第5回_ストックホルム条約に関する最近の動き

2022 年9 月26 日から30 日にかけて、残留性有機汚染物質を国際的に規制するストックホルム条約(POPs 条約)による規制対象物質について検討を行う「残留性有機汚染物質検討委員会」(POPRC)の第18 回会合がイタリアのローマで開催された。

POPs 条約とは、環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT等の残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している条約である。

検討された内容

(1) リスク管理評価案が検討され、POPs 条約上の位置付け(製造・使用等の「廃絶」)についてデクロランプラスとUV-328 の2 物質を廃絶対象物質(附属書A)に追加することを、COP に勧告することが決定された。ただし、以下の用途の使用は適用除外とされた。

① デクロランプラス

【主な用途】難燃剤

自動車、建設機械、農業機械、医療機器、分析機器等の修理用部品等のための使用は適用除外項目とされた。

② UV-328

【主な用途】紫外線吸収剤

自動車、建設機械、農業機械、医療機器、分析機器等の修理用部品等のための使用は適用除外項目とされた。

(2) ドラフトリスクプロファイルが審議され、条約対象物質として次回会合(POPRC19)で継続審議及び検討とされた。

① クロルピリホス

【主な用途】殺虫剤

クロルピリホスについて、残留性、濃縮性、長距離移動性及び毒性等の検討結果により、環境に重大な悪影響をもたらすおそれがあると結論づけられなかったため、継続審議となった。

② 中鎖塩素化パラフィン(MCCP)(炭素数14 から17 で塩素化率45 重量%以上のもの)

【主な用途】難燃性樹脂原料等

中鎖塩素化パラフィンについて、残留性、濃縮性、長距離移動性及び毒性等の検討結果により、環境に重大な悪影響をもたらすおそれがあるとされ、リスク管理に関する評価を検討する段階に進めることが決定された。

③ 長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)とその塩及び関連物質

【主な用途】フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤等

長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)(炭素数9 から21)とその塩及び関連物質について、残留性、濃縮性、長距離移動性及び毒性等を検討した結果、環境に重大な悪影響をもたらすおそれがあるとされ、リスク管理に関する評価を検討する段階に進めることが決定された。

(3) パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、その塩、及びパーフルオロオクタンスルホニルフルオリド(PFOSF)の評価のためのプロセス

委員会で提示された報告書草案に基づいて、PFOS、その塩、及びPFOSF の代替品の評価に関する報告書を、勧告を含めて最終化、コメント提供、継続的な必要性に関する勧告を完成させ、次の方針に沿った決定を採択することとされた。

(4) 長距離環境輸送

化学物質をリスト化するための提案の今後の評価において、長距離環境輸送に関する文書の情報を考慮に入れることが勧告された。

次回のストックホルム条約残留性有機汚染物質検討委員会第19 回会合(POPRC19)は2023 年10 月にローマで開催される予定。カルバリル、クロルフェンビンホス、メチダチオン、チオジカルブに関する通知の見直しは、2023 年10 月2 日から6 日に開催予定の第19 回会合(POPRC19)まで継続審議される。

【参考文献】

1) https://www.meti.go.jp/press/2022/10/20221007004/20221007004.html

2)http://chm.pops.int/TheConvention/POPsReviewCommittee/Meetings/POPRC18/Meetingdocuments/tabid/9264/Default.aspx

トピックス

・EU REACH規則に基づく制限対象物質として1 物質群を提案

EU ECHAは、REACH規則に基づく制限対象物質に中鎖塩素化パラフィン(MCCP)など、炭素鎖長がC14 ~ C17の範囲のクロロアルカンを含む物質(CAS RNなし)1 物質群を提案し、パブリックコンサルテーションを開始した。コメント提出期限は2022 年10 月21 日(第一次)、2023 年3 月22 日(最終)。

https://echa.europa.eu/restrictions-under-consideration/-/substance-rev/71003/term

・米国 環境保護庁(EPA)は、有害物質管理法(TSCA)に基づき、8 物質に対する重要新規利用規則(SNUR)の規則修正案を公表

環境保護庁(EPA)は、労働安全衛生局(OSHA)のハザードコミュニケーション基準(HCS)の改正、OSHA呼吸器保護基準及び呼吸器保護のための国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の呼吸用保護具認証要件の変更に合わせて、有害物質管理法(TSCA)に基づく化学物質の重要な新規使用を規制する規則を改正した。

https://www.federalregister.gov/documents/2022/09/15/2022-19023/modification-of-significant-new-uses-of-certainchemical-substances-21-1m

(一社)東京環境経営研究所 祝嶺 春樹氏

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