第13回_中国RoHS管理規則の非含有要求製品の拡大

2026年5月28日、中華人民共和国工業情報化部(MIIT)より、中国RoHS管理規則(電器電子製品有害物質制限使用管理弁法)(以下中国RoHS)の重要な改正が発表(*1)されました。従来の有害化学物質規制は「目標達成目録」に収載された特定の電気電子機器を対象としていましたが、今回の改正により当該目録の品目が大幅に拡大されます。具体的には、2027年8月1日より、対象が従来の12製品群から34製品群へと拡大され、同時に構成部材に対する適用除外規定も新たに追加されます。

1. 対象製品の定義と範囲(スコープ)

中国RoHSの対象となる「電器電子製品」は、以下のように定義されています。電流または電磁界に依存して動作する、あるいは電流および電磁界の発生、伝送、測定を目的とした、定格動作電圧が直流1500Vを超えない、交流1000Vを超えない機器、およびその付属品・構成部品等。ただし、電能(電気エネルギー)の生産、伝送、および配電に関わる機器(発電所や変電所などの設備)は明確に除外されています。

EU RoHS指令との比較をすると次のようになります。

(a) 共通点:EU RoHS指令と同様に、基本的にはすべての電気電子機器を対象とする「オープンスコープ」の考え方を採用しています。
(b)FAQによる製品例示:通信設備、ラジオ・テレビ設備、コンピューター・OA機器、家庭用電器電子設備、電子式計器、産業用電器電子設備、電動工具、医療用電子設備・機械、照明製品、文化・教育・工芸・美術・体育・娯楽用電子製品の計10の製品群に分類され、それぞれ該当する具体例が示されています。
(c) 除外の差異:EU RoHS指令で適用除外となる「大型固定産業用工具(LSIT)」および「大型固定据付装置(LSFI)」について、中国RoHS管理規則には原則として同様の除外概念が存在しない点に注意が必要です。

2. 含有表示(マーク)と非含有保証(合格評価制度)

中国RoHSは、EU RoHSとは規制のアプローチが部分的に異なります。EU RoHSがすべての対象製品に対して特定有害物質の「非含有(閾値以下)」を義務付けるのに対し、中国RoHSは段階的なアプローチをとっています。

(1)一般製品:含有表示義務(目録外製品)

特定有害物質が最大許容濃度を超える場合は「循環矢印のオレンジマーク(内部に環境保護使用期限の年数を記載、例:10)」、超えない場合は「グリーンマーク(eマーク)」の貼付が要求されます。これは日本のJIS C 0950(J-Moss)に類似した考え方です。オレンジマーク内に数値(1~10は1刻み、10以上は5刻み)は、製品に含有される特定有害物質が、取扱説明書で指定された使用条件下において数値表示した年間は環境に漏洩・飛散しない(環境保護使用期限)ということを示します。また、数多くの部品で構成されている機器については、どの構成ユニットに最大許容濃度を超える部品が含まれているかを、取扱説明書内の「有害物質含有表」等で明確にすることが要求されます。

(2)目標達成目録に収載された製品:非含有保証義務(合格評価制度)

管理規則第17条に基づき、「目標達成目録」に収載された製品(今回の拡大対象)は、単なる含有表示ではなく、完全に特定有害物質の非含有保証が要求されます。これに適合した製品には、合格評価制度に基づきCGPマーク(China Green Product マーク)の貼付が強制義務化されます。

(3)遵法評価(合格評価)の2つのルート

(i)国家推進自発的認証制度:第三者認証機関に申請し、評価・認証を受ける任意認証ルート。CGPマークに第三者認証機関のロゴが付随。
(ii)自己宣言制度:企業自らが適合性を評価し、プラットフォームに登録するルート。CGPマークに「SDoC」のロゴが付随。

※SDoCは「Supplier’s Declaration of Conformity(供給者適合宣言)」を意味します。
※本制度は最終製品(エアコン、液晶テレビ等)だけでなく、付属品や構成部品(例:エアコン用のビスなど)にも適用されるため、サプライチェーン全体での対応が必要です。

3. 2026年版「目標達成目録」(*2)の製品分類(全5製品群・35品目)

今回の改正により、従来の12品目に新規24品目が追加され、一部の品目が統合された結果、最終的に5製品群・35品目となりました。これらの新規品目は2027年8月1日より強制適用が開始されます。

第1製品群:白色家電・生活家電(11品目)
(i) 電気冷蔵庫
(ii) エアコン
(iii) 洗濯機
(iv) 電気温水器
(v) 電子レンジ [新規]
(vi) 電気炊飯器 [新規]
(vii) ウォーターサーバー・給水器 [新規]
(viii) お掃除ロボット [新規]
(ix) 空気清浄機 [新規]
(x) 電子スマートロック [新規]
(xi) 読書・学習用デスクライト [新規]

第2製品群:IT・通信・スマートデバイス(13品目)
(i) デスクトップ・ノートPC、タブレット等
(ii) 携帯電話・スマートフォン
(iii) 固定電話機
(iv) プリンタ・コピー・スキャン・FAXおよび複合機(※旧目録製品を統合)
(v) プロジェクター [新規]
(vi) モバイルバッテリー・ポータブル電源 [新規]
(vii) スマートバンド [新規]
(viii) スマートウォッチ [新規]
(ix) イヤホン・ヘッドホン [新規]
(x) スマートスピーカー [新規]
(xi) サーバー [新規]
(xii) ネットワーク用スイッチ・ルーター機器 [新規]
(xiii) UPS(無停電電源装置) [新規]

第3製品群:AV機器・ディスプレイ(4品目)
(i) テレビ
(ii) モニター・ディスプレイ
(iii) セットトップボックス [新規]
(iv) オーディオパワーアンプ [新規]

第4製品群:玩具・エンターテインメント(2品目)
(i) 電動・電子玩具 [新規]
(ii) 家庭用ゲーム機・携帯型ゲーム機等 [新規]

第5製品群:家庭用医療・健康機器(5品目)
(i) 電子血圧計 [新規]
(ii) 血糖値測定器 [新規]
(iii) 補聴器 [新規]
(iv) 電子体温計 [新規]
(v) マッサージ機能付き足湯器 [新規]

4. 規制対象物質および最大許容濃度

中国RoHSの制限対象となる特定有害物質および最大許容濃度は、国家強制標準 GB 26572(2025年版)に規定されており、これはEU RoHS指令と同じ10物質群および閾値となっています。

(i) 鉛(Pb):0.1 wt% (1,000 ppm)
(ii) 水銀(Hg):0.1 wt% (1,000 ppm)
(iii) カドミウム(Cd):0.01 wt% (100 ppm)
(iv) 六価クロム(Cr(VI)):0.1 wt% (1,000 ppm)
(v) ポリ臭化ビフェニル(PBB):0.1 wt% (1,000 ppm)
(vi) ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE): 0.1 wt% (1,000 ppm)
(vii) フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP):0.1 wt% (1,000 ppm)
(viii) フタル酸ブチルベンジル(BBP):0.1 wt% (1,000 ppm)
(ix) フタル酸ジブチル(DBP):0.1 wt% (1,000 ppm)
(x) フタル酸ジアイソブチル(DIBP):0.1 wt% (1,000 ppm)

5.用途の除外(Exemptions)について

目標達成目録に収載された35品目については、EU RoHS指令の附属書IIIと同様に「用途除外」(*3)が認めされています。対象品目がEUに比べて絞られているため除外項目の総数は少ないものの、「真鍮中の鉛含有量 4% 以下」といった基本的な除外内容はEU RoHS指令と共通しています。

6. 基本的な法的基準および適用規格一覧

適合宣言や評価を行うための主要な中華人民共和国規格(GB規格など)は以下の通りです。これらはEUで適用されている規格(EN/IEC)と技術文書の構成等が共通しており、翻訳等での相互流用が可能です。

(a)GB/T 36560-2018(目標達成目録製品の適合宣言規格)
IEC 63000:2016年版の中国翻訳標準です。EUにおける EN IEC 63000:2018年版(EU RoHS対応規格)と共通の技術文書作成基準であるため、言語を翻訳することで流用が可能です。

(b)GB/T 26572-2011(電気電子製品における制限物質の限界量要件)
有害物質の「閾値」を定めた基本規格です。均質物質(Homogeneous material)単位で、リード線や樹脂などの各部品が上記10物質の制限値以下(フタル酸類含む各0.1wt%以下、カドミウムのみ0.01wt%以下)であるかを判定する際の法的基準となります。

(c)SJ/T 11364-2014(電気電子製品有害物質制限使用標識要件)
中国RoHSマーク(緑のeマーク、またはオレンジの環境保護使用期限マーク)の貼付基準、マークのサイズ、色、および「有害物質含有表」の書き方を規定した業界規格です。

(d) GB/T 39560シリーズ(試験測定規格)
EU RoHSにおける試験方法規格である IEC 62321シリーズに相当する中華人民共和国規格です。

まとめ

中国RoHS管理規則は、対象製品の範囲こそEU RoHSと異なりますが、順法・適合性宣言の基準(技術文書の作り方や物質の閾値、試験規格など)は非常に高い類似性を持っています。そのため「中国RoHS」と通称されています。今回の改正による非含有宣言対象製品の大幅な拡大に備え、サプライチェーン全体の含有情報管理のアップデートが必要となります。

化学物質法規制研究会 松浦技術士事務所 松浦 徹也 氏

引用先
*1:工業情報化部の改正発表
https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcwj/wjfb/gg/art/2026/art_1abc7a6cb7d64e4e976cd454aa1df81e.html
*2:2026年版「目標達成目録」
https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcjd/art/2026/art_5e3da83febf5461ca1b063165c660dea.html
*3:用途除外
https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcjd/art/2026/art_45af8e2e10504d1bbfac5801196ab891.html

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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