第3回_EUの鉛の使用規制案に関する最近の動向
屋外での射撃や釣りにおける鉛の使用制限案に関して、リスク評価委員会(RAC:Committee for Risk Assessment)の意見書1)がECHAのWeb サイト2)に公開されたので説明する。
なお、ここで対象としているのは、屋外活動用(狩猟、スポーツ射撃、その他の屋外射撃)の銃器及びエアガンの鉛製弾丸、釣り用シンカー及びルアーに含まれる鉛の上市と使用についてである。軍事的、警察、警備、税関などによる用途は範囲外である。また、屋内での鉛製弾丸の使用も範囲外である。
1. RACの修正案(一部省略)
(1) 1 %w/w 以上の濃度で上市されてはならない: a. 釣り具、b. 釣り糸、c. 銃弾
(2) 1 %w/w 以上の濃度で使用してはならない: a. 釣り用シンカー、b. 釣り用ルアー、c. 狩猟用の銃弾、d. スポーツ射撃、他
(3) 1 %w/w 以上の濃度で使用してはならない: その使用中に意図的にシンカーを放出する釣り具
(4) 適用除外
- 1.9 ~ 2.6 mmの銃弾のサイズについては、次の場合、上記(1)項c は適用されないものとする: 加盟国によって認可された使用者のみに鉛製銃弾を市場に投入する小売業者
- 1.9 ~ 2.6 mmの銃弾のサイズについては、次の場合、上記(2)項d は適用されないものとする: 加盟国によってスポーツ射撃のために鉛弾を使用するライセンスを付与された使用者(以下、省略)
(5) ただし、物質、混合物及び成形品の分類、包装及び表示に関する他の共同体規定の適用を妨げるものではない
- 銃弾、銃弾と定義されない弾丸、釣り用シンカー及びルアーの小売業者は、寸法や重量に関わらず、1 %w/w(銃弾と定義されない弾丸用の銅または銅合金で、例外的に3 %—この例外は、発効前に1 % 未満の濃度を達成できるかどうかの見直しが行われるものとする)(以下、省略)
- 1 %w/w(銅または銅合金の場合は例外的に3 %—この例外は、発効前に1 % 未満の濃度を達成できるかどうかの見直しが行われるものとする)以上の濃度の鉛を含む「銃弾と定義されない弾丸」の供給者は、上市前に、製品包装に(5)a 項に記載された情報を明確、可視的かつ消えないようにラベル表示すること(以下、省略)
- 1 %w/w 以上の濃度の鉛を含む「銃弾」の供給者は、上市前に、製品包装に(5)a 項に記載された情報を明確、可視的かつ消えないようにラベル表示すること(以下、省略)
(7) 制限の発効
d.(1)c 項及び(2)d 項は、制限の発効から5 年間適用されるものとする
k. (2)c 項は、制限の発効から5 年より短い移行期間を適用するものとする
2. RACの意見
前記のRACの修正案に関して、RACから出された根拠は、以下のとおりである。
2.1 (4)項の修正に関して
(4)a, b項の適用除外について、スポーツ射撃で使用される弾丸サイズ(1.9 ~ 2.6 mm)に限定するべきであるとした。
2.2 (5)項の修正に関して
(5)a, b, c 項の表示要件について、鉛の濃度閾値として0.3 %w/w ではなく、(1)項~(3)項と同じ値である1 %w/w に合わせるほうが有利であるとした。もし、銃弾として定義されていない他の発射物において、3 % までの鉛を含む銅または銅合金の使用を認める緩和が実施される場合、(5)a, b 項で規定された表示要件は、鉛含有量が 3 %w/w 以上の場合にのみ、これらの代替品に適用されるべきであるとした。
2.3 (7)項の修正に関して
原案では、(7)d 項で、狩猟における銃弾の使用禁止のための5 年間の移行期間となっていたが、RACの見解は、湿地での鉛弾の使用がすでにEU全体で規制されていることを考慮すると、この移行期間は長すぎ、短縮することが可能であるとした。そのため、(2)c 項の狩猟用の銃弾の移行期間を5 年より短い移行期間とした。
【出典】
1) https://echa.europa.eu/documents/10162/5e0bed8b-4421-bdfe-139d-96c6c9c07bc0
2) https://echa.europa.eu/es/registry-of-restriction-intentions/-/dislist/details/0b0236e1840159e6
◆ トピックス
・ECHAがREACH規則の新規物質評価結果を公表
ECHAは、REACH規則の新規物質(N-1-naphthylaniline)(CAS No® 90-30-2)の評価結果をWeb サイトに公表した。
・ECHAがCLP規則の新たな提案意向と提案書を公表
ECHA は、CLP 規則において、thymol (CAS No® 89-83-8)など、新たな9 物質に関する提案の意向と、3-iodo-2-propynyl butylcarbamate(CAS No® 55406-53-6)、2,3-epoxypropyl o-tolyl ether (CAS No®2210-79-9)の2 物質に関する提案書が提出されたことをWeb サイトに公表した。
(一社)東京環境経営研究所 中山 政明氏
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