第5回_Toxic Substances Control Act (TSCA) その4

9.PFAS報告義務

TSCA 第8条(a)(7)でPFASデータの報告要件(*4.1)を定めています。

遅くとも 2023 年 1 月 1 日までに、EPAは、このサブセクションに従って、2011 年 1 月 1 日以降のいずれかの年にパーフルオロアルキルまたはポリフルオロアルキル物質である化学物質を製造した各人に対し、2011 年 1 月 1 日以降の各年について、サブパラグラフ (A) から (G)(2) に記載されている情報を含む報告書をEPAに提出することを要求する規則を公布するものとする。
この規定により、EPAは、TSCAの下での「ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)に関する報告および記録保持要件の規則」(*4.2)を2023年10月11日に公布し2023年11月13日に発効しました。

この規則はCFR-Title 40 -Chapter I-Subchapter R-Part 705(特定のペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質に関する報告及び記録保持要件)(*4.3)に収載されています。

9.1 報告時期(§ 705.20)

・情報を提出するすべての報告者:2024年11月12日から2025年5月8日まで
・成形品の輸入業者及び小規模製造業者:2024年11月12日から2025年11月10日まで。
注:成形品、輸入業者及び小規模製造業者の定義は40 CFR 704.3(*4.4)によります。

これらの定義は、化学物質や成形品の製造や輸入に関する規制や報告の対象を明確にするために設けられています。
用語は次のように定義されています。

(i)成形品:特定の形状やデザインに成形される製品であり、最終使用時にその形状や設計に依存する機能を持ち、化学組成の変化がなく、他の化学物質や成形品の最終使用時に起こる化学反応から生じる組成の変化を持たないものを指す。ただし、流体や粒子は成形品とはみなされない。EU REACH規則と同じような定義になっています。

(ii)輸入者:化学物質や成形品を米国の税関領域に輸入する者であり、関税の支払いに責任を負う者やその代理人を含む。また、荷受人や記録上の輸入者、実所有者、譲受人なども含まれる。米国の税関領域は50州、プエルトリコ、およびコロンビア特別区を指す。

(iii)小規模製造業者:以下の基準を満たす製造業者や輸入業者を指す。

第一基準では、製造業者や輸入業者の年間売上高が1億2,000万ドル未満である場合を小規模とするが、特定の物質の年間製造量や輸入量が一定以上の場合は、当該物質の製造や輸入に関する報告の目的上、小規模では認定されない。
第二基準では、製造業者や輸入業者の製造量に関わらず、親会社の年間売上高と合わせた合計が1,200万ドル未満である場合を小規模とする。また、インフレ指数を活用して売上額の調整を行い、必要に応じて年間売上額合計を変更することができる。

9.2 対象となるPFAS

PFAS とは、構造的に以下の 3 つの部分構造のうち少なくとも 1 つを含む化学物質または化学物質を含む混合物を意味します。

(1)R1-(CF2)-CF(R2)R3:CF2およびCF部分は両方とも飽和炭素である。
(2) R1-CF2OCF2-R2:R1およびR2は、F、Oまたは飽和炭素のいずれかであり得る。
(3) CF3C(CF3)R1R2:でR1およびR2はFまたは飽和炭素のいずれかであり得る。

報告対象物質は構造指定で、報告対象物質リストが用意されているものではありません。規則の提案段階で、確認のために対象物質の構造定義物質を生産・輸入実績のあるTSCAインベントリー、少量免除(LVE)から抽出して当初は1,364物質、その後追加され
1,462物質リストを作成しました。1,462物質リストは、規則案(§705.5報告書の提出が必要な物質)(*4.5)に例示されました。
*4.5:1,462物質
https://www.federalregister.gov/documents/2021/06/28/2021-13180/tsca-section-8a7-reporting-and-recordkeeping-requirements-for-perfluoroalkyl-and-polyfluoroalkyl

EPAの研究者たちが物理化学的性質、環境中の運命と移行、ばく露、使用、生体内毒性、生体外生物試験などの利用可能な化学情報を統合し、Computational Toxicology (CompTox)Chemicals Dashboardというオンラインツールで化学物質を評価しています。
その後、Comptox Chemicals Dashboardから、PFASの構造定義に該当する物質として、約12,000物質(*4.6)が抽出されました。
さらに、抽出と適用対象が検討され、現在は当初の「12,000物質リスト」(PFAS Master List of PFAS Substances)は、新たな物質リストに改定されました。

現時点の例示リストは、PFASSTRUCT(Navigation Panel to PFAS Structure Lists):10,776物質(*4.7)とPFASDEV(List of PFAS chemicals without explicit structures – polymers and other UVCB chemicals)(*4.8):1,915物質です。
リンクが切れている場合は下記の“Chemical Lists”のWebページ(*4.9)で検索してください。新たなリストがでるとアーカイブ化されます。

9.3 報告

2025年5月13日にEPAは、PFASの報告時期を延期する暫定最終規則を公布し、意見募集を行いました。暫定規則は以下の内容です。

EPAは、40 CFR Part 705に規定されているTSCAセクション8(a)(7) PFAS報告規則のデータ提出期間を修正しています。具体的には、提出開始日を2026年4月13日に変更し、それに合わせて提出期間の終了日も変更します。この規則の修正により、データ提出期間は2026年4月13日に始まり、2026年10月13日に終了します。ただし、物品輸入者としてのみ報告する小規模製造業者には、2027年4月13日という別の終了日が設定されます。

この措置は、本報告規則に従って情報を収集するために開発中のソフトウェア(すなわち、本規則の報告アプリケーション)のタイムリーな開発とテストが制約を受けていることに対応するためのものです。
さらに、EPAは、行政命令14219「規制緩和による繁栄の解き放ち」(90 FR 9065、2025年1月31日)に鑑み、将来の別の措置において、本規則の他の側面についてパブリックコメントを求める可能性があります。しかしながら、本措置においては、EPAは提出期間の日付以外の、根本的な報告規則のいかなる規定も再開または再検討することはありません。延長理由は、「EPAは報告アプリケーションの開発に引き続き多大な資源を投入しているが、現在の開始日である2025年7月11日時点において、データが利用可能な形式で提出・保存されることを検証できる状況にはない。」としています。この決定に対する意見募集(*4.10)は以下で行われました。

この規則の要件は、副産物、不純物、または成形品もしくは混合物に含まれるPFASにも適用されます。さらに、この規則は、現在TSCA化学物質インベントリーに掲載されているPFASに限定されません。
この規則は、TSCA第3条(2)(B)項の「化学物質」の定義から除外されている物質に関する報告を義務付けていません。これらの除外には、農薬(連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法の定義による)で農薬として使用するために製造、加工、または商業的に流通している場合、食品、食品添加物、医薬品、化粧品、または機器(連邦食品・医薬品・化粧品法の定義による)で食品、食品添加物、医薬品、化粧品、または機器として使用するために製造、加工、または商業的に流通している場合、タバコまたはタバコ製品、1954年原子力法で定義されている原料物質、特殊核物質、または副産物物質、および1954年内国歳入法第4181条に基づいて販売が課税される物品が含まれますが、これらに限定されません。

9.4 2025年11月10日PFAS報告要件(提案)

EPAはPFAS報告要件をより実用的かつ実施可能にし、規制上の負担を軽減するための変更を提案(*4.11)しました。PFASに関する重要な報告要件を維持しながら、製造業者が知る可能性が最も低い、または合理的に判断する可能性が最も低い活動に関する報告を免除するものです。提案されている免除対象(*4.12)は次のとおりです。

-濃度0.1%以下で混合物または製品中に含まれる、製造(輸入を含む)されたPFAS
-輸入された成形品(アーティクル)
-特定の副産物
-不純物
-研究開発用化学物質
-非分離の中間体

成形品に含有しているPFASは報告要件から削除されたことは大きな変更です。

10.その他の新たな動向

アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は、バイデン政権下で制定された有害物質規制法(TSCA)に基づく化学物質リスク評価の手続き規則を縮少する提案(*4.13)を提出しました。この提案は、トランプ政権のEPAによって進められており、2024年にバイデン政権下で改訂された「リスク評価枠組み規則」の主要な部分を見直すものです。コメントの提出期限は2025年11月7日です。見直しの主な点は以下の通りです。

単一の「化学物質全体」に対するリスク決定の義務付けを廃止する提案: バイデン政権下の規則では、個々の使用条件ではなく、化学物質全体として単一のリスク決定を行うことが求められていました。
職業上のばく露管理(個人用保護具など)の考慮方法を修正する提案: バイデン政権下の規則では、作業者が常に個人用保護具(PPE)で適切に保護されているとは限らないという前提でリスク評価が行われていましたが、この部分が見直される可能性があります。この提案は、TSCAの規定を「最大限に解釈し、手続き枠組み規則が法定権限を妨げないようにする」ことを目的としているとされています。

(TSCAシリーズ。第1回~4回 終わり)

*4.1:PFASデータの報告要件
https://uscode.house.gov/view.xhtml?path=/prelim@title15/chapter53&edition=prelim
*4.2:PFASに関する報告および記録保持要件
https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2023-10-11/pdf/2023-22094.pdf
*4.3:CFRのPFASに関する報告および記録保持要件
https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-705
*4.4:成形品、輸入業者及び小規模製造業者の定義
https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-704/subpart-A/section-704.3
*4.5:1,462物質
https://www.federalregister.gov/documents/2021/06/28/2021-13180/tsca-section-8a7-reporting-and-recordkeeping-requirements-for-perfluoroalkyl-and-polyfluoroalkyl
*4.6:12,000物質リスト
https://comptox.epa.gov/dashboard/chemical-lists/PFASMASTER
*4.7:10,776物質リスト
https://comptox.epa.gov/dashboard/chemical-lists/PFASTRI
*4.8:1,915物質リスト
https://comptox.epa.gov/dashboard/chemical-lists/PFASDEV3
*4.9:Chemical Lists
https://comptox.epa.gov/dashboard/chemical-lists/
*4.10:意見募集
https://www.regulations.gov
*4.11:2025年11月10日PFAS報告要件 提案
https://www.epa.gov/newsreleases/epa-proposes-changes-make-pfas-reporting-requirements-more-practical-and-0
*4.12:報告免除対象
https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/tsca-section-8a7-reporting-and-recordkeeping
*4.13:化学物質リスク評価の手続き規則を縮少する提案
https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/23/2025-18431/procedures-for-chemical-risk-evaluation-under-the-toxic-substances-control-act-tsca

化学物質法規制研究会 松浦 徹也 氏

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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