第3回_ESPRの優先対象製品に鉄鋼やアルミニウム→鉄やアルミを含んだ中間製品もESPRの対象?

EU委員会からESPR(Ecodesign for Sustainable Products Regulation 持続可能な製品のためのエコデザイン規則)(*1)の優先対象製品に関して、JRC(Joint Research Centre:共同研究センター)から報告書「持続可能な製品規制のためのエコデザイン:新製品の優先順位に関する研究」(*2)が2024年11月13日に発表されました。研究結果の要旨は以下です。

分析の結果、11の最終製品(繊維・履物、家具、タイヤ、ベッド用マットレス、洗剤、塗料・ワニス、潤滑剤、化粧品、玩具、漁具、吸収性衛生用品)、7つの中間製品(鉄鋼、汎用化学品、非鉄・非アルミニウム金属製品、アルミニウム、プラスチック・ポリマー、パルプ・紙、ガラス)、および3つの横断的要件(耐久性、リサイクル性、再生材含有率)が、第1次ESPR作業計画の策定に向けた次段階の優先候補として特定されました。

JRCは、EUの行政執行機関であるEU委員会の「内部科学サービス組織」です。「ESPR(持続可能な製品のためのエコデザイン規則)」の対象品目の選定なども、このJRCが膨大なデータ分析と科学的評価を行った結果に基づいています。「11の最終製品」や「7つの中間製品」の選定は、主にJRCの分析によるものです。

JRCは以下のような基準で製品を評価しています。

・環境負荷:その製品がどれだけ炭素排出や資源消費に影響を与えているか。
・改善の可能性:エコデザインによってどれだけ環境負荷を減らせる余地があるか。
・経済的影響:規制を導入した際、EU市場にどのような経済的メリット・デメリットがあるか。

鉄鋼やアルミニウムは中間製品の位置づけになっており、スコープは鉄鋼やアルミニウムの板、パイプや鋳物までで、川下企業または川下に近い川中企業がサプライヤーから調達する部品は中間製品には該当しないようです。この研究報告書は最終決定ではなく、決定はEU委員会の実施規則になります。実施規則の告示時期は「Ecodesign for Sustainable Products and Energy Labelling Working Plan 2025-2030」(*3)によれば、鉄鋼は2026年、アルミニウムは2027年になっています。

ESPR第18条5項に以下を規定しています。

5 EU委員会は、2025年4月19日までに採択される最初の作業計画において、以下の製品群を優先するものとする。
(a) 鉄鋼 (b) アルミニウム (c) 繊維製品(特に衣類及び履物) (d) 家具(マットレスを含む) (e) タイヤ (f) 洗剤 (g) 塗料 (h) 潤滑剤 (i) 化学物質 (j) 初めてエコデザイン要件が設定されるエネルギー関連製品、又は指令2009/125/ECに基づき採択された既存の措置が本規則に基づき見直されることとなっているエネルギー関連製品 (k) 情報通信技術(ICT)製品及びその他の電子機器

この規定事項はWorking Plan 2025-2030で対象としています。

貴社が川下企業または川下に近い川中企業でサプライヤから組立部品として調達している場合は、中間製品には該当しないことになる可能性が大きいと思います。
しかし、ESPR第18条5項の(c)~(k)に該当する場合は、その対象製品の実施規則の規定に従うことになります。対象製品(*4)については製品局の製品グループの製品TAGのESPRに関する情報が入手できます。

例えば、ICTの調査書(*5)や最終報告書(2023年6月27日)(*6)や家庭用洗濯機と洗濯乾燥機の最終報告書(2017年11月1日)(*7)などの過去の評価書も入手できます。これらはErP指令によるものですから、これら報告書による実施規則はESPRに整合させるために見直される見込みです。

アルミパイプや鉄板の加工品を購入し、それを組み立てて製品(またはサブアッセンブリ)を製造している「川中・川下寄り」の企業様にとって、ESPRへの対応範囲は「自社が最終製品メーカー(ブランドオーナー)なのか、それとも部品供給メーカー(サプライヤー)なのか」によって大きく変わります。

検討の軸となる「3つの対応」があります。

(1)デジタル製品パスポート(DPP)への対応

EUに間接的に輸出している場合でも避けて通れない優先度の高い対応です。ESPRでは、製品のライフサイクル全体のデータをデジタルで記録することが義務付けられます。

(i)上流からのデータ取得: パイプや鉄板のサプライヤーから、原材料の「カーボンフットプリント」「環境フットプリント」や「再生材含有率」のデータを受け取る。
(ii)自社の組立工程(溶接、塗装、接着など)で追加された環境負荷や、使用した化学物質の情報を記録する。
(iii) 完成した組立品に紐付く「データセット」を、納品先のメーカーに提供する。

この仕組みがCMPコンソーシアム(注)で検討されています。
注:CMPコンソーシアム(*8)は、Chemical & circular Management Platform(CMP)並びにchemSHERPAを運営し、製品に含有する化学物質情報及び資源循環情報の適正かつ効率的な管理と伝達を推進することにより、サステナブルな社会の実現に寄与することを目的としています。

(2)最終製品が規制対象かどうかの確認

「最終製品」が、ESPRの優先品目(例:家具、電子機器など)に該当するかどうかで、責任の重さが変わります。

(i)最終製品メーカーの場合:

JRCが挙げた3つの横断的要件(耐久性、リサイクル性、再生材含有率)をすべて満たす設計にする責任があります。
例えば、「解体しやすい構造(リサイクル性)」や「壊れにくい接合(耐久性)」などが設計基準として課されます。

(ii)部品供給メーカーの場合:

顧客(納品先の最終製品メーカ)ーから、「再生アルミを〇%以上含んだパイプを使用せよ」「分解可能な組立方法に変更せよ」といった具体的なスペック指定(調達基準)として要求が来ることになります。
日本企業は鉄鋼材はJIS材を購入して加工していますが、JIS規格とEUのEN規格は類似していますが、一致していません。EUの鉄鋼製品に関する準備調査案(2025年5月15日に調査した鉄鋼EN規格がリストされています。EUではESPRの鉄鋼の実施規則が公布されれば、EN規格が改定されると思います。改定EN規格に合わせてJIS規格の改定またはメーカースペック表が改定されると思います。管理面として、在庫の識別管理が重要となり、特に端材に留意しなくてはなりません。

(3)ESPRでいう中間製品(鉄・アルミ)

鉄とアルミニウムは「中間製品」として優先カテゴリーに入りました。これにより、素材そのものに「基準」が設けられます。将来的に、EU市場では「一定の再生材比率を満たさないアルミパイプ」や「炭素排出量が多い鉄板」は素材として規制対象となる可能性があります。このために、サプライヤーに対して「ESPR準拠の素材(低炭素・高リサイクル材)情報」を随時知らせておく必要があります。

ESPRやDPP対応は避けて通れない状況ですので、具体的要求事項は確定していないものの対応手順は整理しておくことが肝要です。対応手順を整理すると以下になります。

(i)データの把握:購入しているアルミパイプや鉄板のミルシートに、CO2排出量や再生材比率の項目が含まれているか確認する。
(ii) 顧客ニーズの予測:納品先がEU向けの最終製品メーカーである場合は顧客の「グリーン調達基準」の改定状況を確認する。
(iii) 設計の見直し:分解・リサイクルしやすい構造への変更が可能か技術的な検証を行う。
(iv) DPPの準備:製品にQRコードなどを貼り付け、デジタルデータを紐付けるIT管理体制を検討する。DPPの管理ツールとなるEN規格の確認をする。

化学物質法規制研究会

*1:ESPR
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1781/2024-06-28/eng
*2:持続可能な製品規制のためのエコデザイン:新製品の優先順位に関する研究」
https://publications.jrc.ec.europa.eu/repository/handle/JRC138903
*3:Working Plan 2025-2030
https://environment.ec.europa.eu/document/download/5f7ff5e2-ebe9-4bd4-a139-db881bd6398f_en?filename=FAQ-UPDATE-4th-Iteration_clean.pdf
*4:対象製品
https://susproc.jrc.ec.europa.eu/product-bureau/product-groups
*5:ICTの調査書
https://susproc.jrc.ec.europa.eu/product-bureau/product-groups/522/documents
*6:ICTの最終報告書
https://publications.jrc.ec.europa.eu/repository/handle/JRC133092
*7:家庭用洗濯機と洗濯乾燥機の最終報告書
https://susproc.jrc.ec.europa.eu/product-bureau/sites/default/files/contentype/product_group_documents/1581684906/JRC108604_20171117_wash_prepstudy%286%29.pdf
*8:CMP
https://cmp-consortium.com/

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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