5月1日~5月12日にジュネーブ(スイス)において、POPs条約の第11回締約国会議(COP11)が開催され4)、新たに「デクロランプラス」「UV-328」「メトキシクロル」を同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定されました。POPs条約の締約国会議にて、同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定された物質は、POPs条約第22条に基づき国連事務総長から採択の通知がされた日から1年を経過した日(以下発効日)に発効し、締約国は国内法を整備することになっています。

日本での、デクロランプラスについては、ストックホルム条約の第11回締約国会議において、廃絶の対象物質とすることが決定されたことから、適用除外とされた用途を除いて、その製造・使用が禁止される予定です。締約国会議での採択後に経済産業省、厚生労働省及び環境省の3省合同で規制に向けた手続きが行われています。そのため、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律におけるデクロランプラス、UV-328及びメトキシクロルに係る措置(案)」5)に対する意見公募が行われ多くの意見が寄せられていました。デクロランプラスは、POPs条約において、航空宇宙、防衛産業、医療画像及び放射線治療に用いる機器及び設備などの用途を適用除外することが認められているものの、日本国内では条約で適用除外とされた用途を含めて、2024年末頃までにデクロランプラスから他の物質・技術への代替が完了する見込みであり、適用除外用途を設ける必要はないと判断しています。 したがって、化審法における措置として政府により正式な日時の発表はありませんが、製造・輸入およびその他の使用を禁止される可能性が高くなっています。

EUでも、POPs条約の第11回締約国会議を受けて、デクロランプラスを含むPOPs条約による廃絶物質(附属書A)収載決定は2024年2月26日に通知されています。この通知により、1年後の2025年2月26日以降は、POPs条約の第22条3項(b)に従い通告していないすべての締約国で規制が発効することになります。それに伴い、2024年6月24日にEU委員会から、POPs規則の改定に関するドラフトが発表され、意見徴収が6月26日から7月24日まで間に行われました。ドラフトによれば、POPs規則の付属書Iは改正される予定であり、その後、EU官報で公表され、その20日後に発効され、2025年2月26日から適用される予定です。この改正は、POPs規則に対して、その全てが拘束力を持ち、すべての加盟国に直接適用されることとなります。

1)残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約
https://chm.pops.int/TheConvention/Overview/TextoftheConvention/tabid/2232/Default.aspx

2)化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/348AC0000000117

3)残留性有機汚染物質(POPs)に関する規則((EU)2019/1021)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1562636748591&uri=CELEX:32019R1021

4)ストックホルム条約第 11 回締約国会議(COP11)の結果の概要
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/files/pops/SCCOP11.pdf

5) 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律におけるメトキシクロル、デクロランプラス及びUV-328に係る措置(案)に関する意見公募の結果について
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000273186
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000273187

6) パブリックコンサルテーションとフィードバック(残留性有機汚染物質 – デクロランプラス)
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/13888-Persistent-organic-pollutant-dechlorane-plus_en

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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