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講師コラム:園田 信夫 先生


『 クリーン化への思いを語る 』





コラムへのご意見、ご感想がありましたら、こちらまでお願いします。


第10回 [ 整理・整頓と言うけれど ] (2010/9/21)



 完璧な人間はいないと思っている。誰だってミスはすると思う。でも何故か、一回ぽっきりのミスも指摘したがる人がいる。
 特に、キレイ・キタナイはすぐ分かるので言いたがる。昔から4Sと言う標語をあちこちで見かける。4Sは「整理・整頓・清潔・清掃」であるが定義を今イチ自分が理解できていない。

 例えば「整理」とは?と尋ねると金太郎飴みたいに「要るものと、要らないものを分けることだ」と大半の人が答える。
 要る・要らないは誰が決めるのかと追っかけ質問をすると、一番多い答えは係長である。じゃ、係長が決めきれないときは?と尋ねると「課長」と言う。それでも決めきれないときは?と追い討ちをかけると「部長」と言うであろう。では「部長が決めきれないときは?」きっと、「そんなの現場の作業者に任せなさい」と言うだろうとの笑い話がある。どこまでをキレイにしたかとか、どこからがキレイであるなんて、愚問で所詮は定量化できない。要るもの要らないもの判断なんて感覚的なものなので、いっそのこと捨ててみて、しくじったと感じたら、それは要るものだと感じる。
 3ヶ月も使わないものが半年後に使う可能性は低い。まして1年以上使わないものはず〜っと使わないと思う。だから、要・不要で判断すると「汚くなる可能性が高いのではないのかな?」

 クリーン化技術の基本は6S(躾・習慣・清潔・清掃・整理・整頓)にある。よく2Sを取り上げて改善活動方針としている会社を見かけるが、整理・整頓だけで効果をあげている例はあまり見かけない。
 いや、全然と言って良いほど少ない。2Sを継続させることは実際は難しいし成果の判定もしにくい。掛け声だけでは現場は変わらない可能性が高い。

 一方で、作業者が確実に維持・管理を身につけるためには何よりも「躾・習慣」の2Sが根底になくてはならないと唱える人もいる。こちらは徹底的に躾と習慣化の実践教育を繰り返すことで(仕付けを行い)大きな成果をあげている実例が多い。これに連動して不良率低減・ポカミスの撲滅など品質管理面での効果は拡大する。“躾”は当て字であり語源は“仕付け”にある。
 まず、どのように仕付けるかが問われ、どのような方法で習慣化させるかに特別な方法はない。単純に管理者、専任者が先生となって良い手本を示し、そっくりそのまま真似しながら作業に取り組んだ方が最も効果的。そこには理由をはさむ空間などない。その後に能力を身に付けた作業者に対し、整理整頓の必要性をクリーン化の立場から簡単に理由や解説を行うと、作業者自身が完全に納得するようである。このように現場における繰り返しの直接指導の積重ねは作業者にとって極めて説得力のある「仕付け」の方法である。ラインの中でものを考え、ラインの中で作業改善を行えるレベルに到達することは何者にも替えがたい2S(躾・習慣)の姿である。
 これらの経験・実績はラインの維持・運用管理の基本を構成するうえで重要な役割を果たしている。つまり、「ルールを守る大切さ」を身に付けたことになるからである。一方で、先生と生徒の感覚を養生できる可能性も高くなっている。

 でも、現実として見て感じたことは、中途半端な人達のごもっともな指摘の数々である。クリーン化を熟知していると言う多くの管理者や技術者あるいは現場を知らない多くの中途半端な人達は直感的かつ推定でゴミがあるかないかのみを指摘することが見かけられ、中途半端な指摘は作業現場側からみて納得のいくものではない。この人達の指摘の大半はコンセプトや定量性がなく、工学的理由も根拠も説明できない無茶苦茶なことが多い。この意味では2Sを身に付けた現場の作業者の方が圧倒的に信頼できる力がある。クリーン化技術は工学でありプロセス・材料・化学・物理のどの分野の知識も必要とされる学問であるが、直感的な指摘や根拠のない指導は逆に作業効率を低下させるうえ、作業のリズムを乱すことにつながりかねない。いかに現場の作業者がもの作りにおいて重要な役割を果たしているか改めて見直すことが大切ではないのかと思う。

 このコラムの最終回に当り申し上げたいことは唯一つ。「2S(躾・習慣)を身に付けた作業員の方々は、クリーン化維持の番人であり、宝物なのである。」 思わずまじめことを書いてしまいましたが最後まで、ありがとうございました。







第9回 [ ゴミと数字のお遊び ] (2010/9/7)



 数字と言えば1,2,3,4,5,・・・と小さい数から大きい数に並べてみた。普通の話である。
 ではこれは5,9,6,3。まあ頭を使って「ごくろうさん」でしょうか。

 そこで、例題。@9−6−1(黒い)、ならこれはA4−6−1(白い)。まあ、誰でも理解できるし、面白くないと思う。

 では、いよいよクリーン化関連の数字を使った頭の体操をどうぞ。次の数字の順は何でしょうか?
 @2−1−7−5−3−2−7−9  A3−3−9−6−4−7−3−1 B1−6−1−6−7−5−3ー2 C3−5−2−4−7−3−1 D5−3−8−6−4
 まあ、語呂合わせだけど順に @ふいなゴミに泣く Aさんざん苦労しなさい B色々なゴミに C参考にしなさい Dゴミは無視 ざっとこんな感じになる。頭の体操にはいいと思うが、駄洒落っぽい内容でスミマセン。

 でも、次は絶対難しいのを一つどうぞ。“8−6−9−5−3−4−2−7−1” これは語呂合わせではありません。誰も想像つかない問題です。

 著者が半導体を研究し始めた頃、ウェーハ上のパーティクルを測定する装置がなかった。当時はウェーハを暗箱に入れて、横側に掘ったスリットから、レーザー光を水平方向に照射し、上部からポラロイドカメラでパーティクルから反射した光を撮影していた。この方法は今は廃れたが当時は流行していた。
 当時から、ウェーハを切断するときは、ガラス切りでキズを入れて押すと結晶軸に沿って「パッキン」と簡単に割れるのが普通であった。あるとき興味本位からこのガラス切りを用いて、ウェーハ上に数字を描き、そのときに発生したパーティクルを測定すると、この示した数字の順にパーティクルの発生量が多いことに気がついた。
 「8」は○が2つとなり直線「1」「7」に比べてガリガリと曲線で削ることになるので発塵も多い。実際、ケガきを入れると、直線より曲線の方がガリガリ感が異なる。
 従って、パーティクルの発生量もこれに比例していると考えた。

 実際、金属と金属の摺動ではプラスチック同士のよりも発塵量が極端に差がある(著者の実験では約1000倍)。摩擦係数の差と考えている。
 金属とプラスチックではプラスチック同士に比べて約10倍の発塵量となるが、いずれもプラスチックから発塵する。考えてみれば単純ではあるが、硬いもの同士は摩擦が大きく、ゴミも出るが、硬いものは柔らかいものから護られているので、ゴミは出さない。というのが事実であろう。柔らかいことは実はいいことと思う。

 これが人生の教訓となるかは分からないが、ゴミは@摩擦で発生し、その量はガリガリ強度の関数である。A柔らかいモノが硬いものを保護する(?)と珍ロジックを提案したい。
 みんなで摩擦の少ない社会を構築しましょう。 





第8回 [ 拝啓、イエッサーの金係長殿 ] (2010/8/24)



 中国上海の町外れの工場でびっくりした。
 組立工程ながらClass1000のクリーンルームに入室したとき、無塵靴が地下足袋みたいに靴底がペッタンコ。床を歩くとなんとなく裸足で歩いているような錯覚を覚えた。
 更衣室で、無塵服は「すのこ」のうえで着替えるように指示したが、一向に改善されなかった。わざわざ、「すのこ」の絵を描いて渡したのに残念。で、別の日に理由を聞いた。あちこち市内を探したが「すのこ」そのものが中国にはないとのこと。それに代わるような低いSUS台を手配したと言うので見に行ったら作業者がその台に座って着替えていた。“椅子じゃないちゅうに”このときばかりは呆れた。が、よく考えてみたら文化が違うのも仕方ないと思った。

 北へ150kmの無錫に行った。「不良の原因と対策」について箇条書きにして欲しいと指示したら「イエッサー」「ハイッ!」と品管係長が言う。数時間後、出来たか尋ねたら、「イエッサー」と言い残してまた出て行った。また、数時間後に同じ質問を投げかけたら、知らないと答えたので、またまた呆れた。彼の名前は「金」。実に返事だけはいい奴だが泣かされた。で、よく考えた。金係長はまだまだこの種の経験がなかったのではないかと。
 別の日に、机の上のそのハサミとセロテープを取ってくれと頼んだ。金係長は「イエッサー」「ハイッ!」と言って敬礼までして部屋を出て行った。これには完全に呆れた。「なにやってんねん」と思わず怒鳴ったが、よく考えてみると、自分は九州人である。この場合は「なんばしょっとね」と言うべきだった。

 また、上海に話を戻す。クリーン化と静電気技術を現場で教えていた。クリーン化(Cleanliness)と言うとぽか〜んと聞いていたが清浄度と言うと分かってくれた。で、パーティクルカウンターで、無塵服の上から叩いてポンピング現象の測定したら、0.5μm以上で1000個/cfレベルの発塵があった。そんな筈はないと言う。無塵服を着ているからだと言い張った。ポンピング現象だから顔面からの発塵は当然であるのが分かっていない。で、考えた。「彼らはやっぱりクリーン化が分かっていない」。そんなこんなでも現在はみんな立派に育っていった。但し、金係長はやめていなくなったが。

 日本語に「曖昧」という言葉がある。英語ではVagueness, ambiguos,obscureなどで表現できそうであるが、この「曖昧」は漢字だから通じると思っていた。
 実際には上海人、東北人、天津人、成都人、共に知らなかった。この漢字は中国語にはないと言う。で、考えた。現代中国人も知らないような漢字は個人的には使用しないと。やっぱり曖昧はいけない。






第7回 [ 静電気対策に思うこと ] (2010/8/10)



 静電気の3原則とは何か?「必ずある」「気がつかない」「常に変わる」の三つであるが、なかなか感覚的表現で理解が難しい。
 静電気はどこでも普遍的に存在する。静電気は当然ながら目には見えないが本質は電子であることは間違いない。

 では、どこでどのように発生するのか考えてみる。
 基本は「物体と物体が衝突・摩擦による接触した場合は必ず発生する」と認識すべきである。気流(空気)が物体に当たっただけでも静電気は発生することはあまり知られてない。
 但し、金属は発生しても瞬時に流れて消失するので静電気として認識しにくい。逆に、プラスチック類は、電子が流れにくく滞留する時間が長い。静電気は材料の抵抗(体積固有抵抗・表面抵抗)に依存し、滞留時間が決まる。金属は電子が流れ易く、絶縁体は流れにくい本質があり、静電気にはプラスとマイナスがある。
 一般の電気は意図的に発生させ、供給することで意味をなすが、静電気は自然発生的に生じるもので、供給し使用するのが目的ではない。(最近、意図的に発生させることも多くなったが。)
 前者は有限的無限大の電気量を扱い、後者は無限的有限小の電気量を扱うことになる。

 このことは静電気の3原則の理解に役立つ。
 まず「必ずある」、そして予期せぬところで発生し「気がつかない」、周辺環境や湿度などの外的条件で「常に変わる」などが実体である。この原理・原則を理解する必要がある。静電気の滞留を防ぐには表面を電子が流れ易くし、地球に戻すように接地すれば良い。だから「アース;Earth」と言われている。水分子が表面に吸着し連続膜を形成するには概ね40%以上の相対湿度が必要となる。静電気は水分子膜を伝わり逃げていく。
 したがって静電気を逃がす最良の方法は、湿度を一定以上に保つことである。実際には電子部品の多くが結露を嫌うため、高い湿度は与えられないのが現状では補う意味で、種々の静電気対策品が必要となる。
 静電気対策品は最近特に多く市販されているが、どこに何をどのように使うのかは、使用する側のPolicyであって、メーカー側の説明を鵜呑みにするのではなく、どこをどのレベルでどうしたいのかを明確にさせ、何の対策がどのレベルで必要なのかの判断が必要である。
 この目的に合せて対策グッズを選定し納得して使う必要がある。むやみにイオナイザーを取り付けたためにメンテナンスも含めて失敗した例はよく耳にする。
 また、作業者の動作・行動も静電気に関与する。急に立ったり、足を椅子の脚に置いたり、リストストラップを服の上から装着したりすると静電気が人体に溜まり易い。静電気対策にも3原則があって理解して対応するのが望ましい。

 静電気対策の基本についてポイントを示すと次のようになる。
  @静電気の本質は電荷(電子)の発生にある。したがって、物質同士が接触に起因している。
  A静電気の測定の基本は、減衰時間か抵抗をみる場合が多い。

 以下に対策方法の考え方を示す。
  ・接地させる(アース)
  ・電荷を中和させる(イオナイザーなどで、反対極性のイオンを照射させる)
  ・加湿させる(水分子の吸着膜を伝わり電荷を逃がす)
  ・帯電防止化する(材料に導電性物質を混ぜ、電荷を逃がし易くする)

 静電気は瞬間的に放電する現象がある。ESDと呼ばれるが、放電の際に電磁波を発生させている。これは、落雷時にラジオがノイズを拾うのと同じで、放電時に制御基板回路へのノイズとなり誤動作の原因となる。
 この性質をEMIと呼ぶ。また、静電気は帯電時ゴミを吸着し易い。この性質をESAと呼ぶ。電子部品では放電によりデバイスが破壊するのでESDを極端に嫌っている。

 以上のように静電気は身近な問題ではあるが、対策は多岐に亘っている。
 静電気対策をがむしゃらに実行すると、予想以上に多額の費用がかかる。静電気対策の基本は、要求レベル・必要レベル・理想レベルの観点から、どこまでを対象とするのかPolicyを持って対応すべきである。
 多くの場合、製品のESDやESA対策は製品と直接接触するものと誘導帯電の範囲までで留めておくの最も効率の良い対策となる。その意味で、静電気対策にこだわるのかこだわらないのかの線引きが最初に求められ、それによって対策のレベルが決定される。
 もし、こだわらないのであれば、静電気対策をしない理由を明確な根拠を示し何にもしない。要求レベルと必要レベルを設定し、いかに原理・原則に基づいて効率的に実行するのかを明確にすればがむしゃらな対策は免れる。

 一方、原理・原則を承知のうえでこだわるのであれば、疑わしきものは全部が対象になり、対策せざるを得ないが、果たしてどこまで有効かは常に疑わしい。何も考えずに静電気対策するのであれば論外で、全てが対策の範囲となり、莫大な費用と定期チェック・メンテナンスに労力を費やさなければならない。名札やボールペン、またクリーンルーム内の器具備品の全てに対して対策が必要な筈がない。この点、お客さんは監査で無茶苦茶なことをおっしゃられることがあるが、Right to Leftに聞き流すようにしたほうがいいかも知れない。何故ならお金を使って対策することは誰でもできることであるが、お金を使わずに良い対策方法を知らない人が多いので、専門家ではないとはっきり言える。専門家でない人から指摘されると「うずうず」してくるのが普通と考えられるからです。(ごめんなさい)Q=CVや誘導帯電、そして静電気の減衰時間の考慮を対策の基本方針とすれば、すんなりと理解できる。客先要求に対しては、冷静にみて、根拠と効果が認められないことは実施しても無駄だと言える。
 もっと、基本を把握し原理・原則に基づいた必要最小限の対策が望まれる。

 今回の著者は少々マジメに書いているが、静電気対策ほど簡単で難しいものはない。雷も稲光も静電気の放電現象だが、いつどこに落ちてくるのか分からないので怖くてたまらない。







第6回 [ 人間は発塵源か? ] (2010/7/27)



 人間の体は生きている。当たり前と思う人は凡人かも。何故って?訊く人は科学ができる人かも。

 人間の皮膚からは1,000個/mm2/日の細胞脱離がある。表皮の新陳代謝のサイクル概ね2週間で、放って置けば角質層は垢となって脱離する。
 この垢がクリーンルーム内に撒き散ることになる。色は(普通の人ならば)半透明の乳白色に近い。クリーンルーム内での1日当たりの皮膚の脱落数は15億個に入室した人数を掛けたものとなる。これは相当多い。

 人間の皮膚表面積を平均1.6平方メートルとして軽作業を一日12時間、としたとき、意外な数字が浮き上がってくる。総皮脂量は7.7g分放出される。(エネルギー換算で約70kcalかな?)発汗量は約1.5リットルで、一部は無塵服が汗の放散を遮蔽するために暑さを感じることになる。この汗の中には約2.5gのNaClが含まれる。当然ながらこれに人数を掛けたものがNaClの総量となる。1000人いたら2.5kgの塩分が無塵服や下着、そしてクリーンルーム内に放り出されていることになる。これは一日当りだから、1ヶ月20日の稼動とすれば50kg、年間600kgの塩分(NaCl)量となる。微生物脱落数は一日当り1人30億個、1000人で3兆個、一月では60兆個となる。こんなに多いのだから、作業者がクリーンルーム内で作業する以上は、皮膚片やNaClがあるのは至極当然である。

 でも、意外と毛髪を見つけることが多い。無塵服を装着していても「髪の毛」はある。毛髪は1人当り平均105000本あり、寿命は5年と一般に言われている。と言うことは計算すると一日1人当り約80本が脱け毛していることになる。これが1000人分だと8万本。20日間で 160万本。百万本のバラみたいにきれいごとではない。まあ、なんと勿体ないことか!!!と、個人的には痛感している。(著者にあった人はその意味が容易に理解できる。)

 クリーンルーム内にはAAH(汗・垢・毛髪)が必ず見つかることを言っておきたいだけである。
 いや、言っておかなければいケナイと思った。




第5回 [ クリーン化教育の基本と言う人 ] (2010/7/13)



 クリーン化の基本は6S(躾・習慣・清潔・清掃・整理・整頓)にある。よく2S・3Sを取り上げて改善活動している多くの会社を見かけるが、残念ながら整理・整頓・清掃だけで効果をあげている例はあまり見かけない。

 整理・整頓とはと、あちこちで尋ねると、「整理とはいるものといらないものを区別すること」「整頓とはいらないものを捨てること」と英語のHow are you?に対する、例え風邪で調子が悪くとも、「I’m fine thank you」と答える日本人の実情と共通している。何かおかしいと思います。

 一方で、作業者が確実に維持・管理を身につけるためには何よりも躾・習慣の2Sが根底になくてはならないと気がついている例もある。
 徹底的な躾と習慣化の実践教育を繰り返すことで(仕付けを行い)大きな成果をあげていることは評価できる。これに連動して不良率低減・ポカミスの撲滅など品質管理面での効果も大きい。“躾”は当て字であり語源は“仕付け”にある。

 まず、どのように仕付けるかが問われ、どのような方法で習慣化させるかに特別な方法はない。単純に管理者、専任者が先生となって良い手本を示し、そっくり真似ながら見習いながら作業に取り組んだ結果である。そこには理由をはさむ空間などない。

 その後、身に付いた段階で作業者に対し、簡単な理由や解説を行うことで作業者自身が納得するシステムがある。このように現場での直接指導経験の積重ねは作業者にとって極めて説得力のある仕付けであり、ラインのなかでものを考え、ラインのなかで作業改善を行うことができるレベルに到達することは何者にも替えがたい2Sの姿である。

 これらの経験・実績はラインの維持・運用管理の基本を構成するうえで重要な役割を果たしている。換言すれば良い師匠と生徒の感覚である。しかしながらクリーン化を熟知していると言う多くの管理者や技術者、あるいは現場を知らない多くの偉い人は直感的かつ推定でゴミの有無のみを指摘することをしばしば見かけるが、この種の蓋然的な指摘は作業現場側からみて納得のいくものではない。大半の指摘はコンセプトや定量性がなく、工学的理由も根拠も説明できない無茶苦茶な指摘が多い。この意味では現場の作業者の方が圧倒的に信頼できる力がある。
 クリーン化技術は工学でありプロセス・材料・化学・物理のどの分野の知識も必要とされる学問であり、直感的な指摘や根拠のない指導は逆に作業効率を低下させるうえ、作業のリズムを乱すこともある。

 結果として、現場で展開される事象が現実の問題でありその維持・管理の具体化は必ず作業者の2Sによって成り立っていると考えるべきである。いかに現場の作業者がもの作りにおいて重要な役割を果たしているか改めて見直すことが重要である。だから、分かった振りして指摘する人は何か奇妙な気がする。






第4回 [ 火のないところの煙は???? ] (2010/6/29)



 レーザー式のパーティクルカウンターが一般に使われる。
 クリーンルームの高清浄度化に伴い、検出能力や感度は高まり、現在では、0.1μmの気中パーティクルの測定は易しい。
 一定レベル以下の微粒子は空気抵抗を受けて地上には降りてこない。ただただ漂うのみなので天孫降臨はない。山裾の朝、立ち込めた霧の中を散歩するとよくわかる。人の動きに合せたように霧が動き出す。人の後ろには渦が付き纏う。

 一方、お線香の煙は少しでも動くと紫煙は揺らぎ始める。立ち昇る煙は徐々に拡散していつの間にか見えなくなる。それほどまで、微粒子は気流に乗って渾然と動き回る。

 著者はその昔考えた。このときのパーティクル数は?そこで実測した。カウンターが壊れるのを覚悟で。まずはタバコの煙。確かに燃えてはいないので「火のないところの煙」である。0.5μm以上の微粒子は?カウンターの表示があれよあれよと上がっていった。応答が遅いのはしようがないが、3000万個/cfを超えても増え続けたが、怖くなってスイッチを切った。間違いなく3000万個/cf以上あることがわかった。ハンダのフラックスの煙もトライした。これも同様に3000万個/cf以上であった。

 この事実から、煙のパーティクル数は、一般環境の50万個/cfに比較してもの凄い数であることが理解できた。でも、カウンターを元のきれいな状態に戻すまで相当時間を要した。で、正常に戻ったので安心した。

 最近では、粗粒子の方が気になる。所詮0.5μmレベルの清浄度はクリーンルームの機能チェックには有効であるが、実際の現場では目に見える塵埃が目立ちすぎる。5,10,20μmサイズのパーティクル数をとあるメーカーの粗粒子カウンターで測定した。この大きさだと、時間が経てば地上の降り積もる。
 発塵源がある場合とない場合に共通して言えるのは、パーティクルの分布が0.5μmレベルと比べて全く異なることに気づいた。

 これは自然界での微粒子の分布を示したユングの式は適用できないことを意味している。
 また、発塵源回りを中心に飛び出して気流に乗っていくことまでは分かった。この場合の「天孫降臨」は現実には物理現象である。






第3回 [ 塵埃? ] (2010/6/1)



 野球の打率は何割何分何厘で表している。打率は3割以上で一流。競馬は的中率2割でご立派、3割以上で尊敬する。
 ところで何割何分何厘の先はどうなっているのか??(疑問)この先の「毛」までは常識でわかる。

 問題はその先。続くのは「糸」「忽(こつ)」。次が「微」、つまり微小・微少とは1千万分の1位、小さいか少ないことを言う。従って微笑は1千万分の1位の笑いを示すことになる。

 モナリザの微笑みは本当は毛笑いか糸笑いではないのか????これからやっと「織」「紗」を挟んで「塵(ちり)」「挨(ほこり)」にたどり着く。

 すなわち10番目と11番目、つまり100億分の1と1000億分の1である。こんな小さいレベルまで至って塵埃とは、余程小さくないといけない。従って簡単に塵埃とは(語源的な序数では)言わないのが妥当かも知れない。サイズ的に数えられない程、小さく(多い)ことを表しているのであろう。小生もゴミ対策は論じられても塵埃対策にはまだまだ修行足らない。この先はどうなるのか???12番目を飛ばして13番目が「漠(ばく)」、砂漠?漠然なんです。
 それ以降、18番目が「刹那(せつな)」、瞬間の定義も物理的にはわからないが刹那の時間はもっと理解不能。20番目が「空虚」そして最後の21番目に本命が来る。これこそ「清浄」である。

 だから清浄化とは究極の何にも存在しない空間のこととなる。
 だから、凡人には「塵埃」対策も「清浄」化も無理難題である。
 従って小生は頭を抱えている。小生は「毛」が欲しいし、このレベルで十分。




第2回 [ 掃除機とお掃除 ] (2010/5/18)



 電気掃除機は確かに目に見える大きなゴミ(塵・屑・髪の毛・垢・繊維屑など)は良く取れます。
 考えてみれば、ホースの先端から強烈に吸い込んでゴミを吸い取りフィルター上にトラップしているだけである。一緒に吸い込んだ空気はおしりの方から押し出されるが、クリーンルームでは必要な清浄度(0.5μm以下)はフィルターの性能上十分ではない。

 従って、電気掃除機は、クリーンルーム内では微小パーティクルを撒き散らすことがあるので立派な発塵源となることがある。

 以前、組立検査工程で掃除機のおしりのパーティクルの測定をしたら、なんと約28.3g(1cf;cubic feet)当り、0.5μm以上で約150万個を観測した。この部屋はClass100000なので明らかに多い。掃除機を開けてみたら、フィルターの取り付け不良。吸込んだゴミはそのまま室内に撒き散らかされていたことになる。掃除担当のおばちゃんのうっかりミスとは思うが決して笑えない。(クリーンルーム専用の掃除機がちゃんとあるので、ご安心を)

 ところで、皆さんは拭き掃除をしたらきれいになったと思っていませんか。大きなゴミは確かに取り除けるのですが、小さなゴミ(浮遊塵埃)はきっと無理です。作業者が掃除するとその動きで室内に舞い上がり、時間の経過と共にまた堆積します。

 従って、一回きりの掃除ではパーペキ(パーフェクトで完全)ではありません。人間、繰り返すことが大事なんです。昔の家庭での掃除方法をご存知ですか?バケツの水で新聞紙を濡らし、ちぎっては空中に放り投げて畳に落ちた、新聞紙を箒(ほおき)で集めてました。ある成形工場で実際にやってみたら約28.3g(1cf;cubic feet)当り、0.5μm以上のゴミが約80万個から45万個に落ちました。
 でも、昔の智恵を使ったらお金はかからんし効果があるものだとつくづく思いました。

 そう言えば、一人暮らしの著者の(古)マンションの床を掃除機で掃除しても、数時間後にまたゴミが積もっているのが最近気になる。
 クリーンルームも含めて掃除の一番の基本は「水拭き」であることを知っていながら手抜きしている自分は褒められない。






第1回 [ パーティクルとは何ですか? ] (2010/4/27)



 クリーンルームで取り扱う微粒子(パーティクル:Particle)とは?
 Webster辞典によれば A piece of matter so small as to be considered without magnitudeと書いてあり、日本語では微粒子の意味と思われます。

 勿論、クリーン化技術ではパーティクルが取扱い対象となり、世間でのゴミとは一線を画するのが妥当です。異物とは本来期待される物質とは異なるものモノで姿、形はともあれ「イブツ」と定義しています。

 従って、ゴミであれパーティクルであれ、製品本来から見れば、不要であれば異物であって製品に悪影響を及ぼす疑いがあるものとされます。微粒子があっても製品が不良とならなければクリーンルームやクリーン化技術の必要性はありません。ここに必要ないものや特性に影響を及ぼすもの(不良の原因物質)は不要物と考えます。
 この意味では「異物」と呼ぶのが最もふさわしいと思います。クリーンルーム内では「微粒子対策」が必要となりますが、製品側から見たら、これは「異物対策」です。

 また、無用なものの総称として「ゴミ」が使われるが、これは慣用表現であって、目に見える不要物や不用物をさしています。

 従って、小生も家庭では○○から異物ではなくごみ扱いされます。でも、これが人生上手く行く秘訣だと信じ込まされています。


園田 信夫先生のご紹介


【略歴】

1973.三菱電機兜汢ェ製作所入社後、塗装・めっきの研究に従事。
1989.分析技術センター立ち上げ後、半導体製造プロセスでの材料・プロセスの評価分析に従事。
   この間、分析センター長、品質技術部長歴任
1998.九州工業大学情報工学部にて「水素プラズマスパッタリングによるSiC薄膜形成」により
   学位取得(情報工学博士)
2000.ULSI開発センターにてクリーン化技術グループ立ち上げ先端クリーン化技術開発に従事
2002.三菱電機潟pワーデバイス製作所品質保証部にて、アセンブリのクリーン化、静電気対策に従事
2009.潟Iジックテクノロジーズ、取締役技術本部長

【主な活動】

 ・ピュリフィケーション研究会副委員長
 ・月刊「クリーンテクノロジー」編集企画委員
 ・クリーン化技術、静電気対策に関する執筆、投稿、講演多数



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