第112回_医療機器でポータブル電池を使用→取扱説明書に「改造禁止」と記載製品も、取り外し可能な位置に電池を配置する必要ある?

電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)1) の第11条では、ポータブル電池を組み込んだ製品について、エンドユーザーが電池を容易に取り外して交換できるようにすることが義務付けられています。医療画像診断装置や放射線治療装置など、一部の製品には適用除外規定がありますが、貴社の製品がこれに該当しない場合は、取扱説明書に「改造禁止」と記載するだけでは、この規定の適用除外とはならず、エンドユーザーが取り外しや交換可能な構造にする必要があります。以下に解説します。

電池の需要が急増する中、EUでは電池のライフサイクル全体での環境負荷の低減や資源循環促進、健康影響の防止を目的として、2024年2月から電池規則の段階的な施行が開始されました。この第11条で、ポータブル電池やLMT電池(軽量輸送手段用電池)の取り外しや交換に関する規定があり、2027年2月から施行されます。
その第1項では「ポータブル電池を組み込んだ製品を市場に出す事業者は、その電池が製品の寿命中にエンドユーザーによって容易に取り外し・交換可能であることを確保しなければならない」とされています。このため、市販されている一般工具や、製品購入時に無償で提供される工具などを使用して、簡単に取り外しや交換ができる構造にする必要があります。また、事業者は、ユーザーが電池の使用や取り外し・交換に関する取扱説明や安全情報をウェブサイトなどで入手できるように提供する義務があります。

一方で、第2項では、以下のような製品については、専門性を持つ第三者が電池を取り外し・交換ができる場合に限り、第1項の規定が適用除外となると定められています。
a) 日常的に水の飛沫や水流、水没にさらされる環境で使用されるよう設計され、洗浄やすすぎが可能な機器(但し、ユーザーおよび機器の安全を確保するために適用除外が必要な場合に限る)
b) 医療機器規則(Regulation (EU) 2017/745)2) の第2条 第1項で定義される医療用画像診断装置や放射線治療装置、または体外診断用医療機器規則(Regulation (EU) 2017/746)3) の第2条 第2項で定義される体外診断医療機器、さらに、第3項では「継続的な電力供給が必要で、ユーザーと機器の安全を確保するため、またはデータを収集・供給する製品でデータの整合性を保つために、製品とポータブル電池を恒久的に接続する必要がある場合、第1項の規定は適用されない」とされています。

また、第89条の委任法令の採択権限により、EUは第11条第2項の除外製品を追加することがあると同条第4項で定められています。但しこれは、エンドユーザーがポータブル電池を取り外し・交換することで、安全上の懸念があるという科学的な根拠が示される場合、またはEU法の製品安全要件に違反する場合、に限り採択されるとされています。
以上のように、第2項と第3項での例外規定を除き、ポータブル電池を組み込んだ製品は、エンドユーザーが電池を容易に取り外しや交換できることが求められます。

【参考資料】
1) 電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32023R1542
2) 医療機器規則(Regulation (EU) 2017/745)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32017R0745
3) 体外診断用医療機器規則(Regulation (EU) 2017/746)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32017R0746

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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