第7回_高融はんだ中の鉛の除外(7(a))と7(a)-I~VIIの延長申請の動きとは?

2025年11月21日のEU官報(Official Journal of the European Union)で告示されたRoHS指令の附属書IIIの7(a)(高融点型はんだ中の鉛の除外)の改定する指令(EU)2025/1802について教えてください。この指令では7(a)の有効期限は 7(a)は2027年6月30日,7(a)-Iなどは2027年12月31日となっています。「Exemptions list validity and rolling plan」では、7(a)一つで、Valid – requested for renewal(有効 – 更新をリクエスト)となっています。 これはどのように解釈すればよいでしょうか。

1. 指令(EU)2025/1802(*1)の内容

指令(EU) 2025/1802によって、これまでの 7(a) は以下のように「親子」のような関係に整理されました。

(i)親項目:7(a)(広範な定義)期限:2027年6月30日
従来の定義(高融点はんだ中の鉛)のまま使える期限です。この日を過ぎると、この「広範な定義」での除外は終了します。延長申請期限は、2027年6月30日の18か月前の2025年12月30日です。

(ii)子項目:7(a)-I ~ 7(a)-VII(特定の用途)期限:2027年12月31日(またはそれ以降)
7(a)の中でも、特に代替が困難と認められた「特定の用途」に限定して、7(a)にさらに半年間の猶予が与えられた項目です。延長申請期限は、2027年12月31日の18か月前の2025年6月30日です。

2.「適用除外リストの有効期間と更新計画」(Exemptions list validity and rolling plan)の内容

EU委員会の「RoHS指令の施行(RoHS Directive implementation)」の案内Webページ(*2)で、適用除外などが公開されています。このページから「適用除外リストの有効期間と更新計画」のExcelファイル(*3)がリンクされています。 直近の「適用除外リストの有効期間と更新計画」では、RoHS指令の附属書III(第4条(1)項の制限から除外される用途)の7(a)は以下となっています。

(i)7(a)
・(更新)申請期限(Last date of submission):2025年12月30日
・更新申請((Renewal) request):2025年12月12日
・有効性の状態(Validity status):有効(更新申請中)(Valid – requested for renewal)

(ii)7(a)-I~VII
・(更新)申請期限:2026年6月30日
・更新申請:2025年12月12日
・有効性の状態:有効(Valid)

指令(EU) 2025/1802の意図は、高融点はんだを広範囲に適用する7(a)から7(a)-I~VIIの用途別適用することを意図していました。
ところが、7(a)、7(a)-I~VIIのそれぞれに2025年12月12日に、電機・電子4団体やUmbrella Projectなどが延長を求めて一斉に申請書を提出しました。

3.「適用除外リストの有効期間と更新計画」の「有効性の状態」の見方

7(a)および7(a)-I~VIIはともに、すでに2025年12月12日付で「更新申請」が行われています。しかし、リスト上の「有効性の状態(Validity status)」は、7(a)が「有効(更新申請中)」であるのに対し、7(a)-I~VIIは「有効」にとどまっています。この表記の違いは、7(a)はすでに「(更新)申請期限」を過ぎている一方、7(a)-I~VIIは「(更新)申請期限」前であることに起因します。

(i)7(a)について
申請期限(2025年12月30日)を過ぎたため、新たな申請は受理されません。そのため、現在は提出済みの申請に対する「審査フェーズ」に入ったことを示す「更新申請中」というステータスになっています。

(ii)7(a)-I~VIIについて
申請期限(2026年6月30日)前であるため、今後も新たな申請や意見が受理される可能性があります。すべての申請が出そろう2026年6月30日以降に、改めてまとめて評価されることになります。そのため、現時点では指令(EU) 2025/1802に基づく「有効」という標準的なステータスになっています。

なお、「(更新)申請期限」は、業界団体による更新(延長)申請だけでなく、利害関係者からの「代替品が存在するため適用除外から削除すべき」といった反対意見の提出期限でもあります。
7(a)は、EU委員会が「延長」か「却下」の最終決定を下すまでの間、元の期限(2027年6月30日)を過ぎてもその除外項目は有効(Valid)であり続けます。これは「延長の確定」ではなく、あくただ、「審査終了までの延命措置」である点に注意が必要です。審査の結果、延長が認められず「却下」される可能性も残っています。同様に、7(a)-I~VIIについてもすでに更新申請が提出されているため、2027年12月31日を過ぎても「審査が終わるまで」は暫定的に有効(Valid)であり続けます。EU委員会が「延長を却下」する決定を下した場合でも、代替化への移行期間として、通常12ヶ月から最大24ヶ月(一般的には18ヶ月程度)の猶予期間が与えられます。
今後は「7(a)」ではなく、自社の用途が「7(a)-I ~ VII」のどれに該当するか、あるいはどれにも該当しない(7(a)の維持を支持する)のかを、技術文書に反映させていく必要があります。

なお、「Exemptions list validity and rolling plan」は、以下のタイミングで見直されます。

(i)重要な法的決定(官報公示)があった直後
Directive (EU) 2025/1802 などの新しい委託指令が官報(Official Journal)に掲載された際、その内容を反映するために更新されます。

(ii)「18ヶ月前」の申請デッドラインを越えた直後
RoHSの適用除外には「期限の18ヶ月前までに申請が必要」というルールがあるため、主要項目の申請期限(例:2025年12月末や2026年6月末)を過ぎたタイミングで、「どの項目が正式に更新申請されたか(Requested for renewalになったか)」を整理するためにリストが更新されます。

(iii)四半期ごとの定期見直し(Q1またはQ3など)
大きな動きがなくても、EU委員会が進行中の評価(Pack)の進捗状況を整理するために、半年から1年に一度程度の頻度でアップロードされます。

4.ECHAの役割

RoHS指令の適用除外評価(Exemption assessment)のプロセスは、大きな転換期にあります。EU委員会は2021年頃からRoHS指令の技術評価業務を従来の外部コンサル(Oeko-Institutなど)から、EU化学品庁(ECHA)へ段階的に移管する方針を進めています。これに伴う今後の評価体制について整理します。

(1)評価プロセスの「二階建て」構造

現在は移行期間のような形になっており、評価は以下の2パターンが混在しています。

(a)従来の方式(Oeko-Institut / Fraunhofer等)これまで「Pack 22」や「Pack 25」といった形で評価を行ってきた外部コンサルタントが、EU委員会から直接委託を受けて評価を完了させる形です。

7(a) 関連の直近の評価(Directive 2025/1802 の元になったもの)も、この枠組みで行われました。
(b) 新しい方式(ECHA)

今後提出される新しい申請については、REACH規則などとの整合性を高めるため、ECHAが科学的評価を担当します。ECHA内に設置された専門委員会(RAC: リスク評価委員会、SEAC: 社会経済分析委員会)が関与する仕組みです。

(2)今後の評価の流れ

評価の主体がどこであっても、実務的なステップは以下のように進みます。

(i)申請 (Submission): 業界団体などが延長を申請。
(ii)パブリックコンサルテーション: 広く一般から技術的意見や代替案を募集。
(iii)技術評価:
-ECHA(または委託を受けた外部コンサル)が代替技術の有無や環境影響を分析。
-ECHAに移管された場合は、RAC/SEACが「意見書(Opinion)」をまとめます。

(iv)決定: EU委員会がその評価に基づき、法改正(委託指令の公示)を行う。

このように、評価の主体がECHAになっても、全ての調査をECHA職員だけで行うわけではありません。
(i)技術的な専門調査: 特定の非常に専門的な技術については、ECHAが再び Oeko-Institut などの専門機関にデータの精査や技術的背景の調査を再委託(外注)するケースがあります。
(ii)実質的な変更点: 最終的な「推奨(レコメンデーション)」を出す責任主体が、外部コンサルから公的機関であるECHAに移ることで、よりREACH規則に近い厳格かつ透明性の高い審査(かつ、より長い審査時間)が行われるようになります。

引用
*1:指令(EU)2025/1802
https://eur-lex.europa.eu/eli/dir_del/2025/1802/oj/eng
*2:RoHS指令の施行(RoHS Directive implementation)
https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/rohs-directive/rohs-directive-implementation_en
*3:Exemptions list validity and rolling plan
https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/rohs-directive/rohs-directive-implementation_en

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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