第111回_DEHPはREACHで規制、RoHS禁止物質でもある→REACH対応していても製品中のDEHP含有量がRoHS違反→EU輸出は不可?

ご質問の通り、Bis (2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)はREACH規則、RoHS指令(*1)とも規制対象物質として特定されています。REACH規則におけるDEHPの制限条件であるエントリー51は、RoHS指令や医療機器など他の法規制で規制される分野は適用除外としていますので、貴社がEUに輸出しようとする製品にRoHS指令が適用されるかがポイントの一つとなります。RoHS指令の適用範囲となる電気電子機器 (EEE)は第3条で定義されており、以下となっています。

第3条第1項

「電気電子機器(EEE)とは、適正に作動するために電流又は電磁界に依存し、そのような電流、電磁界の生成、移動及び測定用であり定格電圧が交流1,000V、直流1,500V以下で使用するよう設計されている装置をいう」

RoHS指令の規制内容は「均質材料中に0.1%以下の濃度に制限」となり、適用除外用途があります。RoHS指令の含有濃度の考え方、適用除外用途について、以下に記載します。RoHS指令は含有濃度について「均質材料中の含有量」という考え方をとっています。DEHPを含有する部分について「均質材料」を分母としてDEHPの濃度を計算し、0.1%を超える場合、貴社の取り扱う製品はRoHS指令に対し違反となり、輸出は規制されることになります。

適用除外用途については、第2条4項にRoHS指令の範囲外にある製品や軍事用途の製品、宇宙用途の製品などが規定されています。また、スペアパーツ類に関しては附属書Ⅱに「特定フタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、およびDIBP)の制限は、2019年7月22日より前に上市されたEEE、および2021年7月22日より前に上市された体外医療機器を含む医療機器、および産業用監視および制御機器を含む監視および制御機器の修理、再利用、機能の更新、または容量のアップグレードのためのケーブルまたはスペアパーツには適用されないものとする」との記載があります。
つまり、RoHS指令に対しては、貴社の輸出する製品が均質材料単位で0.1%以下もしくは適用除外用途に当てはまる場合、EUへの輸出が可能となります。

一方で、貴社の取り扱う製品がRoHS指令の範囲外である場合、REACH規則の適用について考慮する必要があります。REACH規則においてDEHPは制限物質としてエントリー51(*2)にて4種のフタル酸エステルの一つとして特定されています。エントリー51で特定されているフタル酸エステルは以下の4種となります。

(a) Bis (2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
(b) Dibutyl phthalate (DBP)
(c) Benzyl butyl phthalate (BBP)
(d) Diisobutyl phthalate (DIBP)

エントリー51の成形品に関する条件は、以下となっています。

第3項

「フタル酸エステルを単独または組み合わせて、成形品中の可塑化材料の重量の0.1%以上の濃度で成形品に含有させて上市してはならない」

条件中の可塑化材料については第5項に規定があり、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリウレタンやシリコーンゴム及び天然ラテックスコーティングを除くその他のポリマー、表面コーティング、滑り止めコーティング、仕上げ材、デカール、印刷デザイン、接着剤、シーラント、塗料、インクがあげられています。つまり、貴社が取り扱うDEHPを含有する製品が上記の可塑化材料内に含有し、その材料の範囲で0.1%以上含有する場合、REACH規則による制限を受けEUへの輸出が規制されることになります。
また、第4項は屋外でのみ使用されるものや電気機器におけるRoHS指令や医療機器など他の法規制で規制される分野は適用除外としていますので、貴社はこの規定に該当するかについても確認する必要があります。
貴社は取り扱う製品について、その構成と各法規制の適用範囲を考慮してEUへの輸出について判断する必要があると考えられます。

(*1) RoHS(II)指令(2011/65/EU)電気・電子機器における特定の有害物質の使用制限
http://data.europa.eu/eli/dir/2011/65/2025-01-01
(*2) REACH規則付属書17の第51条(Entry 51 to Annex XVII of REACH)フタル酸エステル類についての修正
http://data.europa.eu/eli/reg/2018/2005/oj

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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