第54回_職場における化学物質管理の在り方を自律的な管理への転換し、有機則、特化則等の規制を廃止→その場合、後継の法規制はどのようなものになる?また、どのような変化点が生じる?

労働安全衛生法(安衛法)に基づく特別規則(特化則等)の規制廃止後の法規制に関しては、まだ情報は公開されていません。
ただし、厚生労働省(厚労省)は職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を行い、2021年7月19日にその報告書1)を公開しており、この中で化学物質管理に関して、原則として各企業の「自律的管理」に委ね、5年後に特化則等を廃止することを答申しています。これに伴う法規制の整理や変更に関しても、報告書に詳しく提言されていますので、廃止後の法規制や変更点に関して推測する参考になります。

厚労省はこの答申を受けて2022年から、労働安全衛生法施行令 2)(施行令)一部改正、及び労働安全衛生規則3)(安衛則)及び特定化学物質障害予防規則4)(特化則)の一部改正などを行ってきています。一連の改正のポイントは、厚労省HP(労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制について)5) に詳しく説明されていますが、これまでの特化則等による個別物質名を挙げて具体的規制を示す方式から、有害化学物質全体を網羅的に規制の対象として、自律的な管理を基軸とする規制に変更することです。
具体的な変更点は下図に示されているように、

1)対象物質を、国のGHS分類により危険性・有害性が確認され、国がモデルラベル・SDSを作成済の約2900物質(ばく露濃度基準未設定を含む)及び今後順次追加される物質に変更する。
2)事業者の義務として次の5項目を規定(ばく露濃度基準未設定物質は一部努力義務)
〇ラベル表示・SDS交付による危険性・有害性情報の伝達義務
〇SDSの情報等に基づくリスクアセスメント実施義務
〇ばく露濃度をばく露濃度基準以下とする義務
〇ばく露濃度をなるべく低くする措置を講じる義務
〇皮膚等への健康障害を発生させるおそれがある化学物質への直接接触の防止の為の保護具等の使用義務

です。
このような義務を実施することを担保するために、化学物質管理専門家を配置してリスクアセスメントを実施するなど一定の条件を満たす場合に特化則等の適用除外を行う仕組みの導入、リスクに応じた健康診断の実施頻度の緩和、作業環境測定結果が第三管理区分である事業場に対する措置の強化、雇い入れ時の安全衛生教育の義務化などが導入されました。

以上の流れから、今後も報告書の答申に従って特化則等の廃止に向けて関連法、施行令、及び省令の変更が行われると思われます。

 

(出典 厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制について)

1)職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000807679.pdf

2)労働安全衛生法施行令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347CO0000000318

3)労働安全衛生規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032

4)特定化学物質障害予防規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000039

5)労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00005.html

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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