著者
博士(工学) 髙橋 豊 著
エムエス・ソリューションズ(株)代表取締役、(株)プレッパーズ 代表取締役社長
横浜市立大学非常勤講師、浜松医科大学非常勤研究員
■ 主経歴
・ 1990 年日本電子(株)入社
応用研究センター研究員;LC/MS を用いた応用研究、LC-MS 装置制御ソフトウェアの開発、
ナノESI イオン源の開発、マイクロチップと分析機器を組み合わせたデバイス開発
・ 2010 年日本電子(株)退社、エムエス・ソリューションズ(株)設立、代表取締役
・2019年 浜松医科大学発ベンチャー 株式会社プレッパーズ設立、代表取締役社長
■ 専門・得意分野
質量分析全般、LC/MS およびLC/MS/MS による定性・定量分析、マススペクトル解析
■ 本テーマ関連の学会・協会・団体等
日本質量分析学会、液体クロマトグラフィー研究懇談会
発刊・体裁・価格
発刊 2021年6月15日 定価 35,200円 (税込(消費税10%))
体裁 B5判 165ページ ISBN 978-4-86502-215-5 →詳細、申込方法はこちらを参照
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著者より
本書は、液体クロマトグラフィー質量分析法(liquid chromatography mass spectrometry, LC/MS)を用いた定量分析に関する専門書(入門書)である。質量分析法は、そもそもはマススペクトルを解析する定性分析のための学問である。しかし、LC/MSによる定量分析現場においては、多くの場合マススペクトルは測定されず、分析種の定量値だけが扱われる。著者は、定量分析であっても質量分析である以上マススペクトル解析の基礎的な部分は知っておいて欲しいと言う想いから、定量分析に関する専門書にも関わらず、マススペクトル解析の部分にかなりのページ数を割いた。また、LC/MSにおけるイオン化について、特にESIにおいて観測されるイオン化抑制については、理解している範囲で詳細に解説した。
本書が、LC/MSにおける定量分析のみならず、広く質量分析を扱う分析者の皆さんの参考になれば幸いである。
本書のポイント
★出来るだけ、やさしく、詳しく解説してます!
本書を読んで理解出来ること
・LC/MSで得られるデータについて
・マススペクトルから得られる情報
・LCで用いられる移動相溶媒について
・LC/MSで用いられる移動相溶媒について
・質量分析の代表的なイオン化法の原理
・代表的な質量分析計の原理
・マススペクトル解析の基礎
・MS/MSについて
・プロダクトイオンスペクトル解析の基礎
・LC/MS(/MS)による定量分析のメリット
・LC/MS(/MS)による定量分析の基礎
・代表的な試料前処理法
・LC/MSにおける代表的なトラブルシューティング
目次
第1章 LC/MSの基礎
1. LC-MSの構成
2. LC/MSで得られるデータ
3. マススペクトルから得られる情報
3.1 分子の質量情報
3.2 同位体の情報
3.3 分子の部分構造情報
4. LC/MSに用いられるエレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化、GC/MSに用いられる電子イオン化
4.1 EI
4.2 ESI
4.3 APCI
5. 代表的な質量分析部(計)の原理
5.1 四重極質量分析計
5.2 三連四重極質量分析計
5.3 飛行時間質量分析計
5.4 Orbitrap質量分析計
6. 定量分析に適したLCの検出器としての質量分析計
第2章 液体クロマトグラフィーの基礎
1. クロマトグラフィーの原理
2. 液体クロマトグラフィー(LC)の分離モード
2.1 RPC
2.2 HILIC
3. 溶離法の種類とLC/MSに用いられる移動相溶媒の選択
3.1 イソクラティック溶離
3.2 ステップワイズ溶離
3.3 グラジエント溶離
4. 液体クロマトグラフの構成
4.1 送液系
4.2 試料注入系
4.3 分離系(カラム、カラム恒温槽)
4.4 検出系
5. LC/MSにおけるカラム内径と感度の関係
6. LC/MSとGC/MSの違い
第3章 マススペクトルについて
1. EIによって得られるマススペクトルの解析の基礎
1.1 分子イオンの見極め
1.2 フラグメントイオンの解析
2. ESIやAPCIによって得られるイオン種とマススペクトル解析の基礎
2.1 イオン種の判定
3. MS/MSについて
3.1 プロダクトイオン分析
3.2 プリカーサーイオンスキャン
3.3 コンスタントニュートラルロススキャン
3.4 コンスタントニュートラルマスゲインスキャン
4. プロダクトイオンスペクトル解析の基礎
4.1 正電荷に起因する単純開裂
4.2 正電荷に起因する転位反応と開裂
4.3 負電荷によって起こる単純開裂と転位反応
第4章 LC/MS, LC/MS/MSによる定量分析
1. LC/MS(/MS)による定量分析のメリット、デメリット
2. LC/MSによるSIMとLC/MS/MSによるSRM
2.1 SIM
2.2 SRM
3. SIMにおける定量イオンと定性イオン選択の基準と注意点
4. SRMにおけるトランジッション設定の基準と注意点
5. SIMのモニターイオン強度やSRMのプリカーサーイオン強度の濃度依存性
6. 高分解能質量分析計を用いる定量分析
6.1 高分解能EIC
6.2 並行反応モニタリング(parallel reaction monitoring, PRM)
7. LC-MSの各種パラメーターについて
7.1 質量分解能に関係するパラメーター
7.2 イオン化効率に関係するパラメーター
7.3 イオンのm/zに関係するパラメーター
8. ESIとマトリックス効果
8.1 LC-MSの高感度化
8.2 ESIならではのイオン化抑制現象
8.3 イオン化抑制を低減させる方法
第5章 定量法
1. 絶対検量線法
2. 内標準法
2.1 ISを用いる理由
2.2 安定同位体ラベルしたIS
2.3 同位体ラベルに用いる元素の種類
2.4 類縁化合物などをISに用いる
3. 標準添加法
4. 分析種毎に検量線を作成できない場合
5. 検量線用試料調製の方法と注意点
5.1 試料調製に用いる溶媒と前処理
5.2 内標準添加のタイミング
6. クロマトグラムピークの波形処理(ピーク検出)について
第6章 試料の前処理
1. 代表的な試料前処理法(固相抽出法、除タンパク法、液液抽出法)
1.1 固相抽出法
1.2 除タンパク法
1.3 液液抽出法
1.4 誘導体化法
1.5 その他の前処理法
2. LC/MSにおける試料前処理の注意点
第7章 トラブルシューティング
1. 感度が突然低下した
1.1 LCラインからの液漏れ
1.2 スプレイヤー内のキャピラリーの目詰まり
1.3 イオン取込細孔の目詰まり
1.4 脱溶媒温度の低下
1.5 ネブライザーガス圧の低下
2. シグナルが不安定になる要因やノイズとピークの見極め
2.1 脱溶媒温度や各種ガス流量が適切でなかった例
2.2 ノイズとピークの見極め、QqQ-MSによるSRMの場合
3. 再現性が低い
4. クロマトグラムのピーク形状が悪い
4.1 全ての成分がブロードニングしている
4.2 特定の成分のピークがテーリングしている
4.3 ピークがリーディングしている
4.4 LC/MSでのみピーク形状が悪い場合
5. バックグランドイオン強度が高い
5.1 洗剤(界面活性剤)由来のバックグランドイオン
5.2 環境からの汚染物質
5.3 容器からの溶出物
6. 日常的なメンテナンス
6.1 イオン化部の洗浄