第76回_POPsリストにPOPs条約附属書Dに基づく提案に向けてD4~D6のシロキサン3種類がECHAで意見募集→実際にPOPs条約として制限リスト掲載まで、どの位の審議期間がある?(一般的な審議期間について)

POPs条約は正式には「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」と呼ばれ、残留性有機汚染物質(POPs)から人間の健康および環境を保護する目的で2001年に採択され2004年に発効しました。POPs条約には附属書がA~Gまであり、附属書Dは提案の根拠となる情報について定めています(*1)。プロセスとしては加盟国が附属書Dに基づいて提案し、残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)で検討され、加盟国会議(COP)にて採択される流れとなります。検討が順調に推移した場合で、POPs条約へ追加の採択までの審議期間は3~4年程度になると考えられます。

◆提案から採択までのプロセス

POPs条約における提案から採択までのプロセスについてECHAのホームページの情報に基づいて以下に記載します(*2)。

ステップ1(POPRC):提案書の作成と提出(EUを含むPOPs条約締約国)
ステップ2(POPRC):提案書の評価
ステップ3(POPRC):リスクプロファイルの策定
ステップ4(POPRC):リスクプロファイルの採択
ステップ5(POPRC):リスク管理評価の策定
ステップ6(POPRC):リスク管理評価の採択
ステップ7(POPRC):追加物質として勧告
ステップ8(COP):POPs条約の附属書A、B、Cへの物質の記載に関する決定
ステップ9:POPs条約を反映したPOPs規則付属書I、II、IIIおよび/またはIVの改正

POPRC(原則1年に1回開催)、COP(原則2年に1回開催)

通常、ステップ1,2は1回のPOPRCで検討されます。その他のステップについても開催1回につき2ステップが基本の流れとなります。したがって、ステップ2(提案)からステップ3,4(1年)、ステップ5,6(1年)、ステップ7,8(8か月~1年8か月)となり、3~4年程度かかることになります。なお、検討により新たなリスクなどが発見されるなど判断する情報が不十分という判断となった場合、結論は翌年の会議に持ち越されることになりますので、こうした内容を考慮すると一般的な審議期間は3~4年よりもう少し長期にわたると思われます。

◆D4~D6シロキサンの状況

ご質問のPOPs条約への提案に向けたD4~D6のシロキサン3種類の現在の状況としては、ECHAによる意見募集が2023年6月15日から8月10日まで実施 (*3) され、寄せられたコメントが公表されている状況です。この後、寄せられたコメントを受けて欧州委員会の提案が作成され欧州理事会との調整を経て、POPRCへの提案内容が決定される見通しです。POPs条約による規制は、取り扱う物質の使用制限につながりますので、D4~D6のシロキサンを取り扱う利害関係者においては、先にあげたURL(*3)に追加されていく情報などをもとに今後どのような提案が作成されるのか注視しておく必要がありそうです。

(*1) ストックホルム条約(POPs条約)(2019年版)
https://www.pops.int/TheConvention/Overview/TextoftheConvention/tabid/2232/Default.aspx

(*2) POPs規則の対象となる新しい物質の提案
https://echa.europa.eu/proposals-for-new-pops

(*3) POPsとして提案された物質のリスト(Octamethylcyclotetrasiloxane (D4); Decamethylcyclopentasiloxane (D5); dodecamethylcyclohexasiloxane (D6))
https://echa.europa.eu/list-of-substances-proposed-as-pops/-/dislist/details/0b0236e184f17c3e

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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