第4回_PPWRのEU統一ラベルが規定→現在貼付のフランスのトリマンロゴやイタリアのCONAIはどうなる?

1. フランスの「Triman(トリマン)」ロゴの今後

包装・包装廃棄物規則(PPWR:Packaging and Packaging Waste Regulation)が全面的に施行されると、EU全域で統一されたリサイクル表示ラベルが導入されます。これにより、フランス独自の「Triman」ロゴは、将来的にEU統一ラベルへ統合されるか、補足情報として併用される可能性が高いと見られています。現在、フランスでは環境法に基づき、家庭用製品の包装に対して以下の厳格な表示を義務付けています。

(i)Trimanロゴの貼付:家庭用ガラス飲料包装を除く、分別規則の対象となる全製品が対象です。
(ii)分別の詳細情報:記号だけでなく、消費者がどのように分別・排出するかという具体的な手順を併記する必要があります。
(iii)表示場所:原則として包装自体に表示しますが、表面積が小さい場合は、説明書への記載やWebサイトでの公開(非物質化)も認められています。

2. イタリアの「CONAI(コナイ)」システムと環境表示

イタリアでも、国内の包装廃棄物管理団体であるCONAI(全国包装コンソーシアム)を中心とした独自の管理体制が築かれています。2023年1月からは「環境表示」が義務化されました。

(i)材質識別コードの表示: EUの決定に基づいた英数字コード(PAP等)を表示し、材質を明確にする必要があります。
(ii)分別の指示: イタリア語で「ガラス回収」といった材質名や、自治体の指示を確認するよう促す文言を表示します。
(iii)デジタルツールの活用: 消費者の利便性を高めるため、QRコードを用いた情報提供が推奨されています。

3. EU統一ラベル(PPWR)を巡る各国の動向

EUは域内市場の混乱を防ぐため、加盟国ごとに異なるリサイクル表示を一つにまとめようとしています。しかし、独自のシステムを運用してきたフランスやイタリアからは、審議段階で反発もありました。

(i)「補完性の原則」による主張: フランスやイタリアの議会は、「すでに自国で十分な効果を上げているシステムに対し、EUが介入して統一を強いるのは不適切である」との意見を提出しました。
(ii)現状の妥協点: その後の議論を経て、フランスやイタリア側も納得できる内容へと成案が調整されました。今後は、具体的にどのようなデザインやスケジュールで統一ラベルへと移行するか、実施規則によって細部が決まっていく見通しです。

4. 輸出企業に向けた実務上のまとめ

欧州へ包装材を輸出する企業にとっては、当面の間、以下の対応が重要となります。

(i)現行ルールの維持と注視: フランスのTrimanやイタリアの環境ラベルといった現行の義務を確実に果たしつつ、EU統一ラベルへの切り替えタイミング(移行期間)を注視する必要があります。
(ii)デジタル対応の検討: 包装のスペース不足を解消するため、QRコードなどを通じて各国の情報を柔軟に提供できる仕組みの導入が有効です。
(iii)情報伝達の正確性: ラベルのデザインがEUで統一されたとしても、具体的な捨て方の説明などは、引き続き各国の言語やルールに基づいた対応が求められる可能性が高いと考えられます。

5 PPWRにおけるラベル表示の移行スケジュール

PPWRは「規則(Regulation)」であるため、公布後、全加盟国に直接かつ一斉に適用されますが、実務的な準備のために正式な発効(2025年2月)を受け、以下のタイムラインで動いています。

(i)2026年8月12日まで: 欧州委員会が、統一ラベルの具体的なデザイン、フォーマット、仕様を「実施規則」として採択する期限です。
(ii)2028年〜2029年頃: 実際の包装材への貼付が義務化されます

6 既在庫品の猶予期間

義務化の開始日より前に上市(市場に流通)されている包装材については、さらに追加で18ヶ月〜24ヶ月程度、そのまま販売・流通させることができる在庫処分期間が設けられるのが一般的です。

7 実務上の注意点:フランス・イタリアの現行ラベルとの関係

PPWRの統一ラベルが義務化されるまでの間、企業は以下の状況に置かれます。

(i)移行期(現在〜2028年頃):フランスの「Triman」やイタリアの「環境表示」など、現行の各国独自のルールを遵守し続ける必要があります。
(ii)統一後:PPWRの適用開始後は、各国が独自のリサイクルマークを強制することが禁止される見込みです(ただし、言語による説明など補足的な併記が認められるかどうかは、今後の実施令で詳細が決まります)。

8 今後の潮流

エコデザイン規則で導入されたDPP(デジタル製品パスポート)は、今後の包装材についても新たな義務を要求する可能性があります。ラベル表示が「すべてがデジタル(DPP)に置き換わる」のではなく、「物理ラベルは簡素化され、詳細はDPPへ」という二段構えの構造になると考えられます。 包装材は電気電子機器などと異なり、消費者が廃棄するときに、スマートフォンなどでQRコードを読み取らなくても「直感的」に判断できる必要があるため、統一記号(「プラスチックゴミ」「これは紙ゴミ」など)の情報は物理ラベルとして必須とされる可能性があります。

一方で、現在のフランスやイタリアの規制のように「文字でと説明を書く」ではなく、DPPで多言語での詳細な分別指示、部品ごとの解体方法、再利用(リユース)の案内などが入手できるようになっていく可能性があります。ラベル表示は、EU共通のリサイクルアイコン + データキャリア(QRコードやデータマトリックス等)なると思われます。

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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