第12回_成形品に含有される化学物質に適用されるのはSNURのみでしょうか?またSNURが成形品に適用される場合について教えてください。

【成形品に含有される化学物質に適用される規制】

米国有害物質規制法(TSCA: Toxic Substances Control Act U.S.C. Title15 Chapter53 SubchapterⅠ)の第5条(§2604 )1) で、化学物質を米国環境保護庁(EPA:U.S.Environmental Protection Agency)の定める重要新規利用(SNU:Significant New Use)のために製造、輸入、加工しようとする者に対し、その90日前までに重要新規利用届(SNUN: Significant New Use Notice)の提出を求めることができる、とされています。これは重要新規利用規則(SNUR: Significant New Use Rule)と言われていますが、米国内で成形品の加工、流通を行う場合、この規則が適用される場合があります。
米国での成形品に適用される規制としてSNURの他に、PCB、水銀、PBT(難分解性、高蓄積性、毒性)などの加工、流通を、第6条(§2605)2) で禁止、制約しています。この規則では指定された化学物質だけでなく、それらの物質を含有する成形品も規制の対象となります。特に2016年の改正で同条Subsection(h)が追加となり、対象となるPBT物質として以下の5物質が特定されました。

・DecaBDE(デカブロモジフェニルエーテル)
・HCBD(ペルクロロブタ-1,3-ジエン)
・PCTP(ペンタクロロベンゼンチオール)
・PIP (3:1)(リン酸トリアリールイソプロピル化物)
・2,4,6-TTBP(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール)

このうち2,4,6-TTBP、PCTP以外の3物質は、許容閾値無くそれらを含む成形品の製造、輸入、加工が禁止されています。但し、PIP(3:1)を含む成形品の加工、流通は2024年10月31日まで認められています。これらPBT物質への要求事項は、e-CFRのTitle40 ChapterⅠSubchapterR Part751 3) に収載されています。

【SNURが成形品に適用される場合】

商業目的で新規化学物質を製造する場合、製造者はEPAに製造前の届出(PMN:Pre-Manufacture Notice)をする必要があります。PMNはEPAで90日以内に審査されます。審査において、その化学物質に関するリスクを評価する十分な情報がなく、かつ人や環境に不当なリスクをもたらす恐れがある、または相当な量の環境への放出、若しくはばく露の恐れがある、と判断されると、TSCAインベントリ―に収載された後にEPAはSNURを適用します。新規化学物質だけでなく既存物質についても、EPAが人や環境に不当なリスクをもたらすと判断した場合は、SNURが適用されることがあります。
SNUとして決定する要因として、TSCA第5条(§2604)subsection(a) のparagraph (2)で以下の4つの全てを考慮するとされています。

・化学物質の製造、加工の計画量
・使用が人や環境へのばく露の状況、状態をどの程度変化させるか
・使用が人や環境へのばく露の規模や期間をどの程度増加させるか
・化学物質の製造、加工、商業的流通、廃棄で合理的に予想される方法

この詳細要件については、e-CFRのTitle40 ChapterⅠSubchapterR Part721 4) に収載されています。

【参考資料】
1) §2604:https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title15-section2604&num=0&edition=prelim
2) §2605:https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title15-section2605&num=0&edition=prelim
3) Part751:https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-751
4) Part721:https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-721?toc=1

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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