第104回_EU RoHSで2021月7月21日迄に上市された産業用監視制御機器に組み込んで使用の部品が故障→その部品をサービスパーツとして特定のフタル酸エステル類の含有が不明の状態で送付しても問題ない?
ご質問の貴社が取り扱う部品が特定のフタル酸エステルの含有の有無に関わらず送付できるかについては、組み込まれる機器の種類や上市日などによります。EU RoHS(II)(*1)では第4条第1項にて「加盟国は、上市するEEEについて、その修理、再利用、機能の更新又は容量のアップグレードのためのケーブル及び予備部品を含め、附属書IIに掲げる物質を含まないことを確保するものとする」としています。しかしながら、第4条第4項にて第1項を適用しない機器などについての規定を定めています。また、特定フタル酸エステル類への適用についての記載が附属書Ⅱにあります(*2)。ご質問のケースでは貴社が取り扱う部品が組み込まれる機器がこれらの要件に該当するかがポイントとなります。
◆第4条第4項と附属書IIの特定フタル酸エステルに関する内容
第4条第4項には制限物質について定めて第1項が適用されない要件として以下の規定があります。
(a)2006年7月1日より前に上市されたEEE
(b)2014年7月22日より前に上市された医療機器
(c)2016年7月22日より前に上市された体外診断用医療機器
(d)2014年7月22日より前に上市された監視および制御機器
(e)2017年7月22日より前に上市された産業用監視および制御機器
また、附属書IIには特定フタル酸エステルに関して以下の記載があります。
特定フタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、およびDIBP)の制限は、2019年7月22日より前に上市されたEEE、および2021年7月22日より前に上市された体外医療機器を含む医療機器、および産業用監視および制御機器を含む監視および制御機器の修理、再利用、機能の更新、または容量のアップグレードのためのケーブルまたはスペアパーツには適用されないものとする。
つまり、貴社の取り扱う部品を組み込む機器が上記の要件に当てはまる場合であれば、第4条第1項は適用外となるため、特定のフタル酸エステル類の含有の有無が分からない状態で送付することが可能と判断できます。
貴社が送付する部品は、故障した産業用監視制御機器の一部を置き換えることで意図した機能を回復させるものとなりますので、RoHS(Ⅱ)指令第2条で定義されるスペアパーツに該当します。一定の要件を満たすスペアパーツを適用除外としている理由については、EU RoHS(II)と対をなす存在である廃棄物に関するEU WEEE(II)指令の方向性も考慮すると理解を深めることができます。EU WEEE(II)指令では第4条に廃棄物に対する政策の優先順位が示されており、その順番は「a.予防(廃棄物にしない)」「b.再利用」「c.リサイクル」「d.回収(エネルギー回収等)」「e.廃棄」と規定されています。したがって、スペアパーツによる修理を可能とし電気機器が廃棄物になるまでの期間を延ばすことは、「a.予防(廃棄物にしない)」にあたり優先順位の高い事項とされます。このため、スペアパーツにおいては適用日以前に上市されたEEEについて、有害物質の含有制限に関する特例を認めていると考えられます。
(*1) RoHS(II)指令(2011/65/EU)
電気・電子機器における特定の有害物質の使用制限
the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment
https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2011/65/2025-01-01
(*2) RoHS2指令 附属書Ⅱの改正
amending Annex II to Directive 2011/65/EU of the European Parliament and of the Council as regards the list of restricted
指令(EU) 2015/863
https://eur-lex.europa.eu/eli/dir_del/2015/863/oj
免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。
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