第63回_UKCAマークの動向

英国政府は2024年1月24日付けで「UKCAマーキングの使用」についてのWebサイト1)を更新し、その記事の中で、CEマーキングを含むEUの要求事項の承認を無期限に継続することを法制化する意向であることを公表しています。以下にその内容を解説します。

1. 背景

英国政府は、2021年1月1日より、UKCAマークを開始しましたが、企業の対応期間を確保するため、移行期間が設けられました。当初UKCAマークの表示義務の開始を、2022年1月1日としていましたが、その後1年延長し、2022年11月にはさらに2年延長して2025年1月1日になるとアナウンスしました。当Webサイトの記事2)でも紹介しています。今回、前途の公開記事において、2024年12月31日を超えて無期限に延長する法律を導入する意向であることを公表しています。それにより後述の21規制については、CEマーキングを含む現行のEU要求事項が無期限で承認されるため、企業は英国国内で製品を販売する際、UKCAマークまたはCEマーキング(または該当する場合は反転イプシロンマーキング)のいずれかを柔軟に使用できるとしており、事実上、従来のCEマーキングが英国国内でそのまま継続して有効となると考えられます。

2. 内容

今回の方針決定の背景に「企業向けデジタル・ラベリング導入と規制コスト削減のための新しい法律3)」制定があります。これは英国企業向けにデジタル・ラベリングを導入する新法です。デジタル・ラベリングにより、企業は重要な規制や製造に関する情報を、製品に物理的に印刷するのではなく、Webサイト等に掲載できるようになります。この措置はEU離脱によって可能になったもので、EUの規制要件よりも柔軟性が高く、ビジネスと国際貿易の現代的でデジタルな世界をよりよく反映するものとされています。また、企業にとって、コストと業務負担の軽減という恩恵を受けることができるとされています。その中で、玩具や機械などの製品についてCEマーキングの承認を継続し、EU離脱により可能となったデジタル・ラベリング改革により、英国の規制要件が現代社会に適合したものになるとしています。
また、新しい「Fast-Track UKCA」プロセスも導入され、製造業者はUKCAマークを使って、英国または公認のEU適合プロセスのいずれかに適合していることを証明できるようになります。製品が複数の規制の対象となっている場合は、UKCAマークとCEマーキング両方の適合性評価手続きを混合して使用することができます。

それら法的な整備が整った上で、英国政府は今春、さまざまな製品規制について、CEマーキングを含むEUの要求事項の承認を無期限に継続することを立法化する意向です。これらの法整備により、企業は英国で製品を販売する際に、以下のことが可能になります。

(1)UKCAマークまたはCEマーキングのいずれかを柔軟に使用できます。
(2)UKCAマークを粘着ラベルまたは添付文書に貼付できます。
(3)英国以外の国からの製品の輸入者は、製品本体、添付書類、包装、または粘着ラベルのいずれかに詳細を記載することができます。つまり、英国市場に製品を投入するすべての企業がこの措置の恩恵を受け、製品本体、添付書類、包装、または粘着ラベルのいずれかに、自社の詳細情報を消えないように記載する選択肢を持つことになります。
(4)デジタル・ラベリングの任意選択事業者は、UKCAマーク、製造者の詳細、輸入者の詳細をデジタル表示することができます。

更に英国政府は、EUの必須要件を満たし、必要な場合にはEUの認定適合性評価機関による適合性評価を受けている製品を、製造業者が英国市場で販売できるようにする新たなファスト・トラック規定を導入する予定です。この規定では、製造業者はUKCAマークを(許可された方法で)貼付し、関連EU法への適合を記載した英国適合宣言書を作成する必要があります。製品が複数の規制に該当する場合、UKCAマークとCEマーキング両方の適合性評価手続きを混在して使用できることになります。これは、将来的に英国政府が特定の規制についてUKCAマークを義務付けた場合に、企業に長期的な確実性と柔軟性を提供するためのものです。

CEマーキングおよび反転イプシロンマークを含む現行のEU要求事項の継続的な承認は、2023年8月1日に発表された事業貿易省(DBT)の所轄する18の製品規制と、エコデザイン規制、民生爆発物規制、および電気・電子機器における特定有害物質の使用制限規制(RoHS規制)の3つを加えた、以下の21規制に適用されます。

(1)潜在的爆発性雰囲気での使用が意図された機器に関する規制(防爆規制) 2016/1107
(2)電磁両立性規制(EMC規制) 2016/1091
(3)リフト規制 2016/1093
(4)電気機器(安全)規制 2016/1101
(5)圧力機器(安全)規制 2016/1105
(6)火工品(安全)規制 2015/1553
(7)レジャーボート規制 2017/737
(8)無線機器規制 2017/1206
(9)簡易圧力容器(安全)規制 2016/1092
(10)玩具(安全)規制 2011/1881
(11)エアゾールディスペンサー規制 2009/ 2824
(12)ガス機器(EU規制)2016/426
(13)機械供給(安全)規制 2008/1597
(14)屋外使用機器の騒音規制 2001/1701
(15)個人用保護具規制 2016/425
(16)計量器規制 2016/1153
(17)非自動計量器規制 2016/1152
(18)計量容器規制977
(19)電気・電子機器における特定有害物質の使用制限規制(RoHS規制)2012
(20)エコデザイン規制2010
(21)民生爆発物規制 2014

3.各企業の対応

製造業者は本年の春頃に、前途の21規制の製品を英国に供給する際、CEマーキング(またはその他のEUで認められているマーキング)か、UKCAマークのいずれを使用するか選択できるようになる予定です。
しかし、以下の7規制は含まれませんので注意が必要です。

(1)建設製品規制 2013
(2)医療機器規制 2002
(3)鉄道相互運用規制2011
(4)舶用機器規制2016
(5)索道敷設規制2018
(6)危険物の運送および輸送可能な圧力機器の使用に関する規制2009
(7)無人航空機システム規制 2019/945

(一社)東京環境経営研究所 中山 政明 氏

引用

1) UKCAマーキングの使用
https://www.gov.uk/guidance/using-the-ukca-marking#full-publication-update-history
2) UKCAマークの法律導入前の表示について
https://www.tkk-lab.jp/post/rohs-q631
3)企業向けデジタル・ラベリング導入と規制コスト削減のための新しい法律
https://www.gov.uk/government/news/new-laws-to-introduce-digital-labelling-for-businesses-and-reduce-regulation-costs

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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