第103回_24年9月5日付の米国連邦官報(Federal Register 2024-19929)*1)でTSCA PFAS Data Reportingの提出期限を変更する提案規則が公表→提出期日はどこで確認できる?

米国連邦官報の2024年9月5日*2) には、ご質問の提案規則(2024-19929)*1) の他に規則(2024-19931)*3) が掲載されています。この規則によると、EPAはデータ提出期間の開始日を当初予定の2024年11月12日から2025年7月11日に変更する1回限りの修正を行いました。具体的な提出期間は、

・PFASを商業目的で製造(輸入)した者(§705.10)およびPFASを研究開発目的で年間10kg以下製造(輸入)した者(§705.18(b))
:提出期間は2025年7月11日から2026年1月11日までの 6か月間

・PFASを含有する成形品の輸入業者(§705.18(a))のみに該当し、かつ、40 CFR 704.3の定義に基づく小規模製造業者
:提出期間は2025年7月11日から2026年7月11日までの12か月間

です*3)*4)。

延期の理由は、担当するEPAの業務責任の拡大と資金の減少のなかで、膨大なPFASのデータの電子申請を受領、処理するために必要なTSCA CBIアプリケーションソフトの開発が間に合わなくなったためとしています。
EPAのWebサイト「TSCA第8条(a)(7) パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質の報告および記録保持要件」*5)でも、詳しく説明しています。

一般読者のために以下、解説をします。

米国の有害物質規制法(TSCA)*6) は、有害な化学物質による人の健康または環境を損なう不当なリスクを防止することを目的として、1977年1月1日に発効した法律です。2016年に大きく改正され、新規と既存化学物質の管理に関するEPAの権限が強化されました。
2020年度国防権限法(NDAA)では、TSCA第8条(a)を改正して、第8条(a)(7)を追加しました。これによりEPAは、PFASの製造業者(輸入業者を含む)に対して、2011年1月1日以降の各年度について、PFASの情報を含む報告書をEPAに提出することを求めています*7)。

この規則でPFASの範囲は、構造的に次の3つのサブ構造のうち少なくとも1つを含む化学物質です。

1)R‑(CF2)‑CF(R’)R”(CF2およびCF部分は両方とも飽和炭素)
2)R‑CF2OCF2‑R’(RおよびR’はF、O、または飽和炭素のいずれか)
3)CF3C(CF3)R’R’(R’とR”はFまたは飽和炭素のいずれか)

既知のTSCA対象物質のうち、EPAはこの構造定義に基づいて少なくとも1,462種類のPFASを特定しています。その中には次の物質が含まれます。

・2023年2月のTSCAインベントリに活性PFASとして記載されているすべてのPFAS
・TSCA新5条(新規化学物質)低用量免除(LVE)の対象となるすべてのPFAS

また、フッ素ポリマーはこの範囲に入る可能性があります*7)。
化学物質の定義では混合物は除外されていますが、化学物質としてのPFASが混合物中に存在する可能性があります。したがって、この規則では、混合物の成分も含め、PFASである各化学物質について報告する必要があります。PFASの構造定義に該当しない混合物の成分を報告する必要はありません*8)。

TSCA第8条(a)(2)は、毎年以下の情報を収集することを求めています*7)。

・化学物質または混合物の識別、商標名、分子構造
・使用カテゴリー
・用途別製造量または加工量
・製造、加工、使用、廃棄から生じる副産物の説明
・既存の環境および健康への影響に関する情報
・曝露した労働者の数と被 曝期間
・処分の方法または手段および方法または手段の変更

なお、本回答は一般読者にも判るように簡略して記述しています。実務においては、米国連邦官報(2023-22094)「2023年10月11日のEPAによる規則 毒性物質規制法 PFASに関する報告および記録保持要件」*9) と、米国EPAによる「TSCA第8条(a)(7)に基づくPFAS報告の手順」*5)*8) を参照してください。

【参考文献】

*1)米国連邦官報 2024/9/5(2024-19929)提案された規則「毒性物質規制法(TSCA) に基づくパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS) のデータ報告および記録保持;提出期間の変更および技術的修正」
https://www.federalregister.gov/documents/2024/09/05/2024-19929/p

*2)米国連邦官報 2024/9/5
https://www.federalregister.gov/documents/2024/09/05/

*3)米国連邦官報 2024/9/5(2024-19931)規則「毒性物質規制法(TSCA) に基づくパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS) のデータ報告および記録保持;提出期間の変更および技術的修正」
https://www.federalregister.gov/documents/2024/09/05/2024-19931/p

*4)米国 有害物質規制法(TSCA)連邦規則集 Title 40 Chapter I Subchapter R Part 705
https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-705

*5)米国EPA「TSCA第8条(a)(7) パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質の報告および記録保持要件」
https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/tsca-section-8a7-reporting-and-recordkeeping

*6)米国 有害物質規制法(TSCA)  連邦法典(US CODE)第15編(15 U.S.C.§2601から§2697)
https://uscode.house.gov/view.xhtml?path=/prelim@title15/chapter53&edition=prelim

*7)2024年1月のTSCA第8条(a)(7)規則ウェビナーの記録
https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/webinar-tsca-section-8a7-reporting-and-recordkeeping

*8)米国EPA TSCA第8条(a)(7)に基づくPFAS報告の手順
https://www.epa.gov/system/files/documents/2024-05/tsca-8a7-reporting-instructions_may2024.pdf

*9)米国 連邦官報(2023-22094) 2023年10月11日のEPAによる規則 毒性物質規制法 PFASに関する報告および記録保持要件
https://www.federalregister.gov/documents/2023/10/11/2023-22094/t

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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