第5回_輸入したリサイクル材の化審法対応の考えと実務とは?

日本において、リサイクル材料に混入する化学物質を直接的に規制する単一の法律はありませんが、「化審法」や「POPs条約(ストックホルム条約)」に基づく国内規制がその役割を果たしています。リサイクルを推進する一方で、有害物質が製品サイクルに残らないようにするための主要な規定・基準を整理しました。

§1 化審法の基本構造と輸入者の義務

日本国内で化学物質を輸入する際、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき、その物質の性質や過去の実績に応じて厳格な手続きが求められます。

1.1 物質が既存化学物質か新規物質かのスクリーニング

輸入前に化学物質または混合物中の構成物質について、対象物質が以下のいずれに該当するかを確認することが全ての出発点となります。既存化学物質: すでに官報で公示され、MITI番号(官報公示整理番号)が付与されている物質で、独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP(ナイトクリップ))(*1)で確認できます。
新規化学物質: 国内での製造・輸入実績がなく、公示されていない物質で、原則として輸入前の届出と審査が必要です。

1.2 主な輸入手続き

通常届出(新規): 三大臣(厚労・経産・環境)へ届け出ます。審査には約1年を要し、分解性・蓄積性・毒性の試験データが必要です。特例制度(少量新規・低生産量新規): 年間の輸入数量が少ない場合(全国合計1t以下など)、審査が簡略化されます。既存化学物質の実績報告: すでに公示されている一般化学物質等であっても、年間1t以上の輸入がある場合は、毎年度、数量や用途を経済産業省に報告する義務があります。

§2 リサイクル材(再生プラスチック等)の取り扱い

再生プラスチックについては2025年10月に経済産業省より最新の運用指針が示されました。再生プラスチック以外のリサイクル材についても、同様の考え方が適用されるものと考えられます。
サーキュラーエコノミーの進展に伴い、2025年10月、経済産業省より再生材の取り扱いに関する最新の運用指針が示されました。リサイクル材は「国内産」か「海外産」か、また「再生手法」によって扱いが異なります。

2.1 国内産再生材と海外産再生材の区別

国内産再生材: 日本国内で一度流通した物質を物理的に処理(マテリアルリサイクル)したものは、改めて新規化学物質としての届出は不要です。海外産再生材(輸入): 海外で製造された再生ペレット等を輸入する場合、原則として「化学物質の混合物」とみなされ、構成成分ごとに既存・新規の確認が必要となります。

2.2 再生プロセスによる違い

マテリアルリサイクル(物理的再生): 化学反応を伴わない場合、原則として新規届出は不要ですが、意図的な第一種特定化学物質の添加は禁止されています。
ケミカルリサイクル(化学的再生): 化学反応により別の化合物にする場合、得られたものは「製造」された化学物質とみなされ、通常の新規物質審査の対象となります。

2.3 不純物と有害物質(POPs条約対応)

1重量%ルール: 混合物中に不純物として含まれる成分でも、1重量%以上の場合は成分特定と規制対応が必要です。
第一種特定化学物質(PFOA、PFOS等): リサイクル材であっても、これら禁止物質が意図せず含まれている場合、流通が制限されます。海外産再生材については、BAT(利用可能な最良技術)に基づく不純物管理や申請が求められる場合があります。

§3 固形物の分類判断(混合物 か 成形品)

輸入しようとする固形物が「化学物質」として規制を受けるか、「成形品」(アーティクル)として除外されるかの判断は実務上極めて重要です。

(1) 混合物(粉体、粒体、または溶解して成分を利用するもの)
樹脂ペレット、はんだ、ワックス、接着剤などで、規制対象となり成分ごとに届出・報告が必要

(2) 成形品(特定の形状を持ち、その形状が機能を決定するもの)
プラスチック部品、衣類、電子部品、工具などで、原則対象外です。ただし特定物質の含有禁止はあります
注意: 形状があっても、使用過程で溶けたり反応したりするものは「混合物」とみなされます。

§4 通関実務と検査内容

4.1 通関時の他法令確認

税関では「他法令の確認」が行われます。輸入者は「届出受理証」や「MITI番号」を提示し、適法であることを証明しなければなりません。必要に応じてサンプリング検査(成分分析)が行われることもあります。

4.2 安全性の評価基準(3つの試験)

新規物質の審査では、以下の観点から評価が行われます。
分解性試験:自然界で微生物により分解されるか。
蓄積性試験:魚介類などの体内に蓄積されないか。
毒性試験:人の健康や動植物(生態系)に悪影響を与えないか。

通関実務上は、「海外サプライヤーへの含有保証書(不含有証明書)の要求」や「第三者機関による分析」が実務上の一般的対応となります。

§5 通関後の追跡調査とNITE立入検査

化審法は「輸入して終わり」ではなく、流通後のリスク管理のため、国による監視体制(*2)が敷かれています。

5.1 通関後の監視の仕組み

毎年度の実績報告: 毎年4月〜6月に、前年度の輸入量と用途を報告します。
優先評価化学物質の指定: 流通量が増大した物質は、より詳細な有害性データの提出が求められる段階へ引き上げられます。

5.2 NITEによる立入検査への備え

NITE(製品評価技術基盤機構)による検査では、届出内容と実態の整合性が厳しくチェックされます。

(1)管理体制

以下の書類を最低5年間保存し、管理体制を整えておく必要があります。
輸入の証拠:輸入許可書(他法令確認印付き)、インボイス、パッキングリスト。
物質の証拠:最新のSDS、成分分析表(CoA)、組成情報の根拠資料。
流通・用途の証拠: 管理帳簿(累積数量)、納品書、用途確認書(中間物等の場

(2)検査の重点チェックポイント

数量管理: 少量新規等の枠(1tなど)を超えていないか。年度(4月〜3月)で正しく集計されているか。
用途管理: 届け出た用途以外に販売・使用していないか(用途外転用の禁止)。

「輸入前の徹底した成分把握」と「輸入後の正確な数量・用途記録」に集約されます。特にリサイクル材は2025年の指針更新により、不純物管理やトレーサビリティの重要性が一層増しています。

§6 実務リソースと参照先

最新の指針や判断に迷う場合は、以下の公式情報が参考になります。経済産業省「プラスチック再生材の取扱いについて」リサイクルフロー図(*3)や最新の情報(*4)が掲載されています。

NITE「J-CHECK」および「CHRIP」既存化学物質の検索(MITI番号の確認)や有害性情報の確認に必須のデータベースです。
FAQ経済産業省の化審法Q&A(最新版)(*5)やNITEのFAQ(*6)があり参考になります。

厚生労働省「再生プラスチックを使用した食品器具・容器包装に関する指針」(*7)。例えば、食品用途の場合、化審法に加えてこちらのガイドライン遵守が必要です。

化学物質法規制研究会

*1:NITE既存化学物質
https://www.chem-info.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/srhInput
*2:NITEの監視
https://www.nite.go.jp/chem/tachiiri.html
*3:リサイクルフロー図
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/information/recycled_plastics.html
*4:化審法の情報
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/index.html
*5:経済産業省の化審法Q&A
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/qa/index.html
*6:NITEのFAQ
https://www.nite.go.jp/chem/kasinn/kasinn_faq.html
*7:「再生プラスチックを使用した食品器具・容器包装に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001221468.pdf

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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