発刊・体裁・価格
発刊 2014年3月27日 定価 35,200円 (税込(消費税10%))
体裁 B5判 179ページ ISBN 978-4-86502-056-4 →詳細、申込方法はこちらを参照
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書評
この度、北里大学、北里大学病院・東病院 臨床試験センター センター長である熊谷雄治先生が中心となって各界のエキスパートがまとめられた本書が上市された。
一読して、医薬品開発に関わる臨床試験の最新のトピックスがコンパクトにまとめられた書であると感じた。
医薬品開発におけるモデル&シミュレーション方法と、その基礎となる薬物動態解析である母集団薬物動態解析法とPK/PD解析法の解説には最新の知見も紹介されており、臨床試験における被験者選択や副作用の高リスク群同定に利用するバイオマーカー開発とその評価を目的としたコンパニオン診断薬の開発においては実務的な内容も含めて丁寧な解説がある。
さらにはNEDOプロジェクトと検討されたマイクロドーズ臨床試験の解説など現在の新薬開発に関わる臨床試験も権威者により解説されている。
もちろん、この書のみでは各トピックスの真髄を理解することは不可能であるとしても、あたかも良く企画された1日の講演会を聴講するように、これらの分野の概要を理解することができる。
本書は治験に関わる全ての研究者と医療者に有用な書であることを信じて、強く推薦するものである。
本書のポイント
早期臨床試験で何をすべきか?
臨床試験を効率的に進めるためのリスク予測手法の考え方とは?
・臨床試験のシミュレーションの利点とは何か?
・Model & Simulation 適用における海外での実態とは?
・臨床試験デザインへのModel & Simulationの利用の考え方とは?
・PK/PDモデリングの民族差の臨床評価は如何に考えるべきか。
・Model & Simulationを利用した申請資料の注意点とは何か。
・PK/PD解析、NONMEMによる母集団解析をどのように考え、解析すべきか?
・バイオマーカーの規制や今後の課題とは何か?
・バイオマーカーとPGxおよびコンパニオン診断薬の関係とは?
・コンパニオン診断薬の開発のタイミングと注意点
・.コンパニオン診断薬の承認審査・保険収載について
・NEDOプロジェクトのマイクロドーズ試験および海外での現状。
・臨床試験シミュレーションの実施方法
執筆者一覧(敬称略)
●熊谷 雄治 (北里大学)
●鈴木 昭之 (ファイザー(株))
●貝原 徳紀 (アステラス製薬(株))
●今井 康彦 (ブリストル・マイヤーズ(株))
●朝野 芳郎 (ファイザー株式会社)
●笠井 英史 (サターラ合同会社)
●須田 真 ((株)ベル・メディカルソリューションズ)
●田中 潤 ((株)ベル・メディカルソリューションズ)
●小寺 康夫 (近畿大学)
●西尾 和人 (近畿大学)
●三好 康弘 ((株)キアゲン)
●山田 一磨呂 (田辺三菱製薬(株))
目次
第1章 臨床薬理試験をはじめとした早期臨床試験の役割と今後の展望
1.クスリの人格形成
2.新薬開発における早期試験の役割
2.1 効率的な開発のためには?
2.2 ヒトへの初めての投与
2.3 FIH試験
2.4 早期臨床試験によるデータの収集
2.5 早期臨床試験データの活用
3.今後の早期臨床試験の展開
第2章 数学的モデルを利用した臨床開発
1.臨床試験シミュレーション
1.1 臨床試験シミュレーションの意義
1.2 臨床試験シミュレーションの実施方法
2.Model based Meta-analysis
2.1 Model based meta-analysis の適用例
2.1.1 目的
2.1.2 方法
(1)データの概要
(2)MBMAで用いたモデル
3.Quantitative Systems Pharmacology
3.1 Quantitative Systems Pharmacologyとは?
3.2 適応事例
第3章 M&Sを利用した臨床開発の実際
1.M&Sとは
2.臨床試験デザインのためのM&S
3.臨床開発におけるM&S利用のインパクト-実例を基に
3.1 タクロリムスの潰瘍性大腸炎への適応
3.2 ミカファンギンの米国における小児適応拡大
3.3 オクスカルバゼピンの米国における小児適応拡大
第4章 民族差の臨床評価におけるPK/PDモデリング利用について
1.ER共変量モデル
2.ERモデル解析計画上の留意点
3.ERモデル選択上の留意点
4.ERモデル解釈上の留意点
第5章 M&Sを利用した申請資料作成におけるポイント
1.なぜモデルを使うか
2.M&Sによる臨床試験の効率化
3.PK/PDデータのM&S
4.モデル解析における注意点
4.1 フリップ-フロップの注意点
4.2 共分散行列の取扱い
4.3 定量限界以下のデータの取扱い
5.小児試験におけるM&S
5.1 小児PPK試験デザインの留意事項
5.2 最適サンプリング理論について
6.病態モデルと薬効モデル解析からM&Sへ
6.1 選択的漸増法試験の評価法
6.2 疾患の進行と薬物の治療のモデル化
第6章 NONMEMによる母集団解析の考え方
1.母集団薬物動態解析
1.1 母集団薬物動態解析とは
1.2 誤差
1.3 モデル構築手順
1.3.1 解析の流れ
1.3.2 基本モデルの構築
1.3.3 フルモデルの構築
1.3.4 最終モデルの構築
1.4 モデルの妥当性の判断
1.4.1 解析結果の確認・解釈
1.4.2 診断プロット
1.4.3 モデルバリデーション
2.NONMEMについて
2.1 アルゴリズム
2.2 データセット
2.3 コントロールファイル
2.4 エラー
第7章 PK/PD解析手法
1.薬力学モデル(応答の形)の種類
1.1 Emaxモデル
1.2 シグモイドEmaxモデル
1.3 線形モデル
2.薬力学と薬物動態の関連
2.1 直接反応モデル
2.2 平衡の遅延
2.2.1 薬効コンパートメント(Effect compartment) モデル
2.2.2 Indirect response モデル
2.2.3 薬効コンパートメントと生成の抑制型間接反応モデルとの比較
2.2.4 不可逆的効果
2.3 不連続の薬力学測定値の解析
2.3.1 ロジスティック回帰
2.3.2 その他
第8章 バイオマーカーと臨床
1.バイオマーカーの種類
2.バイオマーカーの妥当性
3.薬剤開発とバイオマーカー
4.コンパニオン診断薬
5.バイオマーカーとPGxとの関係
6.新たなバイオマーカー開発への取り組み「liquid biopsy」
7.バイオマーカーの今後の課題
7.1 バイオマーカーに関わる規制
第9章 コンパニオン診断薬の開発と臨床への寄与
1.コンパニオン診断薬と臨床検査
1.1 遺伝子検査のための体外診断用医薬品と測定用医療機器
1.2 バイオマーカーの臨床利用と組織検体由来の遺伝子検査
2.医薬品とコンパニオン診断薬の関係と開発および承認審査・保険収載の差異
2.1 体外診断用医薬品の薬事とコンパニオン診断としての申請
2.2 コンパニオン診断薬の薬事申請と臨床意義の確立
2.3 体外診断用医薬品の開発のタイムライン
2.4 遺伝子検査の保険収載と先進医療
2.5 最近のコンパニオン診断薬の保険収載
3.コンパニオン診断薬の開発の注意点
3.1 これまでのコンパニオン診断開発の状況
3.2 コンパニオン診断開発の課題
3.3 各課題について
3.4 今後のコンパニオン診断開発に関する欧米の取り組み
3.5 製薬企業と診断薬企業によるコンパニオン診断パートナーリングと国内の取り組み
第10章 マイクロドーズ臨床試験について
1.NEDOプロジェクト
1.1 14C 標識体のマスバランス試験
1.2 非標識体のMD 試験
1.3 PET 分子イメージングMD 試験
2.MD 臨床試験のReal World