第89回_REACH規則にでてくるCLSとはどのようなものでしょうか?

REACH規則1)におけるCLS(Candidate List of Substances of very high concern)とは、認可対象候補高懸念物質リストのことで、REACH規則において、将来的に認可対象となる可能性のある物質のリストのことです。CLSリストに記載されている物質は、REACH規則の第 57 条のSVHC(高懸念物質)の基準により、第 59 条の手順に従って特定された物質です。なお、CLS リストは半年毎に更新されます。
REACH規則の認可候補物質とは、認可物質は認可を受けた者が認可を受けた条件でしか使うことができない一般的な使用禁止物質の候補物質です。CLSに掲載される物質は以下のような特性を持つものが多数存在します。

a) 発がん性物質 区分1A 1B
b) 変異原性物質 区分1A 1B
c) 生殖毒性物質 区分1A 1B
d) PBT物質 難分解性、生物蓄積性、有毒な物質
e) vPvB物質 極めて難分解性で極生物蓄積性が非常に高い物質
f) 内分泌かく乱物質やPBT物質、vPvB物質の基準を満たさないが、極めて健康や環境に深刻な影響を及ぼすおそれがある物質

となっています。

これらの物質を含む製品をEU市場に供給する場合、拡張安全データシート(e-SDS)を提供する義務が発生することがあります。
REACH規則では、CLSに指定された物質の中から、認可対象物質として、附属書XIVに収載され、認可の義務が課され、また、EUの廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive 2008/98/EC 以下WFD)3)により、EU域内へ輸入される成形品及びその複合製品でCLSを0.1wt%超えて含有する場合には、販売目的であるか否かを問わずSCIPデータベースへの情報登録が義務付けられています。SCIPデータベース登録情報は、「成形品特定情報」「安全な使用に関する情報」「CLS物質情報」「CLSの含有箇所に関する情報」などです3)。
SCIPデータベースとは、2018年6月のWFDの改正で、無害な物質循環を図るために、製品及び材料中のCLS物質含有の有無について全ライフサイクルを通じた情報伝達が必要であることが示されました。WFDの第9条(1)(i)では、EU域内のすべての成形品供給者に対して、REACH規則第33条に従い、欧州化学物質庁(ECHA)に情報を提供するように要求しています。これに従い、ECHAはSCIPデータベースを構築し、2021年1月以降、成形品供給者はこのデータベースに情報提供が必要となりました。

1)REACH規則
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/HTML/?uri=CELEX:02006R1907-20231201

2)高懸念物質の候補リスト
https://echa.europa.eu/candidate-list-table

3) SCIP データベースの詳細情報要求
https://echa.europa.eu/documents/10162/28213971/scip_information_requirements_en.pdf/9715c4b1-d5fb-b2de-bfb0-c216ee6a785d

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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