第1回_EUでは適用される法基準に合っていない製品の摘発はどのように実施される?

1.概要

加盟国の税関や市場監視当局が違法(不適合)製品を発見した場合の手順はGPSR第26条に規定されています。

(i) 発見した違法製品の措置はリスクに応じて以下が適用されます。
・販売の停止
・販売品の回収
・違法製品のリスクの公開 など

(ii)加盟国は自国の当局または経済事業者が講じた是正措置について、セーフティ・ゲート迅速警告システム(Safety Gate Rapid Alert System)(旧RAPEX:Rapid Exchange of Information System)を通じてEU委員会に通知します。
これは、例えばCEマーキング製品などはEU域内自由流通が原則になっていますが、加盟国が流通をとめたので、EU委員会に通知するものです。加盟国の貿易におけるセーフガード(緊急輸入制限)権限の行使です。

(iii)通知を受けてEU委員会は通知内容のアセスメントを行い、必要に応じて他の加盟国に通知します。

(iv)通知を受けた加盟国は対応行い、EU委員会に通知します。

(v) 違法製品の措置はSafety Gateで公開されます。

2. 対象となる製品の範囲

消費者向け製品を中心に、非常に幅広い製品が対象となります。

(i)対象:おもちゃ、家電製品、自動車、化粧品などの消費財に加え、専門家向け製品や環境リスクを伴う製品も含まれます。
(ii)除外:医薬品、医療機器、食品などは専用の別システムがあるため、Safety Gateの対象外です。
(iii)具体的な摘発例:RoHS指令やREACH規則への不適合品だけでなく、防護マスクや歯のホワイトニング剤、衣料品(手袋、パジャマ等)、さらには大型トラックまで、多岐にわたる製品が摘発されています。子供が誤食する恐れのある「食品模造品」も厳格に規制対象とされています。

3. 事業者が不適合を発見した場合の対応

製造者や輸入者などの経済事業者が、自社製品に危険性があると認識した際に、自発的に当局へ通知するための専用窓口の“Safety Business Gateway”が用意されています。これにより、事業者は迅速に法的義務を果たすことが可能です。

4.市場監視当局の権限と不遵守への対応

(i)情報共有の仕組み
法令に適合しない製品や事故が発生した際、製造者、輸入者、販売店などの経済事業者は、専用ポータルサイト「Safety Business Gateway」(第25条)を通じて情報を報告し、加盟国の当局やEU委員会と共有します。

(ii)市場監視の法的根拠
市場監視の具体的な執行は、「市場監視規則 (EU) 2019/1020」に基づいて行われます。この規則により、加盟国の当局には法令を遵守させるための強力な調査・執行権限が付与されています。

(iii)当局の主な執行権限(第14条)
市場監視当局は、少なくとも以下の権限を行使して調査や是正措置を実施します。

-文書・情報の要求:技術仕様書や適合性データ、供給網の詳細、流通量などの情報をあらゆる形式(コピー含む)で提出させる権限。
-立入検査の実施:事業者の敷地や輸送手段に立ち入り、予告なしに物理的な検査を行う権限。
-サンプルの取得と検査:製品サンプルを入手し、不適合を確認するために分解や検査を行う権限(秘密裏の取得も含む)。
-是正措置の命令:不適合の是正やリスク排除を要求し、事業者が応じない場合は、製品の販売禁止、制限、回収(リコール)を命じる権限。
-罰則の適用:法令違反に対して刑罰や制裁を科す権限。
-ウェブサイト等への対応:重大なリスクを排除するために必要な場合、オンライン上の情報提供を制限する等の権限。

5. 営業秘密の保持

違法製品あるいは違法が疑われる場合であっても、その製品に対する営業秘密は尊重されます。情報共有はいくつものシステムでアクセス制限が行なっています。市場監視のために複数のシステムが運用されていますが、近年はこれらの一体化や情報共有が進んでいます。

(i)Safety Business Gateway:事業者と当局、EU委員会の間の情報交換に使用されます。
(ii)ICSMS:当局や税関が使用する専門的な通信システムで、市場監視情報の共有に特化しています。
(iii)Safety Gate (旧RAPEX):消費者向けのパブリックポータルであり、危険な非食品製品の情報を広く提供します。
(iv)運用ガイドライン:決定 (EU) 2019/417により、通知基準の明確化やリスク評価の手順が定められています。これらの手順は、企業の設計審査(DR)の参考としても活用できます。

化学物質法規制研究会

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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