第119回_REACH規則においてSVHCと付属書ⅩⅣ収載物質の関係は?
ご質問のREACH規則(*1)における附属書ⅩⅣ収載物質は、REACH規則による規制の一つである「認可」の対象となる物質です。それに対して、SVHCは登録されている物質の中でREACH規則第57条に定義されている性質を持つ懸念がある物質の一般名称です。認可対象物質となる附属書ⅩⅣへの収載は、SVHCからさらに物質を特定してリスト化したCLS(認可対象候補物質)を経て進行しますので、両者の関係は、付属書ⅩⅣ収載物質が認可による規制がかかる物質に対し、SVHCはその前段階の位置づけの懸念物質という関係となります。
◆SVHCとCLS
SVHCはREACH規則第57条にて、発がん性、変異原性、生殖毒性を示すCMR物質や難分解性、生物蓄積性、毒性を示すPBT物質、極めて難分解性、極めて生体蓄積性を示すvBvP物質、内分泌かく乱性を有するものと定義されています。CLSはSVHCの中でも今後の認可対象候補として法的な手続きを経て承認された具体的な物質を指します。CLSを承認する手続きは、EU委員会の要請や加盟国による附属書XVに従う書類の作成からはじまります。附属書XVに従う書類は、作成された段階でWeb上に公開され60日間のコメント募集期間に入ります。関係する利害関係者は必要であればこの期間に対象となる化学物質について意見を提出することになります。コメントがある場合は、加盟国委員会にて内容が協議され、最終的な「承認(収載)」または「非承認」が決定されます。承認手続き書類の提出予定を含めた進捗状況は「Registry of SVHC intentions until outcome」から確認ができます(*2)。
なお、CLSとして承認された化学物質には、REACH規則における情報伝達や届出、廃棄物枠組み指令におけるSCIPデータベースへの登録などの義務が発生します。CLSへの追加は、通常年2回行われており、化学物質を取り扱う企業関係者にとり注目度の高い動向となります。このCLSのリストは、欧州化学品庁(ECHA)のホームページから確認ができます(*3)。
◆CLSと附属書ⅩⅣ収載物質
CLSとして承認された物質は、優先順位を考慮しながら「認可」による規制プロセスに入ります。優先順位の決定は物質の危険有害特性やEU市場での使用量や用途、代替物質の有無などを考慮して行われます。附属書ⅩⅣ収載物質は設定される日没日以降、認可なしに当該物質を市場に出すこと、または使用することが原則として禁止されることになります。「認可」は決められた申請日までにその物質の継続使用が「社会経済的利益がリスクを上回る」こと、または「適切なリスク管理措置が取られている」ことを証明する認可申請書をECHAに提出して認められた場合に設定され、定期的に見直しが検討されることになります。なお、附属書ⅩⅣ収載物質となった場合であっても前述したCLSに関する法的義務は継続します。
以上のように、SVHCはREACH規則第57条の定義に基づく危険有害性の要件を満たす物質であり、今後新たに特定される潜在的なものも含まれる化学物質という位置づけになると考えられます。CLSはSVHCの中でも附属書ⅩⅣ収載物質の候補としてリスト化された物質であり、対象物質には前述のようにREACH規則や廃棄物枠組み指令に関する義務が発生します。附属書ⅩⅣ収載物質はCLSからさらに認可対象物質として特定された物質で「認可」された用途以外では、原則使用禁止など厳しい規制が適用されることになります。
(*1)REACH規則((EC) No 1907/2006)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2006/1907/oj
(*2)Registry of SVHC intentions until outcome
https://echa.europa.eu/registry-of-svhc-intentions
(*3)認可対象候補物質のリスト
https://echa.europa.eu/candidate-list-table
免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。