第77回_EU電池規則により2024.8.18以降はCEマーキング対応した電池を組み込むことは必要でしょうか?

EUの電池および廃電池に関する規則(EU 2023/1542 以下電池規則)により、2024年8月18日以降に上市される電池及び製品に組み込まれた電池にはCEマーキングの貼付が必要となります1)2)3)。ただし、CEマーキングの適合性評価の対象となる要件は、要件ごとに対象の電池の種類や適用時期が異なることに留意する必要があります。

電池規則第1条3項に、規制の対象はすべてのカテゴリーの電池、ならびに製品に組み込まれる及び組み込まれることを目的に設計された電池と規定されています。
第5条1項で、電池は次の要件を満たす場合にのみ上市もしくは市場で利用可能とするとしています。

(a) 第6条から第10条および第12条に定められた持続可能性および安全要件
(b) 第3章(第13条、第14条)に定められたラベリングと情報要件

ここで規定された要件は以下の通りです。

第6条は、含有物質の制限を規定しています。

第7条は、電気自動車用電池、容量が2kWhを超える産業用二次電池、およびLMT(軽量輸送用)電池に対するカーボンフットプリントについて規定しています。電池の種類によって適用日を定めています。例えば電気自動車用電池のカーボンフットプリント宣言は、2024年2月18日までにカーボンフットプリントの計算・検証方法に関する委任法と宣言様式を定める実施法を採択し、2025年2月18日もしくは委任法または実施法の発効日から12か月後のいずれかの遅い方から適用としています。

第8条は、産業用電池、電気自動車用電池、LMT電池、SLI(始動、照明、点火用)電池のリサイクル含有量の規定です。リサイクル含有量の報告は、リサイクル量の計算・検証方法に関する委任法を2026年8月18日までに採択し、2028年8月18日もしくは委任法の発効日から24か月後のいずれかの遅い方から適用としています。また、2031年8月18日以降はリサイクル含有量が最低割合以上であることを技術文書に証明する必要があり、この最低割合は段階的に引き上げるとしています。

第9条は汎用電池の性能と耐久性の要件です。附属書IIIで定める電気化学的性能及び耐久性パラメータを確立に関する委任法を2027年8月18日までに採択し、2028年8月18日もしくは委任法の発効日から24か月後のいずれかの遅い方から適用としています。

第10条では充電式産業用電池、LMT電池、電気自動車用電池の性能と耐久性の要件です。2024年8月18日以降は、附属書IV(a)で定める電気化学的性能及び耐久性パラメータ値を記載した文書を添付することが必要です。合わせて、附属書VIIIで規定する技術文書に、測定・算出・推定のために使用した技術仕様、規格および条件について少なくとも附属IV(b)に規定される要素を含む説明を記載する必要があります。さらに、充電式産業用電池とLMT電池には、電気化学的性能及び耐久性パラメータ値の達成すべき最小値が設定され、充電式産業用電池では2026年2月18日までに最低値の設定と補足する委任法を採択し、2027年8月18日もしくは委任法の発効日から24か月後のいずれかの遅い方から適用としています。

第12条は定置型電池エネルギー貯蔵システムの安全性について規定しており、2024年8月18日以降の附属書VIIIに規定する技術文書の内容を定めています。

第13条は、電池のラベルとマーキングの規定です。すべての電池は附属書IV(b)で規定する分別収集記号を2025年8月18日以降マークする必要があります。また、附属書IV(a)で規定する電池に関する一般情報を含むラベルについて、要件と仕様を定める実施法を2025年8月18日までに採択し、2026年8月18日もしくは実施法の発効日から18か月後のいずれかの遅い方から適用としています。なお、充電式携帯用電池・LMT電池・SLI電池および非充電式電池では追加情報が定められています。

第14条は、附属書VIIに規定する電気自動車用電池、定置型電池エネルギー貯蔵システムおよびLMT電池の健康状態と予想寿命に関する最新情報について、2024年8月18日以降、当該電池の購入者(廃棄物処理者を含む)は電池管理システム経由で提供されると規定しています。

規制の適用日は第96条2項で、以下の項目を除き2024年2月18日としています。

「第17条及び第6章は2024年8月18日から適用される。但し、第17条2項は、第30条2項によるリストが最初に発行されてから12ヶ月後から適用される」

なお、第96条以外にも、前述した条文のように対象や規制内容によって適用日が定められていますので、注意が必要です。

第17条では適合性評価手順が規定されており、電池の製造方式や対象要件により附属書VIIIの各項が適用されます。
第6章(第38条から第46条)では、各経済事業者の義務を定めています。例えば、製造業者の義務は、第38条で以下のように規定しています。

・電池を上市または使用開始する前に、附属書VIIIで規定する技術文書を作成し、第17条で規定する適合性評価手順を実行するか実行させる必要がある。
・第17条の適合性評価手続きによって電池が適用される要求事項に適合していることが証明された場合、第18条に従って適合宣言書を作成し、第19条及び第20条に従ってCEマーキングを貼付しなければならない。

CEマーキングに関しては、第19条で市場監視規則(EC)No 765/2008)第30条に定められた一般原則に従うものとしています4)。
第20条でCEマーキングの貼付に関する規則と条件が示されており、第2項で「電池を上市する前または使用する前に貼付する必要がある」としています。

この「上市」について、電池規則はEUの新たな法的枠組み(New Legislative Framework:NLF)に含まれる規則です。NLFのガイドである「ブルーガイド2022」2.3項で、EU域内の輸入者から流通業者や消費者に供給された時点でEU域内において利用可能となり、上市の要件を満たすことになると説明されています5)。また「市場で利用可能とする」とは、製品が個別に製造か連続製造かに関わらず、製品の型式ではなく、個々の製品についていうものであるとしています。

以上から、ご質問のケースでは、2024年8月18日以降に貴社の輸入者からEU域内の流通業者等に供給される貴社製品においては、その時点で適用されている要件に遵守して組み込まれている電池についての技術文書と適合宣言書を要求される言語で作成し、電池にはCEマーキングを行う必要があります。

なお、第7条の電気自動車用電池に対するカーボンフットプリントの計算・検証方法に関する委任法と宣言様式を定める実施法については、2024年5月28日に法案に対する意見募集が終了した段階です6)。また、第30条のEU委員会から公開される認証機関の識別番号とリストは、8月18日現在でリストは未公開です。EU委員会からの今後の公開情報に注意して対応する必要があります。

1) 電池および廃電池に関する規則 (EU) 2023/1542
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/1542/oj
2) 採択された新たなEU電池規則について(その1)
https://johokiko.co.jp/chemmaga/tkk0034/tkk/
3) 採択された新たなEU電池規則について(その2)
https://johokiko.co.jp/chemmaga/tkk0039/tkk/
4) 製品のマーケティングに関連する認定と市場監視の要件 規則(EC) 765/2008
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2008/765/oj
5) ブルーガイド2022
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:C:2022:247:TOC
6) Batteries for electric vehicles – carbon footprint methodology (europa.eu)
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/13877-Batteries-for-electric-vehicles-carbon-footprint-methodology_en

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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