第122回_REACH規則に関して物質の種類ごとの登録方法とは?登録が必要なもの・そうでないものとの判断基準は?

ご質問のREACH規則(*1)の登録判断は、年間1トン以上の物質をEU域内で製造・輸入するかどうかが大きな判断基準の一つとなります。その上で、ECHAへ照会を行い、既に登録されているまたは登録の動きがある場合は状況に応じた対応を行い、未登録の場合には適用除外の要件が適用されるかを考慮して物質としての登録が必要かを判断することになります。

◆登録が必要となる主な要件

REACH規則の登録は、EU域内で物質を製造または輸入する事業者、または対象物質を年間1トン以上輸出するEU域外の製造者が指名する唯一の代理人(OR: Only Representative)に義務付けられています。対象となる物質の種類として考えられるものとしては、化学薬品のような物質そのものや塗料のような混合物、特定の条件を満たす成形品に含有する物質があります。
未登録の物質の場合、登録手続きが必要となりますが、以下のような適用除外がREACH規則第2条に規定されています。

・放射性物質、医薬品、食品添加物、飼料用添加物など、他のEU法令でより厳格に管理されている物質
・再輸出を視野に入れた一時保管や輸送中の物質
・非単離の中間体
・防衛に関連するEU加盟国により許可を受けた物質
・REACH規則の附属書IVおよびVに収載されている物質
(水、窒素、特定の天然鉱物など、科学的にリスクが低い物質)
・ポリマー(高分子物質)

ただし、ポリマーについては後述するそのポリマーを構成するモノマーが一定の要件を満たす場合は、モノマーの登録が必要となることがあります。

◆物質の種類ごとの登録について

物質の種類は大きくA.混合物を含む物質、B.成形品に含有する物質、C.ポリマーに分けて考えてみます。それぞれについて以下のようになります。

A.物質そのもの、または混合物に含まれる物質

登録をしようとする事業者にはECHAへの照会の義務があります。この照会は対象物質が既に登録済みか、または登録しようとしている他社の有無を確認するために行います。登録しようとしている他社の有無を確認する目的は、同一物質を登録する者が複数いた場合にこれらの負担を軽減し、効率的に登録を進めるために登録者間での情報共有することにあります。ECHAへの照会プロセスで共同登録者が存在することが判明した場合、情報共有の枠組みに参加し、試験データなどを共有します。こうした仕組みを活用しながら必要に応じて必要な技術文書を作成し、ECHAへ登録書類を提出することになります。こうした登録に関するデータ共有に関する内容については、「データ共有の手引き(*2)」が用意されています。
なお、貴社以外で同一サプライチェーン上のEU域外の製造者、調合者、または成形品製造者などが唯一の代理人を指定している場合、唯一の代理人によって登録がカバーされるEU域内の輸入者については、REACH規則上の「川下利用者」となり、自身で登録する必要がなくなります。ただし、登録の内容と貴社の用途が異なる場合、川下利用者として化学物質安全性評価(CSA)を更新するためのばく露シナリオに関する情報提供などの対応が必要になることがあります。

B. 成形品に含まれる物質

成形品(製品)中の物質も、一定の条件を満たす場合に登録義務が生じます。例えば芳香剤の香り成分など物質が成形品から意図的に放出される場合に物質がその用途に関して未登録で、放出される物質の総量が年間1トン以上であると物質として登録手続きを行う必要があります。

C. ポリマー

ポリマーそのものは登録が免除されています。ただし、以下の条件を共に満たす場合にはモノマーとしての登録が必要となります。

・ポリマー中に含まれる特定のモノマーが2重量%以上
・モノマーの総量が年間1トン以上

REACH規則に関する登録は、年間1トン以上取り扱うことを大前提とし、適用除外規定やECHAへの照会プロセスなどを通じて登録とその対応の判断をすることになります。

(*1)REACH規則
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02006R1907-20250623
(*2)データ共有の手引きGuidance on data sharing Version 4.0 December 2022
https://echa.europa.eu/documents/10162/13631/guidance_on_data_sharing_en.pdf/545e4463-9e67-43f0-852f-35e70a8ead60