第19回_中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)に関する欧州POPs規則の改正
去る2025年4月28日から5月9日までスイス・ジュネーブで開催された第12回ストックホルム条約締約国会議(COP12)において、中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)をPOPs条約附属書A(廃絶)に(適用除外を定めた上で)追加することが決定されました。EU委員会では、この決定を受けて、欧州POPs規則((EU)2019/1021)の附属書Iに収載するための欧州委員会委任規則案(C(2026)6262)を2026年9月11日に公開1)しました。以降にその主な内容を説明します。
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1.委任法制定の背景
中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)は、主に可塑剤や難燃剤、金属加工油などに使用されてきましたが、難分解性、高蓄積性の特性があり人や生物への毒性を有することから、COP12においてPOPs条約附属書A(廃絶)に(適用除外を定めた上で)追加することが決定されました。これを受けて、欧州POPs規則((EU)2019/1021)第15条第1項に基づき、MCCPsを附属書Iに収載することの検討が開始されました。
そうして欧州化学物質庁(ECHA)のリスク評価委員会(RAC)および社会経済分析委員会(SEAC)による意見は2023年9月に最終決定2)されています。その後、パブリック・コンサルテーションなどのプロセスを経て成立した欧州委員会委任規則案(C(2026)6262)には、POPs条約で認められた適用除外の具体的な対象が含まれています。適用除外の最長期間を5年間とし、必要に応じて最大5年間延長できることとされています。また、意図しない微量不純物(Unintentional Trace Contaminant:UTC)の限度値については、ECHAで推奨されている濃度限度(重量比0.1%)を採用しています。
2. POPs規則((EU)2019/1021)の附属書Iの追加内容
(1)物質名:中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)
*「中鎖塩素化パラフィン」または「MCCPs」とは、以下のものを指す。
以下の分子式を持つ直鎖状C14–C17クロロアルカンのいずれかを含む物質または混合物:
C14 H(30−y) Cly (ただし、y ≥ 5)
C15 H(32−y) Cly (ただし、y ≥ 5)
C16 H(34−y) Cly (ただし、y ≥ 6)
C17 H(36−y) Cly (ただし、y ≥ 6)
(2)CAS No(R)
[1] 85535-85-9
[2] 198840-65-2
[3] 1372804-76-6 他
(3) 中間体としての使用、またはその他の仕様に関する特定の適用除外
1)本項目の目的上、第4条第1項(b)号は、以下の分子式を有する直鎖状C14~C17クロロアルカンの濃度の合計に適用される。
C14 H(30−y) Cly (ただし、y ≥ 5)
C15 H(32−y) Cly (ただし、y ≥ 5)
C16 H(34−y) Cly (ただし、y ≥ 6)
C17 H(36−y) Cly (ただし、y ≥ 6)
物質、混合物または成形品中に存在する場合には、1000 mg/kg(重量比0.1%)以下であること。
2)第1)項の規定にかかわらず、本項の目的上、第4条第1項(b)号は、以下の分子式を有する直鎖状C14~C17クロロアルカンの濃度の合計に適用される。
C14 H(30−y) Cly (ただし、y ≥ 5)
C15 H(32−y) Cly (ただし、y ≥ 5)
C16 H(34−y) Cly (ただし、y ≥ 6)
C17 H(36−y) Cly (ただし、y ≥ 6)
20000 mg/kg(重量比2%)以下であること。ただし、
・それらがケーブルリサイクルから回収された材料、またはそのような材料を用いて製造された製品に含まれている場合
・当該物質が含まれる材料または製品が、道路設備またはフェンスを支えるブロックに使用されている場合。
この限界値は、2028年12月16日まで適用される。
3)以下の目的においては、MCCPs の製造、市場への供給および使用が認められる。
(a)「重作業」の金属加工工程において、専門的または産業的な環境で使用され、かつ回収システムが整備されている金属加工液中の極圧添加剤(2036年12月31日まで)。
(b) 以下のいずれかの車両の予備部品および修理に使用されるポリマーおよびゴム
(i) 陸上用自動車
(ii) 農業、建設、林業、または造園(ガーデニングを含む)に使用される機械
(iii) 医療機器規則((EU)2017/745)の適用範囲内の医療機器用電気・電子機器および医療機器用付属品
(iv) 体外診断用医療機器規則((EU)2017/746)の適用範囲内の体外診断用医療機器およびその付属品用の電気・電子機器
(v) 測定、分析、製造、制御、監視、試験および検査用の機器
(vi) 航空宇宙および防衛用途
その製造において当初MCCPsが使用されていたものについては、その耐用年数の終了時まで、または2041年12月31日までのいずれか早い方まで。
(c) 以下の用途における軟質ポリ塩化ビニル
(i) 建設分野における電線およびケーブルに含まれるもの(2028年12月16日まで)。
(ii) 規則(EU)2017/745の適用範囲内の医療機器およびその付属品、ならびに規則(EU)2017/746の適用範囲内の体外診断用医療機器およびその付属品に使用される電線・ケーブル(2031年12月16日まで)。
(d) 接着剤およびシーラント。ただし、以下に限定する。
(i) ドアおよび窓のシーリングに使用されるポリサルファイド系シーラントおよび一液型ポリウレタンフォーム(2028年12月16日まで)。
(ii) ドアおよび窓のシーリングに使用されるMCCPsを含むまたはMCCPs を含む再生材料から製造された一液型ポリウレタンフォーム。ただし、当該フォームの 缶に再生材料が含まれていることを示す表示がされている場合に限る(2031年12月16日まで)。
(iii) 防水コーティング材および防食コーティング材(2028年12月16日まで)。
(iv) 航空宇宙および防衛用途(2031年12月16日まで)。
(e) 航空宇宙および防衛用途における非構造用接着に用いられるテープ(2031年12月16日まで)。
(f) 弾薬および弾薬のマーキング用の塗料およびコーティング材(2031年12月16日まで)。
(g) 特定の効果を得るための弾薬用火工防御装置。(2041年12月31日まで)
(h) 極限温度から保護するための、宇宙・防衛用機器およびその包装材向けの膨張性コーティング材および塗料(2041年12月31日まで)
(i) 当該機器の製造にMCCPs が使用されていた宇宙・防衛機器の修理および交換用予備部品に使用されるコーティング材および塗料(当該機器の耐用年数が終了するまで)。
4)第3)項に定める適用除外の対象となるMCCPs の製造および 産業用・業務用利用においては、MCCPs の環境への放出を回避し、それが不可能な場合は、可能な限り低いレベルに低減しなければならない。労働者への曝露は、「労働における化学物質に関連するリスクから労働者の健康と安全を保護するための指令(98/24/EC)」第6条に従い、最小限に抑えなければならない。
5)第3)項(b)から(h)に規定される関連する免除の有効期限満了日以前または同日に既に連合内で使用されていたMCCPs を含む製品は、引き続き使用することができる。
6)2042年1月1日以前にEU域内に存在していた、第3項(b)に規定するMCCPs を含む予備部品の市場への供給および使用は許可される。
7)第1)項に言及されるクロロアルカンを含む物質または混合物を市場に流通させる塩素化パラフィンの製造業者、供給業者および輸入業者は、REACH規則((EU)1907/2006)第31条 に規定する安全データシートにおいて、以下の情報提供を行わなければならない。
(a)第1)項に列挙されたクロロアルカンが含まれる場合はその濃度の合計。
(b)上記(a)項に規定する合計が0.1%(重量比)を超える場合、放出および曝露を最小限に抑えるための適切なリスク管理措置および操作条件。
8)塩素化パラフィンの製造業者、供給業者および輸入業者は、同一の製造業者により同一の技術仕様に従って製造された塩素化パラフィンの代表的なロットを用いて、第7)項(a)に規定する合計値を算定する。 その含有量は、検証済みの分析方法を用いて決定する。使用された分析方法の説明、および第7)項(a)に規定する合計値を導き出すために得られた結果は、所管当局の要請に応じて、同当局に提供すること。
3.今後の動向
この改正POPs規則は、2026年12月16日から適用されます。「EU規則」なので、すべてのEU加盟国において直接適用されますので、輸出の際には注意が必要です。
引用
1) 欧州委員会委任規則案(C(2026)6262)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=PI_COM%3AC%282026%296262&qid=1789344898222
2) RACおよびSEACによる意見
https://echa.europa.eu/documents/10162/3de158a7-8ab9-ba32-be7f-0125bb0174d3
免責事項:当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。
anchor合同会社 中山 政明氏
