第110回_EU持続可能な製品のエコデザイン規則(ESPR規則)及び エネルギーラベル規則(ELFR規則)作業計画 2025-2030年

欧州委員会(European Committee:EC)(以後「委員会」)は、持続可能な製品のエコデザイン規則(ESPR規則)及びエネルギーラベル規則(ELFR規則)に関する2025-2030年の優先順位付けを示す作業計画(以後「作業計画」)を採択しました1)2)。これは本年2月17日付本コラム3) でご紹介したエコデザインフォーラム(Ecodesign Forum)(以後「フォーラム」)で本年2月に検討を行った結果を反映したもので、フォーラムの最初の成果となるものです。なお、作業計画はESPR規則第18条第5項で、最初の作業計画を2025年4月19日までに作成することになっていたものです。

1.2025-2030年作業計画

1.1.背景と目的

作業計画は、ESPR規則及びELFR規則に基づく製品毎の委任法策定の優先順位付けと適用予定を明らかにするものです。基本的には、従来3年毎に策定されてきたエコデザイン指令及びエネルギーラベル規則作業計画を引き継ぐもので、後述のようにESPR規則の委任法が制定されるまでは従来のエコデザイン指令の委任法が継続して有効となります。

1.2.優先順位付けの方法

優先順位付けにあたっては、エビデンスに基づく包括的で透明性の高いプロセスとするために、EU共同研究センター(Joint Research Center: JRC)による徹底した技術分析に基づき、環境への影響、市場規模・影響、関連する規制とのギャップをスコア化(JRC ranking)4) し、それにパブリックコメントとフォーラムでの協議結果を加味して決定されました。ESPR規則では、第18条で従来の検討結果を基に最初の作業計画で検討する製品を規定していますが、新たな基準で再評価を行い最終的な優先順位付けとしています。これはESPR規則が、正当な理由を提示すればこれらの製品の一部を除外したり、新たな製品を追加したりする裁量権を欧州委員会に与えていることによるものです。

2. 作業計画による優先順位

最初の作業計画には、前回のエコデザイン及びエネルギーラベルの作業計画5) から引き継いで準備された実質的な作業リストに加え、4つの最終製品、2つの中間製品、横断的要件(horizontal requirement)を定める2つの委任法が含まれています。具体的な追加された作業リストとESPR第18条第5項で優先検討とされた製品グループの比較を表1に示します。

3. 作業計画で明らかになったその他の検討状況

3.1.デジタル製品パスポート(DPP)の検討

委員会は、データキャリア、インフラストラクチャー、データの相互運用性に関する規則を設定するための標準化プロセスの検討を開始しました。ESPR規則第13条では2026年7月19日までに、委員会は、少なくとも固有の識別子を安全な方法で保存するデジタルレジストリを設置することが示されていますので、それまでに検討が進むと理解できます。一方で、現行のエネルギーラベルが関連するエネルギー関連製品の標準オプションとして使用され続けることが確認されています。
その他の対象製品については、デジタル製品パスポートで情報が提供される予定ですが、製品によってはESPRラベルや、現在検討中の繊維製品ラベリング規制など、特定のEU法規に準拠したその他のラベルが貼付される場合もあるとされています。

3.2.グリーン公共調達

委員会は、作業計画で優先される製品について、最低公共調達要件を設定する範囲を、同じ製品に対する具体的なエコデザイン要件の評価とともに評価するとしています。エコデザインの要求事項を定める委任法と公共調達の要求事項を定める実施法は、2つの異なる法律ですが、欧州委員会は、両措置を共同で調査・評価し、2つの採択手続きを並行して行うとしています。なお、エネルギーラベル付き製品については、ELFR規則とエネルギー効率指令が、公共調達とエネルギーラベルの等級を関連付ける要件をすでに規定しています6)。

3.3.売れ残り消費者製品廃棄の防止

ESPR規則第25条第1項で、2026年7月19日より、付属書VIIに記載されている売れ残り消費者製品の廃棄は禁止されるとしていますが、委員会は破棄に関する情報開示の義務化の実施から得られる知見(将来の作業計画における禁止措置の根拠となるもの)がまだ得られていないことを理由に、今回の作業計画では検討しないとしています。

4.まとめ

ESPR規則は枠組み規則であり、詳細な規制内容は委員会が製品グループ毎に委任法を制定して実施に移されます。どの製品グループから委任法を制定していくかを示す最初の作業計画が採択されました。
従来の(ErP)作業計画は3年毎に策定されており、ESPR規則第18条第3項でも作業計画は少なくとも3年間の期間を対象とし定期的に更新されるとされています。今回は最初の作業計画でもありますので、委員会への委任期限である5年までの計画とされたと推察されます。
一方で、今回の作業計画では、検討のための情報不足などを理由に当初予定にあるが盛り込まれていないものや、新規に検討を始める製品があることから、途中で修正や追加が行われる可能性がありますので、引き続き注視していく必要があると思います。

(一社)東京環境経営研究所 杉浦 順 氏

参考文献:
1)プレスリリース“欧州委員会、EUにおける循環型および効率的な製品を促進するための計画を発表”
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_1071
2)ESPR及びELFR作業計画2025-2030
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/13682-New-product-priorities-for-Ecodesign-for-Sustainable-Products_en
3)TKKコラム“持続可能な製品のエコデザイン規則(ESPR規則)エコデザインフォーラムの動向”
https://johokiko.co.jp/chemmaga/tkk0101/tkk/
4)JRC ranking
https://publications.jrc.ec.europa.eu/repository/handle/JRC138903
5)エコデザイン及びエネルギーラベル作業計画2022-2024
https://energy.ec.europa.eu/publications/ecodesign-and-energy-labelling-working-plan-2022-2024_en
6)市場の監視と製品のコンプライアンス規則
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2019/1020/oj/eng

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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