第8回_RoHS指令附属書IIIの適用除外用途の見直し調査(パック23)最終報告書の概要

RoHS指令附属書IIIに収載されている適用除外用途の多くは2021年7月21日が有効期限となっています。このうちの大半の適用除外用途は産業界から更新申請が提出され、見直しに向けた調査が実施され、2022年1月には合金中の鉛等を対象とした調査(パック22)の最終報告書が公表されていました。さらに2023年1月に残りの12種の適用除外用途を対象とした調査(パック23)の最終報告書が公表1)されましたので、今回はその概要をご紹介します。

1.パック23の対象
パック23では、RoHS指令附属書IIIの12つの適用除外用途((4(f)、8(b)、8(b)-I、9、9(a)-II、13(a)、13(b)、13(b)-(I)、13(b)-(II)、13(b)-(III)、15、15(a))を対象に調査が実施され、最終報告書では各適用除外用途それぞれについて、見直しに関する提案が示されています。

2.各適用除外用途の見直し提案内容
各適用除外用途について「用途表現」および「製品カテゴリー」、「有効期限」についてみていきます。

【4(f):その他の放電ランプ中の水銀】
4(f)についてはパック23の対象でしたが、他のランプ中の水銀とあわせて、別途検討が実施され、2022年2月にRoHS指令附属書IIIを改正する委員会委任指令((EU) 2022/279)が官報公示2)され、すでに改正されています。そのため、更新申請は取り下げられました。

【8(b)関連:電気接点中のカドミウム】
現状8(b)は製品カテゴリー8、9、11が、8(b)-Iは製品カテゴリー1~7、10が対象となっています。
8(b)については、18カ月の猶予期間を経て廃止するものの、新たに8(b)-IIおよび8(c)を設け、用途を限定した上で、有効期限を用途に応じて2023年12月31日、2025年7月21日または2025年12月31日とすることが提案されています。また8(b)-Iについては、サーキットブレーカー等の一部用途は2023年12月31日まで延長するものの、交流・直流スイッチ等は8(b)-IIIを新設し、定格電圧や定格電流の範囲を絞り込んだ上で、有効期限を2025年12月31日とし、新設される8(b)-IIIに該当しない交流・直流スイッチ等は12カ月の猶予期間を経て廃止することが提案されています。

【9および9(a)-II:吸収型冷蔵庫中の六価クロム】
現状9は製品カテゴリー8、9、11が、9(a)-IIは製品カテゴリー1~7、10が対象となっています。
9については、製品カテゴリー1のガス吸収式ヒートポンプに限定するとともに、最大許容濃度を0.75%から0.7%とした上で、有効期限を2026年12月31日とすることが提案されています。なお、既存の適用除外用途に該当するガス吸収式冷凍機への影響を考慮し、上記内容の反映方法としては、9の更新と9(a)-IIIの新設の2つのオプションが示されています。
また、9(a)-IIについては、用途表現は現状のままとしつつ、製品カテゴリーを1のみに限定した上で、有効期限を2025年12月31日とすることが提案されています。

【13(a):光学用途の白色ガラス中の鉛】
現状13(a)はすべての製品カテゴリーが対象となっています。
13(a)については、光学用途に使用されるガラスについては代替が困難であり、すべての製品カテゴリーについて更新することが妥当であると結論づけています。ただし、現状の用途表現に用いられている「白色ガラス」が技術的に明確に定義されていないとして、現状のまま「白色ガラス」を用いる用途表現と用いない用途表現の2つのオプションが提案されています。なお、有効期限は製品カテゴリー別に次のように設定されています。
2025年7月21日:製品カテゴリー1、2、5、10
2026年7月21日:製品カテゴリー3、4、6、7、8(体外診断用医療機器を除く)、9(産業用監視・制御機器を除く)
2028年7月21日:製品カテゴリー8(体外診断用医療機器)、9(産業用監視・制御機器)

【13(b)関連:フィルタガラスや反射標準用ガラス中のカドミウムおよび鉛】
現状13(b)は製品カテゴリー8、9、11が、13(b)-I、13(b)-II、13(b)-IIIは製品カテゴリー1~7、10が対象となっています。
13(b)については、用途を限定した上で新たに製品カテゴリー8、9を対象とする13(b)(IV)および製品カテゴリー9(産業用監視・制御機器)を対象とした13(b)(V)を設け、有効期限を2028年7月21日とすることが提案されています。
また13(b)(I)および13(b)(II)については、用途表現は現状のままとしながら、製品カテゴリーに応じた有効期限が次のように設定されています。
 2025年7月21日:製品カテゴリー1、4
 2026年7月21日:製品カテゴリー2、3、5、6、7、10、11
 2028年7月21日:製品カテゴリー8、9
一方、13(b)-IIIについては、反射標準用の釉薬中の鉛およびカドミウムのうち、鉛についてはすでに代替可能であり、またカドミウムについても申請者から提出された資料は製品カテゴリー8、9に限定されたものであったことから、カドミウムおよび製品カテゴリー8、9に限定した13(b)(IV)を新設し、製品カテゴリー1~7および10を対象とした現状の13(b)-IIIは12カ月の猶予期間を経て廃止することが提案されています。

【15および15(a):集積回路パッケージ中の鉛】
現状15は製品カテゴリー8、9、11が、15(a)は製品カテゴリー1~7、10が対象となっています。パック23の調査において、両適用除外用途ともに、鉛の代替や廃絶が科学技術的に困難であることを示すための証拠が申請者から示されなかったことから、最終報告書では、両適用除外用途を更新せず、12カ月の猶予期間を経て廃止する提案が示されています。

3.最後に
このようにパック23で調査が実施された適用除外用途は、用途表現そのままに、最大有効期限である5年間延長する提案はなく、いずれの提案も用途の限定化や製品カテゴリーに応じた有効期限の設定、あるいは12カ月の猶予期間を経て廃止など、何らかの変更が提案されています。
現時点では、あくまで欧州委員会の委託会社による報告書の段階であり、今後この報告書を受けて、欧州委員会がRoHS指令附属書IIIの改正法案を策定することになりますので、まだ確定したわけではありません。また、1年前に公開されたパック22についても、いまだ欧州委員会内での検討段階であり、改正案は公表されていませんので、パック23の改正案および正式な改正にはまだ時間がかかるものと想定されます。
しかしながら、報告書の公開によって、見直しの方向性が示されたことになり、自社製品における適用除外用途の活用状況を確認した上で、パック23の対象となっていた適用除外用途を活用している場合には、報告書の内容を確認した上で、自社製品への影響や代替等について検討を進めることが必要であると考えます。

【参考情報】
1)調査会社 パック23最終報告書
https://rohs.biois.eu/RoHS_Pack-23_Report_Final_20221220.pdf
2)EU官報 (EU) 2022/279
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX:32022L0279

(一社)東京環境経営研究所 井上 晋一氏

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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