第2回_Prop 65 Short Form 警告表示の改訂
米国カリフォルニア州法Proposition 65(Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986: 以後Prop 65 と記述)の警告表うち、「Short Form」についての改定案が、OEHHA(the Office of Environmental Health Hazard Assessment: カリフォルニア州環境保護庁環境健康有害性評価局)により提示された。これまでの経緯と改定案の概要につき以下に説明する。
1.Prop 65 のShort Form 警告
Prop 65 のリストに収載されている物質を含む製品によるばく露が、NSRL(発がん性化学物質の重大なリスクレベル)やMADL(生殖毒性を引き起こす化学物質の最大許容線量)のセーフハーバーレベル(Prop 65 リストに記載されている物質毎のリスクと認定されるレベル)以上の場合、消費者製品の製造、輸入、流通業者等は警告表示を付帯する義務がある。消費者向けばく露に関する警告表示は、「California Code of Regulations」 Title 27 の§25602(ConsumerProduct Exposure Warnings- Methods of Transmission.)に伝達方式が、§25603(Consumer Product Exposure Warnings-Content)に表示内容が規定されている。この中の§25603(a)で「完全な長さ」の警告文が定められているが、警告文すべてを製品ラベルに記載することが難しい小型製品のラベルに「Short Form」による警告表示が許可されている(§25603(b)で規定)。長い文章の警告をラベル等に表示することが難しい場合、化学物質名等を記載しなくても「WARNING:Cancer -www.P65Warnings.ca.gov.」(発がん性物質の場合)と短く記載することも可能にするものである。しかし、小型製品以外のShort Form 警告表示を明確に禁止していなかったため、大型製品にもShort Form 警告表示が多用されてしまう事態を招いた。このため、消費者製品向けのShort Form 警告の改定が検討されることになった。
2. Short Form 警告改定の経緯
上記により2021 年1 月にOEHHAは、Short Form 警告の改定案と理由書を通知した。
この改定案の§25602(a)(4)において、Short Form 警告は次の3 つの条件を満たす場合のみ使用可能に変更する案が提示された。
(A) 表示に利用できる製品の総表面積が5 平方インチ以下(2021 年12 月の改正案で12 平方インチ以下に変更)である。
(B) パッケージの形状、サイズが§25603(a)に規定されている「完全な長さ」の警告コンテンツに適応できない。
(C) 警告全体は、§25601(c)に準じた型やサイズでなければならない。製品の他の消費者情報に使用される最大の文字サイズ以上で印字しなければならず、文字サイズを6 ポイント以上にしなければならない(「文字ポイント6 以上」は改定前から規定済み)。
また§25603(b)(2)で、警告の表示内容を以下に変更するとされた(発がん性物質の場合)。「WARNING:Cancer RiskFrom [発がん性物質名] Exposure -www.P65Warnings.ca.gov.」
3. 改定案の修正
前項の通知に対し個人及び団体から162 の書面によるコメントが提出された。また2021 年3 月11 日に公聴会が開催され、OEHHAは21 件の口頭コメントを受けた。これらパブリックコメントを検討した結果、2021 年12 月17 日に改定案の変更通知が公開され、これに対して36 の個人と団体からコメントを受けた。OEHHAは改定案を更に修正し、2022 年4 月5 日にパブリックコメントのために再改定案をリリースし、4 月20 日までコメントを受け付けた。
4. 再改定案(1)(2)
前々項で述べた第一回改定案のShort Form 警告を使用可能とする3 つの条件に対し、ラベルサイズに関して多くのコメントがあり、ラベルサイズが規定表面積(12 平方インチ)を超える製品に長文の警告を使用することの実現可能性やラベルサイズの決定方法について疑問を投げかけられた。このため2022 年4 月5 日の再改定案では、Short Form 警告を使用可能とする§25602(a)(4)の3 つの条件について、前回の改定案から以下の点が変更された。
・(A)と(B)全体が削除。(C)は、「製品の他の消費者情報に使用される最大の文字サイズ以上で印字しなければならない」が削除。
これにより現行規定からの主な変更点は、§25602 で「警告全体は、§25601(c)に準じた型やサイズでなければならない」が追加になり、§25603 で警告表示に物質名記載不要の条項が削除され、警告表示は以下のように物質名の記載が必要になった(発がん性物質の場合)。「WARNING:Cancer risk from exposure to [発がん性物質名] -www.P65Warnings.ca.gov.」
【参考資料】
・ https://oehha.ca.gov/media/downloads/crnr/notice2ndmod040522.pdf
・ https://oehha.ca.gov/media/downloads/crnr/proposedregtext2ndmodificationshortform040522.pdf
◆ トピックス
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(一社)東京環境経営研究所 野村 愼一 氏
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