第11回_フランス向け日用品(プラスチック容器封入製品)包装材規制の順法基準とは?

フランスから弊社製品(日用品)の引合いがきました。この製品はプラスチック製の容器に封入し、容器表面にはデザイン画と商品説明を印刷しています。輸入者からの要求仕様に包装材に関する基準もありますが、PPWRと差異があります。順法基準を教えてください。

フランスからの引合いに対し、輸入者の要求仕様とPPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation (EU) 2025/40 包装及び包装廃棄物規則)の差異を確認し、遵守すべき基準を整理します。現在(2026年6月現在)はフランス独自の「AGEC法」とEU統一の「PPWR」が重なり合う複雑な移行期にあります。

1.AGEC法について

フランスではAGEC法(Loi Anti-Gaspillage pour une Économie Circulaire:循環型経済のための廃棄物対策法)により、さまざまな製品の包装材に適用されます。AGEC法の正式名称は“LOI n°2020-105 du 10 février 2020“(*1)で、EU指令のWFD((EC)2008/98)(*2)の2018年の改定(*3)を受けて、フランス国内法を改定するための法律です。改定後の法令などは、環境コード(法典)(*4)で公開されています。

(i)L. 541-10(注 L:Loi(法律)議会が制定)
拡大生産者責任(EPR)の原則を規定し、化粧品を含む各品目カテゴリのREP制度を定めています(AGEC法によりEPR制度の対象品目が大幅に拡大されました)。

(ii)L. 541-15-10
使い捨てプラスチック製品の段階的廃止や、特定の使い捨て製品の禁止(例:2040年までに使い捨てプラスチック包装を廃絶する目標など)の規定が含まれています。

(iii)L. 541-15-3
環境に関する主張(グリーンクレーム)の規制(例:「生分解性」といった誤解を招く用語の禁止)に関する規定が含まれています。

(iv)R. 543-43(注 R:règlement(規則)行政府(大統領・首相)が制定 法律の詳細な義務や手続き)包装材の定義(一次包装、二次包装、三次包装を含む)が規定されています。

(v)R. 541-221
Triman(トリマン)ロゴと分別指示(Info-Tri)の表示義務。包装材の分別方法に関する情報を提供する義務や、環境品質・特性に関する情報の義務付けに関する詳細が定められています。

(vi)R. 541-90
リサイクル材含有率やリサイクル可能性の具体的な目標に関するデクレ(政令)の根拠規定など。

2. 包装材規制の全体像(AGEC法とPPWR)

(1)PPWR(*5)の動向

(i)位置づけ: 2025年1月22日に官報(Official Journal of the European Union)で告示された「規則(Regulation)」です。従来の「指令」とは異なり、EU加盟国すべてに一律に直接適用されます。

(ii)主な目的: 包装廃棄物の削減(2040年までに2018年比15%削減)、100%リサイクル化、有害物質(PFAS等)の制限、再利用の促進。

(iii)適用スケジュール:
•2026年8月12日:本格的な適用開始。
•2028年8月12日以降:新ラベル表示義務(実施法の公布から24か月後)。
•2030年1月1日以降:リサイクル可能な包装の義務化、特定用途の使い捨て包装禁止、再生材含有率の義務化などが順次開始。

(2)AGEC法(フランス国内法)の現状

フランスは環境規制に非常に積極的で、国内法であるAGEC法により、EU共通基準よりも厳しい、あるいは先行した独自の規制を維持しています。

(i)根拠: EU指令(WFD)の2018年改定を受けた国内法
(ii)今後の流れ:PPWRの適用に伴いフランス法も調和されますが、ラベル表示やPFAS規制など、特定の項目ではフランス独自の基準が先行・継続されます。

3. 主要な規制項目の比較と実務上の対応

(1) 分別表示(ラベル)

(i)AGEC法:「トリマン・ロゴ(Triman Logo)」と分別指示「Info-Tri」の表示がすでに義務化されています。
(ii)PPWR:統一ラベルが導入予定ですが、適用は早くとも2028年8月以降です。
(iii)対応:統一ラベルが義務化されるまでは、現行のフランス独自の表示ルールを維持・遵守する必要があります。

(2)特定素材の禁止(ポリスチレン等)

(i)AGEC法:ポリスチレン包装材の禁止は、PPWRとの整合性を図るため2025年から2030年へと延期されました。
(ii)PPWR:今後のEU域内でのリサイクルルート確立状況に応じて、具体的な規制内容が決定されます。

(3)過剰包装の抑制(包装の最小化)

(i)AGEC法:具体的な規定は限定的です。
(ii)PPWR:「包装の最小化(重量・容積の最小限化)」が明確に義務化されます。

4.鉱油(ミネラルオイル)規制法:環境大臣の命令(Arrêté)について

AGEC法のEPR制度(拡大生産者責任)により、包装材には有害物質の含有が禁止され、包装材への印刷インクもその対象となります。ミネラルオイル規制は、カタログやチラシなどの印刷物にも適用されます。フランス固有の規制が環境法典 D.543-45-1およびD.543-213の鉱油の使用の禁止(ミネラルオイル規制)です。

(i) D.543-45-1(包装材規制)(*6)
廃棄物との闘い及び経済循環に関する法律(L.2020-105 2020年2月10日)の第112条に規定されている「包装におけるミネラルオイルの使用の禁止」は、包装廃棄物のリサイクルを妨害する物質を含むミネラルオイル、またはこれらの物質が人間の健康にもたらすリスクのためにリサイクル材料の使用を制限するミネラルオイルに適用する。

(ii) D.543-213(紙印刷規制)(*7)
廃棄物との闘い及び経済循環に関する法律(L.2020~105 2020年2月10日)の第112条に記載されている「一般向けの印刷物、商業的促進を目的とした宣伝チラシ及び未承諾のカタログの印刷にミネラルオイルを使用することを禁止」する条件を規定する。この禁止は、廃紙のリサイクルを阻害する物質を含有する鉱油やこれらの物質が人の健康に悪影響を及ぼす危険性があるため、古紙と一緒に回収された廃棄物からの再生材料の使用を制限するミネラルオイルに適用される。2022年5月3日の官報(JORF n°0102 of 3 May 2022)で、ミネラルオイルの制限に関する大臣命令(*8)が公布されました。大臣命令第2条でミネラルオイルの定義と濃度基準が規定されています。

(1)対象物質

(i)1〜7個の芳香環を含む芳香族炭化水素鉱油(MOAH)
(ii)16〜35個の炭素原子を含む飽和した炭化水素鉱油(MOSH)

(2)濃度制限

(i)2024年12月31日まで質量濃度でMOAH 1%を超えるインクの使用を禁止

(ii)2025年1月1日から
質量濃度でMOAHが0. 1%を超えるインクの使用を禁止
質量濃度で3〜7個の芳香環を持つMOAHが0.0001%(1ppm)を超えるインクの使用禁止
質量濃度でMOSHが0.1%を超えるインクの使用を禁止

(3)第3条で、適合基準について、「第2条に定める条件への適合性は、適用または印刷の前または後に確認することができる」としています。多くの印刷企業は、使用する印刷インクのSDSや印刷インク会社の非含有宣言により、適合宣言をしています。

<参考>
包装規制は、基本的に「EU市場に出される最終製品(包装材)」の状態を基準とします。意図的か不純物かを問わず、最終的な包装材の濃度が基準を超えている場合は輸入・販売が禁止されます。しかし、大臣命令の解釈では、工程内消費や域外工場で使用され、乾燥・洗浄等で除去され最終製品に残らない物質(揮発性溶剤のトルエン等)は、原則として規制対象外です。エコロジー・持続可能開発・エネルギー省のFAQ(*9)では、トルエンについて、以下の説明をしています。

Q:トルエンは禁止対象に含まれるか?

A:特にグラビア印刷用のインク溶剤として使用されるトルエンは、その物理化学的性質が特定の鉱物油と類似している場合があるものの、鉱物油の使用禁止措置の対象には含まれない。
この点に一部対処するため、2022年4月13日付政令第3条には、インクを包装材や印刷媒体に塗布した後に閾値への適合性を確認できるという追加の選択肢が盛り込まれた。これは、特定の物質が揮発性を持つことで、媒体への塗布後に濃度が低下する場合があることを考慮し、包装材や印刷物の適合性を証明するために製造業者や関係者に与えられた柔軟な措置である。

一方、ESPR(*10)によるDPP(デジタル製品パスポート)について、留意する必要があります。工程内物質の管理で、 トルエン等の揮発性物質は「乾燥工程で除去されていること」が法的リスクの分岐点となります。順法対象のバウンダリは、グーリンウォシングの懸念を払拭するために拡大する傾向にあります。将来への備えとして、 単なる「残留なし」の証明だけでなく、将来的に「工程内で何を使用し、どう処理したか(あるいは代替したか)」をデジタルデータで即答できる体制(DPP対応)の準備が求められます。また、国際的な法的拘束力のあるプラスチック条約(INC)(*11)が、2026年度中にまとまる可能性があり、この策定状況により、今後さらなる規制の可能性があります。プラスチック包装材に関する規制は、EU、フランスだけでなく、多くの国で、規制強化の動きが起きています。

引用
*1:LOI n° 2020-105 du 10 février 2020
https://www.legifrance.gouv.fr/loda/id/JORFTEXT000041553759
*2:WFD
https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2008/98
*3:WFDの2018年改定
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A32018L0851
*4:環境コード
https://www.legifrance.gouv.fr/codes/texte_lc/LEGITEXT000006074220/2021-04-05/#LEGITEXT000006074220
*5:PPWR
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng
*6:D.543-45-1
https://www.legifrance.gouv.fr/codes/id/LEGIARTI000042932902/#LEGIARTI000042932902
*7:D.543-213
https://www.legifrance.gouv.fr/codes/id/LEGIARTI000042950394/#LEGIARTI000042950394
*8:大臣命令
https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000045733481
*9:FAQ
https://www.ecologie.gouv.fr/sites/default/files/documents/FAQ_HM_18AVRIL2023-def_EN.pdf
*10:ESPR
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1781/oj/eng
*11:INC
https://www.env.go.jp/water/inc.html

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