第3回_Toxic Substances Control Act (TSCA) その2
4.同意指令とSNUR
(a)による届出(PMN)は(f)(2)の量の制限などが課される場合があります。この制限は届出者に課されるもので、同意指令(協定)と言われますが、届出者以外に広く規制するのがSNURです。
(i) 同意指令(Consent Orders)
第5条(e)で、以下を決定した場合は、「製造、加工、商業的流通、使用または破棄の制限やそれらの組合せを禁止する提案命令(proposed order)を発令する。(同意指令)」が規定されています。
PMNで出されたEPA長官が利用できる情報が
-届出された化学物質に関する健康及び環境影響の正当な評価を行うには十分でない。
-その物質の製造、加工、商業的流通、使用または破棄、それらの組合せが健康または環境を損なう不当なリスクの恐れがある。
-その物質が相当な量で生産されているか予定されており、かつ、その物質が相当な量で環境に入る、または、正当な理由で予想される、または、その物質に対する重大なまたは相当な人へのばく露がある、もしくは恐れがある。
同意命令としては以下などで、定型文(*2.1)があります。
-特定の生産量または期間に達した後の毒性または環境運命のテスト
-労働者の個人用保護具の使用
-労働者保護のための新しい化学物質ばく露制限(NCEL)
-ハザードコミュニケーション言語
-配布および使用制限
-水、空気、陸上への放出の制限、および
-記録管理
(ii)SNURの決定手順

同意指令は新規物質のPMNがスタートになりますが、第4条(試験)や第8条(報告)から、リスクが評価されて、SNUR物質として特定される場合があります。SNURが特定されるとTSCAインベントリに“S”Flagが立ちます。SNURに特定された化学物質約2,400物質は、以下に収載されています。Title 40/Chapter I/Subchapter R/Part 721/Subpart E/§721.225~ (*2.2)
用途が確認できますが、輸出する化学物質の用途と一致するかどうかで対応が異なります。
(a)物質の確認:「善意の問い合わせ」(bona fide inquiry)
TSCAインベントリーには、一般に公開されている部分と、企業秘密保護のために非公開とされている部分があります。
公開部分: 化学物質名やCAS番号が公開されているため、誰でも簡単に検索して確認できます。
非公開部分:化学物質の名称が「総称名」でしか記載されておらず、具体的な化学名が秘密情報として保護されています。
企業が新しい化学物質の製造・輸入を計画した際、公開部分で検索しても見つからないことがあります。この場合、その物質が「新規化学物質」なのか、それとも「非公開部分に掲載されている既存化学物質」なのかを判断する必要があります。「善意の問い合わせ」と言われる問い合わせは、後者の可能性を確認するための手段で、非公開部分に掲載されている既存化学物質であれば、製造・輸入開始前の「新規化学物質届出(PMN)」は不要になります。EPAは、単なる好奇心からの問い合わせを避けるため、問い合わせを行う企業に以下の要件を満たすよう求めています。
・製造・輸入の真摯な意図(bona fide intent)があること:実際にその物質を商業目的で製造または輸入する計画があることを示す必要があります。
・情報提供:以下の情報を含む書類を提出します。
・物質の化学的同一性情報(化学名、分子構造など)
・製造または輸入の意図があることを示す陳述書
・想定される用途、製造プロセス、生産量などの情報
・審査:EPAは提出された情報に基づき、その物質がインベントリーの非公開部分に掲載されているかを検索し、企業に結果を回答します。
①記載されている用途と「同じ場合」(指定された用途)
SNURで指定されている用途と全く同じ用途で輸出する場合、EPA(米国環境保護庁)への重要新規使用届出(SNUN)は必要ありません。これは、その用途がすでにEPAによって評価され、規制の範囲内とみなされているためです。ただし、輸出者にはTSCAセクション12(b)に基づく輸出通知の義務があります。これは、SNURが適用されている物質を特定の国へ最初に輸出する際に、EPAに1回限り通知するものです。
②「曖昧な場合」または「新しい用途の場合」
SNURで指定された用途と異なる、曖昧な用途や全く新しい用途で輸出する場合、その用途が「重要新規使用」に該当する可能性が高いです。この場合、輸出者は以下の対応が必要です。
・重要新規使用届出(SNUN)の提出: 意図する製造、加工、または使用を開始する90日前までに、EPAにSNUNを提出する必要があります。この届出により、EPAは新しい用途が人の健康や環境に不当なリスクをもたらすかどうかを評価します。
・EPAによる審査: EPAは提出されたSNUNを審査し、新しい用途の開始を許可するかどうかを決定します。この審査期間中、輸出者はその用途での製造や加工を開始することはできません。
・輸出通知(TSCAセクション12(b)): 上記の審査を経て、新しい用途での輸出が可能になった場合でも、最初に特定の国へ輸出する際には、TSCAセクション12(b)に基づく1回限りの輸出通知が必要です。
③対応のポイント
・用途の確認: まず、輸出を予定している物質のSNURの規定を詳細に確認し、指定された用途との一致を慎重に判断することが最も重要です。不確実な場合はEPAに相談: 用途が曖昧で重要新規使用に該当するかどうかが不明な場合は、事前にEPAに相談することが強く推奨されます。
・顧客への通知: 企業には、SNURの対象となる物質を販売する際、その物質がSNURの適用を受けることを下流の顧客に通知する義務があります。これは、SDS(安全データシート)に注記するなどして行うのが一般的です。善意の問合わせの手続きは40 CFR 720.25(*2.3)に規定され、ガイダンス(*2.4)がります。
(b)SNURに特定されている物質の対応
①記載されている用途と「同じ場合」(指定された用途)
SNURで指定されている用途と全く同じ用途で輸出する場合、EPAへの重要新規使用届出(SNUN)は必要ありません。これは、その用途がすでにEPAによって評価され、規制の範囲内とみなされているためです。
ただし、輸出者にはTSCAセクション12(b)に基づく輸出通知の義務があります。これは、SNURが適用されている物質を特定の国へ最初に輸出する際に、EPAに1回限り通知するものです。
②「曖昧な場合」または「新しい用途の場合」
SNURで指定された用途と異なる、曖昧な用途や全く新しい用途で輸出する場合、その用途が「重要新規使用」に該当する可能性が高いです。
この場合、輸出者は以下の対応が必要です。
・重要新規使用届出(SNUN)の提出: 意図する製造、加工、または使用を開始する90日前までに、EPAにSNUNを提出する必要があります。この届出により、EPAは新しい用途が人の健康や環境に不当なリスクをもたらすかどうかを評価します。
・EPAによる審査: EPAは提出されたSNUNを審査し、新しい用途の開始を許可するかどうかを決定します。この審査期間中、輸出者はその用途での製造や加工を開始することはできません。
・輸出通知(TSCAセクション12(b)): 上記の審査を経て、新しい用途での輸出が可能になった場合でも、最初に特定の国へ輸出する際には、TSCAセクション12(b)に基づく1回限りの輸出通知が必要です。
・対応のポイント:用途の確認: まず、輸出を予定している物質のSNURの規定を詳細に確認し、指定された用途との一致を慎重に判断することが最も重要です。
・不確実な場合はEPAに相談: 用途が曖昧で重要新規使用に該当するかどうかが不明な場合は、事前にEPAに相談することが強く推奨されます。
・顧客への通知: 企業には、SNURの対象となる物質を販売する際、その物質がSNURの適用を受けることを下流の顧客に通知する義務があります。これは、SDS(安全データシート)に注記するなどして行うのが一般的です。
参考
アメリカの連邦法規制体系は、議会が「法律」で大まかな方針を定め、大統領と各行政機関が「規則」や「大統領令」でその詳細を規定するという、三権分立の原則に基づいた仕組みとなっています。
注:lawは法律一般、actは議会で制定された個々の法律、statuteは成文法、codeは法典(成文法規を体系的に編さんしたもの)を意味します。日本の法令は、条、項、号という構成になっていますが、アメリカは以下の構成になっています。
Section ’
(a)‘Subsection’
(1)‘Paragraph’
(A)‘Subparagraph’
(i)‘Clause’
(I)‘Subclause’
(その3に続く)
*2.1:同意命令定型文
https://www.epa.gov/system/files/documents/2024-06/new-chemicals-order-boilerplate-6-25-24.pdf
*2.2:SNURリスト
https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-721/subpart-E?toc=1
*2.3:善意の問合わせの手続き
https://www.ecfr.gov/current/title-40/part-720/subpart-B/section-720.25
*2.4:善意の問合わせの手続きガイダンス
https://www.epa.gov/reviewing-new-chemicals-under-toxic-substances-control-act-tsca/guidance-avoiding-incomplete
化学物質法規制研究会 松浦 徹也 氏
免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

