第106回_包装および包装廃棄物規則(PPWR)の概要

EUグリーンディールや循環型経済(Circular Economy)活動計画に基づき検討が進められてきた包装および包装廃棄物規則((EU) 2025/40)(以下、PPWR)が2025年1月22日に官報公示され、2026年8月12日から段階的に適用が開始されることになりました。
今回はこのPPWRの概要についてご紹介いたします。

1.PPWRの構成

PPWRは次のとおり、全13章(71条)と13の附属書で構成されています。本規則によって、従来の包装廃棄物指令(94/62/EC)は廃止され、製品の市場監視とコンプライアンスに関する規則(EU)2019/1020および使い捨てプラスチック指令((EU)2019/904)の一部を改正する内容となっています。

第I章:一般規定(第1条~第4条)
第II章:持続可能性要件(第5条~第11条)
第III章:ラベル、マーキング、情報要件(第12条~第14条)
第IV章:全般的な義務(第15条~第23条)
第V章:包装および包装廃棄物を削減する事業者の義務(第24条~第33条)
第VI章:プラスチック製の袋(第34条)
第VII章:包装の適合性(第35条~第39条)
第VIII章:包装および包装廃棄物の管理(第40条~第57条)
第IX章:セーフガード手続き(第58条~第62条)
第X章:グリーン公共調達(第63条)
第XI章:委任された権限および委員会の手続き(第64条~第65条)
第XII章:改正事項(第66条~第67条)
第XIII章:最終規定(第68条~第71条)
附属書I~XIII

これらPPWRの要件のうち、新たに設けられた包装材の設計等に関わる主な要件として、「持続可能性要件」、「ラベル・表示要件」、「適合性評価要件」を取り上げます。

2.持続可能性要件

包装材が順守しなければならない要件の1つとして「第II章:持続可能性要件」があり、次の7つの要件が定められています。

(1)有害化学物質の含有制限(第5条)
従来の包装廃棄物指令と同様に「鉛、カドミウム、水銀および六価クロムの濃度の合計は100 mg/kg」以下とすることが求められます。また本規則によって新たに食品接触包装材を対象にPFAS類の制限(ポリマー以外の個々のPFASが25ppb、ポリマー以外のPFAS類合計値が250ppb、ポリマーを含むPFAS類合計値が50ppm)が追加され、2026年8月12日から適用されます。

(2)リサイクル可能な包装材のみ上市可能(第6条)
EU市場に流通するすべての包装材は次のいずれかの条件を満たす「リサイクル可能」なものであることが求められます

・マテリアルリサイクルのために設計され、その結果得られる2次原材料は1次原材料の代替が可能な品質を有していること
・廃棄物となった場合、分別回収され、他の廃棄物のリサイクル可能性に影響を与えることなく特定の廃棄物に分類され、大規模なリサイクルが可能であること

本規則では附属書IIにおいて、次のようなリサイクル可能性を評価するための包装材の分類やパラメータ等が示されていますが、詳細な判定方法等については委任規則や実施規則が制定される予定となっています。

・包装材の種類:ガラスや紙、金属、各種プラスチックなど22種
・評価基準:A(リサイクル可能割合が95wt%以上)、B(同80wt%以上)、C(同70wt%以上)
・評価パラメータ:添加物、表示、袖、閉じ口、粘着剤、着色剤、材料構成、バリア・コーティング、インク・印刷、残留物・排出容易性、解体容易性

なお、2030年1月1日以降は上記評価基準のA、B、Cに該当する包装材のみが、2038年1月1日以降はA、Bのみしか上市が認められません。

(3)プラスチック包装材の最低リサイクル含有割合(第7条)
2030年1月1日以降、使用済みプラスチック廃棄物から回収されたリサイクル材料を次の割合以上使用したプラスチック包装材のみしか上市が認められなくなります。

・使い捨てプラスチック飲料ボトルを除き、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする接触に注意が必要な包装材:2030年1月1日以降30%、2040年1月1日以降50%
・使い捨てプラスチック飲料ボトルを除き、PET以外のプラスチック材料の接触に注意が必要な包装材:2030年1月1日以降10%、2040年1月1日以降25%
・使い捨てプラスチック飲料ボトル:2030年1月1日以降30%、2040年1月1日以降65%
・上記以外のプラスチック包装材:2030年1月1日以降35%、2040年1月1日以降65%

なお、リサイクル含有割合の計算や検証方法等については、2026年12月31日までに委任規則が制定される予定となっています。

(4)生物由来プラスチック包装(第8条)
現時点で具体的な要件は定められていませんが、2028年2月12日までに生物由来プラスチック包装の技術開発や環境影響等を検討し、必要に応じて生物由来プラスチック包装の持続可能性要件や利用拡大目標等の提案を行うことが定められています。

(5)堆肥化可能な包装(第9条)
ティーバッグや使い捨てコーヒーカプセルの包装材や、野菜等に貼付されるラベルは、前述の「(2)リサイクル可能な包装材のみ上市可能」の適用除外とされる一方で、2028年2月12日までに堆肥化可能なものとすることが求められます。

(6)包装の最小化(第10条)
2030年1月1日までに、製造・輸入者には、包装が必要最小限の重量・容積まで削減されるよう設計されていることを附属書IVに基づき確認することが求められ、附属書IVに準拠していない包装材の上市はできなくなります。

(7)再利用可能な包装(第11条)
再利用可能な包装の要件が定められており、これらの要件を満たさなければ再利用可能な包装とは見做されません。

3.ラベル・表示要件

「第III章:ラベル、マーキング、情報要件」によって、主に次のようなラベル要件が定められています。また該当する場合には、より詳細な情報を示すQRコード等の標準的なオープンデジタルデータキャリアを貼付することも求められます。

(1)材料構成情報(第12条)
2028年8月12日以降、使用者の選別を容易にするため、材料構成に関する情報等を含む統一ラベル(ピクトグラム)を表示することが求められます。

(2)懸念物質情報(第12条)
懸念物質を含有する包装材の場合には、標準的なオープンデジタルデータキャリアを貼付することが求められます。

(3)プラスチック包装材のリサイクル含有割合(第12条)
2028年8月12日以降、プラスチック包装材のリサイクル含有割合に関する情報をラベルに貼付することが求められます。

(4)再利用可能な包装のラベル(第12条)
2029年2月12日以降は、再利用可能な包装の場合には、再利用可能な包装である旨を使用者に知らせるためのラベルを貼付することが求められます。また、回収拠点等の再利用性に関する詳細な情報を標準的なオープンデジタルデータキャリアを通じて提供することが求められます。なお、これら表示の義務に関連するラベルや標準的なオープンデジタルデータキャリアの仕様や、材料構成や懸念物質の識別方法等の詳細については、別途、委任規則や実施規則で明確化される予定となっています。

4.適合性評価要件

「第VII章:包装の適合性」によって新たに適合性評価要件が設けられました。持続可能性要件やラベル・表示要件などの順守を図るため、附属書VIIで定められた内部生産管理や技術文書、適合宣言書(DoC)といった適合性評価の仕組みが定められています。
なお、RoHS指令等とは異なりCEマークの貼付は求められていません。これはRoHS指令等の製品規制に基づくCEマークは製品または包装材に貼付することを義務付けており、PPWRでCEマークを要求してしまうと、包装材に貼付されているCEマークの対象が製品なのか包装材なのか誤解や混乱が生じる恐れがあるためです。

5.最後に

このように、PPWRは従来の包装廃棄物指令を大幅に強化し、様々な新たな義務が追加されました。日本企業への影響を考えると、包装材製造者は「持続可能性要件」、「ラベル・表示要件」、「適合性評価要件」のいずれにも対応することが求められます。一方、包装材製造者が製造した包装材を調達し、自社製品の包装材として使用する企業の場合には、包装材の設計段階での対応については直接的に関わるわけではありませんが、EU向け製品の包装材については、各要件を順守した包装材を調達・使用する等の対応が求められるものと考えます。各要件の詳細については、今後制定される予定の複数の実施規則で明確化されていく予定であるため引き続き実施規則の内容を確認していくことが必要であると考えます。

(一社)東京環境経営研究所 井上 晋一 氏

1)EC PPWR((EU) 2025/40)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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