第16回_2026年8月12日から適用!実施すべき最低限の対応とは?

包装及び包装廃棄物規則(Packaging and Packaging Waste Regulation:PPWR *1)は、2026年8月12日から適用されました。

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1. 2026年8月12日からの義務

EU市場に包装材(または包装された製品)を上市するすべての事業者は、以下の対応を完了させておく必要があります。

(i)適合性評価の実施と「EU適合宣言書(DoC)」の作成・署名: すべての包装タイプ(使い捨て・再利用問わず)について、PPWRに適合していることを宣言する書類(DoC)が手元に用意されている必要があります。
(ii)技術文書(Technical Documentation)の整備: DoCの裏付けとなる「原材料の構成」「有害物質(重金属・PFASなど)のテストレポート」などの技術ファイルを揃え、即座に監査に提出できる状態にしておかなければなりません。
(iii)特定の有害物質制限の開始: 包装に含まれる重金属(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム)の合計濃度制限(100 mg/kg以下)や、食品接触包装におけるPFAS制限が厳格に適用されます。
8月12日からの義務に猶予期間はありません。この日以降、適合宣言書が未整備の包装は、EU市場へのアクセス(通関・販売)が法的に禁止されることになります。

2. 対応すべき事項

EUへの輸出や販売を行っている、またはサプライチェーンに組み込まれている場合は、次の体制を整えることが必要です。
(i)包装サプライヤーへのデータ要請:「重金属100 mg/kg以下である証明」「食品接触用途の場合、PFAS不含有の証明」「素材の正確な内訳」のデータ、またはテストレポート(分析結果)をサプライヤーから取り寄せる。
(ii)適合宣言書(DoC)のフォーマット準備:自社でサインして発行できる適合宣言書のドラフトと、技術ファイルをファイリングする仕組み(またはシステム)を用意する。
(iii)通関プロセスの確認:EUの現地輸入業者(インポーター)から適合データの提示を求められた際、即日提供できる体制(データ連携など)を整える。
ただし、包装材自体に新しくCEマークを貼付することは禁止されています。これは、EUのPPWRの前文第109文節等において、極めて明確に規定されています。

【前文第109文節の要旨】

梱包に表示されるCEマーキングは、製品がEU法に適合していることのみを示すべきであり、梱包自体が本規則(PPWR等)に適合していることを示すために用いてはならない。製品のCEマーキングは製品自体または梱包に表示されるのが一般的であるため、梱包自体の規則適合性を示すためにCEマーキングの表示を義務付けると、双方が混同され、最終的に製品の安全性や適合性に対する不確実性を招くおそれがある。

重要な点として、包装材へのCEマークの物理的な印刷は不要ですが、EU適合宣言書(DoC)などの書類上での適合証明プロセスは、2026年8月12日より義務化されます。物理的な印刷は不要ですが、適合のための書類整備とシステム管理は必須です。

3. 技術文書(Technical Documentation)構成例

技術文書の構成例を以下に示します。

3.1 一般説明(General Description)

本技術文書の対象となる包装、およびその製造・上市に関わる基本情報を定義するセクションです。

3.1.1 包装の概要・特定情報
(i)包装システム名 / 管理番号(ID)
(ii)包装カテゴリ(例:プラスチック製一次包装、カートン二次包装、パレット等)
(iii)対象となる(中身の)製品名・品番

3.1.2 事業者(適合責任者)情報
(i)製造者(またはEU域内の認定代理人/輸入業者)の名称、住所、連絡先
(ii)包装の設計・製造に関わった主要サプライヤーのリスト

3.1.3 包装の設計・構造データ
(i)包装の全体図面(寸法、厚み等)
(ii)構成部品リスト(BOM:Bill of Materials / 各層、蓋、ラベル、インク、接着剤等の構成と重量)

3.2 適合証明の根拠(Applied Standards & Specifications)

対象規格や規則、共通仕様に基づいて適合性を評価したかを明確にします。

3.2.1 適用したEU整合規格(Harmonised Standards)の一覧
EN規格等(例:EN 13427~13432シリーズの包装規格、または今後PPWR向けに制定される整合規格)

3.2.2 その他技術仕様・社内評価基準の一覧

3.3 要件ごとの適合性評価(Assessment of Requirements)

PPWRの主要な法的要求事項に対し、具体的にどう適合しているかを証明・計算した結果を記述するコアセクションです。

3.3.1 有害物質および懸念物質の管理(第5条)
(i)重金属4元素(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム)の合計濃度評価(100 mg/kg以下の証明)
(ii)食品接触用途の場合:特定のPFAS(有機フッ素化合物)の不含有・制限への適合確認

3.3.2 リサイクル可能性(第6条)
(i)リサイクル設計基準(Design for Recycling: DfR)に基づく評価レポート
(ii)包装材料の分別・回収可能プロセスの評価

3.3.3 再生プラスチック含有率(第7条)
(i)プラスチックパッケージにおけるポストコンシューマー再生(PCR)材の配合比率(%)
(ii)サプライヤーから提供された再生材の第三者認証・トレーサビリティ証明書

3.3.4 包装の最小化(第10条)
(i)重量および容積が必要最小限(機能維持に必要な限界値)であることの設計検証結果
(ii)二重壁の排除や、空隙率(無駄なスペース)が50%以下(または該当基準内)であることの計算書・証明データ

3.3.5 再利用性(第11条)(再利用可能包装のみ)
再利用システム(ローテーション数、洗浄・検査プロセス等)の適合証明

3.4 試験レポートおよびエビデンス(Test Reports & Evidence)

セクション3.3で算出した評価や適合データの裏付けとなる、物理的な証拠(エビデンス)を格納します。
(i)化学分析・試験レポート
(ii)サプライヤーからの適合宣言書(DoC)および不含有証明書
(iii)第三者認証機関による認証・評価書(取得している場合)

3.5 ラベル表示およびマーク仕様(Labelling & Marking)

包装に直接、または添付文書に表示するマーク類のデザインと貼付ルールを管理します。
(i)包装材料識別用「EU統一ラベル」の表示仕様・デザイン図
(ii)消費者向けの分別・リサイクル案内表示の仕様
※包装自体にはPPWRに関する「CEマーク」を貼付していないことの確認記録

3.6 製造・品質管理体制(Production Control)

製造プロセスにおいて、適合性が継続的に維持される仕組み(モジュールAの基本要件)を記述します。

3.6.1 生産・品質保証(QA)プロセスの概要
(i)原材料の受入検査フロー、ロット管理の方法
(ii)仕様変更(素材変更、サプライヤー変更等)が発生した際の適合性再評価ルール

なお、EU適合宣言書(EU Declaration of Conformity: DoC)は、附属書IIIに記載すべき事項が規定されています。

4. 内部生産管理手順

PPWRの適合宣言には「モジュールA(内部生産管理手順)」が規定されています。内部生産管理手順で順法管理をします。

4.1 モジュールAとは

(i)完全な自己宣言である:第三者機関(Notified Body)の審査を受ける必要がなく、自社の運用の枠組みだけで適合を宣言します。
(ii)自社の既存システムを活用する:特別な仕組みをゼロから作る必要はありません。自社がすでに運用しているマネジメントシステム(例:ISO 9001品質マネジメントシステムなど)をそのまま利用します。

4.2 自社システム(ISO 9001等)への組み込み方

既存の業務プロセスの中に、PPWRの具体的な要求事項を「ルール」として溶け込ませて運用します。
(i)製品及びサービスの設計・開発 / 製造及びサービス提供:「第5条:持続可能性要件」「第6条:リサイクル可能な包装材」「第10条:包装材の最小化」などを設計基準や製造基準に組み込みます。
(ii)外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理(購買管理):「第7条:再生材含有率」などをサプライヤーからの調達基準に組み込みます。
(iii)顧客とのコミュニケーション(営業手順):順法性に関する顧客への適切な情報提供や連携手順を組み込みます。
(iv)今後の基準への対応(実施規則対策):第5条〜第10条などの具体的な数値基準は、今後欧州委員会が定める「実施規則」で正式に決まります。そのため、現段階では「実施規則に基づいて具体的な基準を定める」という“手順(決め方のルール)”を上位の規定に記述しておくのが現実的です。

4.3 「技術文書」の営業秘密の守り方

税関や市場監視当局から包装材の順法性を疑われた場合、適合宣言書(DoC)と技術文書の提示を求められます。技術文書は、自社のノウハウ(営業秘密)を守りつつ、当局へ義務を果たしていることを証明するために、社内文書の「階層構造」をうまく活かして作成します。

4.3.1 【上位文書】(技術文書に記述・開示する内容)
(i)役割:「どのような手順で法律を守っているか」という概要(Howの要旨)を記述します。
(ii)営業秘密の防衛:独自のノウハウや社外秘情報は一切記載しません。秘密に関わる具体的なプロセスについては、「詳細は〇〇手順書に基づき実施する」というように、社内手順書のタイトル(参照先)を記載するだけにとどめます。

4.3.2 【下位文書】(社内限定の手順書・要領書・基準書など)
(i)役割:実際の詳細な手順、具体的な配合比率、製造ノウハウ、詳細な数値基準などを記述します。
(ii)営業秘密の防衛:営業秘密にあたる情報はすべてこの下位文書に集約させ、当局への初期提出ルート(技術文書)からは切り離しておきます。

この構成により、既存のISO 9001などの仕組みを活かしながら、自社の重要なノウハウ(営業秘密)を確実に守りつつ、モジュールA(自己宣言)に対応することができます。

*1:PPWR官報リンク
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng

免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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