第93回_電池を動力源とする製品で電池を付属しないで上市する場合、電池規則の要件で対応が必要な内容はあるのでしょうか?

EU電池規則(*1)は電池を重要なエネルギー源と捉え、持続可能な開発やグリーンモビリティ、クリーンエネルギー、気候中立性を実現する重要な要素の1つとして電池のライフサイクル全体を想定して制定された規制となります。
規制の要件としては有害物質の制限やカーボンフットプリントの情報、リサイクル材料の使用、耐久性などがあります。
ご質問のケースにおいて、貴社製品は電池を付属しないで上市するため、EU電池規則の要件への対応は基本的には不要と考えられます。ただし、貴社の製品の動力源がポータブル電池または軽量輸送手段用電池(LMT)である場合、その取り外しと交換について設計上の配慮をするうえでの要件が定められていますので、その要件に適合している必要があります。以下にEU電池規則の適用範囲を中心に条文を確認していきます。

◆EU電池規則の適用範囲

EU電池規則では、第1条に適用範囲が記載されています。

第1条3項

形状、体積、重量、設計、材料組成、化学的性質、使用、または目的に関係なく、ポータブル電池、始動電池、照明および点火電池(SLI電池)、LMT電池、電気自動車用電池、および産業用電池のすべてのカテゴリの電池に適用される。また、製品に組み込まれる、または製品に追加される電池、または製品に組み込まれる、製品に追加されるように特別に設計された電池にも適用されるものとする。

第1条5項

以下に組み込まれている、または組み込まれるように特別に設計された電池へは適用を除外する。

(a)加盟国の重要な安全保障上の利益の保護に関連する機器、武器、弾薬、戦争資材(特に軍事目的を意図していない製品を除く)
(b)宇宙用途に設計された機器

上記のようにEU電池規則は、化学エネルギーの直接変換によって生成された電気エネルギーを供給し、内部または外部のストレージを持ち、1つ以上の非充電式または充電式電池セル、モジュール、またはそれらのパックで構成されると定義される電池または、電池が組み込まれた機器が対象となっています。したがって、貴社が上市する電池が付属しない製品自体はEU電池規則の対象範囲外と考えられます。

◆ポータブル電池またはLMT電池を動力源とする製品(第11条)※2028年2月18日より適用

第11条ではポータブル電池またはLMT電池を組み込んだ製品を市場に出す自然人または法人は、製品の寿命中いつでもエンドユーザーがそれらの電池を容易に取り外して交換できるようにする必要があると規定されています。ポータブル電池について、取り外し可能かどうかは、専用のツールを使用せずに、市販のツールを使用して製品から取り外すことができることを要件としてしています。ただし、例外規定として常時水にさらされる条件で使用される機器などは、独立した専門家のみがバッテリーを取り外しおよび交換できるように設計することも可能としています。LMT電池については、バッテリー、およびバッテリーパックに含まれる個々のバッテリーセルが、製品の寿命中いつでも独立した専門家によって容易に取り外しおよび交換可能であることを保証することと、取り外した後、機能、性能又は安全性に影響を与えることなく他の互換性のある電池で代用できることを取り外し可能の要件としています。

また、製品にバッテリーの使用、取り外し、および交換に関する指示と安全情報が添付する必要があるとしています。これらの指示とその安全情報は、エンドユーザーが理解しやすい方法で、公開されているWebサイトで、オンライン上で恒久的に利用可能するなどの規定が確認できます。以上の内容からすると貴社製品がこれらの電池を使用する製品の場合、上市する製品に対し、エンドユーザーが容易に交換できるような設計上の配慮を行い、安全情報を公開する必要があるといえそうです。

(*1)電池および廃電池に関する規則(EU) 2023/1542
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02023R1542-20240718

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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