第15回_米国TSCA ポリマー免除該当物質に関する届出遅延時の対応とは?

TSCAポリマー免除該当物質に関して、届出を失念してしまいました。この場合、どのようなペナルティが科せられるのでしょうか。また遅延したときの対応についてはどのようにすればよいのでしょうか?

<月刊 化学物質管理 サンプル誌申込>  どんな雑誌か、見てみたい/無料!

届出を失念したという状況から、TSCAポリマー免除該当物質の年次報告に関する内容として回答します。TSCAポリマー免除該当物質の年次報告は、毎年1月31日が期限となっており、この期限を過ぎた場合に報告義務違反(15 U.S.C. § 2607(a))となります。罰則は1日ごとに罰金が加算されていく規定になっていますが、対応により減額が認められる可能性もありますので、1日でも早い対応が得策となります。対応はeDisclosure(自発的開示ポータル)(*1)などを利用して行います。

◆年次報告と罰則

米国で新規化学物質を製造・輸入する際には、PMN(製造前届出:Pre-Manufacture Notification)を必要としますが、40 CFR § 723.250(*2)により規定されたポリマーについてはPMNが免除されます。一方で、40 CFR § 723.250(f)項は製造元や数量などを記載した年次報告書を翌年1月31日までに提出することを義務付けています。このポリマー免除に関連する年次報告書の提出を失念した場合、15 U.S. Code § 2614(*3) の禁止行為にあたるため、15 U.S.C. § 2607(a)への違反に該当することになります。
報告義務違反に対する罰則については、15 U.S.C. § 2615に規定があり、「民事罰」「刑事罰」の2種類があります。このうち「民事罰」については、違反ごとに罰金を課されることが規定されています。罰金額はインフレを加味した調整が行われており、現時点(2026年8月)の金額は、2025年1月8日に公表された「Civil Monetary Penalty Inflation Adjustment(*4)」に基づくと以下のようになっています。

・2015年11月2日以降に発生した、または発生していた違反行為に対する法定民事制裁金(制裁金が2025年1月8日以降に課される場合):49,772ドル
・2015年11月2日以降に発生した違反行為に対する法定民事制裁金のうち、制裁金が2023年12月27日以降2025年1月8日以前に課されたもの。:48,512ドル

また、当該違反が継続する日毎に違反を構成すると記載されており、1日経過するごとに上記の金額が罰金として加算されていくことになります。なお、15 U.S.C. § 2615(a)(1)(B)では民事罰金の額を決定する際、管理者は違反の性質、状況、範囲、重大性を考慮し、違反者に関しては支払い能力、営業継続への影響、過去の違反歴、責任の程度などの事項を考慮するとあり、後述する対応により減額が認められる可能性があります。

◆年次報告違反への対応

TSCAでは罰則の適用について「民事罰金の額を決定する際、管理者は違反の性質、状況、範囲、重大性を考慮し、違反者に関しては支払い能力、営業継続への影響、過去の違反歴、責任の程度、および正義が求めるその他の事項を考慮しなければならない。」としており、減免を認めています。EPAはこの減免処置について、監査方針を定めています(*5)。監査方針では、罰則軽減の考慮事項となる9つの条件を提示しています。この9つの条件のうち3番目の条件に「発見から21日以内、または法律で定められたより短い期間内に、EPAに対して速やかに書面で開示すること」があり、罰金額の拡大を阻止するためにも企業においては、発見後速やかな対応が推奨されます。なお、違反の発見については、当該施設の役員、取締役、従業員、または代理人が、違反が発生した、または発生した可能性があることを信じる客観的に合理的な根拠を有する場合を指すとされています。企業によるEPA監査方針に基づく自主的な開示は、eDisclosureを通じて行うことになります。eDisclosureは環境法違反の自己申告民事違反を受信・自動処理するために構築されたウェブベースのポータルサイトです。eDisclosによる自主開示は以下のステップで行うことになります。

ステップ1:EPA中央データ交換(CDX)に登録
ステップ2:自主開示書の提出
ステップ3:コンプライアンス認証

自主開示書の提出は、前述の通り発見から21日以内、コンプライアンス認証は発券日から60日以内(または小規模事業コンプライアンスポリシー開示を提出してから90日以内)に、具体的な違反を特定し、違反が是正されたことを提出する内容となります。

【参考URL】

(*1)eDisclosure
https://www.epa.gov/compliance/epas-edisclosure
(*2) 40 CFR § 723.250
https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-723/subpart-B/section-723.250
(*3)15 U.S. Code Chapter 53 Subchapter I – CONTROL OF TOXIC SUBSTANCES
https://www.law.cornell.edu/uscode/text/15/chapter-53/subchapter-I
(*4) Civil Monetary Penalty Inflation Adjustment
https://www.federalregister.gov/documents/2025/01/08/2025-00206/civil-monetary-penalty-inflation-adjustment
(*5)EPAの監査方針
https://www.epa.gov/compliance/epas-audit-policy

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

<化学物質情報局> 化学物質管理の関連セミナー・書籍一覧 随時更新!

<関連セミナー>9月10日 米国「州法」化学物質規制の対応・実務

<関連セミナー>9月11日 米国における化学物質規制(OSHA/TSCA)の基礎理解と最新動向

<関連セミナー>10月15日 米国向けGHS(HCS 2024)準拠SDS・ラベル作成とTSCA、州法プロポジション65対応

<関連セミナー>10月19日 米国化学物質管理とそのポイント~TSCAを中心に~