第55回_安衛法が要求しているリスクアセスメントは、関連する法規制が改正される度にSDSを入手して、リスクアセスメント実施が必要?

リスクアセスメントは、リスクアセスメント対象物の新規採用や作業手順の変更、対象物の危険有害性が変化した場合などに実施することが義務になっていますが、法規則の改正ごとの実施は義務化されていません。
リスクアセスメントは、労働安全衛生法(以下、法)第57条の3で定められ、その対象は労働安全衛生法施行令(以下、令)第18条各号に掲げる物及び法第57条の2第1項に規定する通知対象物(以下、対象物)になります1)2)。
リスクアセスメントの実施時期は、法第57条の3に規定され、労働安全衛生法施行規則第34条の2の7第1項に基づき、次の時期に実施します3)。

1. 対象物を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき
2. 対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき
3. 対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき

3について、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(以下、指針)で、以下の(ア)、(イ)が含まれるとしています4)5)。

(ア)過去に提供された安全データシート(SDS)の危険性又は有害性に係る情報が変更され、その内容が事業者に提供された場合
(イ)濃度基準値が新たに設定された場合又は当該値が変更された場合

これらに該当する場合には、対象物のリスクアセスメントが義務化されています。

なお、指針には以下の場合にもリスクアセスメントの実施に努めることとしています4)5)。

ア)対象物に係る労働災害が発生した場合(過去のリスクアセスメント等の内容に問題がある場合)
イ)過去のリスクアセスメント実施以降、機械設備などの経年劣化、労働者の知識経験などリスクの状況に変化があった場合
ウ)既に製造し、又は取り扱っていた物質が対象物として新たに追加された場合など、当該対象物を製造し、又は取り扱う業務について過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合

これらの場合には、リスクアセスメントは義務化されていませんが、労働者への安全配慮義務から適切な対応は求められています4)5)。

ご質問にある法規制改正ごとのリスクアセスメントは、使用されている物質が法改正の内容に該当する場合には必要ですが、該当しない場合には義務化されてはいません。
なお、現在対象物の追加や濃度基準値の設定が進められています6)7)8)9)。従来から使用している物質が法改正に伴い新たな対象物と規定された際に、従来どおりの方法で取り扱う場合はリスクアセスメント実施義務の対象にはなりません。
但し、上記指針のウ)の通り、事業場における化学物質のリスクを把握するためにも、計画的にリスクアセスメントを実施するよう努めることが求められています。

1) 労働安全衛生法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057#Mp-At_57_2

2) 労働安全衛生法施行令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347CO0000000318#Mp-At_18_2

3) 労働安全衛生規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032#Mp-At_34_2_7

4) 化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001091755.pdf

5) 化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)Q6
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11389.html

6) 労働安全衛生法 改正政省令について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00005.html

7) 対象物リスト(令和6年4月1日施行)
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001039137.xlsx

8) 対象物リスト(令和7年4月1日及び令和8年4月1日施行)
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001168179.xlsx

9) 化学物質の濃度基準値とその適用方法
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32871.html

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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