第42回_インド RoHS(E-Waste2022)再改訂

インド環境森林気候変動省(Ministry of Environment, Forest and Climate Change:EFCC)は、2023年1月30日(改訂2023-1)1)および7月17日(改訂2023-2)2)にインドRoHS2022(E-Waste (management) Rules:E-Waste2022)3)の再改訂を公布しました。E-Waste2022は、2022年11月2日に旧E-Waste2016から大幅に改訂されたばかりで、その内容の詳細は2022年12月23日の本コラムにて紹介しております4)。

改訂2023-1での改訂内容は、2項目の追加、変更があり、2023年4月1日に発効となっています。改訂2023-2の改訂内容は、8項目の追加、変更があり、官報公示即日発効となっています。
以下に改訂内容の詳細を見ていきます。

1.改訂2023-1の改訂内容詳細

1.1.第16条(5)の語句変更

第16条は、いわゆるRoHS規定です。(5)の原文では「すべての生産者は、製品使用説明書において、有害物質削減規定への適合宣言とともに、機器およびその構成部品、消耗品、部品またはスペアの成分に関する詳細情報を提供するものとする」となっていたものを、今回の改訂で「製品使用説明書において」の文言を「中央公害防止委員会の要求に応じて」という言葉に置き換えています。この変更により詳細情報の提供は中央公害防止委員会の要求がなければ必ずしも行う必要がないと解釈できますが、実態を注視していく必要があります。

1.2.別表ⅡにSI No.36とSI No.37を追加

別表Ⅱは、いわゆるRoHSの適用除外用途のリストであり、ここに以下の二つの除外用途を追加しています。
①SI No.36:別表Ⅰに記載されているソーラーパネル/セル、太陽光発電パネル/セル/モジュール(CEEW14)のカドミウムおよび鉛
②SI No.37:別表Ⅰに記載されている医療機器(すべての埋め込み機器および感染機器を除く)(MDW1~10)の鉛

2.改訂2023-2の改訂内容詳細

2.1.第5条に(4)を追加

第5条は、製造業者の責任を規定しています。したがって、すべての製造業者が従来の(1)から(3)に加えて追加された以下の(4)を遵守する必要があります。

「(4) 中央公害防止委員会が発行したガイドラインに従って承認された解体技術を用いることで、冷凍・空調機器の製造工程で生成される冷媒の安全かつ説明責任ある持続可能な管理を確保する」

E-Waste2022では、機器そのものの収集・廃棄・リサイクルの義務は規定していましたが、使われている冷媒の規定がなく、温暖化効果が大きいガスが使われている可能性が高いことから、新たに追加されたと思われます。

2.2.第7条に(5)を追加

第7条は、再生業者の責任を規定しています。したがって、すべての再生業者が従来の(1)から(4)に加えて追加された以下の(5)を遵守する必要があります。追加理由は第5条への(4)追加と同様です。

「(5) 中央公害防止委員会が発行したガイドラインに従って承認された解体技術を用いることで、使用済の冷凍・空調機器から生じる冷媒の安全かつ説明責任ある持続可能な管理を確保する」

2.3.第9条に(11)を追加

第9条は、リサイクル業者の責任を規定しています。したがって、すべてのリサイクル業者が従来の(1)から(10)に加えて追加された以下の(11)を遵守する必要があります。追加理由は第5条への(4)追加と同様です。

「(11) 中央公害防止委員会が発行したガイドラインに従って承認された解体技術を用いることで、使用済の冷凍・空調機器から生じる冷媒の安全かつ説明責任ある持続可能な管理を確保する」

2.4.第14条(1)(ii)に(c)を追加

第14条は、拡大生産者責任証明書の作成に関する規定で、(1)(ii)はリサイクル業者が再生率を計算する方法を規定しています。リサイクル最終製品が複数ある場合の計算方法が規定されていなかったことを受けて、(c)を追加しました。

「(c) リサイクル最終製品が複数ある場合には、拡大生産者責任証明書を作成するための換算係数は、運営委員会(Steering Committee)の承認を得て、中央公害防止委員会が発行したガイドラインに従って決定される」

2.5.第16条サブルールの変更

第16条は、いわゆるRoHS規定です。E-Waste2022で対象製品を大幅に拡大したことに伴い、特に新規追加した対象製品に関する適用除外および適用除外用途と経過措置を明確にするために、サブルール(2A)と(2B)を新たに追加しました。
以上を踏まえて、以下の4項目の追加・変更が行われました。

A.サブルール(2)(2014年5月1日以前に上市した製品とその部品等に対する適用除外規定)の適用範囲を、新規追加した別表ⅡB掲載製品に限定する変更が行われました。別表ⅡBは、E-Waste2016から引き継いだ対象製品(21製品)のリストです。
B.サブルール(2A)の追加: 「(2A) サブルール(1)の規定は、2025年4月1日以前に上市された別表ⅡCに規定される電気・電子機器には適用されない」 新規追加された別表ⅡCは、E-Waste2022で新たに追加された対象製品(85製品)のリストです。
C.サブルール(2B)の追加:「(2B) サブルール(1)の規定は、上記(2A)に規定される電気・電子機器に使用される構成部品、消耗品、部品、予備品で有害物質の削減に適合した部品またはスペアパーツが入手できない場合には、2028年4月1日まで適用されない」
サブルール(2A)の対象となる別表ⅡC掲載製品の部品等に対する経過措置です。
D.サブルール(3)および(13)へ新規別表ⅡAの追加:新規追加された別表ⅡAは、別表ⅠにE-Waste2022から新規に対象となった医療機器および実験装置を含む監視・制御機器の第16条(1)適用除外用途のリストです。
サブルール(3)は、適用除外用途の規定です。ここに別表Ⅱとともに別表ⅡAが追加されました。サブルール(13)は、中央公害管理委員会に有害物質のサンプリングおよび分析の方法を規定し、そのためのラボを登録する義務を課した規定です。ここに別表Ⅰ、別表Ⅱとともに別表ⅡAが追加されました。

2.6.改訂2023-1で追加した、別表ⅡSI No.37を削除

今回新規追加された別表ⅡAで他の適用除外用途と共に規定が設けられましたので、別表Ⅱからは削除されました。

2.7.別表ⅡA、別表ⅡB、および別表ⅡCの追加

すでに2.5の説明の中で記しましたが、以下に整理しておきます。

・別表ⅡA:別表Ⅰに記載された医療機器および実験装置を含む監視・制御機器の第16条(1)適用除外用途一覧
・別表ⅡB:第16条(2)が適用される電気・電子機器およびその構成部品、消耗品、部品、およびスペアパーツ一覧
・別表ⅡC:第16条(2A)(2B)が適用される電気・電子機器およびその構成部品、消耗品、部品、およびスペアパーツ一覧

3.まとめ

今回は、2023年に入って二度立て続けに行われたインドE-Waste2022の改訂内容について取り上げました。
改訂の主旨は、E-Waste2022で追加された対象製品とその部品等の適用除外およびその期限の明確化です。また、使用済の冷凍・空調機器から生じる冷媒の解体技術と管理に関する規定が新設されました。
環境森林気候変動省(EFCC)と中央公害防止委員会(Central Pollution Control Board:CPCB)は共同で「E-Waste2022ポータルサイト」5)を開設していますが、まだ内容はE-Waste2016ベースのものが多く、特にCPCBが整備することになっているE-Waste2022ガイドラインと登録分析機関リストはまだ見当たらず、早期の整備が望まれるところです。

(一社)東京環境経営研究所 杉浦 順 氏

参考文献:
1) インドE-Waste2022改訂2023-1
このサイトは既に削除されています。(https://moef.gov.in/wp-content/uploads/2023/02/E-Waste-Management-Amendment-Rules-2023.pdf
2)  インドE-Waste2022改訂2023-2
https://eprewastecpcb.in/pdf/E-Waste-Second-Amendment-Rules-2023.pdf
3)  インドE-Waste2022
https://eprewastecpcb.in/pdf/e-waste_rules_2022.pdf
4) 本コラム「インドRoHS(E-Waste)改訂」
https://www.tkk-lab.jp/post/rohs20221223
5)  E-Waste2022ポータルサイト
https://eprewastecpcb.in/

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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