第125回_REACH規則の適用範囲と除外規定:CEマーキングに非該当の手動機械(工具)はREACHの対象外?除外規定の要件は?

貴社が取り扱うCEマーキングに非該当の手動機械(工具)はREACH規則(*1)の対象となります。CEマーキングとREACH規則は異なる目的を持つため、CEマーキングとREACH規則の適用についてはそれぞれの観点で判断する必要があります。

◆REACH規則の適用範囲

REACH規則は、化学物質そのものだけでなく、それらを含む混合物や成形品にも適用されるEUの化学物質規制です。手動機械(工具)は、この中の「成形品」に分類されるため、REACH規則の対象となります。

成形品(第3条3項)
製造時に特定の形状やデザインが与えられ、その形状が機能よりも重要になる製品

REACH規則において、手動機械(工具)のような成形品が規制の対象となるのは、意図的放出物質がある場合や高懸念物質(SVHC)を規定量以上含有する場合、制限の条件に成形品が含まれている場合です。
これらのうち意図的放出は、通常使用する際または予見可能な使用条件において化学物質が放出されることを指します。例えば、香り付きの玩具(成形品)などが該当し、意図的放出される物質が年間1トン以上となる場合、ECHAへの登録やユーザーへの安全な使用方法などの情報提供が義務付けられます。
SVHCは発がん性、変異原性、生殖毒性など、人や環境に極めて高い懸念のある化学物質であり、義務の対象となるSVHCは、Candidate List of substances(CLS)としてリスト化されています。
SVHCの含有については、成形品中にCLSに収載のSVHCが重量比0.1%を超えて含有する場合、届出や情報伝達の義務などの対象となります。基本的に年2回のリスト更新がありますので、動向にも注意しておく必要があります。
制限は特定の化学物質の製造、上市、または使用を禁止または条件で制限する規制です。例えば、エントリー51のフタル酸エステル類におけるように条件中に成形品が含まれている場合があり、該当する成形品を取り扱う場合、対応する必要があります。
上記のうち意図的放出は特殊なケースの成形品となりますが、SVHCの含有および制限については貴社が取り扱う手動機械(工具)においても適用可能性がありますので、物質や条件の確認が必須となります。
なお、適用除外規定についてはREACH規則第2条に記載があり、他の法律が優先される場合やポリマーに関する内容などがありますが、成形品については除外されておらず、CEマーキングに関する内容の記載も見当たりません。したがって、貴社が取り扱う手動機械(工具)については、CEマーキングの該否によらずREACH規則の規定に対応する必要があることになります。

◆CEマーキングとREACH規則

CEマーキングとREACH規則は、それぞれ異なる目的を持つ独立したEUの法規となります。CEマーキングは、製品がEU域内で販売される際に満たすべき健康、安全、環境保護に関する必須要件に適合していることを示す表示で「New Legislative Framework(NLF)」の対象となる製品に適用されます。
一方で、REACH規則の主な目的は、化学物質の管理です。成形品に含まれる化学物質の人体や環境への影響を考慮し、規制することでリスクを低減することを目指しています。したがって、成形品としての手動機械(工具)も対象となり、危険有害性が高い化学物質を含有している場合等において、対応が求められることになります。

(*1)REACH規則((EC) No 1907/2006)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2006/1907/oj

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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